「地方公務員の退職金って実際いくらもらえるの?」「定年まで働いたらどれくらい?」地方公務員として働く方、またはこれから目指す方にとって、退職金は老後の生活設計に直結する重要な問題です。
地方公務員の退職金は、勤続年数や退職理由によって大きく異なります。
また、近年は退職金の減額傾向が続いており、将来どうなるのか不安に感じている方も多いでしょう。
本記事では、総務省のデータに基づき、地方公務員の退職金について、勤続年数別の具体的な金額、計算方法、支給時期、税金、さらには近年の減額傾向まで、網羅的に解説します。
退職後の生活設計に役立つ実践的な情報をお届けします。
地方公務員の退職金の基本知識

退職金(退職手当)とは
地方公務員の退職金は、正式には「退職手当」と呼ばれ、長年の勤務に対する功労報償的な性格と、退職後の生活保障的な性格を併せ持つ一時金です。
根拠法令は「地方公務員法」および各自治体の「退職手当に関する条例」であり、民間企業の退職金とは異なり、法律・条例に基づいて計算される公的な制度です。
退職金の支給対象者
以下の条件を満たす地方公務員に退職金が支給されます。
勤続期間:原則として6ヶ月以上勤務した職員が対象
雇用形態:常勤職員が対象(非常勤職員や臨時職員は対象外)
退職理由:定年退職、自己都合退職、早期退職、勧奨退職など、理由を問わず支給
ただし、懲戒免職などの場合は減額または不支給となることがあります。
支給時期
退職金は退職後、通常1ヶ月~2ヶ月程度で支給されます。
標準的なスケジュール
- 3月末退職の場合:4月末~5月中旬に支給
- 年度途中退職の場合:退職日から1ヶ月~2ヶ月後に支給
自治体によって若干異なりますが、退職日から2ヶ月以内には振り込まれるのが一般的です。
地方公務員の退職金はいくら?勤続年数別の支給額

全国平均データ
総務省が公表している「地方公務員の退職手当支給状況等調査」によると、2023年度の地方公務員の平均退職金は以下の通りです。
定年退職者(勤続年数約35年~38年)の平均
- 全職種平均:約2,072万円
- 一般行政職:約2,131万円
- 教育職:約2,095万円
- 警察職:約2,234万円
自己都合退職者(勤続年数約15年~20年)の平均
- 全職種平均:約568万円
この数字はあくまで平均値であり、個々の退職金額は勤続年数、最終給料月額、退職理由などによって大きく異なります。
勤続年数別の退職金目安(早見表)
一般行政職の標準的な退職金額を勤続年数別に示します。
勤続5年:
- 定年退職:該当なし
- 自己都合退職:約50万円~70万円
勤続10年:
- 定年退職:該当なし
- 自己都合退職:約150万円~200万円
勤続15年:
- 定年退職:該当なし
- 自己都合退職:約350万円~450万円
勤続20年:
- 定年退職:該当なし
- 自己都合退職:約650万円~800万円
- 早期退職(勧奨退職):約900万円~1,100万円
勤続25年:
- 自己都合退職:約1,100万円~1,300万円
- 早期退職(勧奨退職):約1,400万円~1,700万円
勤続30年:
- 自己都合退職:約1,500万円~1,750万円
- 早期退職(勧奨退職):約1,900万円~2,200万円
勤続35年:
- 定年退職:約2,000万円~2,300万円
- 自己都合退職:約1,800万円~2,100万円
勤続38年(満額):
- 定年退職:約2,100万円~2,400万円
これらは標準的な昇進・昇給を経た場合の目安であり、最終役職や給料月額によって変動します。
役職別の退職金の違い
最終役職によって退職金額は大きく異なります。
同じ勤続35年でも
一般職員(係長級): 約2,000万円~2,100万円
課長補佐級: 約2,100万円~2,200万円
課長級: 約2,200万円~2,400万円
部長級: 約2,400万円~2,700万円
副市長・副知事級: 約2,700万円~3,000万円以上
役職が上がるほど最終給料月額が高くなり、それに比例して退職金も増加します。
自治体による違い
退職金は自治体によっても差があります。
都道府県・政令指定都市: 財政規模が大きく、給与水準も高いため、退職金も高めの傾向
- 定年退職(勤続35年):約2,100万円~2,400万円
一般市: 標準的な水準
- 定年退職(勤続35年):約2,000万円~2,200万円
町村: 財政規模が小さく、給与水準もやや低めのため、退職金もやや低い傾向
- 定年退職(勤続35年):約1,900万円~2,100万円
ただし、地域や自治体の財政状況によって大きく異なるため、個別に確認が必要です。
退職金の計算方法

