地方公務員上級とは、都道府県・政令指定都市・特別区(東京23区)で実施される大卒程度の職員採用試験の総称です。
例年6月に統一日程で実施され、将来の幹部候補として期待される採用区分です。
本記事では、地方上級の定義、試験内容、中級・初級との違い、合格後のキャリアまで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
地方公務員上級とは

地方上級の定義
地方公務員の採用試験において「大学卒程度」の方が受験する試験区分のことを指します。
地方自治体によっては、独自の名称や制度を使用して公務員試験を実施しています。
例えば、都道府県庁や政令指定都市では「地方上級」「Ⅰ類」など、この名称は、一部の自治体でのみ使用されています。
受けたい自治体によって名称が異なるため、必ず受験案内を確認しましょう。
自治体ごとの試験名称の例
- Ⅰ類(1類)
- Ⅰ種(1種)
- 上級職
- 大卒程度
受験業界用語である点に注意
自治体側が「地方上級」という名称の試験を行っているわけではありません。
単なる公務員試験の受験業界用語です。
実際の試験区分の名称は、「1~3類」「上級・中級・初級」「大卒程度・高専・短大卒程度・高卒程度」「A・B・C」など自治体によってまちまちです。
採用後に「地方上級公務員」とか「上級公務員」などの呼ばれ方はしません。
ただ、「地方上級」に合格して採用されると、将来の幹部候補生とされ、昇進のスピードや昇進できる上限、給与など待遇面での優遇されることが少なくありません。

地方上級の対象自治体
都道府県
全国47都道府県の大卒程度試験が地方上級に該当します。広域自治体として、総合的な開発、治山・治水事業、環境問題、産業振興、道路・河川の管理、警察、義務教育・社会福祉の水準維持、国との関係調整事務など、市町村を超えて処理すべき事務や都道府県全体で統一すべき業務といった広域的行政サービスを担います。
政令指定都市
札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市の20市の大卒程度試験が該当します。
特別区(東京23区)
東京都の特別区職員採用試験も地方上級に含まれます。
市役所試験との違い
政令指定都市の大卒区分試験を地方上級と指しますが、政令指定都市以外の市役所職員採用試験のことは「市役所試験」といいます。
地方上級・中級・初級の違い

試験区分の比較表
| 区分 | 想定学歴 | 試験レベル | 実施自治体 | 初任給(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 地方上級 | 大卒程度 | 高い | 都道府県・政令市・特別区 | 約18~20万円 |
| 地方中級 | 短大卒程度 | 中程度 | 一部の都道府県・政令市 | 約16~18万円 |
| 地方初級 | 高卒程度 | 基本的 | 多くの自治体 | 約15~17万円 |
学歴要件ではない
なお、これらの区分は、あくまで試験のレベルの目安であって、受験に際しての学歴が要求されるわけではありません。
ほとんどの自治体では、受験の要件は年齢制限だけというのが一般的です。
年齢制限をはじめとする受験資格さえクリアしていれば、高卒の人が地方上級公務員試験を受けられる場合もあります。
あくまで学力が求められているだけなので、必ずしも学歴は関係ありません。
採用後の違い
地方公務員は、どの部署に配属されるかで仕事内容が決まるため、試験時の区分によって仕事内容が変わることは基本的にありません。
上級で合格したからと言って、はじめから特別な仕事を与えられるわけではありませんし、逆に中級・初級だからいつまでも簡単な仕事ばかりに携わるということもないのです。
しかし、待遇や昇進スピードに違いはあります。
例えば、上級で入った職員は、1級15号から、中級で入った職員は1級10号から…など採用区分によって、入庁時の号級が異なります。
そのため、同期でも採用区分によって給与が異なりますし、昇任試験を受けられるタイミングなども変わってきます。
上級・中級・初級によって、出世のスピードが変わってくると言われているわけです。

