環境問題への関心が高まる中、「環境保護に関わる仕事がしたい」「地域の環境行政に携わりたい」と考える方が増えています。
地方公務員の環境系職種は、まさにそうした志を実現できる仕事です。
本記事では、地方公務員の環境系職種について、具体的な仕事内容、採用試験の種類、必要な資格、年収、キャリアパス、そして就職活動のポイントまで、実例とデータを交えて詳しく解説します。
地方公務員の環境系職種とは

環境系職種の定義
地方公務員の環境系職種とは、自治体の環境保全、公害対策、廃棄物処理、自然保護などの環境行政を担当する専門職です。
主な採用区分
- 技術職(環境):理系専門知識を要する職種
- 技術職(化学):環境分析・水質管理等
- 技術職(農学):環境農学・生態系保全等
- 一般行政職(環境政策担当):政策立案・企画
配属先となる主な部署
- 環境部・環境局
- 環境政策課
- 環境保全課
- 廃棄物対策課
- 公害対策課
- みどり・自然保護課
- 地球温暖化対策課
- 下水道課(環境系技術職)
- 保健所(環境衛生担当)
環境系職種の役割
環境行政における3つの柱
- 環境保全・公害対策
- 大気・水質・土壌の環境基準監視
- 工場・事業所への立入調査
- 環境測定・分析
- 廃棄物・リサイクル政策
- ごみ処理計画の策定
- リサイクル推進
- 不法投棄対策
- 自然保護・地球温暖化対策
- 生物多様性保全
- 緑地保全計画
- 温室効果ガス削減施策
- 再生可能エネルギー導入促進
環境系職種の具体的な仕事内容

環境保全・公害対策担当
大気環境の監視
- 大気汚染測定局の管理運営
- PM2.5、光化学オキシダント等の常時監視
- 工場からの排煙測定・指導
- 大気汚染防止法に基づく届出審査
水質環境の保全
- 河川・湖沼の水質調査
- 工場排水の水質検査
- 水質汚濁防止法に基づく規制
- 生活排水対策の推進
騒音・振動対策
- 騒音・振動の測定
- 建設作業・工場への指導
- 近隣トラブルへの対応
- 環境基準の適合状況確認
土壌汚染対策
- 土壌汚染調査
- 汚染土壌の除去・浄化指導
- 土壌汚染対策法に基づく措置
実務例:ある日の業務
- 午前:工場への立入調査(排水の水質検査)
- 午後:測定データの分析・報告書作成
- 夕方:住民からの騒音苦情対応
廃棄物・リサイクル担当
一般廃棄物の管理
- ごみ処理基本計画の策定
- 分別収集の企画・推進
- ごみ処理施設の運営管理
- 収集業者の指導監督
産業廃棄物の規制
- 産業廃棄物処理業の許可
- 不適正処理の監視・指導
- マニフェストの確認
- 不法投棄のパトロール・摘発
リサイクル推進
- リサイクル率向上施策の立案
- リサイクル施設の整備
- 事業者・住民への啓発活動
- 容器包装リサイクル法対応
実務例
- ごみ減量キャンペーンの企画・実施
- 不法投棄現場の調査・行政指導
- リサイクル施設の視察・評価
自然保護・地球温暖化対策担当
自然環境保全
- 自然環境調査(動植物相調査)
- 希少生物の保護対策
- 生物多様性地域戦略の策定
- 外来生物対策
- 緑地保全・都市緑化の推進
地球温暖化対策
- 温室効果ガス排出量の算定
- 地域気候変動適応計画の策定
- 省エネルギー施策の推進
- 再生可能エネルギー導入支援
- カーボンニュートラル実現に向けた計画立案
環境教育・普及啓発
- 環境学習プログラムの企画
- 市民向けセミナー・イベントの開催
- 環境白書の作成
- SNS等での情報発信
実務例
- 太陽光発電導入補助金の制度設計
- 生物多様性に関する市民講座の開催
- 希少植物の生育地調査
下水道・浄化槽管理担当
下水道施設の維持管理
- 下水処理場の運転管理
- 水質検査・分析
- 施設の保守点検
- 下水道計画の策定
浄化槽の指導
- 浄化槽設置の許可・指導
- 法定検査の実施
- 維持管理業者の監督
採用試験と受験資格

