「地方公務員の初任給って実際いくらもらえるの?」「手取りはどれくらい?」「生活していけるのか不安…」これから地方公務員を目指す方、特に学生や第二新卒の方なら、初任給について具体的に知りたいと思うのは当然です。
地方公務員の初任給は、学歴や自治体によって異なりますが、民間企業と比較してどうなのか、実際の手取り額はいくらなのか、一人暮らしは可能なのかなど、リアルな情報が必要でしょう。
本記事では、総務省のデータをもとに地方公務員の初任給を詳しく解説し、手取り計算、自治体別比較、実際の生活費シミュレーションまで、初任給に関する疑問を徹底的に解消します。
地方公務員の初任給の基本

学歴別の標準的な初任給
地方公務員の初任給は、学歴(試験区分)によって異なります。
総務省が公表している「地方公務員給与実態調査」に基づく標準的な初任給は以下の通りです。
大学卒(上級職・大卒程度試験):約182,200円~212,000円
短大卒(中級職・短大卒程度試験):約163,100円~183,000円
高校卒(初級職・高卒程度試験):約150,600円~170,000円
これは基本給(給料月額)であり、ここに各種手当が加算されます。
自治体によって差がありますが、上記が全国平均的な水準です。
初任給の決定方法
地方公務員の初任給は、「給料表」という制度に基づいて決定されます。
給料表は職種ごとに分かれており、行政職給料表が最も一般的です。
給料表は「級」と「号給」の組み合わせで構成されています。
級:職務の責任度合いを示す(1級から始まる)
号給:同じ級内での経験年数を反映する
新規採用者は基本的に「1級1号給」からスタートしますが、この金額が学歴によって異なります。
例えば、大卒は1級1号給で約18万円、高卒は同じく1級1号給でも約15万円といった具合です。
初任給に含まれるもの・含まれないもの
初任給に含まれる基本的な要素
- 給料月額(基本給)
- 地域手当(自治体によって異なる)
- 通勤手当(実費支給)
初任給には含まれないが、条件により支給される手当
- 住居手当(賃貸住宅に住む場合)
- 扶養手当(扶養家族がいる場合)
- 時間外勤務手当(残業した場合)
初任給として提示される金額は、通常「基本給+地域手当」の合計を指すことが多いです。
自治体規模・地域別の初任給比較

都道府県別の初任給水準
地域によって初任給には大きな差があります。
主な要因は「地域手当」の支給率の違いです。
首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)
- 大卒初任給:約205,000円~230,000円
- 地域手当が高い(東京23区は20%)ため、初任給も高水準
関西圏(大阪府・京都府・兵庫県)
- 大卒初任給:約195,000円~215,000円
- 首都圏に次ぐ水準、地域手当は10%~16%程度
政令指定都市
- 大卒初任給:約195,000円~220,000円
- 地域手当が15%~16%程度で比較的高い
地方都市
- 大卒初任給:約185,000円~200,000円
- 地域手当は3%~10%程度
町村部
- 大卒初任給:約180,000円~195,000円
- 地域手当がない、または低率(0%~3%)
このように、東京都と地方の町村では、初任給で月5万円程度の差が生じることもあります。
主要自治体の初任給例(2025年度)
具体的な主要自治体の初任給例を見てみましょう。
東京都(特別区)
- 大卒:約230,000円(基本給182,200円+地域手当20%)
- 高卒:約187,000円(基本給150,600円+地域手当20%)
横浜市
- 大卒:約214,000円(基本給178,500円+地域手当20%)
- 高卒:約177,000円(基本給147,400円+地域手当20%)
大阪市
- 大卒:約211,000円(基本給182,200円+地域手当16%)
- 高卒:約174,000円(基本給150,600円+地域手当16%)
札幌市
- 大卒:約192,000円(基本給182,200円+地域手当6%)
- 高卒:約159,000円(基本給150,600円+地域手当6%)
福岡市
- 大卒:約200,000円(基本給182,200円+地域手当10%)
- 高卒:約166,000円(基本給150,600円+地域手当10%)
地方の一般市(例:人口10万人程度の市)
- 大卒:約185,000円~195,000円
- 高卒:約153,000円~163,000円
町村(例:人口1万人程度の町)
- 大卒:約182,000円~190,000円
- 高卒:約150,000円~158,000円
都道府県職員と市区町村職員の違い
同じ地域でも、都道府県職員と市区町村職員では初任給が若干異なる場合があります。
都道府県職員: 一般的に初任給は統一的な基準で設定されており、地域手当も県庁所在地基準で支給されることが多いです。
市区町村職員: 自治体ごとに独自の給料表を持つ場合があり、財政状況によって初任給に差が出ることがあります。
ただし、大きな差はなく、同じ地域であれば概ね同水準と考えて良いでしょう。
初任給の手取り額を詳しく計算

