「市役所って、窓口でスタンプを押すだけの仕事じゃないの?」「配属先によって仕事が全然違うって本当?」「実際に働いた人の話を聞きたい。」
就職・転職先として市役所を考えたとき、「具体的にどんな仕事をするのか」がわからないと感じる方は非常に多いです。民間企業であればインターンや企業説明会である程度業務のイメージがつきますが、市役所の場合は情報が少なく、「窓口でお客さんの相手をするだけ」という表面的なイメージで止まってしまいがちです。
しかし市役所の仕事は、住民生活のあらゆる側面を支える幅広い業務で構成されており、窓口対応から政策立案・まちづくり・産業振興・デジタル化推進まで、非常に多岐にわたります。
本記事では、市役所職員の仕事内容を部署別・職種別に具体的かつリアルに解説します。
この記事でわかること
- 市役所職員が実際にどんな仕事をしているか(部署別・職種別の具体的な業務)
- 「窓口対応だけ」ではない市役所の仕事の多様性
- 異動制度・ジェネラリスト型キャリアの仕組み
- 市役所の仕事のやりがいと大変な部分のリアル
- 市役所の仕事に向いている人・向いていない人の特徴
市役所の仕事の全体像:職種の3分類

市役所の職員は大きく3つの職種に分かれる
市役所(市区町村)で働く職員の職種は、大きく「行政職(事務系)」「技術職」「専門職」の3つに分類されます。
| 職種区分 | 内容 | 主な採用試験 |
|---|---|---|
| 行政職(事務系) | 行政全般の事務・企画・窓口対応など | 一般行政職採用試験 |
| 技術職 | 土木・建築・電気・農業・林業など技術専門業務 | 土木職・建築職等の技術職採用試験 |
| 専門職 | 保健師・社会福祉士・学芸員・心理職など資格が必要な業務 | 専門職採用試験 |
最も採用人数が多いのは行政職(事務系)です。

採用後に様々な部署へ異動しながら、法律・行政・財政・福祉・まちづくりなど幅広い業務を経験する「ジェネラリスト」的なキャリアが特徴です。


市役所が担う仕事のスコープ
市役所が担う行政サービスの範囲は、住民の「生まれてから死ぬまで」のあらゆる場面に及びます。
| ライフステージ | 市役所が関わる業務の例 |
|---|---|
| 出生 | 出生届受付・出産一時金・乳幼児医療費助成 |
| 乳幼児期 | 保育所入所・子育て支援・健康診断 |
| 学齢期 | 学校教育・学童保育・奨学金 |
| 青年期 | 成人式・就職支援・住宅支援 |
| 壮年期 | 納税・国民健康保険・介護保険申請 |
| 高齢期 | 介護サービス・高齢者福祉・終活支援 |
| 死亡 | 死亡届受付・相続関連・遺族支援 |
行政職(事務系)の主な部署と仕事内容

