地方公務員として働きながら出産・育児を迎える際、最も気になるのが「育児休業中の収入はどうなるのか」という点でしょう。
「育児休業手当はいくらもらえるの?」「計算方法は?」「申請はどうすればいい?」といった疑問を持つ方は少なくありません。
地方公務員の育児休業制度は、民間企業と比較しても手厚い内容となっており、経済的な不安を最小限に抑えながら子育てに専念できる環境が整っています。
本記事では、育児休業手当(育児休業給付金)の計算方法、支給額のシミュレーション、申請手続き、注意点まで詳しく解説します。
育児休業を取得予定の方、これから出産を控えている方、制度の理解を深めたい方は、ぜひ最後までお読みください。
地方公務員の育児休業制度の基礎知識

まず、地方公務員の育児休業制度の基本的な仕組みを理解しましょう。
育児休業とは
育児休業とは、職員が子を養育するために一定期間仕事を休むことができる制度です。
地方公務員の場合、原則として子が3歳に達するまで取得可能です。これは民間企業(原則1歳まで、条件により最長2歳まで)よりも長い期間が保障されています。
育児休業手当と育児休業給付金の違い
ここで重要な用語の整理をします。
育児休業手当という言葉は一般的に使われますが、正式には「育児休業給付金」と呼ばれます。
これは雇用保険から支給される給付金で、育児休業中の所得保障を目的としています。
地方公務員の場合、以下の2つの制度があります。
- 育児休業給付金(雇用保険から支給)
- 共済組合からの給付(自治体によっては独自の給付制度がある場合も)
本記事では主に育児休業給付金について詳しく解説します。
取得できる期間
- 原則: 子が3歳に達するまで
- 雇用保険からの給付対象期間: 子が1歳に達するまで(条件により最長2歳まで延長可能)
- 配偶者の状況による延長: 保育所に入所できない場合などは延長可能
つまり、3歳まで休業できますが、給付金が支給されるのは原則1歳までという点に注意が必要です。
取得できる職員の条件
以下の条件を満たす地方公務員が取得可能です。
- 任命権者(自治体)に雇用されている職員
- 育児休業を取得しようとする子を養育している
- 期間を定めて任用される職員の場合、子が1歳6ヶ月に達する日までに任用期間が満了し、更新されないことが明らかでない
非常勤職員や臨時職員も、一定の条件を満たせば取得可能です。
育児休業給付金の計算方法:いくらもらえるのか

育児休業給付金の金額は、休業前の給与をベースに計算されます。


具体的な計算式を見ていきましょう。
基本的な計算式
育児休業給付金は、育児休業期間中の経過によって支給率が変わります。
【育児休業開始から180日目まで】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
【育児休業開始から181日目以降】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
休業開始時賃金日額の計算方法
休業開始時賃金日額は、以下の式で算出します。
休業開始時賃金日額 = 育児休業開始前6ヶ月間の賃金総額 ÷ 180日
賃金総額に含まれるもの
- 基本給(給料月額)
- 扶養手当
- 地域手当
- 住居手当
- 通勤手当(現物支給含む)
- 時間外勤務手当
賃金総額に含まれないもの
- ボーナス(期末・勤勉手当)
- 臨時的に支払われる手当
支給上限額と下限額
育児休業給付金には上限額と下限額が設定されています(令和6年8月時点)。
上限額
- 育児休業開始から180日目まで: 305,721円(月額)
- 181日目以降: 228,150円(月額)
下限額
- 全期間共通: 50,760円(月額)
高収入の職員でも上限額以上は支給されず、逆に給与が低い場合でも下限額は保障されます。
具体的な計算例
実際の計算例を見てみましょう。
【ケース1:30歳、一般行政職、月給25万円の場合】
育児休業開始前6ヶ月間の賃金総額(ボーナスを除く) = 25万円 × 6ヶ月 = 150万円
休業開始時賃金日額 = 150万円 ÷ 180日 = 8,333円
育児休業開始から180日目まで(約6ヶ月間) 月額支給額 = 8,333円 × 30日 × 67% = 約167,500円 半年分の合計 = 167,500円 × 6ヶ月 = 約1,005,000円
181日目から1歳まで(約6ヶ月間) 月額支給額 = 8,333円 × 30日 × 50% = 約125,000円 半年分の合計 = 125,000円 × 6ヶ月 = 約750,000円
1年間の合計支給額: 約1,755,000円
通常の年収が300万円程度とすると、約58.5%の所得が保障されることになります。
【ケース2:35歳、課長補佐、月給35万円の場合】
育児休業開始前6ヶ月間の賃金総額 = 35万円 × 6ヶ月 = 210万円
休業開始時賃金日額 = 210万円 ÷ 180日 = 11,667円
育児休業開始から180日目まで 月額支給額 = 11,667円 × 30日 × 67% = 約234,500円 半年分の合計 = 234,500円 × 6ヶ月 = 約1,407,000円
181日目から1歳まで 月額支給額 = 11,667円 × 30日 × 50% = 約175,000円 半年分の合計 = 175,000円 × 6ヶ月 = 約1,050,000円
1年間の合計支給額: 約2,457,000円
通常の年収が420万円程度とすると、約58.5%の所得が保障されます。