総支給額と手取り額の違い
初任給として提示される金額は「総支給額(額面)」であり、実際に銀行口座に振り込まれる金額(手取り)はこれより少なくなります。
総支給額から以下が差し引かれます
税金
- 所得税:給与額に応じて計算(初任給では月数千円程度)
- 住民税:前年の所得に課税されるため、新卒の場合は2年目6月から徴収開始(初年度は引かれない)
社会保険料
- 共済組合掛金(健康保険料相当):給与の約4.5%
- 厚生年金保険料:給与の約9.15%
- 雇用保険料:給与の約0.5%
合計すると、総支給額の約15%~18%が差し引かれることになります。
新卒1年目は住民税がないため、手取り率は約82%~85%となります。
具体的な手取り計算例
実際の初任給の手取り額を、具体例で計算してみましょう。
【ケース1】東京都特別区・大卒・一人暮らしの場合
総支給額内訳
- 基本給:182,200円
- 地域手当(20%):36,440円
- 住居手当(家賃8万円の場合):28,000円
- 通勤手当(定期代):10,000円 総支給額:256,640円
控除額
- 所得税:約5,000円
- 共済組合掛金:約11,500円
- 厚生年金保険料:約23,500円
- 雇用保険料:約1,300円 控除額合計:約41,300円
手取り額:約215,000円
【ケース2】地方都市・大卒・実家暮らしの場合
総支給額内訳
- 基本給:182,200円
- 地域手当(6%):10,932円
- 通勤手当(自動車通勤):5,000円 総支給額:198,132円
控除額
- 所得税:約3,500円
- 共済組合掛金:約8,900円
- 厚生年金保険料:約18,100円
- 雇用保険料:約990円 控除額合計:約31,500円
手取り額:約166,600円
【ケース3】政令指定都市・高卒・一人暮らしの場合
総支給額内訳
- 基本給:150,600円
- 地域手当(15%):22,590円
- 住居手当(家賃6万円の場合):28,000円
- 通勤手当:8,000円 総支給額:209,190円
控除額
- 所得税:約4,000円
- 共済組合掛金:約9,400円
- 厚生年金保険料:約19,100円
- 雇用保険料:約1,050円 控除額合計:約33,550円
手取り額:約175,600円
2年目以降の手取り変化
2年目6月から住民税の徴収が始まるため、手取り額が減少します。
上記ケース1(東京都特別区・大卒)の場合
- 1年目:手取り約215,000円
- 2年目:手取り約202,000円(住民税約13,000円が追加で引かれる)
一方で、定期昇給により基本給が年4号給程度上がるため(月額約2,000円~3,000円増)、実質的な減少幅は月1万円程度に抑えられます。

