「地方公務員は行政書士になれる?」「在職中に資格取得はできる?」「退職後に行政書士として独立できる?」公務員として働きながら、または退職後のキャリアとして、行政書士に興味を持つ方は少なくありません。
地方公務員は、在職中に行政書士試験に合格することは可能ですが、開業(登録)はできません。
ただし、一定の実務経験(20年または17年)があれば、試験免除で行政書士資格を取得でき、退職後に開業できます。行政書士は、許認可申請や契約書作成などを行う国家資格で、独立開業も可能な魅力的なキャリアです。
本記事では、地方公務員と行政書士の関係について、資格取得方法、兼業の可否、退職後のキャリア、メリット・デメリット、具体的な独立事例まで、すべてを網羅的に解説します。
この記事を読むことで、以下のことが分かります。
- 行政書士とは何か
- 地方公務員が行政書士資格を取得する方法
- 在職中の兼業の可否
- 試験免除制度(特認制度)
- 退職後に行政書士として独立するメリット・デメリット
- 実際の独立事例と年収
- 資格取得の準備と勉強法
- よくある質問と回答
地方公務員と行政書士の関係を正しく理解し、キャリアの選択肢を広げましょう。
行政書士とは

行政書士の定義
行政書士は、官公署に提出する書類の作成や、権利義務・事実証明に関する書類の作成を行う国家資格者です。
法的根拠: 行政書士法
主な業務
- 官公署に提出する書類の作成
- 権利義務に関する書類の作成
- 事実証明に関する書類の作成
- これらの書類の提出手続きの代理
- 行政不服申立ての手続きの代理(特定行政書士)
- 相談業務
具体的な業務例
- 建設業許可申請
- 飲食店営業許可申請
- 会社設立の定款作成
- 遺言書作成
- 相続手続き
- 外国人のビザ申請
- 農地転用許可申請
- 自動車登録
行政書士の資格者数と市場
行政書士の登録者数: 約5万人(令和5年時点)
年齢構成
- 60歳以上:約50%
- 50代:約25%
- 40代以下:約25%
開業形態
- 個人事務所:約80%
- 法人(行政書士法人):約20%
市場規模: 約1,000億円(推定)
地方公務員が行政書士資格を取得する方法

方法1:行政書士試験に合格する
地方公務員も、一般の人と同様に、行政書士試験を受験できます。
試験概要
- 試験日:年1回(11月)
- 試験科目:行政書士の業務に関し必要な法令等、一般知識等
- 試験時間:3時間
- 合格率:約10〜15%
試験科目
- 法令等(配点244点)
- 憲法、民法、行政法、商法、基礎法学
- 一般知識等(配点56点)
- 政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解
合格基準
- 法令等科目:122点以上(244点満点)
- 一般知識等科目:24点以上(56点満点)
- 合計:180点以上(300点満点)
難易度
- 合格率:約10〜15%
- 必要な勉強時間:600〜1,000時間
在職中の受験: 地方公務員でも受験可能ですが、仕事との両立が必要です。
方法2:特認制度(試験免除)
地方公務員として一定の実務経験があれば、試験免除で行政書士資格を取得できます。
特認制度とは: 行政事務に一定期間従事した公務員が、試験を受けずに行政書士資格を取得できる制度
資格要件: 以下のいずれかに該当する者
1. 20年以上の実務経験
- 行政事務に従事した期間が通算20年以上
2. 17年以上の実務経験(特定の職種)
- 行政事務で特定の職に就いていた期間が通算17年以上
- 特定の職:主任、係長、課長補佐、課長等の管理職
対象となる行政事務
- 許認可事務
- 届出受理事務
- 条例・規則の制定・改廃事務
- その他、行政書士の業務に関連する事務
注意点: すべての公務員業務が対象ではなく、「行政事務」に該当する業務のみがカウントされます。
申請方法: 退職後、都道府県の行政書士会に申請し、審査を経て登録されます。
在職中の兼業の可否

