「会社を辞めたら健康保険はどうなるの?」「市役所で国保に入る手続きって何が必要?」「保険料が高すぎて払えない場合はどうすればいい?」
退職・転職・引越し・離婚など、人生の転換期には健康保険の手続きが必ず発生します。しかし「どこで・何を・いつまでに」やるべきかが分からず、手続きが遅れてしまうケースは非常に多いです。
本記事では、市役所で取り扱う国民健康保険(国保)について、加入・脱退・保険料・減免制度まで、初心者でも迷わないよう網羅的に解説します。
市役所で扱う健康保険とは?国民健康保険(国保)の基本

日本の健康保険制度の全体像
日本は「国民皆保険制度」を採用しており、すべての国民がいずれかの公的医療保険に加入することが義務づけられています。大きく分けると以下の2種類になります。
| 種類 | 対象者 | 手続き窓口 |
|---|---|---|
| 職域保険(社会保険) | 会社員・公務員・その扶養家族 | 勤務先・健康保険組合 |
| 地域保険(国民健康保険) | 自営業者・フリーランス・無職・退職者など | 市区町村の役所(市役所) |
市役所で手続きする健康保険とは、この国民健康保険(国保)のことです。職域保険(会社の健康保険・共済組合など)に加入していない人が対象となります。
国民健康保険の主な給付内容
国民健康保険に加入することで、以下の給付を受けることができます。
- 療養の給付: 病院・診療所での医療費が一定の自己負担割合(原則3割)で済む
- 高額療養費制度: 1か月の医療費が上限額を超えた場合、超過分が払い戻される
- 出産育児一時金: 1児につき50万円(産科医療補償制度加入医療機関での出産の場合)
- 葬祭費: 被保険者が死亡した際に一定額を給付(自治体により異なる)
- 傷病手当金: 一部の自治体・組合では支給される場合あり(全国一律ではない)
市役所での国民健康保険の加入手続き

国保への加入が必要なタイミング
次のような状況になったとき、14日以内に市役所で国保の加入手続きを行う必要があります。
- 会社を退職した(社会保険の資格を喪失した)
- 家族の扶養から外れた(収入増などにより)
- 他の市区町村から転入した
- 外国から日本に転入した(3か月以上在留する方)
- 子どもが生まれた(国保世帯の場合)
重要: 加入は「任意」ではありません。社会保険を喪失した日から自動的に国保の加入義務が発生します。手続きが遅れても、義務発生日(資格喪失日)に遡って保険料が請求されます。
加入に必要な書類
市役所の国民健康保険担当窓口(多くは市民課・保険年金課など)に以下の書類を持参してください。
【共通で必要なもの】
- 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
- マイナンバーが確認できるもの(マイナンバーカード、または通知カード+身分証)
【退職による加入の場合(追加で必要)】
- 健康保険資格喪失証明書(退職した会社から発行してもらう)
- または、退職日が明記された離職票・退職証明書
【出生による加入の場合(追加で必要)】
- 母子健康手帳(出生届が済んでいれば不要な自治体もあり)
ポイント: 「健康保険資格喪失証明書」は退職後に会社から郵送されますが、発行が遅い場合もあります。急ぐ場合は会社の総務・人事部門に早めに依頼しましょう。
加入手続きの流れ
- 退職・資格喪失日を確認する(保険証に記載の有効期限か、会社から通知)
- 書類を揃える(資格喪失証明書など)
- 市役所の保険年金課・市民課の窓口へ持参
- 国保加入申請書を記入・提出
- 後日、国保保険証が郵送または窓口交付される(即日交付の自治体もあり)
国民健康保険の脱退(喪失)手続き

脱退が必要なタイミング
以下の状況では、14日以内に市役所で脱退手続きを行う必要があります。
- 就職して会社の社会保険に加入した
- 家族の社会保険の扶養に入った
- 他の市区町村へ転出した
- 後期高齢者医療制度に移行した(75歳到達時)
注意: 就職した日・扶養に入った日から国保の資格は自動的に失われますが、喪失手続きをしないと保険料が二重に請求されることがあります。新しい社会保険証が届いたら、速やかに市役所で脱退手続きを行いましょう。
脱退に必要な書類
- 国民健康保険証(返却)
- 新しく加入した健康保険の保険証(社会保険証・組合保険証など)
- 本人確認書類
- マイナンバーが確認できるもの
国民健康保険料の計算方法と目安

保険料はどうやって決まる?
国民健康保険料(税)は、自治体ごとに設定される保険料率によって異なり、主に以下の要素で計算されます。
| 計算要素 | 内容 |
|---|---|
| 所得割 | 前年の所得(収入-必要経費-基礎控除)に保険料率をかけた金額 |
| 均等割 | 世帯内の国保加入者1人あたりの定額 |
| 平等割 | 1世帯あたりの定額(採用していない自治体もあり) |
| 資産割 | 固定資産税額に保険料率をかけた金額(採用していない自治体が多い) |
計算式のイメージ:
国保保険料 = 所得割 + 均等割(+平等割)
保険料の具体的な目安(試算例)
以下はあくまでも目安です。実際の金額は居住する自治体の料率によって大きく異なります。
【例】東京都23区在住・単身・前年の所得200万円の場合
- 医療分:約22万円前後
- 支援金分:約7万円前後
- 介護分(40〜64歳の場合):約6万円前後
- 合計:年間約29〜35万円前後(月換算で約2.5〜3万円程度)
自治体によって保険料率は大きく異なります。例えば、同じ所得でも自治体によって年間数万円〜10万円以上の差が生じることがあります。正確な金額は市役所の窓口か、自治体ホームページの保険料試算ツールで確認してください。
保険料の上限額
国民健康保険料には上限額(賦課限度額)が設定されています。2024年度は医療分・支援金分・介護分を合わせて年間106万円が上限です(厚生労働省の告示に基づき毎年改定)。
保険料が払えないときの減免・猶予制度