民間企業の初任給との比較

大卒の初任給比較
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、大卒の民間企業の初任給平均は以下の通りです。
全産業平均:約228,000円
業種別では
- 情報通信業:約246,000円
- 製造業:約225,000円
- 金融・保険業:約242,000円
- 卸売・小売業:約218,000円
- 医療・福祉:約221,000円
企業規模別では
- 大企業(従業員1,000人以上):約238,000円
- 中企業(100~999人):約225,000円
- 小企業(10~99人):約210,000円
地方公務員の大卒初任給:約182,000円~230,000円
この比較から、以下のことが分かります。
都市部の地方公務員(東京、大阪など)の初任給は、民間企業の平均とほぼ同水準か若干低い程度です。
地方の地方公務員の初任給は、地域手当が低いため、全国平均より低くなります。ただし、地方では民間企業の初任給も低い傾向にあるため、地域内で比較すれば遜色ありません。
生涯賃金で考えると
初任給だけで判断するのは早計です。
地方公務員の最大の強みは「安定性」と「着実な昇給」にあります。
地方公務員の特徴
- 定期昇給が確実(年4号給、月額約2,000円~3,000円ずつ上昇)
- 雇用が非常に安定
- 退職金が充実(勤続35年で約2,000万円~2,200万円)
- 福利厚生が充実
民間企業の特徴
- 初任給は高めの企業もある
- 業績によって昇給幅が変動
- 企業によっては高収入も期待できる
- リストラや倒産のリスクがある
生涯賃金で比較すると、地方公務員は大企業には及びませんが、中小企業の平均を上回る水準となります。

初任給で一人暮らしは可能?生活費シミュレーション

都市部(東京23区)での一人暮らし
手取り:約215,000円(大卒・東京都特別区の例)
月々の生活費例
- 家賃:80,000円(住居手当28,000円を差し引いた実質負担は52,000円)
- 食費:35,000円(自炊中心)
- 光熱費:10,000円
- 通信費:8,000円(スマホ・ネット)
- 日用品:5,000円
- 交通費:0円(通勤手当で支給)
- 交際費・娯楽:30,000円
- 被服費:10,000円
- その他:10,000円
支出合計:約160,000円 貯蓄可能額:約55,000円
都市部でも、計画的に生活すれば月5万円程度の貯蓄が可能です。ただし、2年目以降は住民税が引かれるため、貯蓄額は4万円程度に減少します。
地方都市(政令指定都市)での一人暮らし
手取り:約176,000円(高卒・政令指定都市の例)
月々の生活費例
- 家賃:60,000円(住居手当28,000円を差し引いた実質負担は32,000円)
- 食費:30,000円(自炊中心)
- 光熱費:8,000円
- 通信費:7,000円
- 日用品:5,000円
- 交通費:0円(通勤手当で支給)
- 交際費・娯楽:20,000円
- 被服費:8,000円
- その他:8,000円
支出合計:約118,000円 貯蓄可能額:約58,000円
地方都市では家賃が安いため、手取りが少なくても十分に生活でき、貯蓄も可能です。
実家暮らしの場合
手取り:約167,000円(大卒・地方都市・実家暮らしの例)
月々の支出例
- 実家への生活費:30,000円
- 食費(昼食・外食):15,000円
- 通信費:5,000円
- 交際費・娯楽:30,000円
- 被服費:10,000円
- 自己投資(書籍・資格取得など):10,000円
- その他:10,000円
支出合計:約110,000円 貯蓄可能額:約57,000円
実家暮らしであれば、手取りが少なくても余裕のある生活ができ、年間70万円程度の貯蓄も可能です。
生活費を抑えるポイント
住居費を抑える
- 初年度は公務員寮や職員住宅を利用する(家賃が大幅に安い)
- 住居手当が上限まで出る範囲で物件を選ぶ
- 通勤時間を多少犠牲にして郊外の安い物件を選ぶ
食費を抑える
- 自炊を基本とする(月3万円程度に抑えられる)
- 職員食堂を活用する(1食400円~600円程度)
- まとめ買いや冷凍保存を活用
通信費を抑える
- 格安SIMを利用する(月2,000円~3,000円)
- 職場のWi-Fiを活用する
初任給以外の収入・支援制度

期末・勤勉手当(ボーナス)
初任給だけでなく、年2回のボーナスも重要な収入です。
初年度のボーナス: 新規採用者は、6月のボーナスは支給されないか、少額になります(在職期間が短いため)。12月のボーナスは約1.5ヶ月分~2ヶ月分程度が支給されます。
初年度のボーナス合計:約30万円~40万円程度
2年目以降のボーナス: 年間約4.5ヶ月分(6月と12月に各2.2~2.3ヶ月分)が標準的です。
初任給が20万円の場合、年間のボーナスは約90万円となります。