地方上級の試験内容

試験の構成
地方上級も他の公務員試験と同様に、「筆記試験」と「面接試験」によって合否が決まります。
筆記試験には、「教養択一」「専門択一」「教養記述」「専門記述」があります。
ですが、全ての地方上級でこの4パターンが出題される訳ではなく、自治体によって異なります。
大まかな傾向として、教養択一、専門択一、教養記述は多くの自治体で出題されますが、専門記述が出題される自治体はごく少数派です。
教養試験(基礎能力試験)
教養試験は「一般知能」と「一般知識」に分かれます。
一般知能(約25問)
- 数的処理(数的推理・判断推理・資料解釈)
- 文章理解(現代文・英文)
一般知識(約25問)
- 社会科学(政治・経済・社会)
- 人文科学(日本史・世界史・地理・思想)
- 自然科学(数学・物理・化学・生物・地学)
- 時事問題
これらに加え、各自治体独自の出題科目が課される場合もあります(○○県の特徴、人権問題など)。
専門試験
一次の筆記試験で出題される専門科目は、一部の例外を除き、法律系、経済系、行政系の科目がほぼ均等に出題されます。
法律系科目
- 憲法
- 民法
- 行政法
- 労働法
- 刑法
経済系科目
- 経済原論(ミクロ経済学・マクロ経済学)
- 財政学
- 経営学
行政系科目
- 政治学
- 行政学
- 社会学
- 国際関係
試験の型(タイプ)
択一試験は出題科目・出題数によって「全国型」「関東型」「中部北陸型」「独自型」に分かれます。
全国型 基本となるのは「全国型」で、教養試験は50問、専門試験は40問で、ともに全問必須回答です。
関東型 「全国型」の問題に問題を足し引きして若干アレンジされるだけです。例えば、関東型の一般知能は全国型の25問から21問だけを採用していますし、一般知識は全国型の25問に4問加えて29問にしているわけです。
中部北陸型 全国型をベースにした独自のアレンジ型です。
独自型 ※北海道、東京都、特別区、大阪府、大阪市は他の地方上級とは別日程で一次試験が実施され、全く独自の試験問題を使用しています。
論文試験
教養記述は各自治体独自の課題が出題されます。
地域の課題や時事問題について、1000字から1500字程度で論述することが求められます。
面接試験
二次試験では個別面接に加え集団討論を実施する自治体が多く、適性試験や論作文(1次で実施する場合もある)を課す自治体もあります。
また、出願時のエントリーシートの提出はほとんどの自治体で必須とされており、この点で国家公務員試験や東京都・特別区とは大きく異なります。
特に地方公務員では人物重視傾向があり、個別面接・集団面接・グループワーク・集団討論など様々な形式で実施されています。
試験日程

統一試験日
ほとんどの地方上級の一次試験は同一日程で実施されます(ここしばらくは6月第4日曜に実施されています)。令和7年度の一部を除いた統一試験日は6月15日でした。
例年6月中旬に1次試験があります。
東京都や大阪府、北海道など独自日程の自治体もありますが、ほとんどが同一日程であるため併願はできません。
早期選考の導入
令和6年(2024年)は、試験日程を早めて春に試験を行う自治体が増えました。
例えば地方上級では、従来型の試験(6月)に加えて3月・4月の早期選考も行われています。
早期選考では、従来型の「教養試験+専門試験」という筆記試験ではなく、民間企業志望者も受験しやすいようにSPIなどの民間採用テストが導入されていることが特徴です。
ただし、同じ自治体では早期試験と従来型試験のどちらかしか受験できないと制限されている場合があります。
一般的に従来型の試験の方が採用人数が多いことがほとんどなので、注意が必要です。
地方上級の難易度

倍率のデータ
総務省が発表した令和4年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果によると、地方上級の倍率は、4.2倍でした。
高卒区分より低く、短大卒区分よりは高い結果となっています。
ただし、大卒程度に比べ高卒区分の採用試験内容が難しい、というわけではありません。
高卒区分の採用予定者数が他の区分より少ないため、倍率が高い傾向にあります。
合格ライン
合格ラインは公表されていませんし、自治体によっても異なりますが、おおむね6割取っていれば合格できると考えていいでしょう。
ただ、教養科目・専門科目ともに最低4割はキープできるようにしてください(いわゆる足切りライン)。
専門科目の勉強に時間を取られがちなのが受験生の一般的な傾向ですが、教養科目で足切りされないように注意が必要です。
国家公務員との比較
地方上級の試験レベルは国家公務員一般職の試験と同程度だと考えられています。
ただ、どちらも学習範囲が広く、一定の学習時間を確保する必要があります。
地方上級の職種

事務系職種
行政職(事務) 最も一般的な職種で、福祉、税務、企画、財政など幅広い部署に配属されます。3~4年程度で部署が変わることが多く、その度に仕事内容も変わっていきます。1つの分野に特化してスキルを伸ばすよりも、様々な業務を経験し、幅広い知見を身に付けることが求められます。
警察行政職 警察署内で事務業務を担当します。警察官ではありませんが、警察組織の一員として働きます。
技術系職種
技術職は、理系の専門知識を生かして働く公務員全般を指していますが、具体的には土木職、農学職、化学職、建築職、機械職、電気電子職、情報職、畜産職など、多くの区分があります。
自治体のハード面での基盤整備にあたる土木職や建築職のほか、化学職は水質検査や環境に関する規制の監視、研究業務などが仕事になります。
心理・福祉職
心理職は住民からの相談に応じ、ケースワークに従事するほか、心理検査などを通して、相談者に一番適した支援方法を提案するなど、心理学の専門知識を生かして業務にあたります。
福祉職は、市町村ごとに設置される福祉事務所で、生活保護などのケースワーカーとして働くことが多くあります。
資格免許職
管理栄養士、保健師、薬剤師、栄養士、獣医、保育士、司書など免許資格を持った方の採用試験が実施され、それぞれの資格を活かした業務に携わっています。
地方上級でも福祉職などの資格免許職は年齢要件の他に資格要件を課すことが一般的です。

