「市役所に就職したいが、高卒でも採用されるの?」「学歴がないと出世できない?」「大学を中退したが市役所は受けられる?」「Fラン大学と有名大学では採用に差がある?」
市役所(地方自治体)への就職を考えるとき、「学歴がどこまで重要か」という疑問を持つ方は非常に多いです。「公務員は学歴社会」というイメージを持つ方がいる一方で、「採用試験に受かれば学歴は関係ない」という情報も飛び交っており、実態が分かりにくい状況です。
本記事では、市役所採用における学歴の扱い・採用試験の区分・給与への影響・昇進との関係・学歴が問われない採用枠まで、受験を検討している方が知りたい情報をデータと具体例をもとに徹底解説します。
市役所採用における学歴の基本的な位置づけ

採用試験の「受験資格」としての学歴
市役所の採用試験には、試験区分(上級・中級・初級など)ごとに受験資格が設けられており、これが学歴と密接に関連しています。

一般的な採用試験区分と学歴の対応関係は以下のとおりです。
| 試験区分 | 一般的な受験資格 | 通称 |
|---|---|---|
| 上級(Ⅰ類・A種) | 大学卒業(見込み)程度 ※年齢要件を満たせば学歴不問の自治体も | 大卒程度 |
| 中級(Ⅱ類・B種) | 短大・専門学校卒業程度 | 短大卒程度 |
| 初級(Ⅲ類・C種) | 高校卒業(見込み)程度 | 高卒程度 |
| 社会人経験者採用 | 職務経験〇年以上(学歴不問のケースが多い) | 経験者採用 |
重要なポイント: 「大卒程度」とは「大学卒業に相当する知識・能力を問う試験」という意味であり、必ずしも大学を卒業していないと受験できないわけではありません。多くの自治体では、上級試験についても「年齢要件(例:22歳〜29歳)を満たす者」であれば学歴に関わらず受験できる設計になっています。
「学歴不問」が広がっている背景
近年、多くの地方自治体で採用試験における学歴要件を撤廃または緩和する動きが加速しています。
総務省「地方公共団体の採用試験改革に関する調査(2022年度)」によると、採用試験の受験資格から「学歴要件を撤廃した」または「年齢のみを要件とした」自治体は全体の約60%以上に上り、特に大都市圏の政令指定都市・中核市を中心に「学歴不問・年齢重視」の選考に移行しています。
この動きの背景には以下のような理由があります。
- 少子化による受験者数の減少→優秀な人材を学歴で絞り込む必要性の低下
- 民間企業での「学歴不問採用」の普及にあわせた行政改革
- 「試験の点数より人物重視」という採用方針への転換
- 多様なバックグラウンドを持つ人材の行政への参画促進
学歴別:市役所採用の現実

高卒で市役所の正規職員になれる?
なれます。 初級(高卒程度)の採用試験に合格することで、高校卒業者でも市役所の正規職員として採用されます。


高卒採用の主なポイント:
- 初級試験は高校卒業程度の学力を問う内容(数学・国語・社会・英語など)
- 受験年齢の上限は多くの自治体で「17〜20歳程度」に設定(自治体による)
- 採用後は大卒採用者と同じ職場で働くが、初任給・昇給スピードに差がある
高卒初任給の目安:
- 高卒採用:月給約17〜19万円(初任給)
- 大卒採用:月給約19〜22万円(初任給)
この差は、自治体の給与条例に基づく「学歴別の号給設定」から生じます。入庁時点での差は数万円ですが、同じ年数経過後も大卒と高卒の給与格差は一定程度継続します。
高卒で「上級(大卒程度)」試験は受けられる?
これが最も重要なポイントです。多くの自治体では、年齢要件を満たしていれば高卒でも上級試験に受験できます。

例えば「上級・年齢要件22〜29歳」と設定されている自治体では、高卒後数年経過して22歳以上になれば、大卒者と同じ上級試験を受験することができます。
高卒で上級試験に合格した場合のメリット:
- 大卒採用と同じ初任給・給与体系が適用される(初任給調整あり)
- 昇進・昇給スピードが高卒採用枠より有利になる
- 上級職として採用されることで、将来のキャリアパスが広がる
実際の事例: 高校卒業後、働きながら独学で公務員試験を勉強し、22〜24歳で上級試験に合格して市役所に入庁したケースは全国に多くあります。「高卒だから大卒程度の試験は受けられない」は誤りであり、年齢要件さえ満たせば挑戦できます。
中卒・大学中退でも市役所に就職できる?
初級(高卒程度)試験の年齢要件を満たしていれば、中卒・大学中退でも受験できる自治体があります。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 初級試験の受験年齢上限(多くは20歳前後) を超えている場合、受験資格を失う可能性がある
- 大学中退の場合、「大学に在籍していた年数」が初任給計算に一部反映される自治体もある
- 社会人経験者採用枠(年齢上限が高め・学歴不問) を活用する選択肢もある
大学中退後に改めて社会人として経験を積み、経験者採用枠で市役所に挑戦するルートも有効です。