行政職の職員は、採用後に2〜4年ごとの人事異動によってさまざまな部署を経験します。主な部署ごとの仕事内容を詳しく見ていきましょう。
① 市民課・住民課(窓口部門)
市役所の「顔」とも言える部署で、住民が最も頻繁に利用する窓口業務を担います。
主な仕事内容:
- 住民票の発行・転入転出の手続き処理
- 戸籍謄本の交付・婚姻届・出生届・死亡届の受付
- マイナンバーカードの申請受付・交付
- 印鑑登録・証明書の発行
- パスポートの申請受付(一部自治体)
リアルな一日の業務イメージ: 引越しシーズンや3月末〜4月初旬は、転入・転出の手続きが1日数十件にのぼることもあり、多様な事情を持つ住民への丁寧かつ迅速な対応が求められます。「窓口で住民の方に笑顔で礼を言われる瞬間」が、この仕事のやりがいだという職員の声が多く聞かれます。
② 税務課・市民税課・資産税課
市の主要財源である税金の賦課・徴収を担う部署です。
主な仕事内容:
- 住民税(市民税・県民税)の算定・課税通知書の発送
- 固定資産税・軽自動車税の管理・賦課
- 税務相談・申告書の受付
- 滞納整理(催告状の送付・差し押さえ等の滞納処分)
- 確定申告期間中の申告相談対応
滞納整理は精神的にタフな業務ですが、「市の財政を支える根幹を担っている」という責任感を持つ職員が多い部署でもあります。
③ 福祉課・生活保護課
社会的に弱い立場の方々を直接支援する、社会的意義の大きな部署です。
主な仕事内容:
- 生活保護申請の受付・審査・ケースワーク(家庭訪問含む)
- 障がい者福祉サービスの調整・申請処理
- 高齢者の介護保険申請・サービス利用支援
- ひとり親家庭への支援(手当・就労支援)
- 生活困窮者の自立支援相談
ケースワーカーの仕事の実態: 生活保護のケースワーカーは、担当世帯を定期的に訪問しながら自立に向けた支援を継続します。1人のケースワーカーが80〜100世帯以上を担当するケースも多く、感情的・精神的な消耗が伴う仕事ですが、「支援した方が自立できた」という達成感は非常に大きいとされています。
④ 子育て支援課・保育課
少子化対策・子育て支援の充実が急務となる中、近年業務量が急拡大している部署です。
主な仕事内容:
- 保育所・認定こども園の入所選考・待機児童対策
- 児童手当・子育て支援給付金の申請受付・支給
- ファミリーサポートセンター・子育て相談の運営
- こども家庭センター(旧:子育て世代包括支援センター)の運営
- 放課後児童クラブ(学童保育)の整備・運営
2023年のこども家庭庁設置に伴い、地方公務員の子育て関連業務も制度改正が相次いでおり、新しい制度知識の習得が継続的に求められます。
⑤ 都市計画課・まちづくり推進課
地域の将来像を形成する、長期的な視点で地域を設計する仕事です。
主な仕事内容:
- 都市計画マスタープランの策定・改定
- 土地利用の規制・誘導(用途地域の設定・変更)
- 市街地開発事業(区画整理・再開発)の計画・調整
- 景観条例の運用・景観審査
- 空き家対策・老朽建築物の管理
住民・事業者・国・都道府県・交通事業者など多様な関係者と調整しながら、10〜20年単位の長期ビジョンでまちの形をデザインする業務は、行政職の中でも特に「まちへの愛着と専門知識」が求められるやりがいの高い仕事です。
⑥ 財政課・企画政策課
自治体の「司令塔」として、全部署の予算配分・政策方向性を決定する核心的な部署です。
主な仕事内容:
- 年間予算の編成(各部署の予算要求を査定・調整)
- 予算の執行管理・決算書の作成
- 総合計画・行政改革計画の策定・進行管理
- 国・都道府県との政策調整・補助金申請
- 議会対応(議案作成・議員質問への答弁準備)
財政課は「各部署の仕事を全部把握しながら市全体を見渡す部署」として、将来的に管理職を目指す職員が必ず経験したい部署とも言われています。
⑦ 産業振興課・観光課・農林水産課
地域経済の活性化と産業の振興を担う、民間との連携が多い部署です。
主な仕事内容:
- 中小企業・小規模事業者への補助金・融資あっせん
- 企業誘致活動(工業団地の活用・企業訪問)
- 観光イベント・プロモーション企画
- 農業・漁業・林業の振興・6次産業化支援
- シティプロモーション(地域ブランドの発信)
- ふるさと納税の返礼品の調達・管理
民間企業のマーケティング・営業に近い感覚で仕事ができる部署で、地域の特産品や魅力を全国にアピールする「攻め」の行政業務です。
⑧ 防災課・危機管理課
住民の命を直接守る、緊張感と責任感が特に求められる部署です。
主な仕事内容:
- 地域防災計画の策定・改定
- 防災訓練・住民への防災教育の実施
- 避難所の指定・管理体制の整備
- 大規模災害発生時の対策本部運営(実動対応)
- 国民保護(武力攻撃・大規模テロ等への対応計画)
- 防災行政無線・情報システムの管理
近年、大規模な自然災害(台風・地震・洪水)が頻発する中で、防災担当職員の役割は急速に重要性を増しています。災害発生時は昼夜を問わず対応する激務ですが、「住民の命を守った」という使命の充実感は他部署にはない種類のやりがいです。
⑨ 情報政策課・デジタル推進課(近年急拡大)
行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を担う、近年最も注目を集める部署です。
主な仕事内容:
- 自治体の基幹システム(住民情報・税務・福祉)の運用管理
- マイナンバー関連システムの整備・セキュリティ対応
- 業務のデジタル化・ペーパーレス化の推進
- AI・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入検討
- 自治体のウェブサイト・SNS運営
デジタル庁設置(2021年)・マイナンバーカード普及加速・自治体DX推進計画を受けて、民間IT企業からの転職者・専門人材の採用を進める自治体が急増しています。
技術職の仕事内容