採用試験の種類
大卒程度試験(技術職・環境)
- 受験資格:22歳以上30歳未満程度(自治体により異なる)
- 専門試験:環境科学、化学、生物学、環境工学など
- 教養試験:数的処理、文章理解、社会科学など
- 論文試験:環境政策に関するテーマ
- 面接試験:専門知識、意欲、適性
社会人経験者採用
- 受験資格:職務経験5年以上、年齢30~59歳程度
- 専門知識と実務経験を重視
- 論文・面接が中心
- 教養試験は簡略化または免除
任期付職員採用
- 専門性の高いプロジェクトのため
- 3~5年の任期制
- 即戦力を求められる
必要な学歴・専門分野
有利な学部・学科
- 環境科学科・環境工学科
- 化学科・応用化学科
- 生物学科・生態学科
- 農学部(環境農学、森林科学)
- 理学部(地球科学、環境理学)
- 工学部(土木工学、都市工学)
大学院修了者の優遇 一部の自治体では、修士・博士課程修了者を優遇する制度があります。
文系出身者の可能性 一般行政職として採用され、環境政策部門に配属されるケースもあります。ただし、専門知識の習得が必要です。
有利な資格
必須ではないが評価される資格
公害防止管理者
- 大気関係、水質関係など
- 工場・事業所の公害防止を管理
- 環境行政の実務に直結
環境計量士
- 濃度関係、騒音・振動関係
- 環境測定の専門家
- 環境分析業務に必要
技術士(環境部門)
- 環境分野の最高峰資格
- 実務経験が必要
- キャリアアップに有利
その他の有用な資格
- ビオトープ管理士
- 自然再生士
- エネルギー管理士
- eco検定(環境社会検定試験)
- 環境カウンセラー
資格取得のタイミング 採用試験前に取得していれば評価されますが、採用後に業務の一環として取得支援を受けることも可能です。

年収・待遇

給与水準
地方公務員の環境系技術職は、一般行政職と同等の給料表が適用されることが一般的です。

初任給(大卒・令和6年度目安)
- 都道府県・政令市:約20万円~22万円
- 中核市:約19万円~21万円
- 一般市:約18万円~20万円
年齢別年収の目安
| 年齢 | 職位 | 年収 |
|---|---|---|
| 25歳 | 主事・技師 | 約350万円~400万円 |
| 30歳 | 主任 | 約450万円~520万円 |
| 35歳 | 係長 | 約550万円~630万円 |
| 40歳 | 課長補佐 | 約650万円~750万円 |
| 45歳 | 課長 | 約750万円~900万円 |
| 50歳 | 部長 | 約850万円~1,000万円 |
※自治体規模や地域により差があります

諸手当
- 地域手当:都市部で基本給の3~20%
- 扶養手当:配偶者・子ども等
- 住居手当:賃貸住宅居住者に最大28,000円
- 通勤手当:実費支給(上限あり)
- 時間外勤務手当(残業代)
賞与(期末・勤勉手当)
- 年間約4.5ヶ月分
- 夏季・冬季の2回支給

福利厚生
休暇制度
- 年次有給休暇:年20日
- 夏季休暇:3日
- 病気休暇:最大90日
- 育児休業:最大3年
- 介護休暇
その他の福利厚生
- 共済組合の保険(健康保険・年金)
- 退職金制度
- 財形貯蓄
- 福利厚生施設の利用
ワークライフバランス
- 部署により異なるが、比較的とりやすい
- 環境分析業務:定時退庁が多い
- 政策立案部門:やや残業が多い
- 公害苦情対応:緊急対応が発生する場合も
退職金
定年退職時の退職金(勤続38年の目安)
- 約2,000万円~2,500万円
自治体の規模や最終職位により異なります。

キャリアパス

標準的なキャリアの流れ
入庁~5年目:基礎経験
- 環境分析・測定業務
- 窓口対応・許認可業務
- 公害苦情対応
- データ整理・報告書作成
6~10年目:専門性の向上
- 係長補佐・主任に昇進
- 専門分野の深化(大気、水質、廃棄物等)
- プロジェクトリーダー
- 業者指導・監督
11~20年目:マネジメント
- 係長・課長補佐に昇進
- チームのマネジメント
- 政策立案への参画
- 予算管理

21年目以降:管理職
- 課長・部長に昇進
- 環境政策の意思決定
- 他部署との調整
- 議会対応

異動・配置転換
庁内異動 地方公務員は原則としてジョブローテーションがあり、環境系職種でも他部署への異動があります。

環境系内での異動例
- 環境保全課 → 廃棄物対策課
- 公害対策課 → 地球温暖化対策課
- 下水道課 → 環境政策課
他分野への異動
- 都市計画部門
- 建設・土木部門
- 保健所
- 上下水道局
専門性を活かしたキャリア 一部の自治体では、専門職として環境分野に特化したキャリアパスを選択できる制度もあります。
スペシャリストとジェネラリスト
スペシャリスト志向
- 環境分野の専門性を極める
- 技術士等の資格取得
- 学会発表・論文執筆
- 外部研修・大学院での学び
ジェネラリスト志向
- 幅広い行政経験を積む
- 管理職を目指す
- 政策立案能力を磨く
- 総合的な行政マンとしての成長
環境系職種のやりがいと課題

