地方自治体で働く会計年度任用職員は、近年増加している非常勤職員の雇用形態です。
しかし、「実際の年収はどのくらいなのか」「ボーナスや手当はもらえるのか」といった待遇面について、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、会計年度任用職員の給料体系から各種手当、賞与の有無、実際の年収例まで、待遇の実態を詳しく解説します。
会計年度任用職員の年収について知っておくべき基本

会計年度任用職員として働くことを検討している方にとって、「実際にどのくらいの年収になるのか」は最も重要な情報です。
この記事では、2024年度の最新情報に基づいて、会計年度任用職員の年収について詳しく解説します。
会計年度任用職員とは
会計年度任用職員は、2020年4月に導入された地方公務員の新しい雇用形態です。
以前の臨時職員や非常勤職員を統合し、処遇改善を図るために創設されました。

会計年度任用職員の特徴
- 任期は最長1年間(年度単位での任用)
- 条件を満たせば期末手当(ボーナス)が支給される
- 地方公務員法の適用を受ける
- 再度の任用が可能(ただし上限年数を設ける自治体もある)
フルタイムとパートタイムの違い
会計年度任用職員には、大きく分けて2つの勤務形態があります。
フルタイム会計年度任用職員
- 週38時間45分など、正規職員と同じ勤務時間
- 給料制(月給制)
- 各種手当が支給される
- 期末手当が支給される
- 社会保険完備
パートタイム会計年度任用職員
- 週の勤務時間が正規職員より短い
- 報酬制(時給制または日給制)
- 一定条件を満たせば期末手当が支給される
- 勤務時間により社会保険の加入が異なる
この違いにより、年収も大きく変わってきます。
フルタイム会計年度任用職員の年収

フルタイム会計年度任用職員の年収について、具体的に見ていきましょう。

基本給(給料)の水準
フルタイム会計年度任用職員の給料は、各自治体が独自に定めた給料表に基づいて支給されます。

一般的な月給の目安(経験・学歴により変動)
- 高卒程度:月額15万円〜18万円
- 大卒程度:月額17万円〜22万円
- 専門職(保健師、司書など):月額18万円〜25万円
年間の基本給(12ヶ月分)
- 高卒程度:180万円〜216万円
- 大卒程度:204万円〜264万円
- 専門職:216万円〜300万円
ただし、これは自治体や職種、経験年数によって大きく異なります。
期末手当(ボーナス)
会計年度任用職員制度の大きな特徴の一つが、期末手当の支給です。

期末手当の支給月数
- 一般的な支給率:年間2.0ヶ月〜2.6ヶ月分
- 自治体により異なる(1.5ヶ月〜2.6ヶ月程度)
- 6ヶ月以上勤務した場合に支給される
期末手当の計算例 月給18万円の場合
- 支給率2.4ヶ月:18万円 × 2.4 = 43.2万円
諸手当
フルタイムの場合、以下のような手当が支給されることがあります。
主な手当
- 通勤手当:実費または規定額(月額上限5.5万円程度)
- 扶養手当:配偶者や子どもがいる場合(月額数千円〜1万円程度)
- 住居手当:賃貸住宅に居住する場合(月額数千円〜2.8万円程度)
- 時間外勤務手当:残業した場合
- 地域手当:都市部の場合(給料の3%〜20%)
ただし、自治体によっては支給されない手当もあります。
フルタイムの年収シミュレーション
具体的なケースで年収を計算してみましょう。
【ケース1】東京都内の自治体・事務職・大卒・独身
- 基本給:月20万円
- 地域手当:月4万円(20%)
- 通勤手当:月2万円
- 月収合計:26万円
- 年間給与:26万円 × 12ヶ月 = 312万円
- 期末手当:24万円 × 2.4ヶ月 = 57.6万円
- 年収合計:約370万円
【ケース2】地方都市・事務職・高卒・扶養家族あり
- 基本給:月16万円
- 扶養手当:月1.5万円
- 通勤手当:月1万円
- 月収合計:18.5万円
- 年間給与:18.5万円 × 12ヶ月 = 222万円
- 期末手当:16万円 × 2.0ヶ月 = 32万円
- 年収合計:約254万円
【ケース3】政令指定都市・保健師・経験5年
- 基本給:月23万円
- 地域手当:月2.3万円(10%)
- 通勤手当:月1.5万円
- 住居手当:月2.8万円
- 月収合計:29.6万円
- 年間給与:29.6万円 × 12ヶ月 = 355.2万円
- 期末手当:25.3万円 × 2.5ヶ月 = 63.25万円
- 年収合計:約418万円
フルタイムの場合、おおむね年収250万円〜450万円の範囲に収まることが多いです。
パートタイム会計年度任用職員の年収

