地方公務員の給与は、民間企業のように会社が独自に決めるのではなく、「給料表」という明確な基準によって定められています。
「自分の給料はどう決まるのか」「昇給するといくら上がるのか」「将来どれくらいの給料になるのか」これらの疑問は、すべて給料表を理解することで解決できます。
本記事では、地方公務員の給料表について、基本的な仕組みから具体的な金額、昇給のルール、自治体による違いまで、実例とデータを交えて徹底的に解説します。
地方公務員の給料表とは

給料表の定義と役割
給料表とは 地方公務員の給料(基本給)を決定するための表のことで、各自治体が条例で定めています。職種、職務の難易度、経験年数などに応じて、体系的に給料額が規定されています。
給料表の法的根拠 地方公務員法第24条および第25条に基づき、各自治体が「給与条例」を制定し、その中で給料表を定めています。
給料表の役割
- 給料の透明性・公平性の確保
- 恣意的な給料決定の防止
- 昇給・昇格の基準の明確化
- 職員のモチベーション管理
給料表の基本構造
地方公務員の給料表は、縦軸と横軸で構成される表形式になっています。
縦軸:等級(級)
- 職務の責任や困難性に応じた区分
- 1級(初任者)~9級(部長級)など
- 昇格により等級が上がる
横軸:号給
- 同じ等級内での経験年数や能力に応じた区分
- 1号給~150号給程度
- 毎年の昇給により号給が上がる
給料額の決定 等級と号給の交点が、その職員の月額給料となります。
例:行政職給料表
- 3級(主任級)の25号給 → 月額280,000円
- 4級(係長級)の50号給 → 月額350,000円

主な給料表の種類

地方公務員には、職種に応じて複数の給料表が適用されます。


1. 行政職給料表
対象職員 一般事務職、技術職など、最も一般的な職種
等級数 通常6~9級(自治体により異なる)
等級別の職位例
- 1級:主事・技師(初任者)
- 2級:主事・技師(4~7年目程度)
- 3級:主任
- 4級:主査・係長
- 5級:課長補佐
- 6級:課長
- 7級:次長
- 8級:部長
- 9級:局長・理事
給料の範囲(東京都の例)
- 1級:約15万円~27万円
- 3級:約20万円~35万円
- 6級:約32万円~52万円
- 9級:約42万円~60万円

2. 公安職給料表
対象職員 警察官、消防士など
特徴
- 行政職より高めの給料設定
- 危険性や特殊勤務を考慮
- 階級による等級区分
給料の範囲 初任給で行政職より月2~3万円高い傾向
3. 医療職給料表
種類
- 医療職給料表(一):医師、歯科医師
- 医療職給料表(二):薬剤師、栄養士等
- 医療職給料表(三):看護師、保健師等
特徴 専門性に応じた高水準の給料設定
4. 教育職給料表
対象職員 教員、学校職員
特徴
- 教諭、主幹教諭、教頭、校長などの区分
- 教職調整額(給料の4%)が別途支給
5. 研究職給料表
対象職員 試験研究機関の研究員
特徴 専門性や学歴を反映した給料設定
6. 技能労務職給料表
対象職員 用務員、給食調理員、清掃作業員など
特徴 単純労務を考慮した給料設定
給料表の見方と計算方法

等級と号給の確認方法
自分の等級を知る 辞令や給与明細に記載されています。
- 例:「3級25号給」
等級の意味 職位に対応:
- 主事・技師 → 1~2級
- 主任 → 3級
- 係長 → 4~5級
- 課長補佐 → 6級
- 課長 → 7級
号給の意味 経験年数や能力評価による累積
- 新規採用時:1号給
- 毎年の昇給:標準4号給アップ
- 10年後:約40号給
給料月額の計算例
ケース1:新規採用(大卒・22歳)
- 等級:1級
- 号給:1号給
- 月額給料:約182,000円(東京都の例)
ケース2:入庁10年目(主任・32歳)
- 等級:3級
- 号給:40号給程度
- 月額給料:約305,000円
ケース3:係長(40歳)
- 等級:5級
- 号給:60号給程度
- 月額給料:約385,000円

