「定年が延長されるって本当?」「給料はどうなるの?」「いつから65歳定年になるの?」地方公務員として働く方や、これから公務員を目指す方にとって、定年延長は人生設計に直結する重要なテーマです。
令和5年(2023年)4月から、地方公務員の定年が段階的に65歳まで引き上げられることが決定しました。これは約40年ぶりの大改正であり、働き方、給与体系、退職金、さらには老後の生活設計まで、あらゆる面に影響を及ぼします。
本記事では、地方公務員の定年延長について、制度の全体像から給与の変化、退職金への影響、選択できる働き方まで、すべてを網羅的に解説します。
この記事を読むことで、以下のことが分かります。
- 定年延長の具体的なスケジュールと対象者
- 60歳以降の給与水準(役職定年制度を含む)
- 退職金の計算方法と受給時期の選択肢
- 再任用制度との違いと選択のポイント
- 最新の制度改正動向とキャリアプランへの影響
長期的なキャリア設計と老後の生活設計に必要な知識を、しっかりと身につけましょう。
地方公務員の定年延長とは?制度の全体像

定年延長の背景と目的
地方公務員の定年延長は、国家公務員の定年延長に準じて実施されます。この制度改正には、いくつかの社会的背景があります。
定年延長の主な背景
- 少子高齢化による労働力不足
- 生産年齢人口の減少
- 公務員の採用難の深刻化
- 熟練職員の知識・経験の活用
- 年金支給開始年齢との接続
- 年金支給開始は65歳から
- 60歳定年では無収入期間が発生
- 生活の安定を確保する必要性
- 健康寿命の延伸
- 60歳を超えても元気に働ける人が増加
- 意欲と能力のある職員の活用
- 社会保障費の抑制効果
- 民間企業との均衡
- 民間でも70歳までの就業機会確保が努力義務
- 公務員も同様の対応が必要
これらの要因から、公務員の定年を段階的に65歳まで引き上げることが決定されました。
法的根拠と施行時期
地方公務員の定年延長は、「地方公務員法の一部を改正する法律」に基づいて実施されます。
主な法的根拠
- 地方公務員法第28条の6(定年)
- 地方公務員法第28条の7(定年による退職の特例)
- 各自治体の条例改正
施行時期:
- 令和5年(2023年)4月1日から施行
- 段階的に定年年齢を引き上げ
- 令和13年(2031年)度に65歳定年を完全実施
この改正により、約40年間続いた「60歳定年制」が終了し、新たな時代を迎えることになります。
国家公務員と地方公務員の違い
基本的な制度設計は国家公務員と同じですが、地方公務員には独自の特徴があります。
共通点
- 定年年齢の段階的引き上げスケジュール
- 役職定年制度の導入
- 給与水準の設定方針
相違点
- 各自治体が条例で定める必要がある
- 自治体の財政状況により運用が異なる場合がある
- 小規模自治体では適用が遅れる可能性
自分が所属(または希望)する自治体の具体的な運用については、条例や人事委員会の資料を確認することが重要です。
定年延長の具体的なスケジュール

段階的引き上げの年次計画
定年年齢は、2年に1歳ずつ段階的に引き上げられます。
定年年齢の引き上げスケジュール
| 年度 | 定年年齢 | 対象者の生年月日 |
|---|---|---|
| 令和5年度(2023年)~令和6年度(2024年) | 60歳 | 昭和38年(1963年)4月1日以前生まれ |
| 令和7年度(2025年)~令和8年度(2026年) | 61歳 | 昭和38年(1963年)4月2日~昭和40年(1965年)4月1日生まれ |
| 令和9年度(2027年)~令和10年度(2028年) | 62歳 | 昭和40年(1965年)4月2日~昭和42年(1967年)4月1日生まれ |
| 令和11年度(2029年)~令和12年度(2030年) | 63歳 | 昭和42年(1967年)4月2日~昭和44年(1969年)4月1日生まれ |
| 令和13年度(2031年)~令和14年度(2032年) | 64歳 | 昭和44年(1969年)4月2日~昭和46年(1971年)4月1日生まれ |
| 令和15年度(2033年)以降 | 65歳 | 昭和46年(1971年)4月2日以降生まれ |
自分の定年年齢を確認する方法
確認手順
- 生年月日を確認する
- 上記の表と照らし合わせる
- 具体例で理解する
例1:昭和39年(1964年)6月生まれの職員- 該当区分:昭和38年4月2日~昭和40年4月1日
- 定年年齢:61歳
- 定年到達:令和7年度(2025年)または令和8年度(2026年)
例2:昭和50年(1975年)生まれの職員
- 該当区分:昭和46年4月2日以降
- 定年年齢:65歳
- 完全な65歳定年制度の対象
例3:昭和37年(1962年)生まれの職員
- 該当区分:昭和38年4月1日以前
- 定年年齢:60歳(従来通り)
- 定年延長の対象外
- 所属自治体の条例を確認する
- 国の基準に準拠しているか確認
- 独自の運用がある場合は要注意
経過措置期間の扱い
段階的引き上げ期間中は、様々な経過措置が設けられています。
主な経過措置
- 60歳到達時の選択肢
- 継続勤務(定年まで働く)
- 給与水準の調整
- 60歳以降は段階的に給与が調整される
- 経過措置により激変緩和
- 退職金の計算
- 60歳時点の給料を基礎とする特例あり
- 詳細は自治体により異なる
60歳以降の給与と役職定年制度