基本的な計算式
地方公務員の退職金は、以下の計算式で算出されます。
退職金 = 退職時の給料月額 × 支給率(支給月数)
給料月額:退職時の基本給(手当は含まない)
支給率:勤続年数と退職理由に応じて定められた係数
支給率(支給月数)の仕組み
支給率は、勤続年数が長いほど、また定年退職や勧奨退職など組織都合の退職ほど高くなります。
標準的な支給率の例
勤続年数5年:
- 自己都合:約3.0ヶ月分
- 定年退職:該当なし
勤続年数10年:
- 自己都合:約8.0ヶ月分
- 定年退職:該当なし
勤続年数15年:
- 自己都合:約15.0ヶ月分
- 定年退職:該当なし
勤続年数20年:
- 自己都合:約22.5ヶ月分
- 勧奨退職:約30.0ヶ月分
勤続年数25年:
- 自己都合:約30.5ヶ月分
- 勧奨退職:約39.0ヶ月分
勤続年数30年:
- 自己都合:約38.5ヶ月分
- 勧奨退職:約47.0ヶ月分
勤続年数35年:
- 自己都合:約45.0ヶ月分
- 定年退職:約47.709ヶ月分(調整率適用後)
勤続年数38年:
- 定年退職:約49.59ヶ月分(調整率適用後・満額)
※2024年度以降、段階的に調整率が引き下げられているため、実際の支給月数は表示より低くなります。
具体的な計算例
実際に退職金を計算してみましょう。
【ケース1】勤続35年・定年退職・一般職員の場合
- 退職時給料月額:420,000円
- 支給月数:47.709ヶ月分(調整率適用後)
- 計算:420,000円 × 47.709 = 20,037,780円 退職金:約2,004万円
【ケース2】勤続20年・自己都合退職の場合
- 退職時給料月額:350,000円
- 支給月数:22.5ヶ月分
- 計算:350,000円 × 22.5 = 7,875,000円 退職金:約788万円
【ケース3】勤続30年・早期退職(勧奨退職)の場合
- 退職時給料月額:400,000円
- 支給月数:47.0ヶ月分
- 計算:400,000円 × 47.0 = 18,800,000円 退職金:約1,880万円
【ケース4】勤続35年・定年退職・部長級の場合
- 退職時給料月額:550,000円
- 支給月数:47.709ヶ月分(調整率適用後)
- 計算:550,000円 × 47.709 = 26,240,000円 退職金:約2,624万円
調整率とは
近年、退職金抑制のため「調整率」が導入されています。
これは、計算された支給月数に一定の係数(例:0.98や0.96など)を乗じて、実際の支給月数を減らす仕組みです。
例えば、本来50ヶ月分の支給月数が、調整率0.96を適用すると: 50ヶ月 × 0.96 = 48ヶ月分
この調整率は人事院勧告に基づいて設定され、多くの自治体で採用されています。
退職理由による違い

