「会計年度任用職員の任期は何年?」「更新は何回まで?」「3年で必ず辞めないといけないの?」こうした疑問を持っている方は多いでしょう。
2024年6月、人事院が「3年目公募」を撤廃する大きな制度変更を発表しました。

これにより、会計年度任用職員の任期と更新のルールが大きく変わりました。
本記事では、会計年度任用職員の任期について、基本的な期間から更新回数の上限、2024年の制度変更、5年ルールとの関係、雇止めの実態まで、初心者でも理解できるよう徹底的に解説します。
会計年度任用職員の任期の基本

任期は最長1年間
会計年度任用職員の任期は、任用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内で任命権者が定めるものとすると各自治体の規則で定められています。
任期の基本
- 原則:最長1年間(4月1日~翌年3月31日)
- 会計年度に合わせた設定
- 年度途中採用の場合:採用日~当該年度の3月31日
従来の一部の非常勤職員(臨時的任用職員)の任期は最長6か月でしたが、それより長い勤続が可能になりました。
「会計年度」とは
会計年度とは、地方自治体の会計処理の単位となる期間のことで、通常は4月1日から翌年3月31日までの1年間を指します。
会計年度任用職員という名称は、この会計年度に基づいて任用される職員であることに由来しています。

年度途中採用の場合
会計年度任用職員の任期が当該会計年度の末日までの期間に満たない場合には、当該会計年度任用職員の勤務実績等を考慮した上で、当該会計年度の範囲内において、その任期を更新することができるとされています。
年度途中採用の例
- 7月1日採用:7月1日~翌年3月31日(約9か月)
- 10月1日採用:10月1日~翌年3月31日(約6か月)
- 1月1日採用:1月1日~3月31日(約3か月)
いずれの場合も、当該年度の3月31日で任期は終了します。
任期の更新(再任用)の仕組み

再任用とは
再任用とは、任期満了後に同じ職に再び任用されることです。
ただし、法的には「新たな職に改めて任用されたもの」と整理されます。
つまり、雇用契約の継続ではなく、毎年新しく採用されるという扱いになります。
毎年が新規採用扱い
任期を更新し、再度任用されることとなったとしても、翌年度のはじめの1か月間は条件付き採用(試用期間)となります。
再任用の特徴
- 毎年新規採用として扱われる
- 再任用でも1か月の試用期間
- 勤続年数は通算されない(法的には)
- ただし、経験は評価される場合がある
再度任用されるということは、能力や成績で一定の評価を受けているはずですが、毎年度試用期間が設けられることで、会計年度任用職員は不安を抱えながら働かなければなりません。
2024年までの更新回数の上限

従来のルール:最長3年間
2024年6月までは、多くの自治体で以下のルールが適用されていました。
従来の更新回数の上限
- 公募によらない再任用:最大2回まで
- 任用を開始した年度を含む連続した3か年度が任用期間の上限となります
- 実質的に最長3年間
勤務成績に応じて、最大2回まで更新ができ、最長3年間働けますという運用が一般的でした。
3年目以降はどうなる?
3回の再任用を終えてから働き続けたい場合には、初回同様に再度求人に応募し、選考を経て採用される必要があります。
3年経過後の選択肢
- 再度公募に応募して選考を受ける
- 他の自治体に応募する
- 民間企業に転職する
- 正規職員試験に挑戦する
更新2回の任期を終えてからも、会計年度任用職員として働きたい場合は、再度求人に応募し、選考試験をクリアする必要があります。


2024年6月の大きな制度変更

「3年目公募」の撤廃
人事院が昨年6月28日に、国の非常勤職員のうち、期間業務職員の採用についての通知文書に、公募に依らない再採用の上限回数を「原則2回までとするよう努めること」としていた取り扱いの制限を削除しました。
制度変更の内容
- 公募によらない再任用の回数上限を撤廃
- 勤務成績が良好なら継続的に再任用可能
- 理論上は定年まで働ける可能性
総務省も対応
この改正を受けて、総務省も同日、「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」から、例示していた国の取り扱いを削除して、「具体の取扱いについては、各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ適切に対処されたい」との通知を出したという経緯があります。
変更の背景
人事院が2024年8月以降に実施した各省庁へのヒアリングの中で、能力や経験のある職員が公務職場から流出しているとの指摘を受けたため、見直すことになりました。
自治体ごとの対応状況