やりがい
1. 環境保全への直接的貢献 「自分の仕事が地域の環境を守っている」という実感が得られます。
職員の声 「水質調査のデータが改善していくのを見ると、施策の効果を実感できて嬉しいです」(水質保全担当・30代)
2. 地域住民の生活環境の向上 公害苦情への対応や環境改善により、住民の生活の質を高めることができます。
3. 社会的意義の高さ 地球温暖化対策、生物多様性保全など、地球規模の課題に地域レベルで取り組めます。
4. 専門性を活かせる 大学で学んだ環境科学や化学の知識を直接活かせる仕事です。
5. 政策形成への参画 環境基本計画や温暖化対策実行計画など、自治体の重要政策の立案に関われます。
課題・大変な点
1. クレーム対応 騒音・悪臭などの公害苦情は感情的な対応になることもあり、精神的負担があります。
2. 専門知識の継続的な更新 環境技術や法令は常に変化するため、継続的な学習が必要です。
3. 予算制約 理想的な環境施策を実施したくても、予算の制約で実現できないことがあります。
4. 利害関係の調整 環境保全と経済活動のバランスを取る必要があり、事業者との調整が難しい場合があります。
5. 緊急対応 環境事故や不法投棄などで、休日・夜間の対応が求められることがあります。
民間企業の環境系職種との比較

民間企業の選択肢
環境コンサルタント
- 環境アセスメント
- 環境調査・分析
- 環境マネジメントシステム構築支援
分析会社
- 環境測定・分析
- 水質検査
- 大気測定
廃棄物処理業
- 産業廃棄物の収集・処理
- リサイクル事業
環境関連メーカー
- 環境装置の開発・製造
- 水処理システム
- 大気浄化装置
公務員と民間の比較
| 項目 | 地方公務員(環境系) | 民間企業(環境系) |
|---|---|---|
| 年収 | 安定、昇給あり | 企業により差大 |
| 安定性 | 高い | 企業による |
| 専門性 | 幅広く浅め | 深く狭い分野 |
| 転勤 | 基本的になし(庁内異動あり) | あり得る |
| 仕事の範囲 | 政策から現場まで多様 | 専門分野に特化 |
| 裁量 | 法令・予算の制約大 | 比較的大きい |
| 社会的影響 | 地域全体 | クライアント企業 |
どちらを選ぶべきか
- 安定性と地域貢献を重視 → 地方公務員
- 専門性と高収入を重視 → 民間企業(大手)
- 環境保全の制度づくりに関わりたい → 地方公務員
- 技術開発や研究に集中したい → 民間企業
就職活動のポイント

試験対策
専門試験の勉強法
- 過去問の徹底演習
- 大学の専門科目の復習
- 環境白書の熟読
- 環境法令の理解
おすすめ参考書
- 「環境科学・環境工学」(公務員試験専門書)
- 「環境白書」(環境省)
- 「公害防止の技術と法規」
論文試験対策 環境政策に関する時事問題を押さえる。
- 地球温暖化対策
- プラスチックごみ削減
- 生物多様性保全
- 循環型社会の形成
面接対策
よく聞かれる質問
- なぜ環境系職種を志望したか
- 大学でどんな研究をしたか
- この自治体でどんな環境政策に取り組みたいか
- 環境問題への関心のきっかけ
- 民間企業ではなく公務員を選んだ理由
効果的なアピール
- 具体的な環境問題への関心とその理由
- 大学での研究や活動経験
- 志望自治体の環境課題の理解
- 専門知識を活かした貢献意欲

インターンシップ・説明会の活用
インターンシップのメリット
- 実際の業務を体験できる
- 職員から直接話を聞ける
- 志望動機が明確になる
- 採用試験で有利になる場合も
参加すべき説明会
- 自治体主催の採用説明会
- 環境系職種限定の説明会
- OB・OG訪問会
複数自治体の受験
併願のススメ 地方公務員試験は、試験日が異なる複数の自治体を受験できます。
戦略的な受験
- 第一志望:地元自治体
- 第二志望:近隣の政令市
- 第三志望:他県の中核市
試験日程の確認 各自治体の試験日をチェックし、スケジュールを立てましょう。
まとめ

地方公務員の環境系職種について、重要なポイントをまとめます。
仕事の特徴
- 環境保全・公害対策・廃棄物管理・自然保護など多様
- 地域の環境を守る最前線の仕事
- 専門知識と政策立案能力が求められる
採用・資格
- 技術職(環境)として採用
- 環境科学・化学・生物学系の学部が有利
- 公害防止管理者、環境計量士などの資格が評価される
年収・待遇
- 初任給:約18万円~22万円
- 30代係長:約550万円~630万円
- 安定した昇給と充実した福利厚生
- 退職金:約2,000万円~2,500万円
キャリアパス
- 専門性を深めるスペシャリスト
- 管理職を目指すジェネラリスト
- 環境分野内での異動、他部署への異動もあり
やりがい
- 環境保全への直接的貢献
- 地域住民の生活環境向上
- 社会的意義の高い仕事
向いている人
- 環境問題に強い関心がある
- 理系の専門知識を活かしたい
- 地域に貢献したい
- 安定したキャリアを築きたい
地方公務員の環境系職種は、専門性を活かしながら地域社会に貢献できる、やりがいのある仕事です。環境保全に情熱を持ち、地域のために働きたいと考える方にとって、最適なキャリアの選択肢と言えるでしょう。

