地方公務員の副業が2025年6月に条件付きで解禁されました。
総務省の通知により、任命権者の許可があれば営利活動も可能になり、地方公務員に新たなキャリアの選択肢が生まれています。
本記事では、副業解禁の背景、許可基準、できる仕事・できない仕事、申請方法、注意点まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
地方公務員の副業が2025年6月に解禁

副業解禁の概要
2025年6月11日、総務省は「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について」という通知を発出しました。
これにより、地方公務員では一定の条件下で副業が許可されるようになり、全国の自治体職員に新たなキャリアの選択肢が生まれています。
この副業解禁は、地方公務員法第38条の枠組みを維持しながら、任命権者の許可があれば営利活動も可能とするものです。
無断での副業は引き続き禁止されており、あくまで任命権者の許可制での柔軟化です。
副業解禁の背景
地方では、農業、福祉、地域イベントなどの人手不足が深刻です。
副業制度を活用することで、公務員がそのスキルや人脈を活かし、地域の担い手として活躍できます。
またZ世代を中心に「1つの仕事だけに縛られたくない」「社会とつながりたい」という価値観が広がっています。副
業を通じて、キャリアの複線化・専門性の強化が可能になります。
国家公務員との違い
国家公務員も2026年4月から自営兼業の範囲が大幅に拡大される予定ですが、地方公務員は2025年6月から先行して柔軟化が進んでいます。
地方公務員法は国家公務員法と比べてやや制限が緩和されており、任命権者の許可を受けさえすれば、営利企業等に従事することができるものとされています。
この点については、地方公共団体の実情を考慮したものとされています。
地方公務員法における副業規制の基本

地方公務員法第38条の規定
地方公務員法第38条第1項では、「職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」と定められています。
つまり、原則として許可なく副業を行うことはできません。
また就業している自治体ごとの許可基準にも従う必要があります。
副業規制の3つの原則
副業を禁止する理由は、以下の3つの原則に基づいています。
1. 職務専念義務 すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、職務の遂行にあたっては、全力を挙げてこれに専念しなければなりません。副業を行うことで、本業である公務に費やす時間や集中力が減少し、職務遂行に支障をきたす可能性があります。
2. 守秘義務 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない守秘義務を負っています。副業を通じて、公務で知り得た機密情報が漏洩するリスクがあります。
3. 信用失墜行為の禁止 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはなりません。副業の内容によっては、公務員全体のイメージを損なう可能性があります。
副業許可の基準

基本的な3つの原則
兼業を許可するにあたっては、次の3点の基本的な原則を満たすことが求められます。
1. 公務能率の確保 職務遂行上、能率の低下を来すおそれがないこと。勤務時間外で業務に支障がないか、疲労や健康面に配慮されているかが判断されます。
2. 職務の公正の確保 相反する利害関係を生じるおそれがなく、かつ、その他職務の公正を妨げるおそれがないこと。公務と副業による利益相反がないかが確認されます。
3. 職員の品位の保持 職員及び職務の品位を損ねるおそれがないこと。公務の品位を損なわないかどうかが判断されます。

労働時間の基準
地方公務員の副業の労働時間については、本業との時間を通算して判断するよう示されています。
雇用契約が必要な副業の場合
パートやアルバイトなど雇用契約が必要な副業は、労働基準法で定められている規制範囲(本業・副業通算で1日8時間、週40時間)への考慮が必要です。
個人事業主としての場合
地方自治体の事例では、副業の許可において「週8時間以下、1カ月30時間以下、平日(勤務日)3時間以下」を基準の一つとするケースがいくつかあります。これは、国家公務員の兼業の許可基準と同じような内容です。
報酬の制限
報酬については、各自治体で基準を明確にする動きが出ています。
通知により、これまで国家公務員向けの明示にとどまっていた、兼業の「労働時間」「報酬」などの制限についても、各自治体で基準を明確にする動きが出ているようです。
地方公務員ができる副業