自治体によって異なる上限
2024年6月の制度変更後も、各自治体の対応は分かれています。
主な対応パターン
1. 従来通り3年上限を維持
任期は、年度毎に1年以内となりますが、毎年度人事評価を行い、勤務状況等により2回まで再度の任用(更新)を行う場合があります。この場合、最長3年まで勤務が可能となりますという自治体も依然として存在します。
2. 4年上限に延長
勤務成績が良好な場合は、最大3回まで再任用ができ、最長4年間の勤務を続けることができますと延長した自治体もあります。
3. 上限撤廃
制度変更を受けて、再任用回数の上限を撤廃する自治体が増加しています。
4. 独自の上限設定
会計年度任用職員の継続勤務期間は、任用された日から起算して4年を経過した日の属する年度の末日までの期間の範囲内で任命権者が定める期間を超えることができないなど、独自の上限を設ける自治体もあります。
2025年1月の調査結果
自治労連が2024年10月29日から12月6日にかけて実施した調査(31都道府県の484自治体が回答)によると、約7割の自治体が上限を既になくしていたり、検討を進めているなどの実態が明らかになったとのことです。
全国的に上限撤廃の方向に動いていますが、自治体によって対応が異なるため、必ず確認が必要です。
任期更新の条件

勤務成績が最重要
任期が更新されるかどうかは、主に以下の要素で判断されます。
更新判断の基準
- 勤務成績:最も重要な要素
- 人事評価:多くの自治体で実施
- 業務の必要性:担当業務が継続するか
- 予算:自治体の財政状況
- 出席状況:欠勤や遅刻が多くないか
更新の可否は、業務の必要性、予算の状況、職員の勤務実績などが総合的に考慮され、決定される仕組みです。
更新面談
会計年度任用職員の更新面談は、次年度の雇用継続を決める大切な場面です。
面談では、職員の勤務状況や今後の働き方について話し合いが行われます。

面談で確認されるポイント
- 業務実績
- 出席状況
- 協調性
- 次年度の勤務意向
- 改善点の有無
更新を希望しない場合
退職願が提出され、かつ、任命権者により承認され、退職の発令がなされた場合に退職となります。
自分から更新を希望しない場合は、退職願を提出する必要があります。提出期限は退職を希望する日の30日前までが一般的です。
5年ルール(無期転換ルール)との関係

民間企業の5年ルール
民間企業では、労働契約法に基づき、有期雇用労働者が5年以上働けば、労働者からの申し出により無期労働契約に切り替えられる「無期転換ルール」があります。
会計年度任用職員には適用されない
会計年度任用職員は立場上、地方公務員です。
したがって、労働契約法の「5年以上働けば、労働者からの申し出により無期限労働契約に切り替えられる」いわゆる5年ルールは適用されません。

会計年度任用職員は地方公務員の身分であるため、労働契約法が適用されず、無期転換ルールも適用されません。
そのため、任用期間が通算5年以上になったとしても、任期の定めのない正規職員に転換されることはありません。
正規職員になる方法
会計年度任用職員が正規職員になるためには、学卒者や民間経験者向けの競争試験を受験し、合格する必要があります。

雇止めの実態

雇止めとは
契約期間中に職を失う「解雇」と、契約満了後に更新されない「雇止め」では、法的な扱いが異なります。

雇止めの定義
- 任期満了時に更新されないこと
- 法的には「任期満了による退職」
- 解雇とは異なる扱い
雇止めの理由
更新されない場合は、業務の縮小、予算の制約、勤務度の問題が理由となることがあります。
主な雇止めの理由
- 業務の必要性がなくなった
- 予算が削減された
- 勤務成績が不良
- 出席状況が悪い
- 組織改編により職が廃止
雇止めされたときの対処法
会計年度任用職員が契約更新をしなかった場合、失業保険を受け取れるかどうかは、退職の理由や雇用期間によって異なります。
失業保険の受給
- 契約満了後、自治体の判断で更新されなかった場合は「特定理由離職者」として扱われ、すぐに失業保険を受け取れる可能性があります
- 本人が更新を希望せずに退職した場合は「自己都合退職」となり、一定期間の待機が必要です
長期勤務の可能性