社会保険料・税金の扱い
育児休業給付金には大きなメリットがあります。
免除・非課税となるもの
- 所得税: 非課税(確定申告不要)
- 住民税: 前年の所得に対して課税されるが、育児休業給付金自体は非課税
- 社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・共済組合掛金): 全額免除
社会保険料が免除されるため、実質的な手取り率は給与の約70〜80%程度となります。これは非常に手厚い保障といえます。
育児休業給付金の支給スケジュールと申請方法

給付金を確実に受け取るためには、適切な手続きが必要です。
支給スケジュール
育児休業給付金は、原則として2ヶ月ごとに支給されます。
支給の流れ
- 育児休業開始
- 育児休業開始から1ヶ月経過後、最初の申請
- 初回申請から約1〜2ヶ月後、最初の給付金が振り込まれる
- 以降、2ヶ月ごとに申請・支給
初回の振込までに2〜3ヶ月かかる場合があるため、当面の生活費は事前に準備しておく必要があります。
申請手続きの流れ
Step1: 育児休業の申請(出産予定日の1ヶ月前まで) 所属部署または人事課に育児休業申出書を提出します。
必要書類:
- 育児休業申出書
- 母子健康手帳のコピー(出産予定日確認のため)
- 配偶者の就労証明(該当する場合)
Step2: 育児休業給付金の支給申請 育児休業開始後、初回は育児休業開始から4ヶ月以内に申請します。
必要書類:
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳、出勤簿など
- 母子健康手帳のコピー
多くの場合、人事課が代理で申請手続きを行ってくれます。必要書類を揃えて提出すれば、あとは担当部署が手続きを進めてくれるケースが一般的です。
Step3: 継続申請(2ヶ月ごと) 2回目以降は、2ヶ月ごとに支給申請を行います。
必要書類:
- 育児休業給付金支給申請書
これも人事課が代理申請することが多いです。
申請期限と注意点
申請期限
- 初回申請: 育児休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日まで
- 2回目以降: 前回申請の対象期間終了日の翌日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日まで
期限を過ぎると給付金を受け取れなくなる可能性があるため、必ず期限内に申請しましょう。
よくある申請ミス
- 申請書類の記入漏れ
- 添付書類の不足
- 期限の見落とし
- 銀行口座情報の誤り
人事課との密な連携を保ち、提出期限や必要書類を確認しながら進めましょう。
育児休業給付金以外の経済的支援制度

育児休業給付金以外にも、地方公務員が利用できる経済的支援があります。
出産手当金(共済組合から支給)
出産のために仕事を休んだ期間について、共済組合から出産手当金が支給されます。
支給期間 出産予定日(実際の出産日が早い場合は出産日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日後56日まで
支給額 標準報酬日額の3分の2相当額
育児休業給付金とは別に支給されるため、出産前後の収入を補填できます。
出産育児一時金
子ども1人につき、50万円(産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合)が支給されます。出産費用の大部分をカバーできます。
児童手当
0歳から中学校卒業まで、子どもの年齢に応じて月額10,000円〜15,000円が支給されます。所得制限がありますが、多くの世帯が対象となります。
扶養手当の継続
育児休業中も、扶養している子どもに対する扶養手当は引き続き支給されます(自治体により異なる場合があります)。

共済組合の貸付制度
育児休業中の生活費が不足する場合、共済組合から低金利で資金を借りることができる制度もあります。
育児休業中の社会保険・年金への影響

育児休業取得が将来に与える影響について理解しておきましょう。
社会保険料の免除
育児休業期間中、以下の保険料が免除されます。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料(共済年金掛金)
免除期間中も被保険者資格は継続し、保険給付は通常通り受けられます。
年金への影響
社会保険料が免除されても、育児休業期間は年金加入期間として計算されます。さらに、休業前の標準報酬月額で保険料を納めたものとして扱われるため、将来の年金額が減ることはありません。
これは非常に大きなメリットです。民間企業の従業員と同様の保障を受けられます。

退職手当への影響
育児休業期間は、原則として退職手当の計算上、在職期間に含まれます。ただし、3年を超える育児休業については、超えた期間の2分の1が算入されない場合があります(自治体により規定が異なります)。
いずれにせよ、1歳までの育児休業であれば退職手当には影響しません。

男性職員の育児休業取得について

近年、男性の育児休業取得が推進されています。
男性職員も同じ給付金を受けられる
育児休業給付金は男女問わず、同じ条件で支給されます。配偶者が育児休業を取得していても、男性職員も取得可能です。
パパ・ママ育休プラス制度
両親ともに育児休業を取得する場合、子が1歳2ヶ月に達するまで育児休業給付金の支給対象期間が延長されます。
産後パパ育休(出生時育児休業)
子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる柔軟な休業制度です。通常の育児休業とは別に取得でき、給付金も支給されます。
支給率: 最初の28日間は給与の67%
男性の取得率向上施策
多くの自治体が、男性職員の育児休業取得率向上に向けた取り組みを進めています。
- 取得促進のための啓発活動
- 上司への研修実施
- 取得しやすい職場環境の整備
- 数値目標の設定(国の目標: 2025年までに30%)
育児休業取得を成功させるためのポイント