地方上級合格後のキャリア

将来の幹部候補
地方上級公務員は、将来の幹部候補として期待を寄せられるのが一般的です。
入社後3〜5年程度でジョブローテーションしながら、幹部に必要とされる経験を積んでいきます。
研修制度の充実
地方公務員として経験を積むだけでなく、日々の業務に効率的に進めるためにもスキルアップしていく必要があります。
そのためにも、各自治体は共通して研修制度が充実しています。
法律上も研修を受ける機会が保障されており、安心して仕事に取り組むことができます(地方公務員法39条1項)。
異動範囲
勤務範囲については、採用された自治体の範囲内での異動となります。
つまり、都道府県庁で採用されれば、その都道府県内が異動範囲となり、市町村役場で採用されればその市町村内が異動範囲となります。
なお、「出向」という形で別の自治体や国の省庁で一定期間働くことも可能な自治体もあります。
給与と昇進
上級で入った職員は、1級15号から、中級で入った職員は1級10号から…など採用区分によって、入庁時の号級が異なります。
そのため、同期でも採用区分によって給与が異なりますし、昇任試験を受けられるタイミングなども変わってきます。
受験準備のポイント

学習時間の目安
地方上級の試験対策には、一般的に1000時間から1500時間程度の学習が必要とされています。
1日3時間勉強すると仮定すると、約1年の準備期間が必要です。
効率的な対策
効率よく勉強するためにも、各自治体の出題科目や問題数をきっちり調べておくことが必要です。
専門試験についても、各科目が全部出題されるところもあれば、選択式の自治体、一部の科目だけ指定されている自治体など様々です。
併願戦略
ほとんどの地方上級が同一日程で実施されるため、基本的に1つしか受験できません。
ただし、独自日程の自治体や早期選考を活用することで、複数の自治体を受験することも可能です。
また、市役所試験は地方上級とは別日程で実施されることが多いため、併願が可能です。
よくある質問

Q1: 高卒でも地方上級を受験できますか?
A: はい。年齢制限などの受験資格さえクリアしていれば、高卒の方でも受験可能です。ただし、一部の自治体では学歴要件を設けている場合もあるため、必ず受験案内を確認してください。
Q2: 地方上級と国家一般職はどちらが難しいですか?
A: 試験レベルは同程度とされています。ただし、勤務地や仕事内容が異なるため、自分の志望に合った方を選ぶことが重要です。
Q3: 民間企業との併願は可能ですか?
A: 可能です。特に早期選考ではSPIなどの民間採用テストが導入されており、民間企業志望者も受験しやすくなっています。
Q4: 専門科目は全科目勉強する必要がありますか?
A: 自治体によって異なります。選択式の場合は、得意科目を中心に勉強することで効率化できます。志望自治体の出題傾向を必ず確認してください。
Q5: 面接対策はいつから始めるべきですか?
A: 筆記試験の合格発表後では遅い場合があります。筆記試験の勉強と並行して、自己分析やエントリーシートの作成は早めに着手しましょう。
Q6: 地方上級と市役所試験はどちらがおすすめですか?
A: 「広域的な行政に関わりたい」「将来は幹部を目指したい」という方は地方上級、「地域住民に近い仕事がしたい」という方は市役所がおすすめです。
まとめ:地方公務員上級を正しく理解する

地方公務員上級とは、都道府県・政令指定都市・特別区で実施される大卒程度の職員採用試験の総称であり、将来の幹部候補として期待される採用区分です。
地方上級の重要ポイント
- 大卒程度の学力レベルを要する試験(学歴要件ではない)
- 例年6月中旬に統一日程で実施
- 倍率は約4.2倍
- 合格ラインは6割程度
- 国家公務員一般職と同レベルの難易度
- 将来の幹部候補として優遇される
試験内容
- 教養試験(一般知能+一般知識)
- 専門試験(法律・経済・行政系)
- 論文試験
- 面接試験(人物重視)
- エントリーシート提出が必須
中級・初級との違い
- 試験レベル:上級(大卒)>中級(短大卒)>初級(高卒)
- 初任給と昇進スピードに差がある
- 仕事内容自体に大きな違いはない
今後の動向
- 早期選考の導入が進む
- SPI等の民間採用テストの活用
- 民間企業との併願がしやすくなる
最後に
地方公務員上級は、公務員試験の中でも人気が高く、競争率も高い試験です。
しかし、しっかりとした準備と対策を行えば、合格は十分可能です。
受験を考えている方は、まず志望自治体の受験案内を確認し、試験内容や日程を把握することから始めましょう。
効率的な学習計画を立て、着実に実力を積み上げていくことが合格への近道です。