時間外勤務手当(残業代)
部署によっては残業が発生し、時間外勤務手当が支給されます。
残業代の計算: 基本給 ÷ 160時間 × 1.25(割増率)× 残業時間
例えば、基本給18万円で月20時間残業した場合: 180,000円 ÷ 160時間 × 1.25 × 20時間 = 約28,000円
残業が多い部署では、月2~3万円の残業代が加算されることもあります。
福利厚生制度
共済組合の各種給付
- 傷病手当金:病気やケガで働けない場合に給与の一部を補償
- 出産費用の補助:出産時に約42万円支給
- 結婚・出産祝い金:自治体によって数万円~十数万円
職員住宅・公務員寮: 多くの自治体で、初任給職員向けの格安な住宅が用意されています。
- 家賃:月2万円~4万円程度(光熱費別)
- 住居手当との併用不可の場合が多い
- 入居期間に制限がある場合も(3年~5年程度)
財形貯蓄制度: 給与から自動的に天引きで貯蓄でき、利率が優遇されます。
職員互助会: 結婚祝い金、出産祝い金、慶弔見舞金などが支給されます。
初任給に関するよくある質問(FAQ)

Q1:試用期間中の給料は減額されますか?
A:いいえ、試用期間中(通常6ヶ月)でも正規の初任給が全額支給されます。試用期間だからといって減額されることはありません。
Q2:初任給の振込はいつですか?
A:自治体によって異なりますが、多くは毎月21日前後に振り込まれます。4月採用の場合、最初の給与は5月21日頃に支給されることが一般的です。初月は日割り計算となる場合もあります。
Q3:初任給は上がっていますか、下がっていますか?
A:近年、わずかですが上昇傾向にあります。人事院勧告に基づき、民間企業の初任給上昇を反映して、地方公務員の初任給も引き上げられています。過去5年間で大卒初任給は約3,000円~5,000円程度上昇しています。
Q4:既卒や社会人経験者の初任給は新卒と同じですか?
A:原則として同じですが、一部の自治体では前職の経験年数を考慮して初任給を加算する「経歴換算」を行う場合があります。例えば、民間企業で3年働いた経験がある場合、その期間を考慮して通常より高い号給からスタートできることがあります。
Q5:院卒の初任給は学部卒と違いますか?
A:はい、修士課程修了者は大卒よりも約1万円~2万円高い初任給が設定されています。博士課程修了者はさらに高くなります。ただし、試験区分が「大卒程度」の場合、院卒でも学部卒と同じ給料表が適用されることが多いです。
Q6:初任給は交渉できますか?
A:いいえ、地方公務員の給与は法律と条例で厳格に定められているため、個別の交渉はできません。給料表に基づいて機械的に決定されます。
Q7:都市部と地方、どちらが生活しやすいですか?
A:一概には言えませんが、手取り額と生活費のバランスで考えると、地方の方が余裕のある生活ができる傾向にあります。都市部は初任給が高いですが家賃も高く、地方は初任給が低めでも生活費も安いため、貯蓄可能額は地方の方が多いケースもあります。
まとめ:地方公務員の初任給で計画的な生活を

重要ポイントの再確認
大卒の初任給は約18万円~23万円で、自治体や地域によって大きく異なります。都市部ほど高い傾向にあります。
手取り額は総支給額の約82%~85%(1年目、住民税なしの場合)で、大卒都市部で約21万円、地方で約17万円程度です。
一人暮らしは十分可能で、計画的に生活すれば月3万円~5万円の貯蓄もできます。特に住居手当を活用することがポイントです。
初任給だけでなくボーナスや福利厚生も充実しており、年収ベースで考えると約350万円~450万円程度になります。
着実な昇給が見込めるため、初任給は民間企業より低めでも、長期的には安定した収入が得られます。
最後に
地方公務員の初任給は決して高くありませんが、安定性、福利厚生の充実、着実な昇給などを考慮すると、十分に魅力的な水準といえます。初任給だけでなく、長期的なキャリアと生涯賃金の視点で判断することをおすすめします。
これから地方公務員を目指す方は、自分が希望する自治体の給与条例や採用情報を確認し、具体的な初任給額を把握した上で、生活設計を立ててみてください。計画的に準備すれば、初任給でも充実した生活を送ることができます。

