令和6年1月15日のニュースで47都道府県が2023年度に実施した職員採用試験で、採用予定数を満たす合格者を全ての職種区分で確保できたのは大阪府と兵庫県にとどまり、45都道府県で採用予定数割れが生じていたとの報道がありました。
このニュースを見た方で、公務員の志望の方は「これなら簡単に公務員になれるのでは?」と思うかもしれません。
数年前から、私が勤めている市役所でもそうですが、特に田舎の市役所では、採用予定数割れが生じており、1回の採用試験では人が集まらず、2次募集、3次募集をして、通年で職員採用をしているような自治体があります。
しかし、だからと言って、全ての職種が採用予定数割れをしているわけではありませんし、採用予定数割れしている職種で公務員になるべきかと言うと、必ずしもそうとは言えないので、それらの理由について詳しくご説明します。
事務職員の公務員は十分足りている
市役所職員のイメージと言えば、窓口業務や事務作業をする事務職員だと思います。
事務職員が採用予定数割れをしていたら、チャンスだと思いますが、残念ながら、事務職員に関しては、いまだに人気が高いため、採用予定数を割ることはありません。
むしろ、事務職員に関しては、昔と比べて採用されにくくなっています。
なぜなら、どこの自治体も人件費を抑えるために職員数の削減を行っているからです。
新規採用をする場合の採用予定数は、退職者数と同じ人数か、それ以下の人数しか採用しません。
団塊世代の大量退職も終わり、退職者数が大幅に減ったため、それに伴い、新規採用者数も減っています。
そのため、事務職員に関しては、人気に対して、採用枠が少なくなっているため、採用されにくいです。
「国から県、県から市町村に権限移譲がされている中、新規採用者数を減らして大丈夫なの?」と疑問になる方がいると思いますが、正規職員を雇用する代わりに会計年度任用職員を増やして対応しています。
少し古いデータですが、平成28年度調査時の臨時・非常勤職員数64.3万人でしたが、令和2年度調査では、職員数は69.4万人と、5.1万人も増加しています。
ちなみに、今まで正規職員がしていた仕事をパート・アルバイトの職員が担うようになったため、同一労働同一賃金の考えから臨時・非常勤職員の待遇を良くしようと、会計年度任用職員制度に変更し、最近でも会計年度任用職員のボーナスを上げる等、雇用条件の改善が行われています。
技術職・専門職の公務員が圧倒的に不足している
事務職員に関しては、募集する人も多く、田舎の自治体でも十分な人数を確保することができますが、技術職・専門職の公務員は全く人手が足りないほど、人材不足が発生しています。
技術職・専門職とは、土木、建築、電気、情報、福祉に関する資格や専門知識を持っている方のことです。
技術職・専門職は、それぞれの専門職ごとに採用枠を用意して募集しますが、私が勤めているような田舎の市役所では、応募者が1人来るか来ないくらいです。
せっかく内定を出しても本当に来てくれるかどうか、わからないですし、さらに、現在勤めている人が急に辞めることも多いため、技術職・専門職の公務員は慢性的に人手不足です。
技術職・専門職は民間企業の方が待遇が良い
「公務員の方が給料も待遇も良いし、何よりクビになる心配もなく、安定しているのに、なぜ公務員にならないの?」と公務員志望の方は疑問に思うかもしれません。
ただ、その理由は非常にシンプルで公務員として働くよりも民間企業で働いた方が待遇が良いからです。
技術職・専門職が足りないのは、公務員だけではありません。
民間企業においても技術職・専門職は足りていないのが現状です。
民間企業では、仕事の能力や業績によって給料が変わりますし、人材が足りていないなら、尚のこと高い給料を出して雇おうと努力します。
しかし、公務員の場合は、仕事の能力や業績に依らず、勤務年数によって給料が決まります。
そのため、仕事ができる能力の高い人ほど、給料も待遇も良い民間企業に就職することになります。
優秀な方の中にも「地域に貢献したい!」と志を持って市役所に就職する方も確かにいます。
しかし、市役所幹部の大半は事務職員です。
技術職・専門職は人数に対して幹部の枠が少ないため出世しにくく、また、自分よりも能力の低い事務職員が上司になることも、しばしばあるため、やる気が失せてしまい、民間企業に転職する人も多々います。
技術職・専門職は中途採用の方が有利
技術職・専門職の方が新卒で公務員になるのは、非常に勿体ないです。
なぜなら、上記のとおり、民間企業に就職した方が給料も待遇も良いのはもちろんですが、新卒で入った場合、そもそも人手不足のため、教育してもらえないからです。
先輩の背中を見て仕事を覚えようとしても、優秀な人材は、ほとんど民間企業に流れるため、良いところを盗むのも困難です。
また、技術職・専門職の方は、市役所の仕事でも民間企業の方と仕事をする機会が多く、民間企業の方と仕事をする際には、民間企業に勤めた経験があった方が箔が付き、信頼されるため、仕事が非常にしやすいです。
日本の場合、労働市場はとにかく新卒に有利ですが、技術職・専門職であれば、中途採用からでも、簡単に公務員になることができるため、公務員志望の方でも、一旦、民間企業を経由して公務員になった方が、何かと有利です。
ちなみに、私が勤めている市役所の場合、技術職・専門職の職場で出世する人は、ほぼ100%民間経験のある人達ばかりです。
まとめ
公務員の採用予定数割れがニュースで報道されましたが、あくまで人材が足りていないのは技術職・専門職です。
事務職員として市役所に就職しようと考えている方は、全く関係がないので、採用試験日に向けて油断せずに勉強を頑張りましょう。
そして、技術職・専門職で公務員になろうと考えている方は、ワークライフバランスは公務員の方が休暇が取りやすい分、有利ですが、給料面・自己成長においては、民間企業の方が圧倒的に良いはずです。
市役所を選んでくれると、現役公務員としては、非常に嬉しいですが、それぞれの人生なので、市役所と民間企業と、どちらが良いか、十分比較検討して就職先を決めてください。