「地方公務員は安定しているけど給料が安い」という声を耳にすることがあります。
実際に地方公務員として働いている方、またはこれから就職を検討している方の中には、「本当に給料は安いのか」「生活できるのか」「民間企業と比べてどうなのか」といった不安を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、地方公務員の給料が安いと言われる理由を、具体的なデータと実例をもとに検証し、実際の生活実態、民間企業との比較、そして給料の少なさへの対策まで、包括的に解説します。
地方公務員の給料は本当に安いのか

平均年収データで見る実態
地方公務員全体の平均年収(令和4年度) 総務省「地方公務員給与実態調査」によると
- 全地方公務員の平均給料月額:約325,000円
- 平均年収:約630万円(手当・賞与含む)
年齢別の平均年収
- 20代前半:約350万円~380万円
- 20代後半:約400万円~450万円
- 30代前半:約480万円~550万円
- 30代後半:約550万円~630万円
- 40代前半:約630万円~700万円
- 40代後半:約680万円~750万円
- 50代前半:約720万円~800万円

初任給(大卒・令和6年度)
- 都道府県・政令市:約20万円~22万円
- 中核市:約19万円~21万円
- 一般市:約18万円~20万円
- 町村:約17万円~19万円

「安い」と感じる理由
1. 若年層の給料が低い 初任給や入庁5~10年目の給料は、民間大手企業と比べると低めです。
初任給比較(大卒)
- 地方公務員:約18万円~22万円
- 大手メーカー:約22万円~25万円
- IT大手:約25万円~30万円
- 金融大手:約23万円~28万円
2. 都市部の生活費との乖離 東京や大阪などの大都市圏では、物価や家賃が高く、地域手当を加えても生活が厳しいと感じることがあります。
3. 民間大手企業との比較 同世代の民間大手企業勤務者と比較すると、30代までは見劣りすることが多いです。
4. 昇給ペースの遅さ 民間企業では成果次第で大幅な昇給があるのに対し、公務員は定期昇給が基本で、年間1~2万円程度の上昇にとどまります。
5. ボーナスの低さ 民間企業(特に好業績の企業)では賞与が6ヶ月分以上になることもありますが、地方公務員は年間約4.5ヶ月分が標準です。

「安くない」という側面
一方で、以下のような観点から「決して安くない」という見方もあります。
1. 地域の民間企業平均と比較すると妥当 地方公務員の給与は、その地域の民間企業の平均給与に基づいて設定されるため、地域全体で見れば中程度~やや高めです。
2. 40代以降は安定して高水準 40代以降は年収600万円~800万円台が一般的で、地域の中小企業と比べると高めです。
3. 福利厚生の充実 退職金、共済年金、各種休暇制度など、金銭換算すると相当の価値があります。
4. 雇用の安定性 倒産やリストラのリスクがなく、安定した収入が生涯にわたって保証されます。
自治体規模による給料の違い

都道府県・政令指定都市
平均年収 約650万円~750万円(40歳係長級)
特徴
- 給料水準が最も高い
- 地域手当が高率(東京20%、大阪16%等)
- 昇進機会が多い
初任給例(大卒) 東京都:約218,000円 大阪府:約203,000円 神奈川県:約210,000円

中核市・特例市
平均年収 約600万円~680万円(40歳係長級)
特徴
- 中程度の給料水準
- 地域手当は6~12%程度
- 人口30万人前後の都市
初任給例 金沢市:約193,000円 姫路市:約190,000円
一般市
平均年収 約550万円~630万円(40歳係長級)
特徴
- やや低めの給料水準
- 地域手当は3~6%または無し
- 人口10万人前後の市が多い
初任給例 地方の一般市:約180,000円~195,000円
町村
平均年収 約500万円~580万円(40歳係長級)
特徴
- 最も低い給料水準
- 地域手当はほぼ無し
- 財政規模が小さい
初任給例 地方の町村:約170,000円~185,000円
自治体規模別の給料差(係長級・40歳)
- 都道府県:約650,000円/月(地域手当含む)
- 政令市:約600,000円/月
- 中核市:約550,000円/月
- 一般市:約500,000円/月
- 町村:約450,000円/月
民間企業との給料比較

