「地方公務員の年金って月いくらもらえるの?」「老後の生活は安心できる?」「民間企業と比べてどう違う?」地方公務員として働く方や、これから公務員を目指す方にとって、老後の年金額は重要な関心事です。
地方公務員の平均年金額は、月額約18〜22万円(年額約216〜264万円)とされています。
勤続年数や最終給与により個人差がありますが、民間企業の平均(月額約14〜16万円)と比較すると高い水準です。これは、長期間安定して勤務し、一定の給与水準を維持できるためです。
本記事では、地方公務員の年金制度について、平均受給額、計算方法、受給開始年齢、老後資金の準備まで、すべてを網羅的に解説します。
この記事を読むことで、以下のことが分かります。
- 地方公務員の平均年金額(月額・年額)
- 年金額の計算方法(具体例付き)
- 勤続年数別の年金額シミュレーション
- 受給開始年齢と繰上げ・繰下げ受給
- 民間企業との年金額比較
- 退職金との関係
- 老後資金の準備方法
- 年金制度の今後の見通し
老後の生活設計に必要な年金の知識を、正確に理解しましょう。
地方公務員の年金制度の基本

現在の年金制度(厚生年金)
地方公務員は、平成27年(2015年)10月に共済年金が厚生年金に統合され、現在は厚生年金に加入しています。
年金の構成
- 国民年金(基礎年金):全国民共通
- 厚生年金:会社員・公務員が加入
- 年金払い退職給付:公務員独自の上乗せ給付
民間企業との違い: 基本的な制度は民間と同じですが、「年金払い退職給付」という公務員独自の上乗せがあります。
共済年金から厚生年金への一元化
一元化の経緯
- 平成27年10月:共済年金が厚生年金に統合
- 目的:官民格差の是正
- 影響:制度の公平性が向上
経過措置: 平成27年9月以前の期間については、共済年金時代の計算方式が適用されます。
実質的な影響: 一元化後も、公務員の年金水準は民間より若干高い傾向が続いています。
地方公務員の平均年金額

全体の平均年金額
地方公務員の平均年金額は、以下の通りです。
平均年金月額
- 約18万円〜22万円(厚生年金部分 + 基礎年金)
平均年金年額
- 約216万円〜264万円
内訳(概算)
- 国民年金(基礎年金):月額約6.5万円
- 厚生年金:月額約12万円〜16万円
- 合計:月額約18.5万円〜22.5万円
注意点: この金額は満額受給(40年加入)を前提としています。実際の受給額は、勤続年数や給与により異なります。
勤続年数別の平均年金額
勤続年数により、年金額は大きく変わります。
勤続35年の場合
- 平均給与月額35万円
- 年金月額:約20万円
- 年金年額:約240万円
勤続40年(満額)の場合
- 平均給与月額35万円
- 年金月額:約22万円
- 年金年額:約264万円
勤続25年の場合
- 平均給与月額35万円
- 年金月額:約16万円
- 年金年額:約192万円
傾向: 勤続年数が長いほど、年金額は増加します。
男女別の平均年金額
男性の平均年金額
- 月額約20万円〜23万円
- 年額約240万円〜276万円
女性の平均年金額
- 月額約15万円〜18万円
- 年額約180万円〜216万円
差が生じる理由
- 勤続年数の違い(育児休業等)
- 平均給与の違い(管理職比率)
- 短時間勤務の影響
注意点: 近年は女性の勤続年数も伸びており、差は縮小傾向にあります。
年金額の計算方法

厚生年金の計算式
地方公務員の年金額は、以下の計算式で算出されます。
基本計算式
年金月額 = 国民年金(基礎年金)+ 厚生年金
国民年金(基礎年金)
年金月額 = 約6.5万円(満額:40年加入の場合)
加入月数 ÷ 480ヶ月 × 約6.5万円
厚生年金
年金月額 = 平均標準報酬月額 × 0.005481 × 加入月数
平均標準報酬月額: 在職期間中の給料月額の平均(賞与を含む場合あり)
具体的な計算例
ケース1:勤続35年、平均給与月額35万円
国民年金(基礎年金)
- 加入月数:420ヶ月(35年)
- 年金月額:約6.5万円 × (420 ÷ 480) = 約5.7万円
厚生年金
- 平均標準報酬月額:35万円
- 加入月数:420ヶ月
- 年金月額:35万円 × 0.005481 × 420 = 約8.1万円
合計年金月額
- 5.7万円 + 8.1万円 = 約13.8万円
年金払い退職給付(公務員独自)
- 月額約2万円〜3万円(制度により異なる)
総合計
- 約13.8万円 + 2.5万円 = 約16.3万円
年額
- 約195.6万円
注意: この例は簡略化した計算です。実際には、加給年金、在職老齢年金などの調整が入ります。
ケース2:勤続40年(満額)、平均給与月額40万円
国民年金(基礎年金)
- 満額:約6.5万円
厚生年金
- 平均標準報酬月額:40万円
- 加入月数:480ヶ月
- 年金月額:40万円 × 0.005481 × 480 = 約10.5万円
年金払い退職給付
- 月額約3万円
総合計
- 6.5万円 + 10.5万円 + 3万円 = 約20万円
年額
- 約240万円
年金額を左右する要素
1. 勤続年数
- 長いほど年金額が増える
- 40年が満額
- 25年未満だと大幅に減額
2. 平均給与
- 高いほど年金額が増える
- 昇進・昇給が年金に反映される

