「地方公務員は転勤が多いの?」「どのくらいの頻度で異動するの?」「転勤を拒否することはできる?」地方公務員を目指す方や、すでに働いている方にとって、転勤は人生設計に大きく関わる重要なテーマです。
地方公務員の転勤は、自治体の規模や職種によって大きく異なります。
都道府県職員は県内全域が転勤範囲となる一方、市町村職員は転勤がほとんどない場合もあります。また、転勤に伴う引越し費用や住宅の問題、家族への影響など、考慮すべき点は多岐にわたります。
本記事では、地方公務員の転勤について、頻度や範囲、拒否の可否、手当や補助、家族への影響まで、すべてを網羅的に解説します。
この記事を読むことで、以下のことが分かります。
- 自治体別の転勤頻度と範囲(都道府県・市町村・政令市)
- 転勤の決定プロセスと内示のタイミング
- 転勤を拒否できるケースと現実的な対応方法
- 引越し費用・住宅・単身赴任手当などの経済的支援
- 家族への影響と対処法(子どもの転校・配偶者の仕事)
- 転勤が少ない職種・自治体の選び方
転勤に対する不安を解消し、納得のいくキャリア選択をするための知識を身につけましょう。
地方公務員の転勤とは?基本を理解する

転勤と異動の違い
地方公務員の人事異動には、「転勤」と「異動」という言葉が使われますが、厳密には意味が異なります。
異動(人事異動)
- 意味:勤務場所や担当業務が変わること全般
- 範囲:同じ庁舎内の部署異動も含む
- 頻度:2~5年に1回程度
- 例:市役所本庁の総務課→財政課
転勤
- 意味:勤務地が変わる異動(住居の移転を伴う場合が多い)
- 範囲:本庁から出先機関、または遠隔地への異動
- 頻度:自治体により大きく異なる
- 例:県庁→地方事務所、本庁→離島の支所
一般的に「転勤」は、通勤が困難になるほど遠方への異動を指します。ただし、自治体によっては、すべての人事異動を「転勤」と呼ぶこともあります。

民間企業との違い
地方公務員の転勤には、民間企業とは異なる特徴があります。
地方公務員の転勤の特徴
- 転勤範囲が限定的
- 都道府県職員:その都道府県内のみ
- 市町村職員:その市町村内のみ
- 全国転勤はない(国家公務員とは異なる)
- 転勤頻度が予測しやすい
- 概ね2~5年のサイクル
- キャリアパスである程度予測可能
- 急な転勤は少ない
- 本人の事情が考慮されやすい
- 家族の介護
- 子どもの受験
- 配偶者の仕事
- ただし、必ず考慮されるわけではない
- 転勤拒否のリスクが高い
- 拒否は原則できない
- 拒否すると懲戒処分の可能性
- キャリアに大きな影響
民間企業との比較
| 項目 | 地方公務員 | 民間企業(大手) |
|---|---|---|
| 転勤範囲 | 自治体内 | 全国・海外も |
| 頻度 | 2~5年 | 2~5年 |
| 拒否 | 原則不可 | 企業による |
| 手当 | あり(自治体により異なる) | あり |
| 事情考慮 | されやすい | 企業による |
法的根拠と任命権者の権限
地方公務員の転勤は、法律に基づいた任命権者の権限です。
法的根拠
- 地方公務員法第17条(任命権)
- 地方公務員法第32条(職務上の命令に従う義務)
- 各自治体の職員配置に関する規則
任命権者とは
- 知事、市町村長、教育委員会など
- 職員の任免、給与、懲戒などの権限を持つ
- 人事異動の最終決定権を持つ
職員の義務: 地方公務員法第32条により、職員は「法令等及び上司の職務上の命令に従う義務」があります。転勤命令も職務上の命令であり、原則として従う義務があります。
ただし、以下の場合は違法な転勤として争える可能性があります。
- 業務上の必要性がない
- 不当な目的(いじめ、報復など)
- 著しく不利益が大きい
自治体別の転勤頻度と範囲

都道府県職員の場合
都道府県職員は、比較的転勤が多い傾向にあります。
転勤の範囲
- その都道府県内全域
- 本庁、地方事務所、出先機関、県立施設など
- 離島がある県では離島勤務の可能性も
転勤頻度
- 平均:3~5年に1回
- キャリア初期:やや頻繁(2~3年)
- 中堅以降:3~5年