定年退職
最も一般的な退職理由で、支給率も最も高く設定されています。
対象:60歳または65歳に達した職員(定年年齢は段階的に65歳へ引き上げ中)
支給率:最も高い(勤続35年で約47.7ヶ月分)
特徴:長年の勤務に対する功労報償として満額に近い金額が支給される
自己都合退職
自分の意思で退職する場合です。
対象:転職、家庭の事情、個人的理由などで自主的に退職する職員
支給率:定年退職より低い(勤続35年で約45.0ヶ月分、約5%減)
特徴:勤続20年未満では特に支給率が低くなる
勧奨退職(早期退職)
組織の都合や本人の希望により、定年前に退職する場合です。
対象:組織改革、定員削減などに伴い、定年前に退職を勧奨された職員、または早期退職募集に応じた職員
支給率:自己都合より高く、定年退職に近い水準
特徴:早期退職加算(定年までの期間に応じて加算)がある場合も
早期退職加算の例: 定年まで5年以上ある場合:基本額の10%~20%加算 定年まで3年~5年の場合:基本額の5%~10%加算
この加算により、場合によっては定年まで働くより多くの退職金を受け取れることもあります。
整理退職・勧奨退職
組織の統廃合や定員削減などで、やむを得ず退職する場合です。
対象:職の廃止、過員整理などにより退職する職員
支給率:最も高い(定年退職と同等以上)
特徴:本人の意思によらない退職のため、手厚い補償がある
懲戒免職
重大な非違行為により懲戒免職となった場合です。
対象:懲戒免職処分を受けた職員
支給率:大幅に減額、または全額不支給
特徴:不祥事の内容により、全額不支給や50%~80%減額となる
退職金にかかる税金

退職所得控除
退職金には税制上の優遇措置があり、一般の所得より税負担が軽減されています。
退職所得控除額の計算:
勤続年数20年以下: 控除額 = 40万円 × 勤続年数 (最低80万円)
勤続年数20年超: 控除額 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
具体例:
- 勤続10年:40万円 × 10年 = 400万円
- 勤続25年:800万円 + 70万円 × 5年 = 1,150万円
- 勤続35年:800万円 + 70万円 × 15年 = 1,850万円
退職所得の計算と税額
退職所得控除後の金額に対して課税されます。
退職所得 = (退職金 – 退職所得控除額) × 1/2
この退職所得に対して、所得税・住民税が課税されます。
税率:所得額に応じた累進課税(5%~45%)
具体的な税額計算例
【ケース1】勤続35年・退職金2,000万円の場合
退職所得控除額: 800万円 + 70万円 × 15年 = 1,850万円
退職所得: (2,000万円 – 1,850万円) × 1/2 = 75万円
税額(所得税・復興税・住民税): 約11万円程度
手取り額:約1,989万円
【ケース2】勤続20年・退職金800万円の場合
退職所得控除額: 40万円 × 20年 = 800万円
退職所得: (800万円 – 800万円) × 1/2 = 0円
税額:0円
手取り額:800万円(全額)
このように、長く勤めた職員の退職金は税制上非常に優遇されており、特に勤続20年を超えると控除額が大きく増えます。
退職金の確定申告
退職金は「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、源泉徴収により課税関係が完結するため、原則として確定申告は不要です。
ただし、以下の場合は確定申告が必要または有利になることがあります。
- 申告書を提出していない場合(20.42%の一律源泉徴収)
- 他の所得との損益通算をしたい場合
- 医療費控除など他の控除を受けたい場合
近年の退職金動向と将来予測

退職金の減額傾向
地方公務員の退職金は、近年減少傾向が続いています。
過去15年間の推移:
- 2009年度:平均約2,800万円(定年退職)
- 2014年度:平均約2,500万円
- 2019年度:平均約2,200万円
- 2023年度:平均約2,072万円
約15年間で約700万円(約25%)減少しています。
減額の主な理由
民間企業との均衡: 人事院勧告により、民間企業の退職金水準に合わせるため、段階的に引き下げられています。
調整率の引き下げ: 2018年以降、支給月数に乗じる「調整率」が引き下げられ、実質的な支給額が減少しています。
財政状況の悪化: 多くの自治体で財政が厳しく、人件費削減の一環として退職金も抑制されています。
今後の見通し
今後も以下の傾向が続くと予想されます。
定年延長の影響: 65歳定年が完全実施されると、勤続年数が長くなる一方、給料月額の上昇が抑えられるため、退職金総額への影響は限定的と見られます。
さらなる減額の可能性: 民間企業の退職金水準がさらに低下すれば、公務員の退職金も連動して減額される可能性があります。
支給方法の多様化: 一時金だけでなく、年金方式(分割支給)との選択制を導入する自治体も増えています。
退職金を増やす方法