パートタイム会計年度任用職員の年収は、勤務時間により大きく変動します。
報酬の水準
パートタイムの場合、時給制または日給制が一般的です。
時給の目安
- 一般事務:時給1,000円〜1,300円
- 専門職(司書、保育士など):時給1,200円〜1,500円
- 専門性の高い職種:時給1,500円〜2,000円
地域による違い
- 東京都内:時給1,200円〜1,600円
- 政令指定都市:時給1,100円〜1,400円
- 地方都市:時給1,000円〜1,200円
- 町村部:時給950円〜1,100円
勤務時間別の年収目安
週5日・1日5時間勤務の場合(週25時間)
- 時給1,200円の場合
- 月収:1,200円 × 5時間 × 20日 = 12万円
- 年間:12万円 × 12ヶ月 = 144万円
- 期末手当:約16万円(支給条件を満たす場合)
- 年収合計:約160万円
週4日・1日6時間勤務の場合(週24時間)
- 時給1,100円の場合
- 月収:1,100円 × 6時間 × 16日 = 10.56万円
- 年間:10.56万円 × 12ヶ月 = 126.72万円
- 期末手当:約14万円(支給条件を満たす場合)
- 年収合計:約141万円
週5日・1日7時間勤務の場合(週35時間)
- 時給1,300円の場合
- 月収:1,300円 × 7時間 × 20日 = 18.2万円
- 年間:18.2万円 × 12ヶ月 = 218.4万円
- 期末手当:約28万円(支給条件を満たす場合)
- 年収合計:約246万円
パートタイムの場合、おおむね年収100万円〜250万円の範囲となることが多いです。
パートタイムの期末手当
パートタイムでも、一定の条件を満たせば期末手当が支給されます。
支給条件
- 6ヶ月以上の任用期間がある
- 週の勤務時間が15時間以上(自治体により異なる)
支給率
- フルタイムより低い率が設定されることが多い
- 年間1.3ヶ月〜2.3ヶ月程度
計算方法 報酬の月額換算額 × 支給月数
正規職員との年収比較

会計年度任用職員の年収を、正規職員と比較してみましょう。
給与水準の違い
新規採用の正規職員(大卒・22歳)
- 初任給:月額18万円〜21万円
- 年間給与:約216万円〜252万円
- ボーナス:年間約80万円〜100万円
- 各種手当:年間約20万円〜40万円
- 年収合計:約320万円〜390万円
フルタイム会計年度任用職員(大卒・同等職務)
- 月給:月額17万円〜22万円
- 年間給与:約204万円〜264万円
- 期末手当:約40万円〜60万円
- 各種手当:年間約10万円〜30万円
- 年収合計:約250万円〜350万円
差額 初年度で約70万円〜40万円程度の差があります。
昇給の違い
正規職員
- 毎年昇給がある
- 勤続年数に応じて確実に給与が上がる
- 10年後には初任給の1.5倍〜2倍程度
会計年度任用職員
- 昇給制度がある自治体とない自治体がある
- 昇給があっても年間数千円程度
- 長期間勤務しても大幅な給与増は期待しにくい
この昇給の差が、長期的には大きな年収差となります。
キャリア形成の違い
正規職員のメリット
- 安定した雇用
- 昇進・昇格の機会
- 退職金制度
- 幅広いキャリアパス
会計年度任用職員のメリット
- 柔軟な働き方
- 専門性を活かせる
- ライフスタイルに合わせた勤務
- 経験として活かせる
年収を左右する要因

会計年度任用職員の年収は、様々な要因によって変動します。
自治体規模による違い
大都市圏(東京23区、政令指定都市など)
- 基本給が高め
- 地域手当が高い(10%〜20%)
- 期末手当の支給率が高い
- 年収:フルタイムで300万円〜450万円
中核市・一般市
- 標準的な水準
- 地域手当は5%〜10%程度
- 年収:フルタイムで250万円〜350万円
町村部
- 基本給がやや低め
- 地域手当なしが多い
- 年収:フルタイムで220万円〜300万円
職種による違い
一般事務職
- 最も採用が多い
- 標準的な給与水準
- 年収:250万円〜370万円(フルタイム)
専門職(保健師、保育士、司書など)
- 専門性が評価され給与が高め
- 資格手当が付く場合もある
- 年収:280万円〜420万円(フルタイム)
技術職(土木、建築など)
- 専門知識が必要で給与が高め
- 経験により大きく変動
- 年収:300万円〜450万円(フルタイム)
軽作業・補助業務
- パートタイムが多い
- 時給は比較的低め
- 年収:100万円〜180万円(パートタイム)
経験・スキルによる違い
新規採用・未経験
- 最低ランクからのスタート
- 基本給は低め
経験者・有資格者
- 経験を考慮した給与設定
- 資格手当が付く場合もある
- 基本給が5%〜20%高くなることも
長期継続者
- 昇給制度がある自治体では年々増加
- ただし上限が設定されていることが多い
社会保険と税金