役職定年制度の概要
定年延長に伴い、新たに「役職定年制度」が導入されました。これは、一定の年齢に達した管理職を管理職以外の職に異動させる制度です。
役職定年制度の基本
- 対象:管理監督職(課長級以上が一般的)
- 年齢:60歳(自治体により異なる場合あり)
- 効果:60歳到達年度の翌年度から管理職以外の職に異動
具体例: 部長職(60歳)→ 専門職または一般職(61歳~)
役職定年の例外措置: 以下の場合、役職定年が適用されないことがあります。
- 特に高度の専門的知識・経験が必要な職
- 後任の確保が困難な職
- 自治体の判断により特例を認める場合
小規模自治体の特例: 職員数が少ない自治体(概ね100人未満)では、役職定年制度を適用しない場合もあります。
60歳以降の給与水準
60歳を超えて勤務を続ける場合、給与水準が調整されます。
給与調整の基本方針
- 60歳到達時の給料月額の70%程度に調整
- 役職定年により管理職手当がなくなる
- 段階的に調整する経過措置あり
具体的な給与例(課長職の場合)
60歳到達時(定年延長前)
- 給料月額:450,000円
- 管理職手当:60,000円
- 地域手当(16%):81,600円
- 月額合計:約591,600円
61歳以降(役職定年後)
- 給料月額:315,000円(70%水準)
- 管理職手当:0円(役職定年)
- 地域手当(16%):50,400円
- 月額合計:約365,400円
減少額:約226,200円/月(年間約271万円)
この大幅な給与減少は、多くの職員にとって大きな負担となります。

ボーナス(期末手当・勤勉手当)への影響
60歳以降のボーナスも、給料月額の減少に伴って減額されます。
60歳時のボーナス
- 計算基礎:591,600円
- 年間支給月数:4.5ヶ月
- 年間ボーナス:約266万円
61歳以降のボーナス
- 計算基礎:365,400円
- 年間支給月数:4.5ヶ月
- 年間ボーナス:約164万円
減少額:約102万円/年
月給とボーナスを合わせると、年収ベースで約373万円もの減少となります。

昇給の扱い
60歳以降も、一定の条件下で昇給が認められます。
昇給のルール
- 原則として、通常の昇給制度が適用される
- ただし、昇給幅は59歳以前より小さい
- 人事評価に基づく昇給は継続
具体例
- 59歳以前:年間約8,000円の昇給
- 60歳以降:年間約4,000円の昇給
完全に昇給が止まるわけではありませんが、昇給ペースは緩やかになります。