長く勤める
最も確実な方法は、長く勤めることです。
勤続年数が長いほど支給月数が増え、最終給料月額も上がります。
勤続25年と35年の比較(自己都合退職の場合)
- 25年:約1,200万円
- 35年:約2,000万円 差額:約800万円
昇進・昇格を目指す
最終役職が上がれば、最終給料月額が上がり、退職金も増えます。
一般職員と課長級の比較(勤続35年・定年退職)
- 一般職員(給料月額42万円):約2,000万円
- 課長級(給料月額52万円):約2,480万円 差額:約480万円
早期退職制度を活用する
早期退職募集に応じると、加算金が支給される場合があります。
定年退職と早期退職(定年5年前)の比較
- 定年退職(勤続38年):約2,100万円
- 早期退職(勤続33年+加算20%):約2,040万円
働かずに受け取れる点を考慮すると、早期退職の方が有利な場合もあります。
懲戒処分を受けない
当然ですが、懲戒処分を受けると退職金が減額されます。
法令遵守と適切な職務遂行を心がけることが大切です。
よくある質問(FAQ)

Q1:中途採用で入った場合、退職金はどうなりますか?
A:民間企業等からの転職者でも、地方公務員として勤務した期間に応じて退職金が支給されます。一部の自治体では、前職の勤務期間を通算できる制度もありますが、基本的には地方公務員としての勤続年数で計算されます。
Q2:育児休業や病気休職の期間は勤続年数に含まれますか?
A:育児休業は勤続年数に含まれますが、支給率の計算では一部期間が除外される場合があります。病気休職は、給与が支給されている期間は含まれますが、無給期間は除外されることが一般的です。詳細は各自治体の規定によります。
Q3:退職金は差し押さえられることがありますか?
A:原則として、退職金の4分の3は差し押さえ禁止財産とされています(民事執行法)。ただし、税金や公的債務については全額差し押さえの対象となる場合があります。
Q4:退職後すぐに再就職した場合、退職金に影響はありますか?
A:退職金の支給額自体には影響ありませんが、再就職先で高額の給与を得ると、退職金と合わせて税負担が増える可能性があります。また、自治体の外郭団体などへの再就職では、調整が入ることもあります。
Q5:離婚した場合、退職金は財産分与の対象になりますか?
A:はい、退職金は財産分与の対象となります。ただし、既に受け取った退職金だけでなく、将来受け取る予定の退職金も対象となる場合があります(将来分は確実性に応じて評価)。
Q6:複数の自治体で勤務した場合、退職金はどうなりますか?
A:基本的には、最後に勤務した自治体から、全勤務期間を通算した退職金が支給されます。ただし、自治体間で退職手当組合に加入しているか、個別の協定があるかによって異なります。転職時に確認が必要です。
Q7:定年延長で65歳まで働いた場合、退職金はどうなりますか?
A:2023年から段階的に定年が65歳まで延長されていますが、退職金の支給月数上限は据え置かれているため、60歳以降の勤務期間に対する退職金の伸びは限定的です。むしろ、長く働くことで給与を得られる点がメリットとなります。
まとめ:退職金を見据えたキャリア設計を

重要ポイントの再確認
定年まで勤めれば約2,000万円~2,400万円が標準的な退職金額ですが、自治体や役職によって差があります。
勤続年数が長いほど支給額が増えるため、長期的なキャリア設計が重要です。特に勤続20年を超えると支給率が大きく上昇します。
退職金は近年減少傾向にあり、今後も減額される可能性があります。退職金だけに頼らない老後設計が必要です。
税制優遇が手厚いため、一時金で受け取るのが一般的にお得です。受け取り後の運用も重要になります。
早期退職制度を活用することで、働かずに退職金を受け取れる場合もあります。50代になったら制度をチェックしましょう。
最後に
退職金は老後の生活資金として重要ですが、それだけに頼るのではなく、公的年金、企業年金、個人的な貯蓄・投資など、多様な収入源を確保することが大切です。
地方公務員として働く方は、定期的に自分の退職金見込額を確認し、計画的な資産形成を心がけることをおすすめします。退職後も安心して生活できるよう、早めの準備を始めましょう。