3. 加入期間
- 途中退職があると減額
- 育児休業期間の扱い(免除期間がある)
4. 繰上げ・繰下げ受給
- 早く受給すると減額
- 遅く受給すると増額
受給開始年齢と繰上げ・繰下げ

基本の受給開始年齢
原則:65歳から
経過措置: 生年月日により、65歳未満から受給開始できる場合があります(特別支給の老齢厚生年金)。
特別支給の老齢厚生年金(経過措置)
- 昭和36年4月1日以前生まれの男性
- 昭和41年4月1日以前生まれの女性
- 60歳〜64歳の間に受給開始
段階的な引き上げ: 年金受給開始年齢は、段階的に65歳に引き上げられています。
繰上げ受給
65歳より前に年金を受給することができます。
受給開始年齢
- 60歳〜64歳の間で選択可能
減額率
- 1ヶ月繰り上げるごとに0.4%減額
- 5年(60ヶ月)繰り上げると、24%減額
計算例: 本来の年金月額が20万円の場合
- 60歳から受給(5年繰上げ):20万円 × (1 – 0.24) = 15.2万円
- 年額:約182.4万円
メリット
- 早く受給できる
- 総受給額が多くなる可能性(早期死亡の場合)
デメリット
- 一生涯、減額された年金額になる
- 長生きすると総受給額が減る
- 障害年金・遺族年金にも影響
繰下げ受給
65歳より後に年金を受給することもできます。
受給開始年齢
- 66歳〜75歳の間で選択可能(令和4年4月から75歳まで延長)
増額率
- 1ヶ月繰り下げるごとに0.7%増額
- 5年(60ヶ月)繰り下げると、42%増額
- 10年(120ヶ月)繰り下げると、84%増額
計算例: 本来の年金月額が20万円の場合
- 70歳から受給(5年繰下げ):20万円 × (1 + 0.42) = 28.4万円
- 年額:約340.8万円
- 75歳から受給(10年繰下げ):20万円 × (1 + 0.84) = 36.8万円
- 年額:約441.6万円
メリット
- 年金額が大幅に増額
- 長生きすると総受給額が増える
デメリット
- 受給開始が遅い
- 早期死亡すると総受給額が減る
損益分岐点
- 繰上げ受給:77歳頃
- 繰下げ受給:82歳頃(5年繰下げの場合)
平均寿命を考えると、繰下げ受給の方が有利な場合が多いです。
民間企業との年金額比較

平均年金額の比較
地方公務員
- 平均年金月額:約18万円〜22万円
- 平均年金年額:約216万円〜264万円
民間企業(厚生年金加入者)
- 平均年金月額:約14万円〜16万円
- 平均年金年額:約168万円〜192万円
差額
- 月額:約4万円〜6万円
- 年額:約48万円〜72万円
差が生じる理由
- 勤続年数が長い
- 平均給与が安定している
- 年金払い退職給付の存在
- 離職率が低い
国民年金のみの場合との比較
国民年金のみ(自営業等)
- 平均年金月額:約6.5万円(満額)
- 平均年金年額:約78万円
地方公務員との差額
- 月額:約11.5万円〜15.5万円
- 年額:約138万円〜186万円
差の大きさ: 国民年金のみと比較すると、地方公務員の年金は約3倍の水準です。
大企業との比較
大企業(企業年金あり)
- 厚生年金:月額約14万円
- 企業年金:月額約4万円〜6万円
- 合計:月額約18万円〜20万円
地方公務員
- 厚生年金 + 年金払い退職給付:月額約18万円〜22万円
比較: 大企業(企業年金あり)とほぼ同水準です。
退職金との関係

退職金と年金の違い
退職金
- 一時金として受給
- 勤続35年で約2,100万円〜2,300万円
- 退職時に一括受給

年金
- 終身、毎月受給
- 月額約18万円〜22万円
- 65歳から死亡まで受給

組み合わせ: 退職金と年金の両方を受給できるため、老後の生活は比較的安定しています。
老後の総受給額
65歳定年退職、85歳まで生きた場合
退職金
- 約2,200万円(一時金)
年金
- 月額20万円 × 12ヶ月 × 20年 = 約4,800万円
合計
- 約7,000万円
注意点: この金額から、税金・社会保険料が引かれます。
年金受給額を増やす方法