企業規模別比較
大手企業(従業員1,000人以上)
- 30歳平均年収:約550万円~650万円
- 40歳平均年収:約700万円~900万円
- 地方公務員より高い傾向
中堅企業(従業員100~999人)
- 30歳平均年収:約450万円~550万円
- 40歳平均年収:約600万円~750万円
- 地方公務員と同程度~やや低い
中小企業(従業員100人未満)
- 30歳平均年収:約380万円~480万円
- 40歳平均年収:約500万円~650万円
- 地方公務員より低い傾向
業種別比較
金融・保険業
- 平均年収:約630万円
- 地方公務員と同等~やや高い
情報通信業(IT)
- 平均年収:約610万円
- 大手ITは地方公務員より高い
製造業
- 平均年収:約530万円
- 業種により差が大きい
小売業・サービス業
- 平均年収:約400万円~450万円
- 地方公務員より低い
建設業
- 平均年収:約490万円
- 地方公務員よりやや低い
生涯年収の比較
地方公務員(大卒・定年60歳)
- 生涯年収:約2億4,000万円~2億8,000万円
- 退職金:約2,200万円~2,500万円
- 総額:約2億6,000万円~3億円
大手企業
- 生涯年収:約2億5,000万円~3億5,000万円
- 退職金:約2,000万円~3,000万円
- 総額:約2億7,000万円~3億8,000万円
中小企業
- 生涯年収:約1億8,000万円~2億2,000万円
- 退職金:約1,000万円~1,500万円
- 総額:約1億9,000万円~2億3,000万円
結論 生涯年収で見ると、地方公務員は大手企業にはやや劣るものの、中小企業よりは高く、全体的には「中の上」レベルです。
給料が安いと感じる具体的なケース

ケース1:東京都の若手職員(26歳・独身)
基本情報
- 入庁4年目
- 給料月額:220,000円
- 地域手当(20%):44,000円
- 月収合計:約280,000円(残業代除く)
- 手取り:約220,000円
生活の実態
- 家賃:85,000円(1K・都内)
- 食費:40,000円
- 光熱費:10,000円
- 通信費:8,000円
- 交際費・娯楽:30,000円
- その他:20,000円
- 月合計:約193,000円
- 余剰:約27,000円
ケース2:地方都市の係長(38歳・既婚・子2人)
基本情報
- 勤続16年
- 給料月額:360,000円
- 地域手当(6%):21,600円
- 扶養手当:21,500円
- 住居手当:0円(持ち家)
- 月収合計:約420,000円(残業代除く)
- 手取り:約320,000円
生活の実態
- 住宅ローン:90,000円
- 食費:70,000円
- 光熱費:18,000円
- 通信費:12,000円
- 子どもの教育費:40,000円
- 車両費(2台):30,000円
- その他:40,000円
- 月合計:約300,000円
- 余剰:約20,000円
ケース3:町村の若手職員(28歳・独身)
基本情報
- 入庁6年目
- 給料月額:210,000円
- 地域手当:0円
- 月収合計:約215,000円(残業代除く)
- 手取り:約170,000円
生活の実態
- 家賃:45,000円(1LDK)
- 食費:30,000円
- 光熱費:8,000円
- 車両費:25,000円(田舎で必須)
- 通信費:7,000円
- 交際費・娯楽:20,000円
- その他:15,000円
- 月合計:約150,000円
- 余剰:約20,000円
給料の安さへの対策

1. 副業・兼業の活用
副業解禁の動き 近年、一部の自治体で副業が認められるようになっています。
認められる副業の例
- 講師・講演(専門知識を活かす)
- 執筆活動
- 地域貢献活動(NPO等)
- 農業・林業
注意点
- 事前に許可申請が必要
- 本業に支障をきたさない範囲
- 公務員としての信用を損なわない
- 利益相反にならない
収入の目安 月1~3万円程度の副収入が期待できます。


2. 昇進・昇格を目指す
係長への早期昇進 標準的には入庁15年程度で係長になりますが、優秀な職員は10~12年で昇進することもあります。

昇進による収入増 主任→係長:年収約80万円~100万円アップ
昇進のためのポイント
- 人事評価で高評価を得る
- 専門知識・スキルの向上
- リーダーシップの発揮
- 自己啓発研修の受講