専門学校・短大卒の場合
専門学校・短大卒業者は「中級(短大卒程度)」試験の対象ですが、年齢要件を満たせば上級試験への挑戦も可能です。
専門学校で取得した資格(社会福祉士・保育士・栄養士・介護福祉士など)は、専門職採用枠での活用も視野に入ります。

採用後の学歴の影響:給与・昇進・昇格

学歴による給与の差(採用区分の違い)
採用後の給与格差は、採用試験の「区分(上級・中級・初級)」によって生じます。同じ学歴でも上級試験で採用されれば上級採用の給与が適用されます。

参考:自治体の給料表の仕組み 地方公務員の給料は「行政職給料表」に基づき、「級」(役職段階)と「号給」(勤続段階)で決まります。採用時の号給は学歴・採用区分・職務経験によって設定されます。

| 採用区分 | 採用時の級・号給の目安 | 初任給の目安 |
|---|---|---|
| 上級(大卒程度) | 1級25号給前後 | 約19〜22万円 |
| 中級(短大卒程度) | 1級15号給前後 | 約18〜19万円 |
| 初級(高卒程度) | 1級5号給前後 | 約17〜19万円 |
この差は毎年の昇給(号給の上昇)で徐々に縮小しますが、完全に消えることはなく、定年時の退職手当額にも影響します。

昇進・昇格に学歴は関係するか
採用後の昇進・昇格において、学歴そのものが直接的な要件になることはほとんどありません。 係長・課長・部長などへの昇進は、勤務評定・昇任試験・経験年数が主な要素です。

ただし、間接的な影響として以下のことが言われています。
① 上級採用者は昇進が早い傾向 上級採用者(大卒程度試験合格者)は、初級採用者と比べて昇進スピードが速い傾向があります。これは学歴の差というよりも「採用区分・初任配置・業務の難易度」の差によるものです。
② 出身大学はほぼ関係しない 民間大企業では「東大・早慶など有名大学卒業者が幹部候補」という傾向がありますが、市役所では出身大学の知名度・ブランドが採用・昇進に直接影響することはほぼありません。
採用試験は筆記・面接の点数で決まるため、有名大学出身者と地方大学出身者が同じ条件で競います。入庁後も、出身大学より「仕事の実績・人間関係・評価」が昇進を左右します。


現実のキャリアパスを学歴別に比較
大卒上級採用の場合(標準的なキャリア例):
- 入庁1〜5年:主事(担当者)
- 5〜10年:主任・主幹
- 10〜15年:係長(昇任試験があれば受験)
- 15〜20年:課長補佐・副課長
- 20〜30年:課長・部長
高卒初級採用の場合(標準的なキャリア例):
- 入庁1〜7年:主事(担当者)
- 7〜15年:主任・主幹
- 15〜20年:係長(昇任試験)
- 20〜30年:課長補佐・副課長
高卒採用でも係長・課長に昇進することは十分可能です。ただし、大卒上級採用と比べると昇進に数年の遅れが生じることが多いのが実態です。
学歴コンプレックスを持つ方へ:市役所の採用は「実力主義」に近づいている

筆記試験廃止・SPI型選考の広がり
近年、多くの自治体で従来の教養試験・専門試験を廃止し、民間企業と同じSPI(適性検査)や「エントリーシート+面接」重視の選考に移行しています。
この変化は、学歴・学校名よりも「コミュニケーション能力・人物・志望動機・論理的思考力」を評価する採用へのシフトを意味します。
横浜市・川崎市・埼玉県さいたま市など大規模自治体が相次いで筆記試験を廃止し、SPI+複数回の面接による選考に切り替えた事例は、公務員採用試験のあり方を大きく変えています。
学歴よりも重視される要素
市役所採用において、実際に合否を分けるのは以下の要素です。
① 志望動機の説得力 「なぜこの市か」「どんな地域課題に取り組みたいか」が明確かどうか。学歴とは無関係です。

② コミュニケーション能力・表現力 面接での受け答え・集団討論での振る舞い。有名大学出身でも伝える力が乏しければ不合格になります。
③ 試験対策の質と量 教養試験・専門試験がある場合は、学歴より「どれだけ勉強したか」が直接的に合否に影響します。同じ高校卒業者でも、6か月〜1年しっかり準備した人は、対策不足の大卒者より高得点を取ることができます。