許可が得られやすい副業
以下の副業は、比較的許可が得られやすいとされています。
1. 地域貢献活動
- 町おこしや移住者支援
- 地域イベントの運営
- 地域住民の生活維持に欠かせない仕事
- 過疎地のコンビニエンスストアの運営
2. 非営利団体での活動
- NPO法人での活動
- 自治会・町内会の役員
- ボランティア団体での活動(報酬を得る場合は許可が必要)
3. 専門知識を活かした活動
- 講演・執筆活動
- セミナー講師
- 専門分野のコンサルティング(利害関係のない分野)
4. 農業・林業
- 実家の農業の手伝い
- 小規模な農業経営
5. 不動産賃貸(一定規模以下)
- 5棟10室未満の不動産賃貸
- 年間賃貸料収入が500万円未満
6. 創作活動
- イラストレーターとしての単発の仕事
- 小説の執筆
- 音楽活動(営利目的でない範囲)
自治体によって判断が分かれる副業
1. タウン誌への掲載
地方公務員の場合、自治体によってはタウン誌などへの掲載であれば地域貢献として承認が得られる可能性もあります。
2. データ入力
営利目的でのデータ入力業務であれば、副業の許可を得られる可能性は低いでしょう。ただし、例えば「地域の非営利団体で繁忙期のデータ入力を手伝う」といった業務であれば、自治体によっては認められる可能性もあります。
3. ブログ・YouTube運営
公務員がブログやYouTubeチャンネルを運営することは、趣味の範疇であれば問題はありません。しかし副業として取り組みたい場合、ブログ等で得られる広告収入は営利目的で得た収入とみなされるため、認められる可能性は低いでしょう。
地方公務員ができない副業

原則として認められない副業
以下の副業は、原則として許可されません。
1. 利害関係のある企業での勤務
自分の職務と特別な利害関係(許認可、補助金交付、契約等)がある企業での副業は認められません。
2. 公務の信用を損なう活動
- 風俗営業
- ギャンブル関連
- 政治的偏向の強い活動
- 反社会的勢力との関わり
3. 職務専念義務に支障をきたす活動
- 深夜まで及ぶアルバイト
- 過度に時間を要する副業
- 健康を害するおそれのある副業
4. 守秘義務に抵触する活動
職務上知り得た情報を利用する副業や、機密情報の漏洩リスクがある副業
5. 営利企業の経営(許可なし)
自ら会社を設立して経営することは、許可なしでは認められません。
副業の申請方法

申請の流れ
- 事前相談
まずは所属部署の上司または人事担当課に相談しましょう。副業の内容、時間、報酬などを説明し、許可が得られる可能性があるか確認します。 - 申請書の作成
自治体が定める申請書に必要事項を記入します。副業の内容、勤務時間、報酬額、副業先の情報などを詳細に記載します。 - 必要書類の準備
- 副業先の事業内容がわかる資料
- 勤務時間がわかる契約書(案)
- 報酬額がわかる資料
- 申請書の提出
人事担当課または任命権者に申請書を提出します。 - 審査
任命権者(通常は市町村長や知事、またはその委任を受けた者)が、基本的な3原則に照らして審査します。 - 許可または不許可の通知
審査結果が書面で通知されます。許可された場合、条件が付される場合もあります。
申請時の注意点
詳細な説明を
副業の内容、目的、社会的意義などを具体的に説明しましょう。特に地域貢献につながる点を強調すると良いでしょう。
労働時間を明確に
本業に支障がないことを示すため、副業の時間帯、頻度、休日の確保などを明確にします。
利害関係がないことを証明
自分の職務と副業先との間に利害関係がないことを明確に示します。
健康管理への配慮
過労にならないよう、適切な休息時間を確保していることを説明します。
無許可で副業した場合の処分