3. 地域手当の高い自治体への転職
転職のメリット 地域手当の差により、年収が100万円以上変わることもあります。
例
- 町村(地域手当0%)から東京都(20%)へ転職
- 給料30万円の場合、月6万円(年72万円)の差
転職の方法
- 社会人経験者採用試験
- 同じ都道府県内の異動(県から市への出向等)
注意点
- 生活費も上がる
- 競争率が高い
- 新しい環境への適応が必要
4. 節約・家計管理の徹底
支出の見直し
- スマホを格安SIMに変更:月5,000円節約
- 保険の見直し:月3,000円~10,000円節約
- サブスクの整理:月2,000円~5,000円節約
- ふるさと納税の活用:実質負担2,000円で返礼品
年間節約額 月15,000円 × 12ヶ月 = 年間18万円の節約
5. 配偶者の就労
共働きによる収入増 配偶者がパートで月10万円稼ぐ場合
- 年間120万円の収入増
- 世帯年収が大幅に上昇
公務員の福利厚生 育児休業が最大3年取得でき、復職しやすい環境が整っています。

6. 財形貯蓄・資産運用
財形貯蓄
- 給与天引きで自動的に貯蓄
- 利息が非課税(財形住宅・年金)
iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 掛金が全額所得控除
- 公務員も加入可能(月12,000円まで)
- 節税効果:年間約2~3万円
NISA
- 投資利益が非課税
- 長期的な資産形成に有効
給料以外のメリット

給料が安いと感じても、地方公務員には以下のようなメリットがあります。
1. 雇用の安定性
- 倒産・リストラのリスクがない
- 将来の収入が予測できる
- 住宅ローンが組みやすい
- 精神的な安心感
2. 充実した福利厚生
休暇制度
- 年次有給休暇:年20日
- 夏季休暇:3日
- 病気休暇:最大90日
- 育児休業:最大3年

その他の福利厚生
- 退職金:約2,200万円~2,500万円
- 共済組合の保険
- 財形貯蓄
- 福利厚生施設の利用
3. ワークライフバランス
残業時間
- 平均月10~30時間(部署による)
- 民間大手企業より少ない傾向
- 有給休暇が取りやすい
転勤の少なさ
- 基本的に同一都道府県・市町村内
- 全国転勤がない
- 家族との時間が確保しやすい
4. 社会的信用
- ローン審査に有利
- クレジットカードの審査が通りやすい
- 賃貸契約がスムーズ
5. 地域貢献のやりがい
- 住民のために働く実感
- 地域社会への貢献
- 公共の利益を実現する喜び
まとめ

地方公務員の給料が安いかどうかについて、重要なポイントをまとめます。
「安い」と言える側面
- 若年層(20~30代)は民間大手企業より低い
- 初任給は約18万円~22万円
- 都市部では生活費との乖離がある
- 昇給ペースが遅い(年1~2万円)
- 賞与は年間約4.5ヶ月分で民間大手より低い
「安くない」と言える側面
- 地域の民間企業平均と比べると妥当~やや高め
- 40代以降は年収600万円~800万円台
- 生涯年収は約2億6,000万円~3億円(中の上)
- 福利厚生が充実
- 雇用が安定している
自治体規模による差
- 都道府県・政令市:最も高い
- 中核市:中程度
- 一般市:やや低い
- 町村:最も低い
給料の安さへの対策
- 副業・兼業の活用
- 資格手当の取得
- 早期昇進を目指す
- 地域手当の高い自治体への転職
- 徹底した節約・家計管理
- 配偶者の就労(共働き)
- 財形貯蓄・資産運用
地方公務員の給料は、民間大手企業と比べると若年層では低めですが、中小企業や地域平均と比べれば決して安くありません。給料以外の安定性、福利厚生、ワークライフバランスを考慮すると、トータルでは魅力的な職業と言えます。
給料の安さが気になる場合は、上記の対策を組み合わせることで、より充実した生活を送ることができるでしょう。
