「地方公務員の課長になるとどれくらい年収が上がるの?」「課長になるまでに何年かかる?」といった疑問を持つ方は多いでしょう。
課長職は地方公務員のキャリアにおける重要なマイルストーンであり、責任とともに待遇も大きく変わります。
地方公務員の課長は、一つの課を統括する管理職として、部下の指導育成、予算管理、政策立案など重要な役割を担います。
その対価として、一般職員とは異なる給与体系が適用され、年収も大きく上昇します。
本記事では、地方公務員課長の年収について、基本給、各種手当、自治体規模別の違い、昇進ルート、課長になるための条件まで、データと実例を交えて詳しく解説します。
公務員を目指す方、課長昇進を目指す現役職員の方、必見の内容です。
地方公務員課長の平均年収:データで見る実態

全国平均の年収
総務省「令和5年地方公務員給与実態調査」のデータを基に、地方公務員課長の平均年収を見ていきましょう。
課長級(6級・7級相当)の平均年収
- 都道府県: 約750万円〜850万円
- 政令指定都市: 約720万円〜820万円
- 中核市・一般市: 約680万円〜780万円
- 町村: 約650万円〜750万円
これらは基本給(給料月額)、地域手当、扶養手当、住居手当などの諸手当、そして期末・勤勉手当(ボーナス)を含めた総支給額です。

年齢別の年収モデル
課長に昇進する年齢は通常45歳〜55歳程度です。年齢別のモデルケースを見てみましょう。
45歳で課長に昇進した場合(都道府県職員)
- 給料月額: 約42万円
- 諸手当: 約8万円(地域手当、扶養手当など)
- 月収計: 約50万円
- 年間給与: 約600万円
- 期末・勤勉手当(年間): 約200万円
- 年収合計: 約800万円
50歳・課長(在職5年目)の場合(都道府県職員)
- 給料月額: 約46万円
- 諸手当: 約8万円
- 月収計: 約54万円
- 年間給与: 約648万円
- 期末・勤勉手当(年間): 約216万円
- 年収合計: 約864万円
55歳・課長(在職10年目)の場合(都道府県職員)
- 給料月額: 約49万円
- 諸手当: 約8万円
- 月収計: 約57万円
- 年間給与: 約684万円
- 期末・勤勉手当(年間): 約228万円
- 年収合計: 約912万円

自治体規模別の課長年収比較

地方公務員の給与は自治体の規模や財政力によって差があります。
東京都特別区(23区)
特別区の課長(50歳モデル)
- 給料月額: 約50万円
- 地域手当(20%): 約10万円
- その他手当: 約5万円
- 月収計: 約65万円
- 年間給与: 約780万円
- 期末・勤勉手当: 約260万円
- 年収合計: 約1,040万円
東京都特別区は地域手当が20%加算されるため、全国で最も給与水準が高くなります。

政令指定都市
政令市の課長(50歳モデル): 大阪市、横浜市、名古屋市など
- 給料月額: 約45万円
- 地域手当(10〜16%): 約5〜7万円
- その他手当: 約5万円
- 月収計: 約55〜57万円
- 年間給与: 約660〜684万円
- 期末・勤勉手当: 約220〜228万円
- 年収合計: 約880〜912万円
政令市も比較的高い給与水準です。地域手当は都市により異なります。
都道府県庁
都道府県課長(50歳モデル): 大阪府、神奈川県、愛知県など
- 給料月額: 約46万円
- 地域手当(0〜15%): 約0〜7万円
- その他手当: 約5万円
- 月収計: 約51〜58万円
- 年間給与: 約612〜696万円
- 期末・勤勉手当: 約204〜232万円
- 年収合計: 約816〜928万円
都道府県によって地域手当の有無と率が大きく異なります。
中核市・一般市
中核市の課長(50歳モデル): 金沢市、高松市、豊田市など
- 給料月額: 約43万円
- 地域手当(0〜10%): 約0〜4万円
- その他手当: 約5万円
- 月収計: 約48〜52万円
- 年間給与: 約576〜624万円
- 期末・勤勉手当: 約192〜208万円
- 年収合計: 約768〜832万円
一般市の課長(50歳モデル)
- 給料月額: 約40万円
- 地域手当: ほぼなし
- その他手当: 約5万円
- 月収計: 約45万円
- 年間給与: 約540万円
- 期末・勤勉手当: 約180万円
- 年収合計: 約720万円
町村
町村の課長(50歳モデル)
- 給料月額: 約38万円
- 地域手当: なし
- その他手当: 約4万円
- 月収計: 約42万円
- 年間給与: 約504万円
- 期末・勤勉手当: 約168万円
- 年収合計: 約672万円
町村は財政規模が小さいため、給与水準はやや低めです。ただし、生活費も都市部より安いため、実質的な生活水準は高い場合もあります。
課長の給与内訳:基本給と各種手当の詳細

