地方公務員法・地方自治法の改正により、全国すべての市町村で令和2年4月1日から「会計年度任用職員制度」が始まりました。
この会計年度任用職員制度は同一労働同一賃金の観点から、正規職員との格差是正を目指して作られた制度ですが、ネットなどで見ていると、
「以前と変わらず待遇がひどい」
「会計年度任用職員になってからひどい待遇を受けるようになった」
などという声も挙がっています。
では、実際のところはどうなんでしょうか?会計年度任用職員はひどい待遇を受けているのでしょうか?気になるところだと思います。
そこで、このページでは
・嘱託や臨時の非常勤職員のときと比べて待遇がひどくなったのか?
などについて、ご紹介します。
会計年度任用職員制度になって多くの非正規公務員がクビになった
会計年度任用職員制度に変わったことで多くの非正規公務員がクビになりました。
その理由は、単純に予算がないからです。
会計年度任用職員制度に変わってボーナスや退職手当が出るようになりました。
その結果、会計年度任用職員一人にかかる歳出が増えたことにより、雇える人数が減ってしまいました。
例えば、予算が1,000万円ある場合、今までは1人につき年間200万円だったので、5人雇えていました。
200万円×5人=1,000万円(予算内)
しかし、1人につき年間220万円に変わったことで、
220万円×5人=1,100万円(100万円オーバー)
220万円×4人=880万円(予算内)
となり、4人しか雇えなくなったため、1人クビにせざるを得なくなりなりました。
地方自治体の多くは自主財源だけでは足りないため、国から地方交付税をもらって何とか運営しています。
会計年度任用職員になったことにより増えた歳出分を地方交付税で補填してくれていれば、会計年度任用職員をクビにせずに済みましたが、地方交付税が変わらないため、臨時的任用職員から会計年度任用職員に変わったときに、多くの非正規職員の方がクビになってしまいました。
月々の給料は減額された
会計年度任用職員になって、毎年6月と12月にボーナスが支給されるようになりました。
https://omotyatyousatai.com/kaikenendbounus/
普通に考えるとボーナス分が単純に上乗せされるものだと思いますが、予算の関係上、今までの給料に加えてボーナスを支給すると、財政がパンクしてしまうため、調整が入りました。
その結果、嘱託や臨時の非常勤職員のときと比べて会計年度任用職員に変わったことにより、年収で考えると微増していますが、毎月の給料額は減額されています。
例えば地方の自治体だと、
嘱託や臨時の非常勤職員の給料
(毎月の給料)16万円✕12月=(年収)192万円
会計年度任用職員の給料
(毎月の給料)14万円✕12月+(ボーナス)13万円✕2回=(年収)194万円
と言ったように月額約16万円だったものが、月額約14万円と約2万円も毎月の給料が減額され、その減額分をボーナスで補填されているような状態になっています。
年収が増えたとは言え、会計年度任用職員に変わったことにより、もともとの給料でも毎月なんとかやりくりしていたものを、ボーナスまで待たなければならなくなった分、やりくりが大変になったため、ひどい待遇になったと言う人もいます。
何年働いても給料は変わらない
会計年度任用職員制度に変わって、正規職員と同様に昇給制度は設けられました。
しかし、それが適用されるのは、フルタイム会計年度任用職員だけです。
フルタイムの嘱託職員で働いていた人も会計年度任用職員制度に変わって、大半の非正規職員はパートタイム会計年度任用職員になったため、昇給はありません。
自治体によっては、パートタイム会計年度任用職員でも昇給できるように条例・規則で定めているところもありますが、条件として「勤務成績に応じて」とあるため、実際に昇給しているかどうかは謎ですし、昇給していても1度に1号給のみで、上限も定められていることから、昇給も微々たるものです。
会計年度任用職員の場合、5年目のベテランと右も左も分からない新人が全く同じ給料のため、ひどい待遇と言えます。
毎年クビになる不安がある
会計年度任用職員は任期が最長でも4月1日から翌年の3月31日までの1年間しかありません。
つまり、事実上「毎年クビ」と言っても過言ではありません。
もちろん勤務成績が良好な場合は任用期間が更新され、年度を超えて働くことができます。
ただし、更新回数は2回までと上限が決まっているため、1度会計年度任用職員と雇用されると最初の1年間+更新2回で合計3年間までと決まっています。
更新が上限に達した後も、最初と同じように公募に応募し、面接を通ることで、4年目、5年目と働き続けることは可能ですが、民間企業と違い、労働契約法は適用されないため、「5年ルール」「無期転換ルール」は存在せず、何年働こうと、毎年3月31日で任期は満了するため、常にクビになる危険性はあります。
民間企業と比べて「5年ルール」「無期転換ルール」が適用されず、不安定な雇用状態が継続されるのは、ひどい状況と言えます。
正規職員並みの業務量と責任を負わせられる場合もある
会計年度任用職員と言うことで、残業もなく、簡単な事務作業だけを行う場合もありますが、職場によっては、正規職員並みの業務量と責任を負わせられる場合もあります。
これは実際に働く職場によって異なるため、一概には言えませんが、特に福祉部門の仕事は会計年度任用職員とは言え、大量の業務と重たい責任を背負わされる傾向にあります。
例えば生活保護の認定や生活保護受給者の生活指導などを行うケースワーカー業務などは正規職員と全く同じ仕事をするのに、給料は全く違います。
このように同一労働同一賃金とは、かけ離れたひどい実態が、そのまま放置されているのも事実です。
以前と比べたら待遇は改善された
上記のとおり、会計年度任用職員の待遇は、今なお、ひどい状況にあるとは言え、だいぶ改善はされています。
具体例を挙げますと、
毎月の給料は減額しましたが、ボーナスは支給されるようになったため、年収は増えています。
給料を減額した分、1日の労働時間は減りました。
年次有給休暇も毎月1回使わなければいけませんでしたが、年間を通して使えるようになり、また翌年へ繰り越すことも可能になりました。
会計年度任用職員の募集方法も必ずハローワークに求人を出し、ホームページに求人を載せるなど、広く公募するようになったため、公平性も高まりました。
まだまだ改善の余地は多分にありますが、このように、会計年度任用職員の待遇はひどいと言っても、以前と比べると改善はされています。
まとめ
上記のとおり会計年度任用職員は、独身の人や若い人がずっと働き続けるには適さない、ひどい労働条件と言えます。
しかし、以前の制度と比べると少しずつではありますが、改善されてはきています。
また、主婦や主夫の方など、パート・アルバイトとして働く、と考えた場合、例えばコンビニやスーパーで働くのと比較すると、ひどい待遇とは言えず、むしろ良い待遇と言えます。
だからこそ、会計年度任用職員を応募する人が多く、クビになった人が裁判を起こして再度雇用してもらおうと躍起になっているわけです。
以上のことから、一生の仕事として会計年度任用職員はオススメできませんが、パート・アルバイトとして働くのであれば、オススメです。
その他、会計年度任用職員のメリット・デメリットについては、下記のページを御覧ください。