- 管理職:2~3年
転勤が多い部署
- 税務部門
- 土木・建築部門
- 農林水産部門
- 警察(警察官)
転勤が比較的少ない部署
- 本庁の企画・政策部門
- 専門職(医師、研究職など)
政令指定都市職員の場合
政令指定都市は、市域が広いため転勤の扱いが独特です。
転勤の範囲
- その市内全域
- 本庁、区役所、出先機関など
- 市域が広いため実質的に転勤と同じ
政令市の例
- 横浜市:面積438km²、18区
- 大阪市:面積225km²、24区
- 名古屋市:面積326km²、16区
転勤頻度
- 平均:3~5年に1回
- ただし、住居移転を伴わない異動も多い
- 区役所間の異動が中心
特徴:
- 市内での異動が中心
- 自宅から通勤可能な範囲が多い
- 都道府県職員ほど遠距離の転勤は少ない
一般市町村職員の場合
一般市町村職員は、転勤がほとんどない、または全くないケースが多いです。
転勤の範囲
- その市町村内のみ
- 本庁、支所、出張所、公民館など
転勤頻度
- 小規模市町村:ほぼなし
- 中規模市:稀にあり
- 大規模市:定期的にあり(ただし市内)
市の規模別の転勤状況
小規模市町村(人口5万人未満)
- 転勤:ほぼなし
- 本庁内の部署異動が中心
- 一生同じ庁舎で勤務することも
- 例:町役場本庁のみで勤務
中規模市(人口5~30万人)
- 転勤:稀にあり
- 支所や出張所への異動がある程度
- 自宅から通勤可能な範囲
- 例:市役所本庁→地域の市民センター
大規模市(人口30万人以上、非政令市)
- 転勤:定期的にあり
- 複数の支所・出張所間での異動
- 市域が広い場合、通勤困難な場合も
- 例:本庁→合併前の旧市町村の支所
転勤の有無の確認方法
- 採用試験の募集要項に記載されている場合がある
- 採用説明会で質問する
- 人事担当者に確認する
- 先輩職員に聞く
職種による転勤の違い
同じ自治体でも、職種によって転勤頻度は大きく異なります。
転勤が多い職種
- 一般行政職(事務職)
- 様々な部署をローテーション
- ゼネラリスト育成のため転勤が多い
- 3~5年で異動が基本
- 土木・建築技術職
- 県内各地の建設事務所等へ異動
- 現場監督のため出先機関が多い
- 転勤頻度:高い
- 農林水産職
- 農業改良普及センター等への異動
- 地方勤務が中心
- 転勤頻度:高い
- 税務職
- 各地の税務事務所・県税事務所へ異動
- 転勤頻度:非常に高い
転勤が少ない職種
- 教育職(教員以外)
- 教育委員会、図書館など
- 専門性が高いため異動が少ない
- 転勤頻度:低い
- 医療職(医師、看護師など)
- 県立病院間の異動はあるが頻度は低い
- 専門職として固定配置が多い
- 転勤頻度:低い
- 研究職
- 試験場、研究所などに固定
- 異動はほとんどない
- 転勤頻度:非常に低い
- 消防職
- 消防署間の異動はあるが市内
- 住居移転を伴う転勤は稀
- 転勤頻度:低い
- 技能労務職
- 施設管理、運転手など
- ほぼ異動なし
- 転勤頻度:非常に低い
転勤の決定プロセスと内示のタイミング

人事異動のスケジュール
地方公務員の人事異動には、明確なスケジュールがあります。
標準的な年間スケジュール
10月~11月:自己申告制度
- 異動希望調査票の提出
- 現在の業務状況の報告
- 家族の状況(介護、子どもの受験など)の申告
- 希望部署の記入(必ず叶うわけではない)
12月~1月:人事ヒアリング
- 各部署の人事担当者が聞き取り
- 異動の可能性がある職員への非公式な打診
- 配慮が必要な事情の確認
2月~3月:人事異動の内示
- 2月中旬~下旬:管理職の内示
- 3月上旬~中旬:一般職員の内示
- 内示から発令まで:約2~4週間
4月1日:人事異動の発令
- 辞令交付式
- 新しい部署での勤務開始
4月~9月:引き継ぎと新業務
- 前任者からの引き継ぎ
- 新しい業務の習得
注意点
- 自治体によってスケジュールは異なる
- 緊急の欠員補充などで年度途中の異動もある
- 教員は8月に内示、4月1日発令が多い
内示から発令までの期間