④ 人物・誠実さ・地域への関心 採用担当者が最終的に見ているのは「この人と一緒に働きたいか」「市民の前に出せる人物か」です。
学歴別・状況別:市役所採用に向けた戦略

高卒・大学中退で市役所を目指す方へ
推奨戦略:
- 初級試験(高卒程度)で早期に合格を目指す(受験年齢制限があるため早めに行動)
- 22歳以上で上級試験(大卒程度)にも挑戦する(年齢要件のみで受験可能な自治体を探す)
- 社会人経験者採用枠(経験者採用)を活用する(職務経験を積んでから挑戦)
- 専門資格を活かした専門職採用を目指す(保育士・社会福祉士など)
社会人経験者・転職者で学歴に不安がある方へ
社会人経験者採用枠は、学歴より「職務経験・実績・スキル」を重視する選考です。民間企業での実務経験(5〜10年以上)があれば、学歴に関わらず挑戦できます。
特に近年需要が高いIT・DX・法律・会計・福祉の専門職枠では、実務経験と資格が強力な武器になります。
名門大学でなくても合格できる?
できます。 市役所の採用試験は、出身大学の偏差値・ブランドと合否はほぼ無関係です。
重要なのは「試験本番で何点取れるか」「面接でどれだけ自分を表現できるか」です。実際に市役所職員の出身大学は非常に多様であり、地元の国公立大学・私立大学・短大・専門学校・地方大学出身者が多数活躍しています。
ある中核市の人事担当者の言葉として、採用説明会でよく語られるのは「私たちは学校名を見ていない。どんな人物で、どんな思いでこの市で働きたいのかだけを見ている」というメッセージです。
よくある質問(FAQ)

Q. 高卒で受験できる市役所の試験と大卒で受験できる試験、どちらが難しい?
A. 試験の難易度は上級>中級>初級の順です。高卒者が初級試験を受ける場合、試験範囲・難易度は大卒程度の上級試験より易しく設定されています。ただし、大都市の初級試験は倍率が高くなる場合があります。高卒者が上級試験(年齢要件あり)に挑戦する場合、試験内容は大卒者と同じ水準となります。

Q. 採用担当者は応募者の学歴(大学名)を知ることができる?
A. 採用試験ではエントリーシート・履歴書に大学名・学歴を記載する欄があるため、面接担当者が学歴を把握することは一般的にあります。ただし、それが合否に直接影響するかどうかは自治体の方針次第です。筆記試験重視の自治体では試験の点数が主要な基準となり、面接重視の自治体では人物評価が中心になります。「有名大学だから有利」という絶対的な優位性はないと考えてよいでしょう。
Q. 夜間大学・通信制大学・放送大学の卒業でも「大卒」として扱われる?
A. 大学を卒業していれば、夜間・通信制・放送大学を問わず「大卒」として扱われます。上級(大卒程度)試験の受験資格を満たし、初任給も大卒区分が適用されます。働きながら学んで大卒資格を取得する方法は、高卒で入庁後に活用するキャリアアップ手段としても有効です。
Q. 市役所に入庁してから大学に通うことはできる?
A. 可能です。市役所職員として働きながら夜間大学・通信制大学・放送大学に通うことは認められています。大学を卒業した場合、「在職中に大学を卒業した」として初任給の再調整(昇格)が行われる自治体もあります。また、大卒資格を得ることでキャリアの選択肢が広がります。ただし、勤務時間中に授業を受けることは基本的に認められていません。
まとめ:市役所採用は学歴より「試験対策と人物評価」

本記事の重要ポイントをまとめます。
- 市役所の採用試験には上級・中級・初級の区分があり、高卒でも初級試験または年齢要件を満たした上級試験に受験できる
- 学歴要件を撤廃した自治体は全体の約60%以上。「大学を卒業していないと受けられない」という認識は過去のもの
- 採用後の給与(初任給)は採用区分によって差があるが、出身大学の知名度は影響しない
- 昇進・昇格は勤務評定・昇任試験・実績が主要因。学歴より「仕事ぶり」が問われる
- 近年はSPI・面接重視型選考が広がり、学歴よりコミュニケーション能力・志望動機が重視される
- 高卒・中卒・大学中退でも初級試験・年齢要件を満たした上級試験・経験者採用の複数ルートで挑戦できる
- 有名大学出身でも対策不足では落ち、地方高卒でも十分な準備があれば合格できるのが市役所採用試験の特徴
「学歴があるから受かる」でも「学歴がないから受からない」でもなく、「どれだけ準備したか・どれだけ伝えられるか」 が市役所採用試験の本質です。学歴に関係なく、正しい戦略と努力で市役所への扉は開かれています。