課長の年収を構成する要素を詳しく見ていきましょう。
基本給(給料月額)
課長級の給料月額は、給料表の6級または7級に位置づけられます。
課長級の給料月額範囲
- 最低号給: 約38万円(昇進直後)
- 標準的な号給: 約42〜48万円(在職3〜8年)
- 最高号給: 約52万円(長期在職者)
毎年1回、定期昇給により約5,000〜8,000円程度上昇します。
管理職手当
多くの自治体では、課長級以上の管理職に対して「管理職手当」が支給されます。
管理職手当の相場
- 課長級: 月額5万円〜10万円
- 自治体規模や財政状況により異なる
- 時間外勤務手当の代わりに支給
管理職は原則として時間外勤務手当(残業代)が支給されない代わりに、管理職手当が支給されます。
地域手当
勤務地の物価水準に応じて支給される手当です。
地域手当の支給率(主要都市)
- 東京都特別区: 20%
- 大阪市、横浜市: 16%
- 名古屋市、京都市: 12%
- 福岡市、札幌市: 10%
- 広島市、仙台市: 6%
- 地方都市: 0〜3%
給料月額と管理職手当の合計額に対して支給率が乗じられます。
計算例(東京都特別区の課長)
- 給料月額: 45万円
- 管理職手当: 8万円
- 地域手当: (45万円 + 8万円) × 20% = 10.6万円
- 月収計: 約63.6万円(他の手当除く)
扶養手当
配偶者や子どもを扶養している場合に支給されます。
扶養手当の支給額
- 配偶者: 月額6,500円(自治体により異なる)
- 子(1人目・2人目): 月額10,000円
- 子(3人目以降): 月額6,000円
計算例(配偶者+子2人の場合) 6,500円 + 10,000円 + 10,000円 = 月額26,500円
住居手当
賃貸住宅に居住している場合、家賃の一部が支給されます。
住居手当の支給額
- 上限: 月額28,000円程度(自治体により異なる)
- 家賃が一定額以上の場合に、段階的に支給
持ち家の場合は支給されないことが一般的です。
通勤手当
通勤に要する費用が支給されます。
通勤手当の支給額
- 公共交通機関利用: 実費(上限月額55,000円)
- マイカー通勤: 距離に応じて月額2,000円〜31,600円
期末・勤勉手当(ボーナス)
年2回(6月・12月)支給されます。
支給月数
- 年間: 約4.0〜4.5ヶ月分
- 6月: 約2.0〜2.25ヶ月分
- 12月: 約2.0〜2.25ヶ月分
計算方法 (給料月額 + 管理職手当 + 扶養手当 + 地域手当) × 支給月数 × 役職段階別加算率
課長級の役職段階別加算率は、一般職員より高く設定されています(例: 一般職員100%に対し、課長115〜125%)。
計算例(給料月額45万円、管理職手当8万円、地域手当10万円、扶養手当2万円の場合) (45万円 + 8万円 + 10万円 + 2万円) × 4.4ヶ月 × 1.2 = 約343万円(年間)
一般職員から課長までの年収推移

課長に昇進するまでの年収推移を見てみましょう。
標準的なキャリアモデル(都道府県職員の場合)
22歳・入庁1年目(主事)
- 給料月額: 約18万円
- 年収: 約320万円
25歳・入庁4年目(主事)
- 給料月額: 約20万円
- 年収: 約360万円
30歳・入庁9年目(主任主事)
- 給料月額: 約25万円
- 年収: 約450万円
35歳・入庁14年目(主任主事)
- 給料月額: 約30万円
- 年収: 約530万円
40歳・入庁19年目(係長)
- 給料月額: 約35万円
- 年収: 約620万円
45歳・入庁24年目(課長補佐)
- 給料月額: 約39万円
- 年収: 約700万円
50歳・入庁29年目(課長)
- 給料月額: 約46万円
- 年収: 約860万円
55歳・入庁34年目(課長)
- 給料月額: 約49万円
- 年収: 約910万円
課長に昇進することで、一般職員時代と比べて年収が約200万円〜300万円増加します。
課長になるための条件と昇進ルート

