「会計年度任用職員は年金に加入できるの?」「厚生年金?共済年金?」「将来いくらもらえる?」年金は老後の生活を支える重要な制度です。
結論から言うと、会計年度任用職員は条件を満たせば厚生年金に加入します。
正規の地方公務員とは異なり、共済組合の長期給付(年金)には加入せず、日本年金機構の厚生年金(第1号厚生年金被保険者)が適用されます。
本記事では、会計年度任用職員の年金について、加入条件から保険料、将来の受給額、正規職員との違いまで、初心者でも理解できるよう徹底的に解説します。
会計年度任用職員が加入する年金制度

厚生年金に加入する
会計年度任用職員は、フルタイムで任用されたとしても、社会保険の適用は、厚生年金保険は日本年金機構(第1号厚生年金被保険者)、医療保険は協会けんぽの被保険者となります。地方公務員共済組合の組合員とはならないので、第3号厚生年金被保険者とはなりません。
会計年度任用職員の年金
- 厚生年金保険(日本年金機構)に加入
- 第1号厚生年金被保険者(民間サラリーマンと同じ)
- 共済組合の長期給付(年金)には加入しない
正規職員との違い
正規の地方公務員
- 地方公務員共済組合に加入
- 第3号厚生年金被保険者
- 年金払い退職給付(3階部分)あり
会計年度任用職員
- 日本年金機構の厚生年金保険
- 第1号厚生年金被保険者(民間企業と同じ)
- 3階部分の年金払い退職給付なし
共通点
- どちらも厚生年金に加入(2015年10月の一元化後)
- 1階部分:国民年金(老齢基礎年金)
- 2階部分:厚生年金(老齢厚生年金)
厚生年金の加入条件

加入するための4要件
会計年度任用職員が厚生年金に加入するには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
厚生年金の加入条件
- 労働時間要件:週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金要件:月額報酬が88,000円以上
- 勤務期間要件:2か月を超える雇用が見込まれること
- 学生除外要件:学生でないこと
具体的な判定例
例1:週30時間、月給15万円、任期1年 → すべての要件を満たすため厚生年金に加入
例2:週15時間、月給10万円、任期1年 → 週20時間未満のため加入対象外(国民年金のみ)
例3:週25時間、月給8万円、任期1年 → 月額88,000円未満のため加入対象外
例4:週30時間、月給15万円、任期1か月 → 2か月超の見込みがないため加入対象外
短時間勤務者の国民年金
厚生年金の加入要件を満たさない短時間勤務の会計年度任用職員は、国民年金(第1号被保険者)に個人で加入する必要があります。
国民年金の保険料(令和6年度): 月額16,980円(全額自己負担)
年金保険料

厚生年金の保険料率
厚生年金の保険料率は、標準報酬月額の18.3%です。
この保険料は、本人と事業主(自治体)が折半で負担します。
保険料の負担割合
- 本人負担:9.15%
- 事業主負担:9.15%
具体的な計算例(月給20万円の場合)
- 標準報酬月額:20万円
- 保険料総額:20万円 × 18.3% = 36,600円
- 本人負担額:36,600円 ÷ 2 = 18,300円
給与からの天引き
厚生年金保険料は、給与から自動的に天引きされます。
給与明細の「厚生年金保険料」の欄で確認できます。
給与明細の例
基本給:200,000円
健康保険料:9,900円
厚生年金保険料:18,300円
雇用保険料:600円
所得税:3,000円
住民税:10,000円
―――――――――――――
差引支給額:158,200円
賞与からも控除される
期末手当(ボーナス)が支給される場合、そこからも厚生年金保険料が控除されます。
賞与の保険料率
- 標準賞与額の18.3%(本人負担は9.15%)
- 上限:150万円/回
将来受け取れる年金額

2階建ての年金
会計年度任用職員が将来受け取れる年金は、以下の2階建て構造です。
1階部分:老齢基礎年金(国民年金)
- 満額(40年加入):約80万円/年
- 月額約6.6万円
2階部分:老齢厚生年金
- 報酬と加入期間に応じて決まる
- 平均標準報酬額と加入月数で計算
老齢厚生年金の計算式
平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数 (平成15年4月以降の期間)
具体例(月給20万円で10年間加入)
- 平均標準報酬額:20万円
- 加入月数:120か月(10年)
- 老齢厚生年金:20万円 × 5.481/1000 × 120 = 約13万円/年
- 月額約1.1万円
合計年金額
- 老齢基礎年金:約80万円/年
- 老齢厚生年金:約13万円/年
- 合計:約93万円/年(月額約7.7万円)
正規職員との年金額の差
正規職員(40年勤務)
- 老齢基礎年金:約80万円/年
- 老齢厚生年金:約100~120万円/年
- 年金払い退職給付:約20~30万円/年
- 合計:約200~230万円/年(月額約16~19万円)
会計年度任用職員(10年勤務、月給20万円)
- 老齢基礎年金:約80万円/年
- 老齢厚生年金:約13万円/年
- 合計:約93万円/年(月額約7.7万円)
正規職員と比べて、3階部分がなく、勤続年数も短いため、年金額は大きく下回ります。
年金受給資格