ケース4:課長(50歳)
- 等級:7級
- 号給:80号給程度
- 月額給料:約475,000円

年収の計算方法
給料表の金額は「月額給料(基本給)」であり、実際の年収はこれに手当や賞与を加えて計算します。
年収の計算式
年収 = (月額給料 + 諸手当) × 12ヶ月 + 賞与
諸手当の例
- 地域手当:給料の3~20%(都市部)
- 扶養手当:配偶者6,500円、子10,000円等
- 住居手当:最大28,000円
- 通勤手当:実費
賞与(期末・勤勉手当)
- 年間約4.5ヶ月分
年収計算例(係長・40歳・東京・既婚・子1人)
- 月額給料:385,000円
- 地域手当(20%):77,000円
- 扶養手当:16,500円
- 住居手当:28,000円
- 月額合計:506,500円
- 年間給与:506,500円 × 12 = 6,078,000円
- 賞与:506,500円 × 4.5 = 2,279,250円
- 年収総額:約8,357,000円

昇給の仕組み

定期昇給
昇給時期 毎年1月1日(4月1日支給)
標準的な昇給幅 4号給(月額約8,000円~15,000円)
昇給号給数の決定要因 人事評価に基づき、以下のように決定されます:
| 評価 | 昇給号給数 | 昇給額目安 |
|---|---|---|
| S(特に優秀) | 6号給以上 | 約12,000円~18,000円 |
| A(優秀) | 5号給 | 約10,000円~15,000円 |
| B(良好・標準) | 4号給 | 約8,000円~12,000円 |
| C(やや不良) | 3号給 | 約6,000円~9,000円 |
| D(不良) | 昇給なし~2号給 | 0円~約4,000円 |
年齢による昇給の変化
- 20~30代:標準的な昇給
- 40代:昇給幅がやや縮小
- 50代:昇給幅がさらに縮小
- 55歳以降:昇給停止または大幅抑制
昇格(等級アップ)
昇格とは 職位の昇進に伴い、等級が上がること
昇格時の号給調整 昇格時には、経験や能力を考慮して号給が調整されます。
調整例
- 昇格前:3級50号給(月額320,000円)
- 昇格後:4級25号給(月額350,000円) → 約30,000円アップ
標準的な昇格パターン(大卒)
- 入庁:1級1号給
- 5~8年目:2級へ昇格
- 10~13年目:3級へ昇格(主任)
- 15~20年目:4級へ昇格(係長)
- 25~30年目:6級へ昇格(課長)
初任給基準の調整
学歴による初任給の違い
| 学歴 | 初任等級 | 初任号給 | 初任給(目安) |
|---|---|---|---|
| 高卒 | 1級 | 1号給 | 約15万円 |
| 短大卒 | 1級 | 5号給程度 | 約16万円 |
| 大卒 | 1級 | 13号給程度 | 約18万円 |
| 修士卒 | 1級 | 21号給程度 | 約20万円 |
| 博士卒 | 1級 | 29号給程度 | 約22万円 |
職歴がある場合の調整 民間企業等での職務経験がある場合、その経験年数に応じて初任号給が加算されます。
換算率の例
- 類似職種の経験:100%換算(1年→4号給加算)
- 関連職種の経験:80%換算
- 異業種の経験:50%程度換算
自治体による給料表の違い

自治体規模による差
都道府県・政令指定都市
- 給料水準が高い
- 等級数が多い(9級まで)
- 地域手当が高率
中核市・特例市
- 中程度の給料水準
- 等級数は7~8級程度
一般市町村
- やや低めの給料水準
- 等級数は6~7級
- 地域手当が低率または無し
給料差の例(係長級・同年齢)
- 東京都:月額約420,000円
- 政令市:月額約380,000円
- 一般市:月額約350,000円
- 町村:月額約320,000円
地域による差
地域手当の影響 都市部では地域手当により、実質的な給料が大きく異なります。
地域手当の支給率(主要都市)
- 東京23区:20%
- 大阪市:16%
- 名古屋市:16%
- 横浜市:16%
- 札幌市:10%
- 福岡市:10%
- 地方の市町村:3~6%または0%
実質給料の比較(月額給料30万円の場合)
- 東京23区:300,000円 + 60,000円 = 360,000円
- 大阪市:300,000円 + 48,000円 = 348,000円
- 地方都市(6%):300,000円 + 18,000円 = 318,000円
- 地方町村(0%):300,000円