実際の長期勤務事例
制度変更前から、自治体によっては長期勤務を認めているケースがありました。
長期勤務の実例
- 10年以上勤務している会計年度任用職員
- 20年以上同じ職場で働いている事例
- 定年まで働いた非正規職員
誰一人として任用終了されず全員定年まで働けるようにしているという自治体もあります。
2024年の制度変更で可能性拡大
2024年6月の「3年目公募」撤廃により、長期勤務の可能性が大きく広がりました。
制度変更後の展望
- 勤務成績が良好なら継続雇用の可能性
- 理論上は定年まで働ける
- ただし、1年契約は継続
- 毎年の評価と更新判断は継続
よくある質問

Q1. 任期は必ず1年間ですか?
A1. 任期は、任用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内で設定されます。年度途中採用の場合は1年未満となります。
Q2. 更新は何回まで可能ですか?
A2. 自治体によって異なります。従来は最大2回(3年間)でしたが、2024年6月の制度変更により上限を撤廃する自治体が増えています。お住まいの自治体に確認してください。
Q3. 5年働けば正規職員になれますか?
A3. なりません。民間企業の5年ルール(無期転換ルール)は会計年度任用職員には適用されません。正規職員になるには競争試験に合格する必要があります。
Q4. 勤務成績が良好なら必ず更新されますか?
A4. 必ずとは限りません。勤務成績は重要な要素ですが、業務の必要性や予算状況も影響します。ただし、正当な理由なく更新を拒否された場合は不当な可能性があります。
Q5. 更新されなかった場合、失業保険はもらえますか?
A5. はい、もらえます。自治体の判断で更新されなかった場合は「特定理由離職者」として扱われ、給付制限なしで受給できる可能性が高いです。

Q6. 任期途中で辞めることはできますか?
A6. 可能です。退職願を退職を希望する日の30日前までに任命権者に提出する必要があります。

まとめ:任期は変化の過渡期

会計年度任用職員の任期について、重要なポイントをまとめます。
基本的な任期
- 原則:最長1年間(4月1日~翌年3月31日)
- 会計年度に合わせた設定
- 年度途中採用は当該年度末まで
- 従来の最長6か月から延長
更新(再任用)の仕組み
- 毎年新規採用として扱われる
- 再任用でも1か月の試用期間
- 勤続年数は法的には通算されない
- 「新たな職に改めて任用」という整理
2024年までのルール
- 公募によらない再任用は最大2回
- 実質的に最長3年間
- 3年目以降は再度公募に応募が必要
- 多くの自治体で採用されていた
2024年6月の制度変更
- 人事院が「3年目公募」を撤廃
- 公募によらない再任用の回数上限撤廃
- 総務省も対応を変更
- ただし自治体の判断に委ねられる
自治体ごとの対応
- 3年上限維持の自治体も存在
- 4年上限に延長した自治体
- 上限撤廃した自治体
- 約7割が上限撤廃または検討中(2025年1月調査)
更新の条件
- 勤務成績が最重要
- 人事評価の実施
- 業務の必要性
- 予算状況
- 更新面談での確認
5年ルールとの関係
- 無期転換ルールは適用されない
- 5年以上働いても正規職員にはならない
- 正規職員になるには競争試験が必要
雇止めについて
- 任期満了による退職
- 解雇とは異なる扱い
- 業務縮小、予算制約、勤務不良が主な理由
- 特定理由離職者として失業保険受給可能
今後の展望
2024年の制度変更により、会計年度任用職員の任期と更新のあり方は大きな転換期を迎えています。
上限撤廃により長期勤務の可能性が広がった一方、1年契約という基本構造は変わっていません。
自治体によって対応が異なるため、お住まいの自治体の最新情報を確認することが重要です。
会計年度任用職員の任期は、2024年の制度変更により大きく変わりつつあります。
最新の情報を確認しながら、自分のキャリアプランを考えていきましょう。