低所得者向け「均等割・平等割の軽減制度」
世帯の前年所得が一定以下の場合、均等割・平等割が自動的に2割・5割・7割軽減されます。申請不要で適用される場合がほとんどですが、申告が必要な場合もあるため、確認しておきましょう。
| 軽減割合 | 世帯の前年所得の目安(2024年度・参考値) |
|---|---|
| 7割軽減 | 43万円以下(+被保険者数×29万円) |
| 5割軽減 | 43万円+(被保険者数×29万5千円)以下 |
| 2割軽減 | 43万円+(被保険者数×54万5千円)以下 |
退職・失業による「非自発的失業者の軽減制度」
会社の倒産・解雇・雇い止めなど、自分の都合によらない理由(非自発的)で失業した場合、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算する特例があります。
対象者:
- 雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者として離職票に記載されている方
- 離職時に65歳未満の方
手続き:
- 市役所の窓口で離職票(コード11〜23・31〜34に該当)を提示して申請
この制度を活用することで、退職後の保険料が最大7割程度軽減されるケースもあります。見落としがちな制度ですので、失業後は必ず確認してください。
保険料の「減額・猶予・分割払い」の相談
生活困窮や災害・疾病などの特別な事情がある場合、以下の対応が可能です。
- 保険料の減額・免除: 所定の条件を満たす場合に保険料額そのものを減らす
- 分割払い・猶予: 一括払いが困難な場合、分割や支払い猶予を認める
- 短期証・資格証明書: 未納が続く場合、通常の保険証から切り替わる場合がある
保険料を払えない状況になった場合は、放置せず早めに市役所の保険年金課に相談することが最も重要です。未納のまま放置すると差し押さえ等の処分につながる可能性があります。自治体側も相談を受けることで柔軟に対応するケースが多いです。
任意継続保険との比較:どちらが得か?

退職後の健康保険は「国保への加入」と「任意継続保険(前職の保険を2年間継続)」のどちらかを選べます。
| 比較項目 | 国民健康保険 | 任意継続保険 |
|---|---|---|
| 保険料 | 前年所得に基づき計算(自治体により異なる) | 退職時の標準報酬月額の保険料×2倍(上限あり) |
| 加入期間 | 制限なし | 最長2年間 |
| 給付内容 | 国保の給付内容 | 退職前と同等の給付 |
| 扶養家族 | 扶養の概念なし(家族1人ごとに均等割がかかる) | 扶養家族の保険料は不要 |
| 手続き先 | 市役所 | 退職前の健康保険組合・協会けんぽ |
| 申請期限 | 退職後14日以内 | 退職後20日以内 |
どちらが安いかは個人の状況次第です。 一般的に、前年の所得が低い場合や家族が少ない場合は国保が安くなりやすく、収入が高い場合や扶養家族が多い場合は任意継続が有利になることがあります。両方の金額を試算してから判断しましょう。
市役所の国保窓口でよくある質問(FAQ)

Q. 退職後すぐに就職予定でも国保に入る必要がある?
A. 就職までの空白期間がある場合、その間は国保に加入する義務があります。ただし、空白が数日〜1週間程度であれば、就職後に社会保険が適用される場合は実質的な影響が少ないこともあります。不安な場合は市役所に相談してみましょう。
Q. 国保の保険証はいつ届く?病院に行きたい場合は?
A. 申請後、保険証が届くまでに数日かかる場合があります。その間に医療機関を受診する必要がある場合は、市役所で「被保険者資格証明書」を発行してもらいましょう。これを提示することで、保険証と同様に医療機関を受診できます。
Q. 国保に加入したまま海外に長期滞在しても保険料はかかる?
A. 1年以上海外に在住する場合は、住民票を抜く(転出届を出す)ことで国保の資格を失い、保険料がかからなくなります。短期滞在(1年未満)の場合は引き続き国保の被保険者となり、保険料が発生します。
Q. 国保の保険証を紛失した場合は?
A. 市役所の保険年金課(または市民課)で再交付申請ができます。本人確認書類とマイナンバーが確認できるものを持参してください。マイナンバーカードを健康保険証として利用登録している場合は、カード1枚で医療機関を受診することも可能です。
まとめ:市役所での健康保険(国保)手続きのポイント

本記事の重要ポイントを整理します。
- 市役所で扱う健康保険は国民健康保険(国保)。会社の社会保険に加入していない人が対象
- 加入・脱退ともに変更が生じた日から14日以内に市役所(保険年金課・市民課など)で手続きが必要
- 保険料は所得・世帯人数・自治体によって大きく異なる。試算ツールや窓口で確認を
- 低所得者向け軽減制度・非自発的失業者の特例など、保険料を抑えられる制度が複数ある
- 支払いが困難な場合は放置せず、早めに市役所へ相談することが最善策
- 退職後は国保と任意継続保険を比較してから選択するのが賢明
健康保険の手続きは、タイミングを逃すと無保険期間が生じたり、遡及請求で多額の保険料を一括請求されたりするリスクがあります。転職・退職・引越しなどのライフイベントが発生したら、まず市役所の担当窓口に早めに相談する習慣をつけておくことが、最大のトラブル防止策です。
