国会で新しい法律を作る方法には大きく分けて「内閣提出法案（政府提案）」と「議員立法」の2種類があります。
ニュースでも「議員立法」という言葉をよく耳にしますが、実際にどのような仕組みで、なぜ数が少ないのか？と疑問に感じている人も多いはずです。
本記事では、議員立法とは何かを“簡単に”解説しつつ、なぜ議員立法は少ないのか、その理由まで深掘りしてわかりやすく説明します。
政治をよく知らない人でも理解できるよう、専門用語はできる限り噛み砕き、図解レベルで丁寧にまとめました。
■ 議員立法とは？簡単に言うと「議員が自分たちで作る法律」
議員立法とは、国会議員が自分たちの判断で法案を作成し、国会に提出することです。
通常、法律案のほとんどは「内閣（政府）」が作りますが、議員自身が政策上必要だと考えた場合、議員立法という形で法案を提出することができます。
● 議員立法の特徴（超簡単）
- 国会議員が直接作る法律
- 政府の意向とは独立して立案できる
- 特定の課題にスピーディーに対応できる
例えば「障害者権利条約の国内法整備」「ストーカー規制法」「NPO法」など、市民団体の要望を受けて議員立法が成立した例もあります。
■ どうして議員立法は少ないのか？その理由を徹底解説
新聞などでは「議員立法の数は少ない」とよく指摘されます。
実際、日本では法律の9割以上が政府提出法案です。
では、なぜ議員立法が少ないのでしょうか？ここではその理由をわかりやすく説明します。
理由1：法律作りには膨大な専門知識が必要だから
法律案を作るには、次のような高度な専門スキルが求められます。
- 法律の構造や用語の理解
- 他の法律との整合性チェック
- 財政影響の分析
- 行政機関の運用を想定した制度設計
これらは専門官僚が得意とする作業です。
議員だけで一から作るのは非常に難しく、作業量も膨大です。
そのため、自然と政府に法案作成が集中しやすくなります。
理由2：議員のスタッフが少ない（人的資源の不足）
日本の国会議員は政策スタッフが極端に少ないことが問題視されています。
アメリカでは議員一人あたり20人以上のスタッフがつくのに対し、日本では秘書は3人だけです。
- 政策調査
- 法案作成
- 制度設計
これを少人数で行うのは事実上不可能です。
そのため、議員立法は物理的に数が増えにくいのです。
理由3：与党は政府提出法案を優先する仕組みがあるため
与党である自民党は、「政府が作った法案を優先的に成立させる」ことを基本方針にしています。
そのため、議員立法の優先度は自然と下がり、「政府案件が終わって時間があれば議員立法も議論する」という流れになってしまいます。
理由4：財源が必要な法案は提出要件が厳しい
財源が必要は法案を議員立法するには
- 衆議院: 議員50人以上の賛成
- 参議院: 議員20人以上の賛成
が必要なため、通常の議員立法の提出要件（衆議院20人以上、参議院10人以上）と比較して、より多くの賛成者が必要となります。
そのため、
- 新しい給付金制度を作る
- 新しい行政機関を設立する
- 税金を使う新制度を作る
こうした法案を議員立法で提出することは非常に難しくなります。
その結果、議員立法で作れる法律は「財源の裏付けが不要なもの」に限られやすく、件数が増えにくくなります。
理由5：与野党の合意が必要で調整が大変
議員立法は原則として与党と野党の十分な合意形成が必要です。
これは議員立法の透明性を高め、公平性を確保するための良い制度ですが、一方で
- 調整に時間がかかる
- 政党間で意見が割れると成立できない
といったデメリットもあります。
そのため「スピード感」を求める政策では政府提出法案が優先されやすくなります。
■ 議員立法が少ないことの問題点とは？
議員立法が少ないことには、民主主義上いくつかの問題があります。
● 1. 国会が「政府承認機関」のようになってしまう
法律のほとんどを政府が作る国は主要民主国家では珍しく、「国会の弱体化」と指摘されています。
● 2. 市民の声が届きにくくなる
議員立法は、市民団体・当事者の声を直接政策に反映できる仕組みです。
数が少ないと市民の声が政治に届きにくくなります。
● 3. 改革スピードが遅くなる
政府は保守的な性格があるため、新しい制度を作るスピードが遅くなりがちです。
議員立法がもっと活性化すれば、政治の動きは早くなると言われています。
■ 議員立法を増やすにはどうすればいい？
● 1. 議員の政策スタッフを増やす
専門知識を持つスタッフが増えれば、議員はもっと積極的に法案を作れるようになります。
● ２. 党派を超えた議員連盟の活性化
議員連盟は議員立法の中心的な役割を果たすため、運用が強化されれば数は増える見込みがあります。
■ まとめ｜議員立法とは？なぜ少ないのか？
最後に、本記事の内容を簡単にまとめます。
●議員立法とは？
国会議員が作成し提出する法律案のこと。
●簡単に言うと？
政府でなく議員自身が作る法律。
●議員立法が少ない理由
- 法律作成には専門知識が必要
- 議員スタッフが少ない
- 与党は政府法案を優先する
- 財源が必要な法案は政府しか提出できない
- 与野党の調整が大変
議員立法は民主主義の健全性を保つために重要ですが、日本ではまだ十分に活用されていません。
今後は、政治の透明性や議会機能の強化によって、より活発になることが期待されています。
本記事が「議員立法とは何か？」「なぜ少ないのか？」を理解する手助けになれば幸いです。