年収を考える際、手取り額も重要です。
社会保険と税金について理解しておきましょう。

社会保険の加入要件
フルタイムの場合
- 健康保険:加入必須
- 厚生年金:加入必須
- 雇用保険:加入必須
- 労災保険:適用される
パートタイムの場合
- 週20時間以上:雇用保険加入
- 週30時間以上または月額8.8万円以上:健康保険・厚生年金加入
- すべての時間:労災保険適用
社会保険料の負担
年収300万円の場合の概算
- 健康保険料:約15万円(労使折半)
- 厚生年金保険料:約27万円(労使折半)
- 雇用保険料:約0.9万円
- 合計:約43万円(年間)
税金の負担
年収300万円の場合の概算
- 所得税:約6万円
- 住民税:約12万円
- 合計:約18万円(年間)
手取り額の計算
年収300万円の場合
- 年収:300万円
- 社会保険料:▲43万円
- 税金:▲18万円
- 手取り:約239万円(年収の約80%)
一般的に、手取り額は年収の75%〜80%程度になります。
よくある質問と回答

会計年度任用職員の年収について、多くの方から寄せられる質問にお答えします。
Q1. 会計年度任用職員でも昇給はありますか?
A. 自治体により対応が異なります。
昇給制度がある自治体
- 年1回、数千円程度の昇給
- 上限が設定されている場合が多い
- 勤務評価に基づく昇給
昇給制度がない自治体
- 毎年同じ給与水準
- 再任用時に経験を考慮する程度
約6割の自治体で何らかの昇給制度が導入されています。
Q2. 期末手当(ボーナス)はいつもらえますか?
A. 一般的に年2回支給されます。
支給時期
- 6月(夏季):勤務月数に応じた割合
- 12月(冬季):勤務月数に応じた割合
支給条件
- 6ヶ月以上の任用期間
- 基準日(6月1日、12月1日)に在職
- 一定の勤務時間を満たしている
4月採用の場合、初回のボーナスは12月になります。

Q3. 退職金はもらえますか?
A. 原則として退職金(退職手当)はありません。
ただし、一部の自治体では以下のような制度があります。
- 長期継続者への特別手当
- 期末手当に退職手当相当額を含める
- 独自の退職金制度
多くの場合、退職金がないことが正規職員との大きな違いです。

Q4. 副業は可能ですか?
A. 地方公務員法の制限を受けるため、原則として制限があります。
禁止される副業
- 営利企業の役員
- 自ら営利企業を営むこと(許可制)
- 報酬を得て業務に従事すること(許可制)
許可が得られる可能性がある副業
- 家業の手伝い(報酬なしまたは少額)
- 執筆・講演(公務に支障がない範囲)
- 小規模な農業
副業を考える場合は、必ず事前に任命権者の許可を得る必要があります。


Q5. 正規職員への登用はありますか?
A. 自治体により制度が異なります。
登用制度がある場合
- 会計年度任用職員経験者を対象とした採用試験
- 一定年数の勤務実績が条件
- 年齢制限の緩和
実態
- 登用制度がある自治体は増加傾向
- ただし、採用枠は限定的
- 一般の採用試験を受験することも可能
会計年度任用職員の経験は、正規採用試験でも評価される場合があります。
Q6. 年収が103万円を超えると扶養から外れますか?
A. はい、所得税の扶養控除の基準は103万円です。
扶養の種類と基準
- 所得税の扶養:年収103万円以下
- 社会保険の扶養:年収130万円未満(月額10.8万円未満)
- 配偶者特別控除:年収201万円以下
パートタイムで働く場合、扶養の範囲内に収めるか、扶養を外れてしっかり働くかの判断が重要です。
まとめ:会計年度任用職員の年収を理解する

会計年度任用職員の年収は、勤務形態や自治体、職種によって大きく異なります。
年収の目安まとめ
- フルタイム:250万円〜450万円
- パートタイム(週25時間程度):140万円〜180万円
- パートタイム(週35時間程度):220万円〜260万円
年収を構成する要素
- 基本給(給料・報酬)
- 期末手当(ボーナス)
- 各種手当(通勤、扶養、住居など)
- 時間外勤務手当
年収を左右する主な要因
- 自治体の規模(大都市>地方都市>町村)
- 勤務形態(フルタイム>パートタイム)
- 職種(専門職>一般事務>補助業務)
- 経験・スキル
正規職員との違い
- 初年度の年収差:40万円〜70万円程度
- 昇給の差:長期的に拡大
- 退職金:原則なし
- 雇用の安定性:1年更新
検討すべきポイント
- 自分のライフスタイルに合った勤務形態か
- 年収が生活費をカバーできるか
- 社会保険の加入状況
- キャリア形成の可能性
- 正規職員登用の道があるか
会計年度任用職員は、正規職員と比べると年収面では不利な点もありますが、柔軟な働き方ができる、専門性を活かせる、公務の経験が積めるなどのメリットもあります。

自分の状況や目的に照らし合わせて、この雇用形態が適しているかを判断することが重要です。