長く働く(定年延長)
65歳まで働く
- 厚生年金の加入期間が延びる
- 年金額が増える
- 在職老齢年金の調整に注意
具体例: 60歳定年 → 65歳まで再任用で働く
- 5年間の厚生年金加入
- 年金月額:約1.5万円〜2万円増加
iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用
公務員のiDeCo
- 掛金上限:月額12,000円
- 年間144,000円まで拠出可能
節税効果
- 掛金全額が所得控除
- 年収500万円の場合、年間約4.3万円の節税
運用益
- 運用益は非課税
- 複利効果で資産が増える
受取時
- 60歳以降に受取
- 退職所得控除または公的年金等控除が適用
30年間積み立てた場合の試算
- 月額12,000円 × 12ヶ月 × 30年 = 432万円(元本)
- 運用利回り3%の場合:約700万円
- 増加額:約268万円
繰下げ受給の活用
前述の通り、繰下げ受給により年金額を増やすことができます。
5年繰下げ(70歳から受給)
- 年金月額:42%増額
- 月額20万円 → 月額28.4万円
10年繰下げ(75歳から受給)
- 年金月額:84%増額
- 月額20万円 → 月額36.8万円
条件: 65歳から70歳(または75歳)まで、他の収入源が必要です。
年金制度の今後の見通し

年金額の将来予測
現在の見通し
- 少子高齢化により、年金額の実質的な価値は低下する可能性
- マクロ経済スライドにより、年金額の伸びが抑制される
影響: 将来の年金額は、現在の水準より実質的に目減りする可能性があります。
制度改正の動向
最近の改正
- 繰下げ受給の上限が75歳に延長(令和4年4月)
- 在職老齢年金の基準額引き上げ
今後の方向性
- 長く働くことを支援する制度改正
- 私的年金(iDeCo等)の活用促進
自助努力の重要性
公的年金だけでは不十分: 老後2,000万円問題が示す通り、公的年金だけでは老後の生活費が不足する可能性があります。
必要な自助努力
- iDeCoの活用
- NISA(少額投資非課税制度)
- 貯蓄・資産形成
- 副業(退職後)
老後の生活設計

老後の生活費
夫婦2人の老後生活費(月額)
- 最低限の生活:約22万円
- ゆとりある生活:約36万円
地方公務員の年金収入
- 月額約18万円〜22万円
不足額
- 最低限の生活:0〜4万円
- ゆとりある生活:14万円〜18万円
補填方法
- 退職金の取り崩し
- 貯蓄
- iDeCo・NISA
- 配偶者の年金
生活費シミュレーション
ケース:夫婦とも公務員、65歳から85歳まで
収入
- 夫の年金:月額20万円
- 妻の年金:月額16万円
- 合計:月額36万円、年額432万円
支出
- 生活費:月額28万円、年額336万円
収支
- 月額+8万円、年額+96万円
20年間
- 総収入:約8,640万円
- 総支出:約6,720万円
- 余剰:約1,920万円
結論: 夫婦とも公務員の場合、年金だけで比較的ゆとりのある老後生活が可能です。
まとめ:地方公務員の年金を正しく理解する

地方公務員の平均年金額について、計算方法から将来の見通しまで解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。
年金を理解する7つのポイント
- 平均年金月額は18万円〜22万円
- 年額:約216万円〜264万円
- 民間平均より4〜6万円高い
- 勤続年数と給与により変動
- 年金額は計算式で算出できる
- 国民年金(基礎年金)+ 厚生年金 + 年金払い退職給付
- 勤続35年、平均給与35万円で月額約16万円
- 勤続40年、平均給与40万円で月額約20万円
- 受給開始は原則65歳
- 繰上げ受給:60歳〜(減額)
- 繰下げ受給:66歳〜75歳(増額)
- 繰下げの方が長期的に有利
- 民間企業より年金額が高い
- 民間平均より月額4〜6万円高い
- 理由:勤続年数が長い、給与が安定
- 大企業(企業年金あり)とはほぼ同水準
- 退職金と合わせて老後資金を確保
- 退職金:約2,200万円
- 年金:20年で約4,800万円
- 合計:約7,000万円
- 年金を増やす方法がある
- 長く働く(65歳まで)
- iDeCoの活用(年間14.4万円まで)
- 繰下げ受給(42〜84%増額)
- 自助努力も重要
- 公的年金だけでは不足する可能性
- iDeCo、NISA、貯蓄で補完
- 副業・資産運用も検討
老後生活の見通し
地方公務員の年金は、民間企業と比較して充実しています。
- 単身者:月額18〜22万円で基本的な生活は可能
- 夫婦(共働き):月額36万円前後でゆとりある生活も可能
- ただし、医療費・介護費用等の不測の支出に備える必要
最後に
地方公務員の年金制度は充実していますが、将来的な制度変更や年金額の実質的な目減りに備え、自助努力も必要です。
- 現役時代からiDeCo等で資産形成
- 退職金の計画的な運用
- 健康管理で医療費を抑制
- 生活費の見直し
年金制度を正しく理解し、計画的な老後準備を行うことで、安心した老後生活を送ることができます。
この記事が、地方公務員の年金と老後生活の理解を深める一助となれば幸いです。