技術職は専門的な技術知識を活かして、インフラ・公共施設・環境など地域の物理的な基盤を支える仕事です。

土木職
道路・橋梁・河川・公園・下水道などの設計・施工管理・維持管理を担います。
主な業務:
- 市道・橋梁の整備計画・設計発注・工事監督
- 河川改修・治水対策の計画・工事管理
- 公園の整備・維持管理
- 下水道管路の整備・維持管理
- 建設会社・コンサルタントとの協議・監督
建築職
公共施設(庁舎・学校・体育館・公民館等)の設計・建設・維持管理を担います。
主な業務:
- 公共建築物の設計・工事発注・監督
- 既存建物の耐震化診断・改修工事の管理
- 建築確認申請の審査(建築確認申請係)
- 空き家の調査・危険家屋の行政代執行
農業・林業・水産職
地域の第一次産業の振興と自然環境の保全を担う仕事です。
主な業務:
- 農業者への技術指導・補助金申請支援
- 農地の保全・農業基盤整備の調整
- 林道整備・森林の適正管理・林業振興
- 漁業者支援・水産資源の保護管理
専門職の仕事内容

専門職は特定の資格・専門知識を必要とし、特定の領域において高度な専門サービスを提供します。
| 職種 | 主な職場 | 主な業務 |
|---|---|---|
| 保健師 | 保健センター・健康増進課 | 乳幼児健診・健康相談・感染症対策・地区担当 |
| 社会福祉士 | 福祉課・生活保護課・地域包括支援センター | 福祉相談・ケースワーク・サービス調整 |
| 管理栄養士 | 給食センター・保健センター | 学校給食の献立作成・栄養指導 |
| 心理士 | 教育相談センター・子育て支援センター | 相談支援・心理検査・グループ活動 |
| 学芸員 | 博物館・美術館・郷土資料館 | 展示企画・収蔵品管理・調査研究 |
| 獣医師 | 保健所・動物愛護センター | 食品衛生検査・動物疾病対応 |
市役所仕事の特徴:異動・ジェネラリスト型キャリア

2〜4年ごとの人事異動が基本
市役所の行政職で働く大きな特徴のひとつが、定期的な人事異動です。一般的に2〜4年ごとに部署が変わり、窓口業務・税務・福祉・都市計画・財政など全く異なる業務を順番に経験します。
異動のメリット:
- 幅広い行政分野の知識・経験が身につく
- 一つの部署に長くいることで生じる固定観念・マンネリを防ぐ
- 様々な立場・視点で行政全体を俯瞰する能力が育つ
異動のデメリット:
- 専門性を深めにくい(2〜3年で異動すると専門知識が蓄積しにくい)
- 希望した部署に配属されるとは限らない
- 異動のたびに新しい業務・人間関係に慣れる必要がある

「出向」という経験も
都道府県・国・外郭団体・民間企業などへの「出向(派遣)」を経験する職員も多く、他組織の視点・手法を吸収しながらキャリアを広げる機会もあります。

市役所の仕事のやりがい

① 住民の生活に直接・具体的に貢献できる
自分が担当した道路整備が完成する、自分が相談に乗った住民が生活保護から自立できた、自分が企画したイベントで地域が盛り上がった——市役所の仕事の成果は、地域の形として目に見えるかたちで現れます。
民間企業のように売上という数字で成果が見えることは少ないですが、「住民のために働いている」という実感は、この仕事特有のやりがいです。
② 「この地域を変えたい」という思いを形にできる
地方創生・移住促進・空き家対策・産業振興など、地域が抱える課題に対してアイデアを提案し、政策として形にできる環境があります。職員の提案が施策につながる体験は、民間企業の若手社員では得難い達成感です。
③ 幅広い業務経験が「人間力」を育てる
税務・福祉・都市計画・財政・広報……全く異なる業務を経験することで、多角的な問題解決能力・多様な人との対話力・行政全体を見渡す視野が養われます。これは市役所職員ならではの成長体験です。
④ 安定した雇用・充実した福利厚生
原則として身分保障があり、倒産・リストラの心配なし。育児休業・介護休暇・有給休暇取得率が民間より高く、ライフステージに合わせた働き方がしやすい環境が整っています。