内示を受けてから実際に転勤するまでの期間は、準備にとって重要です。
内示のタイミング
- 一般的:発令の2~4週間前
- 長い場合:1~2ヶ月前
- 短い場合:1週間前(稀だが緊急時)
内示から発令までにすべきこと
すぐに(内示当日~3日以内)
- 家族に報告
- 住居の確認(社宅、民間賃貸など)
- 大まかな引越し計画
1週間以内
- 引越し業者への見積もり依頼
- 子どもの転校手続きの確認
- 配偶者の仕事への影響確認
- 単身赴任の検討
2週間以内
- 引越し業者の決定
- 住居の契約手続き
- 転校手続きの開始
- 現住居の解約手続き
発令まで
- 引越しの実施
- 各種住所変更手続き
- 業務の引き継ぎ書類作成
内示の秘密保持: 内示は正式な発令ではないため、公表前に外部に漏らすことは禁止されています。家族以外には発令まで話さないのが原則です。
異動希望は通るのか
自己申告制度で異動希望を出しても、必ずしも叶うわけではありません。
異動希望が通る確率
- 自治体により大きく異なる
- 一般的な感覚:20~40%程度
- 人気部署への希望:非常に低い
- 不人気部署への希望:比較的高い
希望が通りやすいケース
- 専門性が活かせる部署
- 資格や経験が求められる部署
- 該当者が少ない専門分野
- 育成計画に沿った希望
- キャリアパスとして妥当
- 多様な経験を積む観点から適切
- 組織のニーズと合致
- その部署で人材が必要
- 適性が認められている
- やむを得ない事情
- 親の介護
- 配偶者の転勤
- 子どもの受験・疾病
希望が通りにくいケース
- 人気部署への希望
- 企画部門、広報部門など
- 希望者が殺到する
- 同じ部署に長くいる希望
- ローテーションの原則に反する
- 癒着防止の観点から認められない
- 業務上の理由
- 現部署で後任が見つからない
- プロジェクトの途中
配慮される事情の具体例
- 親の要介護度が高い
- 配偶者の転勤が決まっている
- 子どもが中学3年生・高校3年生(受験)
- 本人や家族の重い疾病
これらの事情は、自己申告票に明記し、必要に応じて証明書類を提出することで考慮されやすくなります。
転勤を拒否できるのか?現実的な対応

転勤命令を拒否できるケース
原則として、地方公務員は転勤命令を拒否できませんが、例外的に拒否が認められる、または争える場合があります。
拒否が認められる可能性があるケース
- 業務上の必要性がない転勤
- 明らかに不当な配置
- 嫌がらせ目的の異動
- 立証は困難だが、訴訟で争う余地あり
- 著しく不利益な転勤
- 通勤に片道3時間以上かかる
- 家族の生活が維持できない
- ただし、「著しく」のハードルは高い
- 健康上の理由
- 医師の診断書がある
- 転勤により治療継続が困難
- 診断書の提出が必須
- 介護の必要性
- 要介護者がいる
- 他に介護できる家族がいない
- 介護保険の認定書類などが必要
現実的には: これらの理由があっても、自治体側が「業務上の必要性が高い」と判断すれば転勤命令は有効となることが多いです。
拒否した場合のリスク
転勤命令を拒否すると、深刻な結果を招く可能性があります。
起こりうる結果
- 懲戒処分
- 戒告、減給、停職、免職
- 正当な理由のない拒否は「職務命令違反」
- 段階的に処分が重くなる
- 分限処分
- 職務に従事しないことを理由に免職
- 懲戒免職ではないが、退職を余儀なくされる
- キャリアへの影響
- 人事評価の大幅な低下
- 昇進・昇格の機会喪失
- 希望部署への配属が絶望的に
- 職場での立場悪化
- 上司・同僚からの信頼喪失
- 仕事を任せてもらえなくなる

現実的な対応方法
転勤命令を受けた際の現実的な対応方法を紹介します。
1. まずは上司に相談
- 内示の段階で事情を説明
- 感情的にならず、事実を淡々と伝える
- 具体的な困難さを数字や資料で示す
- 代替案を提示する(例:1年延期、別の場所など)
2. 人事担当部署への相談
- 上司だけでなく、人事にも直接相談
- やむを得ない事情を文書で提出
- 診断書、介護認定書などの証明書類を添付
3. 単身赴任を選択