独自の給料表
一部の自治体では、国の基準とは異なる独自の給料表を設定している場合があります。
独自給料表の例
- 財政が厳しい自治体:国より低い水準
- 独自施策の自治体:特定職種を優遇
- 合併自治体:複数の給料表が併存
給料表の調べ方

公開されている給料表の入手方法
各自治体のホームページ 多くの自治体が、給与条例や給料表をウェブサイトで公開しています。
検索方法 「〇〇市 給与条例」「〇〇県 給料表」で検索
掲載場所
- 条例・規則のページ
- 人事・給与のページ
- 情報公開のページ
総務省の資料 総務省が毎年公表する「地方公務員給与実態調査」で、全国的な傾向を把握できます。
給料表の見方のコツ
給料表は通常、PDFで提供され、以下のような構成になっています。
- 給料表の種類(行政職、公安職等)
- 等級ごとの表
- 号給ごとの金額
チェックポイント
- 自分の職種に該当する給料表を確認
- 現在または目標とする等級を探す
- 号給の進み方と金額の増加を確認
実際の給料明細との対照
給料明細の見方
- 「給料」欄が給料表に基づく金額
- 「〇級〇号給」の記載を確認
- 手当は別途加算される
確認方法 給料明細の「給料」と給料表の該当号給の金額が一致するか確認します。
給料表に関するよくある質問

Q: 給料表は毎年変わりますか?
A: 人事院勧告や民間給与との比較に基づき、改定されることがあります。通常、数年に1回の頻度で改定されます。
Q: 同じ等級・号給でも自治体で金額が違いますか?
A: はい。各自治体が独自に給料表を定めるため、同じ等級・号給でも金額が異なります。
Q: 昇給は必ずありますか?
A: 原則として毎年昇給しますが、人事評価が著しく低い場合や、55歳以降は昇給が抑制されることがあります。
Q: 等級の上限まで達したらどうなりますか?
A: その等級の最高号給に達すると、昇格しない限り昇給は停止します。
Q: 給料表以外にどんな収入がありますか?
A: 地域手当、扶養手当、住居手当、通勤手当、時間外勤務手当、賞与(期末・勤勉手当)などがあります。


Q: 給料表は交渉で変えられますか?
A: 個人の交渉で変更することはできません。給料表は条例で定められており、すべての職員に公平に適用されます。
Q: 民間企業より給料は低いですか?
A: 地方公務員の給料は、地域の民間企業の給与水準に合わせて設定されるため、大手企業より低く、中小企業より高い傾向があります。
まとめ

地方公務員の給料表について、重要なポイントをまとめます。
給料表の基本
- 等級(職位)と号給(経験)の組み合わせで給料が決まる
- 透明性・公平性が確保された制度
- 条例で明確に規定されている
主な給料表の種類
- 行政職給料表(一般的な事務・技術職)
- 公安職給料表(警察官、消防士)
- 医療職給料表(医師、看護師等)
- 教育職給料表(教員)
- その他専門職
昇給の仕組み
- 定期昇給:年1回、標準4号給(約8,000~12,000円)
- 昇格:等級アップで大幅な昇給(約30,000円~)
- 人事評価により昇給幅が変動
自治体による違い
- 規模による給料水準の差
- 地域手当の有無と支給率(0~20%)
- 独自の給料表を設定している自治体もあり
給料表の調べ方
- 自治体ホームページで公開
- 給与条例を確認
- 総務省の統計資料を参照
年収への影響
- 給料表の金額は基本給
- 諸手当と賞与を加えた年収は給料の約1.8~2倍
- 係長級で年収600~800万円程度
地方公務員の給料表は、キャリアプランを立てる上で非常に重要な情報源です。自分の現在位置と将来の見通しを把握し、計画的なキャリア形成に役立ててください。