退職金の計算と受給時期の選択

定年延長による退職金への影響
退職金の計算方法は、定年延長により複雑化しています。
退職金計算の基本式
退職金 = 退職時の給料月額 × 支給率(勤続年数により決定) × 調整率
定年延長による主な変更点
- 60歳時点の給料を基礎とする選択肢
- 65歳定年まで勤務しても、60歳時点の給料月額で計算可能
- 給与減少による退職金の目減りを防ぐ
- 勤続年数の扱い
- 65歳まで勤務すれば勤続年数は増加
- 支給率が上がる可能性
具体的な計算例
パターン1:60歳で退職する場合
- 退職時給料月額:450,000円
- 勤続年数:35年
- 支給率:48.5ヶ月分(仮定)
- 退職金:450,000円 × 48.5 = 約2,182万円
パターン2:65歳まで勤務する場合(60歳時給料基準)
- 基礎給料月額:450,000円(60歳時)
- 勤続年数:40年
- 支給率:50.0ヶ月分(仮定)
- 退職金:450,000円 × 50.0 = 約2,250万円
- 増加額:約68万円
パターン3:65歳まで勤務する場合(65歳時給料基準)
- 退職時給料月額:315,000円(65歳時)
- 勤続年数:40年
- 支給率:50.0ヶ月分(仮定)
- 退職金:315,000円 × 50.0 = 約1,575万円
- 減少額:約607万円
このように、選択によって退職金に大きな差が生じます。
退職金の受給時期の選択
定年延長に伴い、退職金の受給時期についても選択肢が広がっています。
選択肢1:退職時に一括受給
- 従来通りの方法
- 退職所得控除の適用あり
- 税制面で有利
選択肢2:60歳時点で一部受給
- 60歳時点で一定額を受給
- 残りは定年退職時に受給
- 生活資金の確保に有効
選択肢3:年金形式での受給
- 一部の自治体で導入検討中
- 退職一時金ではなく分割受給
- 税制面での検討が必要
税制上の注意点
- 退職所得控除:勤続年数 × 40万円(20年超の部分は × 70万円)
- 分割受給の場合、控除額が減る可能性
- 税理士等への相談が推奨される
年金との接続
定年延長により、年金との接続がより重要になります。
年金支給開始のスケジュール
- 昭和36年(1961年)4月2日以降生まれ:65歳から
- それより前の生まれ:段階的に引き上げ中
60歳~65歳の収入パターン例
65歳定年まで働く場合
- 60~64歳:給与(調整後)
- 65歳~:年金
60歳で退職する場合
- 60~64歳:無収入または再就職
- 65歳~:年金
在職老齢年金制度: 60歳以降も働きながら年金を受給する場合、年金額が調整される可能性があります。
- 給与 + 年金が一定額を超えると年金が減額
- 詳細は日本年金機構に確認が必要
再任用制度との比較

再任用制度の現状と今後
定年延長の実施により、従来の再任用制度は段階的に廃止されていきます。

再任用制度とは
- 60歳定年後、65歳まで再雇用される制度
- 1年ごとの契約更新
- 給与水準は現役時代より大幅に低い
定年延長との主な違い
| 項目 | 再任用制度 | 定年延長 |
|---|---|---|
| 雇用形態 | 非常勤または短時間勤務 | フルタイム正規職員 |
| 給与水準 | 現役の50~60%程度 | 現役の70%程度 |
| ボーナス | 減額または不支給 | 支給(調整あり) |
| 退職金 | なし(60歳時に受給済み) | 定年時に受給 |
| 雇用の安定性 | 1年更新(不安定) | 定年まで確実 |
経過措置期間中の選択肢
定年が61歳、62歳と段階的に上がる期間中は、再任用制度も併存します。
具体例(定年61歳の職員の場合)
選択肢1:61歳定年まで働く
- 60~61歳:フルタイム正規職員
- 給与:調整後の水準
- 退職金:61歳時に受給
選択肢2:60歳で退職し、再任用を希望
- 60歳で一旦退職
- 退職金を60歳時点で受給
- 61~65歳:再任用職員として勤務
どちらが有利か: 一般的には、定年延長の方が総収入は多くなります。ただし、以下の場合は再任用も検討の価値があります。
- まとまった退職金を早めに受け取りたい
- フルタイム勤務がきつい(短時間勤務を希望)
- 責任の軽い業務を希望
段階的な廃止スケジュール
再任用制度の段階的廃止
- 令和5年度(2023年):60歳定年者は再任用の選択可
- 令和7年度(2025年):61歳定年者は61~65歳のみ再任用
- 令和15年度(2033年):完全廃止(全員65歳定年)
自分の生年月日に応じて、どの制度が適用されるかを確認しましょう。
今後の制度改正の見通し

70歳までの就業機会確保に向けて
民間企業では、70歳までの就業機会確保が努力義務とされています。公務員も将来的にこの方向に進む可能性があります。
検討されている施策
- 65歳以降の再任用制度の拡充
- 定年後の再雇用制度の創設
- 定年そのものを70歳に延長(長期的課題)
ただし、課題も多い
- 財政負担の増大
- 組織の硬直化
- 若手の採用機会への影響
給与制度のさらなる見直し
60歳以降の給与水準については、今後も見直しが続く可能性があります。
見直しの方向性
引き上げ論
- 70%水準では生活が苦しい
- モチベーション維持のため80%程度に
- 民間の同年齢層との均衡
引き下げ論
- 財政負担の軽減
- 若年層への配分を増やすべき
- 成果主義の徹底(評価による差をつける)
今後の人事院勧告や各自治体の財政状況により、給与水準は変動する可能性があります。
デジタル化・働き方改革の影響
テレワークやデジタル化の進展により、60歳以降の働き方も多様化する可能性があります。
期待される変化
- フルタイムとパートタイムの柔軟な選択
- テレワーク中心の勤務形態
- 専門性を活かした業務への特化
- 短時間勤務でも高い評価を得られる仕組み
これらの施策により、高齢職員がより働きやすい環境が整備されることが期待されます。
定年延長に関するよくある質問