- 家族は現住所に残す
- 単身赴任手当を受給
- 定期的に帰省する
- 最も現実的な選択肢の一つ
4. 期限付きの配慮を依頼
- 「子どもが卒業するまで」など期限を設定
- 完全な拒否ではなく、延期を依頼
- 組織側も受け入れやすい
5. 退職を検討
- どうしても転勤できない場合の最終手段
- 依願退職の申し出
- 退職金は受け取れる(勤続年数に応じて)


6. 労働組合に相談
- 組合が交渉してくれる場合がある
- 同様の事例の情報が得られる
- ただし、必ずしも解決するわけではない
7. 弁護士に相談
- 明らかに不当な転勤の場合
- 訴訟も視野に入れる
- ただし、勝訴は困難なケースが多い
最も重要なこと: 感情的に拒否するのではなく、冷静に事情を説明し、組織と対話することが重要です。完全な拒否は最終手段と考えましょう。
転勤が原因で退職する人の実態
転勤を理由に退職する公務員は一定数存在します。
退職理由としての「転勤」
- 公式な退職理由統計には表れにくい
- 「一身上の都合」として処理される
- 実際には転勤が引き金となるケースは多い
転勤退職が多いパターン
- 若手職員(入庁3~7年目)
- 結婚・出産のタイミングと重なる
- 配偶者の仕事との両立が困難
- 地元を離れたくない
- 子育て世代(30代~40代)
- 子どもの教育環境を優先
- 配偶者の仕事を優先
- 親の介護問題
- ベテラン職員(50代)
- 親の介護
- 家族の事情
- セカンドキャリアへの転換
退職を選ぶ際の判断ポイント
- 転職先の目処が立っているか
- 退職金がどれくらい減るか
- 家族の理解が得られているか
- 本当に転勤以外に選択肢がないか
転勤に伴う経済的支援と手当

引越し費用の補助
転勤に伴う引越し費用は、自治体から補助されます。
引越し費用の支給パターン
パターン1:実費支給
- 実際にかかった費用を後日請求
- 領収書の提出が必要
- 上限額が設定されている場合が多い
パターン2:定額支給
- 距離や世帯人数に応じた定額
- 実費より少ない場合、差額は自己負担
- 実費より多い場合、差額は職員の収入に
支給対象となる費用
- 引越し業者への支払い(運送費)
- 梱包材料費
- 不用品処分費(一部のみ)
- 家族の交通費
支給対象外の費用
- 家具・家電の新規購入費
- 住居の敷金・礼金(別途支給される場合あり)
- 不用品処分費(大部分)
- ペットの運送費
具体例(東京都から静岡県への転勤、夫婦+子ども2人の4人家族)
- 実際の引越し費用:約35万円
- 自治体からの支給額:約30万円
- 自己負担:約5万円
注意点
- 必ず事前に人事担当者に確認
- 見積書の提出を求められる場合がある
- 複数社から見積もりを取るよう指示される場合も
- 領収書は必ず保管
住居関連の支援
転勤先での住居についても、様々な支援があります。
1. 公務員宿舎(官舎・職員住宅)
メリット
- 家賃が非常に安い(市場価格の30~50%程度)
- 敷金・礼金が不要または格安
- 職場に近い
- 同僚が近くに住んでいて安心
デメリット
- 築年数が古い物件が多い
- 設備が古い(エアコンなしなど)
- プライバシーが少ない
- 人気で空きがない場合も
家賃例
- 2DK(50㎡):月額2~4万円
- 3LDK(70㎡):月額3~5万円
2. 住居手当
民間の賃貸住宅に住む場合、住居手当が支給されます。
支給条件
- 自己所有でない住宅に居住
- 家賃月額12,000円以上(自治体により異なる)
- 世帯主であること
支給額
- 最高月額28,000円(家賃に応じて変動)
- 計算式:(家賃月額 – 12,000円)× 1/2(上限28,000円)
例:家賃月額8万円の場合
- (80,000円 – 12,000円) × 1/2 = 34,000円
- 上限28,000円のため、支給額:28,000円
- 実質負担:52,000円
3. 転居一時金
転勤に伴う一時的な費用を補助する制度です。
対象費用
- 敷金・礼金
- 仲介手数料
- 火災保険料
- 鍵交換費用
支給額
- 自治体により異なる