1. 早めの計画と準備
妊娠が分かったら、できるだけ早く上司や人事課に相談しましょう。業務の引継ぎ計画を立て、スムーズな休業開始につなげます。
2. 配偶者との役割分担の話し合い
夫婦でどのように育児休業を取得するか、事前に話し合っておくことが重要です。交代で取得する、同時期に取得するなど、家庭の状況に合わせた計画を立てましょう。
3. 家計のシミュレーション
育児休業中の収入減を見越して、家計の見直しを行いましょう。給付金の支給時期や金額を把握し、必要に応じて貯蓄を確保しておくことが大切です。
4. 職場とのコミュニケーション維持
休業中も、職場との適度なコミュニケーションを保つことで、復帰後の業務がスムーズになります。定期的な近況報告や、重要な情報の共有を行いましょう。
5. 復帰後のキャリアプランを考える
育児休業はキャリアの中断ではなく、キャリアの一部です。復帰後どのように働きたいか、短時間勤務制度の利用なども含めて考えておきましょう。
育児休業取得時のよくある疑問と回答(FAQ)

Q1: 育児休業中にボーナス(期末・勤勉手当)はもらえますか?
在職期間に応じて支給される場合があります。例えば、6月の期末手当の場合、基準日(6月1日)に在職していれば、その後に育児休業を開始しても一定割合が支給されます。ただし、休業期間に応じて減額されることが一般的です。
Q2: 育児休業給付金は課税対象ですか?
いいえ、育児休業給付金は非課税です。所得税も住民税もかかりません。確定申告の必要もありません。
Q3: 保育所に入れなかった場合、給付金の延長はできますか?
はい、可能です。保育所に入所できなかったことを証明する書類(入所保留通知書など)を提出すれば、子が1歳6ヶ月に達するまで、さらに延長して2歳に達するまで給付金を受け取れます。
Q4: 第2子を妊娠した場合、育児休業はどうなりますか?
第1子の育児休業中に第2子を妊娠・出産した場合、第1子の育児休業は終了し、第2子の産前休暇に移行します。その後、第2子の育児休業を新たに取得できます。
Q5: 育児休業中にアルバイトやパートはできますか?
育児休業の趣旨は子の養育ですので、原則として他の仕事に従事することは認められません。ただし、任命権者の承認を得れば、短時間・短期間の就業が認められる場合があります。また、就業した場合、その期間は給付金が支給されない、または減額される可能性があります。
Q6: 双子の場合、給付金は2倍になりますか?
いいえ、給付金の額は子の人数によって変わりません。ただし、出産育児一時金は子ども1人につき50万円なので、双子の場合は100万円支給されます。また、児童手当は子どもの人数分支給されます。
Q7: 育児休業から復帰後、すぐにまた休暇は取れますか?
復帰後すぐに通常の年次有給休暇を取得することは可能です。ただし、育児休業の再取得は、原則として同一の子については1回限りとされています(特別な事情がある場合は例外あり)。
Q8: 育児休業給付金の手続きを忘れていた場合、遡って申請できますか?
申請期限を過ぎた場合でも、時効(2年)内であれば遡って申請できる可能性があります。ただし、手続きが複雑になるため、必ず期限内に申請するよう心がけましょう。
まとめ:地方公務員の育児休業制度を賢く活用しよう

地方公務員の育児休業制度は、経済的にも制度的にも非常に充実しています。適切に活用すれば、安心して子育てに専念できる環境が整っています。
育児休業給付金のポイント
- 休業開始から180日目までは給与の67%、181日目以降は50%が支給される
- 社会保険料が免除され、給付金は非課税のため、実質的な手取り率は高い
- 年金加入期間としてカウントされ、将来の年金額に影響しない
- 申請は人事課がサポートしてくれる場合が多いが、期限は厳守
計算例のおさらい
月給25万円の職員の場合、1年間で約175万円の給付金が受け取れます。さらに社会保険料免除のメリットを考えると、実質的には給与の70〜80%程度の収入が確保できます。
成功のカギ
- 早めの計画と準備
- 人事課との密な連携
- 配偶者との協力
- 家計のシミュレーション
- 職場への配慮と感謝の気持ち
最後に
育児休業は、子どもとの貴重な時間を過ごすための制度です。経済的な不安を最小限に抑え、安心して育児に専念できるよう、制度を正しく理解し、賢く活用しましょう。
出産・育児を控えている地方公務員の皆さんが、充実した育児休業期間を過ごされることを願っています。不明な点があれば、必ず所属の人事課や共済組合に相談し、確実に手続きを進めてください。