Q1: 定年延長は強制ですか?60歳で辞めることはできませんか?
A: 定年延長は強制ではありません。60歳での退職を選択できます。
選択肢:
- 定年まで働く(推奨)
- フルタイム正規職員として継続
- 安定した雇用と収入
- 通常の依願退職
- いつでも退職可能
- 早期退職加算なし
ただし、60歳で退職すると、65歳まで働いた場合と比べて総収入が減少します。慎重な判断が必要です。
Q2: 病気などで65歳まで働けない場合はどうなりますか?
A: 分限処分(休職・免職)の制度が適用されます。
対応方法:
- 病気休暇・休職制度の利用
- 復帰が困難な場合は分限免職
- 退職金は勤続期間に応じて支給
- 障害年金の受給も検討
健康に不安がある場合は、早めに産業医や上司に相談することが重要です。

Q3: 管理職でない一般職員も給与は減りますか?
A: はい、一般職員も60歳以降は給与が調整されます。
一般職員の場合
- 役職定年は適用されない(もともと管理職でないため)
- それでも給料月額は70%程度に調整される
- 調整幅は管理職より小さい場合もある
具体例(一般職員)
- 60歳時給料月額:320,000円
- 61歳時給料月額:224,000円(70%水準)
- 月額減少:96,000円
Q4: 定年延長されると、若手の採用が減りますか?
A: 短期的には影響がありますが、長期的には調整されます。
影響と対策
短期的影響
- 退職者数の減少により新規採用枠が減る可能性
- 特に60歳前後の大量退職期を迎えていた自治体で影響
長期的調整
- 計画的な人員配置で新規採用を確保
- 職員定数の見直し
- 業務効率化によるスリム化
若手へのメリット
- ベテラン職員からの技術・知識の継承期間が延びる
- OJT(職場内訓練)の充実
Q5: 定年延長後も昇格試験は受けられますか?
A: 基本的には受けられますが、一定の制限があります。
昇格試験の扱い
- 60歳未満:通常通り受験可能
- 60歳以降:制限される場合が多い
- 役職定年後:管理職への昇格は原則不可
実務上のアドバイス: 管理職を目指すなら、60歳までに昇格することが重要です。60歳以降は、専門職としてのキャリアを考えることが現実的です。
まとめ:定年延長時代のキャリアプラン

地方公務員の定年延長について、制度の全体像から給与、退職金、選択肢まで解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。
定年延長を理解する7つのポイント
- 段階的に65歳定年へ移行
- 令和5年(2023年)から2年ごとに1歳ずつ引き上げ
- 令和15年(2033年)に完全実施
- 自分の生年月日から定年年齢を確認
- 60歳以降は給与が約70%に調整
- 役職定年により管理職手当もなくなる
- 年収ベースで300~400万円の減少も
- ボーナスも連動して減額
- 退職金は60歳時給料基準を選択可能
- 65歳まで働いても60歳時点の給料で計算できる
- 勤続年数は増えるため支給率は上がる
- 税制面も考慮した受給方法の選択が重要
- 年金との接続を考慮
- 65歳から年金支給開始
- 60~65歳の収入計画が重要
- 在職老齢年金制度に注意
- 再任用制度は段階的に廃止
- 定年延長により不要に
- 経過措置期間中は選択可能
- 一般的には定年延長の方が有利
- 今後も制度は変わる可能性
- 給与水準の見直し
- 70歳就業の検討
- 働き方の多様化
キャリアプランの立て方
40代以下の方
- 65歳定年が確実に適用される
- 長期的なキャリア形成を視野に
- 専門性を高めて60歳以降も活躍できる準備を
50代前半の方
- 定年年齢を正確に把握する
- 60歳で管理職から外れる可能性を考慮
- スキルアップで専門職としての道も検討
50代後半の方
- 60歳での退職か継続勤務か早めに決断
- 退職金の試算をする
- 年金受給までの生活資金を確保
60歳前後の方
- 再任用か定年延長か選択する
- 健康状態を考慮した判断
- 第二の人生の準備を開始
最後に
定年延長は、単なる「定年が延びる」という変化ではありません。働き方、給与体系、ライフプランのすべてに影響する大改革です。
- 早めに情報収集し、理解を深める
- 家族とよく話し合い、生涯設計を立てる
- 健康維持に努め、長く働ける体を作る
- 専門性を高め、60歳以降も価値ある人材に
65歳までの長期的なキャリアを見据え、計画的に準備を進めることが、充実した公務員人生と豊かな老後につながります。この記事が、皆さんの人生設計の一助となれば幸いです。