標準的な昇進年数
地方公務員が課長に昇進するまでの標準的な年数は以下の通りです。
都道府県・政令指定都市
- 入庁から課長昇進まで: 25〜30年
- 昇進時年齢: 47〜52歳
中核市・一般市
- 入庁から課長昇進まで: 23〜28年
- 昇進時年齢: 45〜50歳
町村
- 入庁から課長昇進まで: 20〜25年
- 昇進時年齢: 42〜47歳
組織規模が小さいほど、昇進が早い傾向にあります。
昇進に必要な要素
課長に昇進するには、以下の要素が総合的に評価されます。
1. 勤続年数 一定の経験年数が必要です。通常、入庁から20年以上の実務経験が求められます。
2. 人事評価 日々の業務における評価が重要です。上司による評価、目標達成度、コンピテンシー評価などが考慮されます。
3. 昇任試験 多くの自治体では、係長や課長補佐への昇進時に昇任試験を実施します。
試験内容
- 筆記試験(行政法、財政学、人事管理など)
- 論文試験(政策課題、マネジメント論)
- 面接試験
4. 研修受講 階層別研修の修了が昇進の条件となる場合があります。
- 係長級研修
- 課長補佐級研修
- 新任課長研修
5. 実績と能力
- 困難な業務を成功させた実績
- 政策立案能力
- マネジメント能力
- リーダーシップ
- 人間性
6. 配属先の経験 幅広い部署を経験していることが重視されます。特に、以下の部署の経験は評価されます。
- 財政課、人事課などの内部管理部門
- 企画課、政策推進課などの政策部門
- 福祉、税務、都市計画などの主要事業部門
課長昇進の選抜プロセス
Step1: 候補者リストの作成(昇進1年前) 人事課が、勤続年数、人事評価、実績などを基に課長候補者リストを作成します。
Step2: 上司による推薦 所属長が、部下の中から課長にふさわしい人材を推薦します。
Step3: 幹部による選考 副知事、副市長、部長級などの幹部が、候補者を総合的に評価します。
Step4: 内示と正式発令 昇進対象者に内示が行われ、4月1日付けで正式に発令されます。
早期昇進と標準的な昇進
早期昇進(エリートコース)
- 入庁から課長昇進まで: 20〜23年
- 昇進時年齢: 42〜45歳
- 特徴: 優秀な成績、高い評価、重要部署での実績
早期昇進者は、将来的に部長、局長、副知事・副市長などの上級ポストへの登用が期待されます。
標準的な昇進
- 入庁から課長昇進まで: 25〜30年
- 昇進時年齢: 47〜52歳
- 特徴: 着実な実績、安定した評価
遅い昇進
- 入庁から課長昇進まで: 30年以上
- 昇進時年齢: 52歳以降
- 特徴: 専門職としてのキャリア、または評価がやや低い
すべての職員が課長になれるわけではありません。同期入庁者のうち、課長以上に昇進できるのは30〜50%程度と言われています。
課長の退職金と生涯年収

退職金
課長として定年退職(現在60歳、段階的に65歳へ引き上げ)した場合の退職金を見てみましょう。
退職金の計算式 退職金 = 退職時の給料月額 × 支給率(勤続年数による)
支給率の目安(勤続38年で定年退職の場合) 約47.0〜50.0ヶ月分
計算例(課長として定年退職、給料月額50万円) 50万円 × 48ヶ月 = 2,400万円
実際には、定年前に退職手当の減額措置(55歳以降の昇給抑制)があるため、やや下回ることもあります。
課長補佐で定年退職の場合 給料月額43万円 × 48ヶ月 = 約2,064万円
課長として退職することで、退職金も300万円以上増加します。

生涯年収
22歳で入庁し、60歳で定年退職(課長)した場合の生涯年収を試算してみましょう。
生涯年収の試算(課長として定年退職)
- 入庁〜30歳(9年間): 約360万円 × 9年 = 3,240万円
- 31〜40歳(10年間): 約500万円 × 10年 = 5,000万円
- 41〜50歳(10年間): 約670万円 × 10年 = 6,700万円
- 51〜60歳(10年間): 約890万円 × 10年 = 8,900万円
- 退職金: 2,400万円
- 生涯年収合計: 約2億6,240万円
課長補佐で定年退職の場合 約2億3,500万円
課長に昇進することで、生涯年収が約2,700万円増加します。
民間企業の課長と比較

地方公務員の課長年収を民間企業と比較してみましょう。
民間企業の課長年収(従業員1,000人以上の企業)
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、
民間企業の課長級(45〜54歳)
- 平均年収: 約850万円〜1,100万円
- 大企業(従業員1,000人以上): 約950万円〜1,200万円
- 中小企業(従業員100〜999人): 約700万円〜900万円
比較のポイント
地方公務員課長の特徴
- メリット: 雇用の安定性、年功序列的な昇給、手厚い福利厚生、退職金
- デメリット: 民間大企業と比較するとやや低め、成果主義的な大幅昇給は期待できない
民間企業課長の特徴
- メリット: 大企業では高年収、成果による大幅昇給の可能性
- デメリット: 業績による減給・リストラのリスク、退職金が少ない場合も
総合的に見ると、地方公務員課長の年収は「民間企業の平均的な課長」と同水準ですが、安定性では大きく上回ります。
課長の仕事内容と責任