市役所の仕事の大変さ・つらい部分

① 住民対応のストレス
窓口や電話での住民対応では、感情的なクレームや理不尽な要求を受ける場面もあります。特に税務・生活保護・福祉担当は、精神的に消耗する対応が多く、メンタルヘルス管理が重要です。
② 繁忙期の長時間残業
年度末(3月)・予算編成時期(10〜12月)・選挙・災害対応時などは長時間残業が続くことがあります。部署によっては慢性的な人手不足で、サービス残業が横行しているケースも社会問題となっています。

③ 縦割り組織・変化しにくい文化
「前例踏襲」「稟議・決裁の時間がかかる」という行政組織特有の文化に、スピード感を求める職員が窮屈さを感じることがあります。近年は改革の機運も高まっていますが、民間と比べると意思決定が遅い部分は否めません。
④ 専門性を深めにくい
2〜4年ごとの異動でジェネラリストとして成長できる一方、「一つの分野を極めたい」「専門家として評価されたい」という志向の方には物足りなさを感じる場合があります。
市役所の仕事に向いている人・向いていない人

向いている人
- 地元・地域への強い愛着や貢献意欲がある人
- 多様な住民・ステークホルダーとの対話・調整を楽しめる人
- 長期的な安定キャリアを重視している人
- 幅広い知識を持つジェネラリストとして成長したい人
- 行政制度・法律・社会政策に関心が高い人
- ライフイベントと仕事を両立させたい人

向いていない人
- 成果主義・高い報酬を最優先したい人
- スタートアップ・変化の速い環境を好む人
- 特定の専門分野を極めたい(異動による断絶を嫌う)人
- 裁量を持って自分のペースで自由に動きたい人
- すぐに目に見える成果を求める人
よくある質問(FAQ)

Q. 市役所の職員は全員窓口対応をするの?
A. いいえ。窓口対応は市民課・住民課など特定の部署の仕事です。財政課・都市計画課・産業振興課など多くの部署では内勤(デスクワーク・調査・企画・調整)が中心になります。
Q. 毎日同じ業務の繰り返しではつまらない?
A. 部署によって業務内容は大きく異なり、2〜4年ごとの異動で全く違う仕事をします。「常に新しいことを学ぶ必要がある」と感じる職員が多く、マンネリとは無縁という声もある一方、異動のたびに慣れ直す苦労を感じる職員もいます。
Q. テレワーク・リモートワークはできる?
A. 窓口対応が必要な部署は難しいですが、企画・内勤系の部署では導入が進んでいます。コロナ禍以降、多くの自治体でテレワーク制度が整備されています。
Q. 残業はどのくらいある?
A. 部署・時期によって大きく異なります。財政課・議会関係・防災関係など繁忙部署は残業が多い傾向にあります。一方、比較的残業が少ない部署もあり、平均的には月10〜30時間程度が多いとされています。
まとめ

市役所の仕事内容について、重要なポイントを整理します。
- 市役所の仕事は「窓口対応」だけでなく、税務・福祉・まちづくり・財政・防災・DX推進など非常に多様
- 職種は行政職・技術職・専門職の3分類で、それぞれ全く異なる専門性が求められる
- 行政職は2〜4年ごとの異動で多様な部署を経験するジェネラリスト型キャリアが特徴
- 「住民の生活に直接貢献できる」「地域の課題を解決できる」という社会的使命感がやりがいの源
- 一方で、住民クレーム・繁忙期の残業・縦割り文化など大変な部分も正直に理解しておく必要がある
- 「地域への愛着・多様な人との対話・長期的な安定キャリア」を重視する方に特に向いている仕事
市役所への就職・転職を考えている方は、インターンシップ・説明会・OB訪問を通じてリアルな業務を体験・確認したうえで、「自分がどの部署でどんな仕事をしたいか」という具体的なビジョンを固めることが、選考突破と入庁後の満足度向上につながります。