原則:開業(登録)はできない
地方公務員は、在職中に行政書士として開業(登録)することはできません。
理由: 地方公務員法第38条「営利企業への従事等の制限」により、営利目的の業務は原則として禁止されています。
試験合格と登録の違い
- 試験合格:在職中でも可能
- 登録・開業:退職後のみ可能
つまり、在職中に試験に合格することはできますが、開業はできません。
例外:許可を得た場合
一部の自治体では、以下の条件を満たせば、兼業が許可される場合があります。
許可が得られる可能性がある場合
- 営利を目的としない活動
- 公務に支障がない
- 公務員の信用を傷つけない
- 職務との利害関係がない
実際には: 行政書士業務は営利目的とみなされるため、許可されることは極めて稀です。
退職後に行政書士として独立する
独立のタイミング
定年退職後
- 最も一般的
- 再任用を断って開業するケースも
早期退職
- 40代〜50代で退職し、開業
- リスクは高いが、長期的なキャリア構築が可能

独立のメリット
1. 公務員経験が活かせる
- 許認可手続きの知識
- 行政との折衝経験
- 法律知識
2. 人脈が活かせる
- 自治体とのつながり
- 企業とのつながり
- 地域でのネットワーク
3. 定年後の収入源
- 年金に加えて収入を得られる
- 働き続けることができる
4. 自由な働き方
- 時間・場所の自由
- 得意分野に特化できる
5. 社会貢献
- 住民や企業の役に立つ
- 専門知識で地域に貢献
独立のデメリット
1. 収入の不安定さ
- 顧客獲得が必要
- 収入が保証されない
- 開業当初は収入が少ない
2. 営業活動が必要
- 顧客開拓
- 人脈作り
- マーケティング
3. 事務所運営の負担
- 家賃、光熱費等の固定費
- 帳簿管理、確定申告
- 一人で全て対応
4. 専門知識の更新
- 法改正への対応
- 継続的な学習が必要
5. 年齢的な課題
- 60歳以降の開業は体力的に厳しい場合も
- ITスキルが必要
行政書士の年収と収入

平均年収
行政書士の平均年収: 約600万円(推定)
ただし、幅が大きい
- 年収200万円未満:約30%
- 年収200〜600万円:約40%
- 年収600〜1,000万円:約20%
- 年収1,000万円以上:約10%
公務員退職者の場合
- 開業当初:年収100〜300万円程度
- 3年目以降:年収300〜600万円程度
- 成功例:年収1,000万円以上
収入の構成
報酬の相場
- 建設業許可申請:10〜15万円
- 飲食店営業許可申請:5〜10万円
- 会社設立:10〜20万円
- 遺言書作成:5〜10万円
- 相続手続き:20〜50万円
顧客獲得が鍵: 安定した収入を得るには、継続的な顧客獲得が必要です。
公務員退職者の強み

公務員経験が活きる分野
1. 許認可申請業務
- 建設業許可
- 風俗営業許可
- 産廃業許可
- 各種許認可申請
理由: 自治体の許認可手続きを熟知しているため、スムーズに対応できる。
2. 補助金・助成金申請
- 自治体の補助金制度を理解
- 申請書類の作成に精通
3. 法人向けコンサルティング
- 行政との折衝経験
- 法令遵守のアドバイス
4. 地域密着型業務
- 地域の実情を理解
- 住民とのつながり
人脈の活用
自治体とのつながり
- 元同僚からの紹介
- 自治体職員との信頼関係
地域企業とのつながり
- 在職中に関わった企業
- 商工会議所等のネットワーク
注意点: 利益相反にならないよう、倫理的な配慮が必要です。
実際の独立事例

事例1:50代で早期退職、行政書士として独立
背景
- 元県庁職員、土木部で20年勤務
- 50歳で早期退職
- 試験免除で行政書士資格取得
専門分野
- 建設業許可申請
- 農地転用許可申請
年収
- 1年目:200万円
- 3年目:500万円
- 5年目:800万円
成功要因
- 専門分野に特化
- 元同僚からの紹介
- 地域企業とのネットワーク
事例2:定年退職後、行政書士として開業
背景
- 元市役所職員、福祉部で25年勤務
- 60歳で定年退職
- 試験免除で行政書士資格取得
専門分野
- 遺言書作成
- 相続手続き
- 成年後見
年収
- 1年目:100万円
- 3年目:300万円
課題
- 営業活動に苦労
- ITスキル不足
- 体力的な限界
成功のポイント
- セミナー開催で認知度向上
- 地域の信頼関係
資格取得の準備と勉強法