10年以上の加入期間が必要
老齢年金を受給するには、国民年金・厚生年金を合算して10年以上(120か月以上)の加入期間が必要です。
受給資格期間(10年)の考え方
- 国民年金の加入期間
- 厚生年金の加入期間
- 共済年金の加入期間
- これらを合算して10年以上
例
- 会計年度任用職員として5年
- 民間企業で3年
- 国民年金として2年
- 合計10年 → 受給資格あり
受給開始年齢
原則:65歳から
- 老齢基礎年金:65歳
- 老齢厚生年金:65歳
繰上げ受給
- 60歳から受給可能
- 1か月繰り上げるごとに0.4%減額
- 65歳まで繰り上げると24%減額
繰下げ受給
- 75歳まで繰り下げ可能
- 1か月繰り下げるごとに0.7%増額
- 75歳まで繰り下げると84%増額
会計年度任用職員の年金の課題

3階部分の年金がない
正規職員には「年金払い退職給付」という3階部分の年金がありますが、会計年度任用職員にはありません。
年金払い退職給付とは
- 平成27年10月に創設
- 正規職員のみが対象
- 企業年金に相当
- 有期年金(10年or20年)と終身年金の組み合わせ
短期間の加入による年金額の少なさ
会計年度任用職員は任期が1年以内であり、長期勤務が保証されていません。そのため、厚生年金の加入期間が短くなりがちで、将来の年金額が少なくなります。
対策
- できるだけ長く勤務する
- 副業で厚生年金に加入する
- iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用
- つみたてNISAなどで資産形成
勤務時間が短いと加入できない
週20時間未満の短時間勤務の場合、厚生年金に加入できません。
その場合、国民年金のみとなり、老後の年金は老齢基礎年金だけになります。
老齢基礎年金のみの場合
- 満額:約80万円/年(月額約6.6万円)
- これだけでは生活が困難
年金を増やす方法

1. iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で掛金を拠出し、運用する私的年金制度です。
2017年からフルタイムの会計年度任用職員も加入できるようになりました。
iDeCoのメリット
- 掛金が全額所得控除
- 運用益が非課税
- 受取時も税制優遇
掛金の上限
- 会計年度任用職員:月額12,000円
2. つみたてNISA
つみたてNISAは、長期の積立・分散投資を支援するための非課税制度です。
つみたてNISAの特徴
- 年間40万円まで投資可能
- 最長20年間非課税
- いつでも引き出し可能
3. 国民年金基金
厚生年金に加入していない第1号被保険者(国民年金のみ)の場合、国民年金基金に加入できます。
国民年金基金の特徴
- 掛金は全額所得控除
- 終身年金または確定年金
- 月額68,000円が上限
4. 副業での厚生年金加入
副業で週20時間以上、月額88,000円以上の収入がある場合、副業先でも厚生年金に加入できます。
副業での加入のメリット
- 本業と合算して年金額が増える
- 保険料は両方の勤務先で按分
よくある質問

Q1. 会計年度任用職員は共済年金に加入できますか?
A1. いいえ、加入できません。会計年度任用職員は日本年金機構の厚生年金保険に加入します。共済組合の長期給付(年金)には加入しません。
Q2. 正規職員と同じ年金をもらえますか?
A2. いいえ、同じではありません。正規職員には「年金払い退職給付」という3階部分がありますが、会計年度任用職員にはありません。また、勤続年数の違いにより、厚生年金の額も大きく異なります。
Q3. 週15時間勤務でも厚生年金に加入できますか?
A3. いいえ、加入できません。厚生年金の加入には週20時間以上の労働時間が必要です。週15時間の場合は国民年金に個人で加入する必要があります。
Q4. 将来いくら年金をもらえますか?
A4. 加入期間と報酬によって異なります。月給20万円で10年間加入した場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて年額約93万円(月額約7.7万円)程度です。
Q5. 年金を増やす方法はありますか?
A5. はい、あります。iDeCo、つみたてNISA、国民年金基金、副業での厚生年金加入などの方法があります。
Q6. ねんきん定期便で年金額を確認できますか?
A6. はい、確認できます。毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で、これまでの加入実績と将来の年金見込額を確認できます。
まとめ:会計年度任用職員の年金を理解しよう

会計年度任用職員の年金について、重要なポイントをまとめます。
加入する年金
- 厚生年金保険(日本年金機構)
- 第1号厚生年金被保険者(民間サラリーマンと同じ)
- 共済組合の年金には加入しない
加入条件
- 週20時間以上
- 月額88,000円以上
- 2か月超の雇用見込み
- 学生でないこと
保険料
- 標準報酬月額の18.3%
- 本人負担:9.15%(給与天引き)
- 事業主負担:9.15%
将来の年金
- 1階:老齢基礎年金(満額約80万円/年)
- 2階:老齢厚生年金(報酬と期間で決まる)
- 3階:なし(正規職員には年金払い退職給付あり)
正規職員との違い
- 3階部分の年金がない
- 勤続年数が短いため年金額が少ない
- 年金払い退職給付がない
年金を増やす方法
- iDeCo(月額12,000円まで)
- つみたてNISA(年40万円まで)
- 国民年金基金(第1号被保険者のみ)
- 副業での厚生年金加入
会計年度任用職員は厚生年金に加入できますが、正規職員と比べて年金額は少なくなります。
老後の生活を安定させるためには、iDeCoやつみたてNISAなどで自助努力による資産形成も重要です。
ねんきん定期便で自分の年金見込額を確認し、早めに老後の資金計画を立てましょう。