- 一般的:10~30万円程度
- 家族の有無や転勤距離により変動
単身赴任手当
家族を残して一人で赴任する場合、単身赴任手当が支給されます。
単身赴任手当の基本
- 目的:別居による二重生活の負担軽減
- 要件:配偶者等と別居して赴任
- 支給期間:赴任から家族と同居するまで
支給額の構成
1. 基礎額
- 月額30,000円(距離に関係なく一律)
2. 加算額
- 赴任先と自宅の距離に応じて加算
- 100km以上300km未満:月額8,000円加算
- 300km以上500km未満:月額16,000円加算
- 500km以上700km未満:月額24,000円加算
- 700km以上:月額30,000円加算
支給額の例
例1:東京→名古屋(約350km)の単身赴任
- 基礎額:30,000円
- 加算額:16,000円
- 合計:46,000円/月
例2:札幌→函館(約300km)の単身赴任
- 基礎額:30,000円
- 加算額:16,000円
- 合計:46,000円/月
例3:大阪→沖縄(約1,500km)の単身赴任
- 基礎額:30,000円
- 加算額:30,000円
- 合計:60,000円/月
帰省旅費
単身赴任者が家族のもとへ帰省する際の旅費も支給されます。
帰省旅費の支給ルール
- 月に1往復分が基本
- 実費(交通費)を支給
- 最も経済的な経路で計算
- 領収書または乗車証明が必要
支給対象
- 公共交通機関(鉄道、バス、飛行機、船)
- 自家用車の場合はガソリン代相当額(距離による)
- 宿泊費は対象外
具体例
東京→名古屋の単身赴任(月1回帰省)
- 新幹線往復:約22,000円
- 年間旅費:約264,000円
札幌→函館の単身赴任(月1回帰省)
- JR往復:約18,000円
- 年間旅費:約216,000円
大阪→沖縄の単身赴任(月1回帰省)
- 飛行機往復:約60,000円
- 年間旅費:約720,000円
注意点
- 毎月必ず帰省しなければならないわけではない
- 帰省しなかった月の旅費は繰り越せない
- 家族が赴任先に来る場合の旅費は対象外
経済的支援の合計イメージ
単身赴任した場合の年間の経済的支援を試算してみます。
東京→名古屋への単身赴任(1年間)の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 引越し費用支給 | 300,000円(初回のみ) |
| 単身赴任手当 | 46,000円 × 12ヶ月 = 552,000円 |
| 帰省旅費 | 22,000円 × 12ヶ月 = 264,000円 |
| 住居手当(赴任先) | 28,000円 × 12ヶ月 = 336,000円 |
| 合計 | 約145万円 |
これらの支援があっても、二重生活による実質的な負担は大きいのが現実です。
家族への影響と対処法

配偶者の仕事への影響
配偶者が働いている場合、転勤は大きな問題となります。
共働き世帯の選択肢
1. 配偶者も転職・退職
- メリット:家族が一緒に住める
- デメリット:配偶者の収入減、キャリア中断
- 現実:配偶者の理解が得られにくい
2. 単身赴任
- メリット:配偶者の仕事を継続できる
- デメリット:別居生活のストレス、費用負担
- 現実:最も多く選ばれる選択肢
3. 転勤を拒否(退職覚悟)
- メリット:家族の生活が変わらない
- デメリット:職を失うリスク
- 現実:極めて稀
4. 週末婚スタイル
- メリット:お互いの仕事を継続
- デメリット:物理的・精神的負担
- 現実:子どもがいない夫婦に多い
配偶者の理解を得るための工夫
- 早めに情報共有する
- 経済的メリット(手当)を説明
- 単身赴任の期限を示す(2~3年など)
- 家族で十分に話し合う
配偶者が公務員の場合
- 同じ自治体なら配偶者の転勤も配慮される場合がある
- 「夫婦同居」を理由に異動希望が通りやすい
- ただし、必ず叶うわけではない
子どもの転校問題
子どもがいる家庭にとって、転校は最大の悩みです。
転校のタイミング別の影響
小学校低学年(1~3年生)
- 影響:比較的小さい
- 適応:早い