試験合格を目指す場合
勉強方法
- 予備校・通信講座の利用
- 独学(テキスト・過去問)
- オンライン学習
勉強時間
- 標準:600〜1,000時間
- 期間:6ヶ月〜1年
科目別の学習
- 民法:最重要、時間をかける
- 行政法:公務員なら理解しやすい
- 憲法:基本的な知識
- 商法:会社法を中心に
- 一般知識:時事問題対策
公務員の有利な点
- 行政法の知識がある
- 法律に慣れている
- 公文書の作成経験
特認制度を利用する場合
在職中の準備
- 対象となる業務経験を積む
- 業務の記録を残す
- 退職後の計画を立てる
退職後の手続き
- 都道府県の行政書士会に申請
- 実務経験の証明書を提出
- 審査を受ける
- 登録される
注意点: すべての公務員業務が対象ではないため、事前に確認が必要です。
よくある質問

Q1: 在職中に行政書士試験に合格できる?
A: はい、可能です。
試験の受験資格に制限はなく、在職中でも受験できます。ただし、開業(登録)はできません。
Q2: 特認制度で資格を取る方が良い?
A: 要件を満たすなら、特認制度が有利です。
試験勉強の時間と労力が不要で、確実に資格を取得できます。ただし、20年または17年の実務経験が必要です。
Q3: 退職後すぐに開業できる?
A: 登録手続きが必要ですが、比較的早く開業できます。
行政書士会への登録手続きに数ヶ月かかりますが、それ以外の制限はありません。
Q4: 行政書士だけで生計を立てられる?
A: 可能ですが、顧客獲得の努力が必要です。
開業当初は収入が少ないため、退職金や年金も活用しながら、徐々に顧客を増やしていく必要があります。
Q5: 公務員退職者は有利?
A: 一定の有利性はありますが、営業力も重要です。
許認可業務の知識や人脈は有利ですが、顧客獲得には営業活動が不可欠です。
まとめ:地方公務員と行政書士の関係を理解する

地方公務員と行政書士の関係について、資格取得から独立まで解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。
行政書士とは
- 許認可申請や書類作成を行う国家資格
- 登録者数:約5万人
- 独立開業が可能
地方公務員が資格を取得する方法
- 試験合格:在職中でも受験可能、合格率10〜15%
- 特認制度:20年または17年の実務経験で試験免除
在職中の兼業
- 原則として開業(登録)はできない
- 試験合格は可能
退職後の独立
- 定年退職後または早期退職後に開業可能
- 公務員経験が活かせる
メリット
- 公務員経験が活かせる
- 人脈が活かせる
- 定年後の収入源
- 自由な働き方
- 社会貢献
デメリット
- 収入の不安定さ
- 営業活動が必要
- 事務所運営の負担
- 専門知識の更新が必要
- 年齢的な課題
年収
- 平均:約600万円
- 幅が大きい:200万円未満〜1,000万円以上
- 公務員退職者:開業当初100〜300万円、3年目以降300〜600万円
公務員退職者の強み
- 許認可申請業務の知識
- 行政との折衝経験
- 地域のネットワーク
実際の独立事例
- 50代早期退職:5年目で年収800万円
- 定年退職後:3年目で年収300万円
最後に
地方公務員にとって、行政書士は退職後のキャリアとして魅力的な選択肢です。
おすすめの人
- 許認可業務の経験がある
- 地域に根ざして働きたい
- 定年後も働き続けたい
- 専門知識を活かしたい
注意が必要な人
- 営業活動が苦手
- 収入の不安定さに耐えられない
- ITスキルがない(学ぶ意欲がない)
準備のポイント
- 在職中に対象業務の経験を積む
- 人脈を作る
- 退職後の計画を立てる
- 必要に応じて試験勉強を始める
- ITスキルを身につける
この記事が、地方公務員と行政書士の関係の理解と、退職後のキャリア選択の一助となれば幸いです。