年収に見合った責任と業務内容を理解しておきましょう。
課長の主な職務
1. 組織マネジメント
- 課の運営方針の決定
- 部下(5〜20人程度)の指揮監督
- 人材育成、指導
2. 予算管理
- 課の予算編成
- 予算執行管理
- 決算対応
3. 政策立案・実行
- 施策の企画立案
- 事業の実施・進行管理
- 効果測定・評価
4. 対外折衝
- 住民対応、説明会
- 関係機関との調整
- 議会対応(質問への答弁準備)
5. 危機管理
- トラブル対応
- クレーム処理の最終責任
- リスクマネジメント
課長の勤務実態
勤務時間
- 標準: 8:30〜17:15(自治体により異なる)
- 実態: 7:30〜20:00程度(部署により大きく異なる)
管理職は時間外勤務手当が支給されないため、長時間労働になりやすい傾向があります。
休暇取得
- 年次有給休暇: 年20日付与
- 実際の取得日数: 10〜15日程度(部署により異なる)
繁忙期には休暇が取りにくいこともあります。
責任とプレッシャー
- 課の業務に対する最終責任
- 部下のミスも含めて責任を負う
- 住民や議会からの厳しい意見への対応
- 人事評価の実施
よくある質問(FAQ)

Q1: 課長になれるのは何割くらいですか?
同期入庁者のうち、課長以上に昇進できるのは30〜50%程度です。都道府県や大規模自治体ほど、課長ポストが限られるため割合は低くなります。町村では、ほとんどの職員が課長級まで昇進できる場合もあります。
Q2: 課長の年収は民間企業より低いですか?
民間大企業の課長と比較するとやや低めですが、中小企業と比較すると同等以上です。ただし、地方公務員は雇用が極めて安定しており、業績による減給やリストラのリスクがほぼないため、生涯年収では遜色ありません。
Q3: 課長になると残業代が出なくなって損ですか?
管理職になると時間外勤務手当は支給されませんが、代わりに管理職手当が支給されます。一般職員時代に残業が多かった人は、一時的に手取りが減ることもありますが、基本給の上昇と役職手当により、トータルでは年収は増加します。
Q4: 課長を目指さない選択肢はありますか?
あります。「スペシャリスト」として、特定分野の専門職として活躍する道もあります。課長にならなくても、係長や課長補佐として定年まで働くことは可能です。ただし、年収は課長に比べて200〜300万円低くなります。
Q5: 女性でも課長になれますか?
もちろん可能です。近年、女性管理職の登用が積極的に進められており、多くの自治体で女性課長が増えています。国は2025年度末までに地方公務員の女性管理職比率を20%にする目標を掲げています。
Q6: 課長になってから部長になれる確率は?
課長の中から部長に昇進できるのは、さらに30〜50%程度です。つまり、入庁者全体から見ると、部長になれるのは15〜25%程度です。
Q7: 他の自治体から転職して課長になれますか?
一般的には難しいです。課長は長年の経験と実績を積んだ職員が昇進するポストです。ただし、社会人経験者採用で幹部候補として採用される場合や、専門職として課長級で採用される例外的なケースはあります。
Q8: 課長の年収に自治体間格差はどれくらいありますか?
東京都特別区と地方の町村では、年収に300〜400万円程度の差があります。主な要因は地域手当の有無と率です。ただし、生活費も地域により大きく異なるため、実質的な生活水準の差はそれほど大きくない場合もあります。
まとめ:課長職は努力と経験が報われるポジション

地方公務員の課長は、25〜30年のキャリアを積んだ職員が到達する重要なポジションです。年収は750万円〜1,000万円程度と、民間企業の平均的な課長と同水準ですが、雇用の安定性と福利厚生の充実により、総合的な待遇は魅力的です。
課長年収のポイント
- 平均年収: 750万円〜850万円(自治体規模により差あり)
- 昇進時期: 入庁から25〜30年、45〜52歳程度
- 一般職員との年収差: 200万円〜300万円
- 退職金: 約2,400万円
- 生涯年収: 約2億6,000万円
課長になるために
- 日々の業務で着実に実績を積む
- 人事評価で高評価を得る
- 幅広い部署を経験する
- 階層別研修を受講する
- マネジメント能力を磨く
- リーダーシップを発揮する
課長職は、責任と引き換えに、やりがいと待遇が大きく向上するポジションです。長期的なキャリアプランを描き、着実にステップアップしていきましょう。組織をマネジメントし、住民サービスの向上に貢献する課長として活躍できる日を目指して、日々の業務に全力で取り組むことが成功への道です。