- 配慮:新しい環境への不安軽減
小学校高学年(4~6年生)
- 影響:中程度
- 適応:個人差が大きい
- 配慮:友人関係の変化へのケア
中学生
- 影響:大きい
- 適応:難しい場合が多い
- 配慮:学習環境の違い、受験への影響
高校生
- 影響:非常に大きい
- 適応:極めて難しい
- 配慮:転校自体が困難な場合も
受験期の配慮: 多くの自治体では、子どもが中学3年生または高校3年生の受験期には、転勤を配慮する方針があります。
- 自己申告票に明記する
- 学校の在籍証明などを提出
- ただし、100%配慮されるわけではない
転校を避けるための選択肢
1. 単身赴任
- 最も一般的な選択
- 子どもの教育環境を優先
- 父親(または母親)不在のストレス
2. 祖父母宅に預ける
- 夫婦とも転勤する場合の選択肢
- 祖父母の協力が必要
- 子どもへの影響を考慮
3. 寮や下宿
- 高校生の場合の選択肢
- 自立心は育つが費用負担大
- 稀なケース
親の介護問題
親の介護が必要な場合、転勤は深刻な問題となります。
介護を理由とした転勤の配慮
配慮される可能性が高いケース
- 要介護度3以上
- 他に介護できる家族がいない
- 医師の診断書がある
- 介護サービスだけでは不十分
配慮の方法
- 転勤の延期(1~2年程度)
- 転勤先の変更(近隣地域へ)
- 転勤の中止
提出すべき書類
- 介護保険被保険者証(要介護認定)
- 医師の診断書
- 家族構成を示す書類
- 介護サービスの利用状況
現実的な対応
1. 介護サービスの活用
- デイサービス、ショートステイ
- 訪問介護、訪問看護
- 費用は介護保険と自己負担
2. 施設への入所
- 特別養護老人ホーム
- 有料老人ホーム
- 費用負担は大きいが転勤可能に
3. 他の家族との分担
- 兄弟姉妹で介護を分担
- 一人に負担が集中しない工夫
4. 単身赴任
- 配偶者に介護を任せる
- 週末に帰省して介護に参加
5. 退職
- 最終手段
- 介護離職の現実
介護と仕事の両立支援制度
- 介護休暇(年5日、家族2人以上なら10日)
- 介護休業(最長93日)
- 時短勤務
- フレックスタイム
これらの制度を活用しながら、転勤と介護を両立する道を探ることも重要です。
転勤が少ない職種・自治体の選び方

転勤を避けたい人のための自治体選び
転勤を避けたい場合、受験する自治体選びが重要です。
転勤が少ない自治体の特徴
1. 小規模市町村
- 人口5万人未満の市町村
- 庁舎が1つのみ、または少ない
- 支所があっても近距離
- 例:町役場、村役場
2. 特別区(東京23区)
- 区内のみの異動
- 区外への転勤なし
- 住居移転を伴う異動はほぼない
3. 面積が小さい市
- 市域が狭い
- 出先機関が少ない
- 通勤圏内での異動のみ
転勤が多い自治体の特徴
1. 都道府県
- 県内全域が転勤範囲
- 離島がある県は要注意
- 地方事務所が多数
2. 面積が広い市
- 政令指定都市
- 合併により市域が拡大した市
- 支所や出張所が多数
3. 特定の職種が多い自治体
- 税務職が多い自治体
- 土木・農林職が多い自治体
受験前の確認方法
- 採用説明会で質問する
- 先輩職員に聞く
- 募集要項の「勤務地」欄を確認
- 自治体のホームページで組織図を見る
転勤が少ない職種の選び方
同じ自治体でも、職種によって転勤頻度は大きく異なります。
転勤が少ない職種ランキング
1位:研究職
- 試験場、研究所に固定
- ほぼ異動なし
- 専門性が高い
2位:医療職(医師・看護師・薬剤師等)
- 病院間の異動は少ない
- 専門職として固定配置
3位:教育職(司書・学芸員等)
- 図書館、博物館に固定
- 異動は稀
4位:消防職
- 市内の消防署間の異動のみ
- 住居移転を伴う転勤は少ない
5位:技能労務職
- 施設管理、運転手など
- ほぼ異動なし
6位:福祉職(保健師・社会福祉士等)
- 専門性が高く異動少ない
- ただし事務職兼務の場合は異動あり
転勤が多い職種
- 一般行政職(事務職)
- 税務職
- 土木・建築技術職
- 農林水産職
職種選びのポイント