懲戒処分の種類
許可を得ずに副業を行った場合、懲戒処分の対象となります。
主な懲戒処分
- 戒告:最も軽い処分
- 減給:給与の減額
- 停職:一定期間の職務停止
- 免職:解雇
過去の処分事例
- 総務省職員が不動産賃貸の自営兼業をしていたことの承認申請を怠ったことにより、戒告の懲戒処分を受けた
- 滋賀県甲良町教育次長が約6年間にわたりテニスコーチをして約85万円の報酬を得ていたとして、減給10分の1を3か月、税務課主事に降格などの処分をされた
処分を避けるために
- 副業を始める前に必ず許可申請を行う
- 「これくらいなら大丈夫」と自己判断しない
- 不明な点は人事担当課に確認する
- 許可条件を遵守する
先進的な自治体の事例

神戸市の取り組み
2017年4月に神戸市が副業に関する規定を独自に設けた先進的な事例があります。神戸市では、地域貢献応援制度を導入し、職員の地域活動を積極的に支援しています。
生駒市の取り組み
生駒市では、職員の地域活動への参加を促進するため、副業の許可基準を明確化し、積極的に許可する姿勢を示しています。
今後の展開
総務省の通知では、判断基準の明文化と公開を各自治体に求めています。今後、多くの自治体が独自の許可基準を策定し、公表することが期待されます。
よくある質問

Q1: すべての地方公務員が副業できるようになったのですか?
A: いいえ。2025年6月の通知は、あくまで「任命権者の許可があれば副業が可能」という枠組みを明確化したものです。無許可での副業は引き続き禁止されています。
Q2: 国家公務員はどうなりますか?
A: 国家公務員は2026年4月から自営兼業の範囲が大幅に拡大される予定です。地方公務員よりやや遅れて改革が進んでいます。

Q3: 副業の収入に上限はありますか?
A: 明確な上限は定められていませんが、各自治体で基準を設ける動きがあります。不動産賃貸の場合は年間500万円未満という基準が一般的です。
Q4: 副業で得た収入の税金はどうなりますか?
A: 副業で得た収入は雑所得または事業所得として確定申告が必要です。年間20万円を超える場合は必ず申告しましょう。
Q5: 許可を得れば何でもできますか?
A: いいえ。基本的な3原則(公務能率の確保、職務の公正の確保、職員の品位の保持)を満たす必要があります。また、利害関係のある企業での勤務や公務の信用を損なう活動は認められません。
Q6: 副業が原因で本業に支障が出たらどうなりますか?
A: 許可が取り消される可能性があります。また、職務専念義務違反として懲戒処分の対象となる場合もあります。
まとめ:地方公務員の副業を正しく理解する

地方公務員の副業は2025年6月の総務省通知により、条件付きで解禁されました。
これは地域人材の不足や職員のキャリア多様化に対応するための重要な改革です。
副業解禁の重要ポイント
- 2025年6月に総務省通知により条件付きで解禁
- あくまで任命権者の許可制(無許可は禁止)
- 基本的な3原則を満たす必要がある
- 労働時間は週8時間以下が目安
- 地域貢献につながる活動は許可されやすい
- 利害関係のある企業での勤務は不可
副業を始める前に
- 所属自治体のガイドラインを確認
- 上司または人事担当課に事前相談
- 正式な許可申請を行う
- 許可条件を遵守する
今後の展開
各自治体が独自の許可基準を策定・公表することで、より透明性の高い運用が期待されます。
また、2026年4月には国家公務員も自営兼業の範囲が拡大される予定です。
副業を通じて、地域社会に貢献し、自らを成長させる機会が広がっています。
しかしこれは単なる”副収入”ではなく、公務員としての責任を果たしながら、地域の担い手として活躍するための制度です。
副業を始めたいと考える地方公務員の皆さんは、まず所属自治体のガイドラインを確認し、しっかりと許可を得るところから始めましょう。
不明な点があれば、遠慮なく人事担当課に相談してください。