- 自分の適性と転勤の希望を天秤にかける
- 専門職は採用枠が少ない
- 技術職は理系の知識が必要
- 事務職は汎用性が高いがローテーションは多い


転勤に対する考え方のヒント
転勤をネガティブに捉えるだけでなく、ポジティブな面も理解することが重要です。
転勤のメリット
- 多様な経験ができる
- 様々な部署・地域での経験
- 幅広い知識とスキルの習得
- キャリアの幅が広がる
- 人脈が広がる
- 県内各地に知り合いができる
- 将来の仕事に活きる人脈
- 退職後の地域活動にも役立つ
- マンネリ化を防げる
- 新しい環境での刺激
- 成長の機会
- モチベーション維持
- 地域を深く知ることができる
- その地域の特性や課題
- 住民の生活実態
- 政策立案に活きる知識
- 昇進に有利
- 多様な経験が評価される
- 管理職には様々な部署経験が求められる
- キャリアアップの機会
転勤を前向きに捉えるコツ
- 転勤は成長の機会と考える
- 家族と一緒に新しい地域を楽しむ
- 地域の魅力を発見する
- 期限付き(2~3年)と割り切る
ライフステージごとの向き合い方
20代独身
- 積極的に転勤を受け入れる
- 様々な経験を積むチャンス
- 転勤先で人生のパートナーと出会うことも
30代家族あり
- 家族との対話を重視
- 単身赴任も選択肢に
- 子どもの成長に合わせて判断
40代~50代
- 親の介護との両立を考える
- キャリアの総仕上げとして
- 定年までの年数を見据える
まとめ:転勤と上手に付き合うために

地方公務員の転勤について、自治体別の状況から手当、家族への影響まで解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。
転勤を理解するための7つのポイント
- 自治体によって転勤の頻度・範囲は大きく異なる
- 都道府県職員:転勤多い(県内全域)
- 政令市職員:市内での異動中心
- 一般市町村:転勤少ない~ほぼなし
- 受験前に必ず確認すべき
- 職種によって転勤頻度は変わる
- 事務職・税務職・技術職:転勤多い
- 専門職・研究職・医療職:転勤少ない
- 自分の適性と希望を考慮して選択
- 転勤命令は原則として拒否できない
- 拒否は懲戒処分のリスク
- やむを得ない事情は事前に申告
- 対話と調整が重要
- 経済的支援は充実している
- 引越し費用、住居手当、転居一時金
- 単身赴任手当、帰省旅費
- ただし二重生活の負担は大きい
- 家族への影響を最小限にする工夫
- 単身赴任の選択
- 受験期の配慮を依頼
- 介護は早めに相談
- 転勤にはメリットもある
- 多様な経験、人脈形成
- キャリアアップの機会
- 地域を深く知る
- ライフステージに応じた対応
- 若いうちは積極的に
- 家族ができたら慎重に
- 介護期は組織と相談
自治体選びのチェックリスト
☑ 転勤の頻度と範囲を確認したか
☑ 自分の希望職種の転勤状況を調べたか
☑ 家族の理解を得ているか
☑ 長期的なライフプランと照らし合わせたか
☑ 転勤が多い場合の対処法を考えているか
転勤と向き合う心構え
転勤は、地方公務員として働く上で避けられない要素です。しかし、それは必ずしもネガティブなものではありません。
- 若いうちの転勤は、かけがえのない経験と成長の機会
- 家族がいる場合は、家族との対話と調整が不可欠
- 単身赴任も、期限付きと考えれば乗り越えられる
- やむを得ない事情は、遠慮せず組織に伝える
最後に
転勤の有無や頻度は、公務員になる前に必ず確認すべき重要な条件です。「公務員になってから転勤のことを知った」という後悔は避けるべきです。
- 採用説明会で積極的に質問する
- 先輩職員に実態を聞く
- 家族とよく話し合う
- 自分のライフプランと照らし合わせる
転勤が多い自治体を選ぶか、転勤が少ない自治体を選ぶか。それは、あなたの価値観とライフプランによって決まります。どちらが正しいということはありません。
大切なのは、転勤の実態を正しく理解し、納得した上で選択することです。この記事が、あなたの公務員人生における重要な選択の一助となれば幸いです。
