令和2年4月、地方公務員法・地方自治法の改正によって全国の自治体で導入された 会計年度任用職員制度。
「同一労働同一賃金」を踏まえ、従来の非正規公務員の待遇改善を目的として作られた制度です。
しかし、実際に働く人の声を見ると、
「会計年度任用職員はひどい待遇のまま」
「制度が始まって逆にひどくなった」
「以前より働きにくくなった」
といった批判も少なくありません。
では、会計年度任用職員は本当に「ひどい」のか?制度開始前後で待遇はどう変わったのか?
この記事では、
- 会計年度任用職員が「ひどい」と言われる理由
- 制度移行で待遇は改善したのか、それとも悪化したのか
- 実際に働いている人たちの状況から見えるリアル
を、地方自治体職員の視点でわかりやすく解説します。
■ 会計年度任用職員に移行して、多くの非正規公務員が“実質クビ”に

会計年度任用職員制度開始後、全国の自治体で大量の非正規公務員が雇い止めになりました。
理由は単純で、会計年度任用職員の導入によって人件費が上がり、予算内で雇える人数が減ったためです。
制度開始後は、
- ボーナス(期末手当)
- 退職手当(一定条件)
などが支給されるようになり、1人あたりの年間人件費が増加しました。
例として、年間予算が1,000万円の部署では、
導入前:1人あたり200万円→ 5人雇える(=1,000万円)
導入後:1人あたり220万円→ 4人しか雇えない(=880万円)
このように、人数調整のために非正規職員が雇い止めとなり、“制度導入=クビ”という状況が全国で発生しました。
会計年度任用職員が「ひどい制度だ」と言われる大きな理由の一つです。
■ ボーナス導入の裏で「毎月の給料が減額」されてしまった

会計年度任用職員になり、ボーナスが支給されること自体は大きな改善です。
しかしその反面、毎月の給料は大幅にカットされた自治体が多いという実態があります。
例:地方自治体の典型的な変更
制度前(臨時・嘱託)
- 月収:16万円
- 年収:192万円
制度後(会計年度任用職員)
- 月収:14万円
- ボーナス:13万円 × 2回
- 年収:194万円
年収はわずかに増えているものの、毎月の手取りは約2万円減、ボーナス時期まで生活が厳しくなる、という状態になりました。
そのため、「制度前よりも生活が苦しくなり、むしろ待遇がひどい」という声が多い理由の一つです。
■ 何年働いても給料がほぼ変わらない

会計年度任用職員には昇給制度がありますが、昇給があるのは フルタイム会計年度任用職員だけです。
多くの自治体では、臨時・嘱託としてフルタイムで働いていた人でさえ、制度導入でパートタイム扱いに変更され、昇給が消滅しています。
また、パートに昇給を認めている自治体でも、
- 昇給は年に1号給だけ
- 上限が決まっている
- 勤務成績次第で昇給しない人も多い
という状況です。
つまり、「3年目のベテランと、初日の新人が同じ給料」「責任や業務量が増えても給与は変わらない」という“ひどい待遇”が横行しています。
■ 「毎年クビになる」不安定すぎる雇用形態

会計年度任用職員の任期は、最長でも 1年間(4/1〜3/31)です。
事実上、「毎年度末にクビになる可能性がある不安定雇用」といえます。
勤務成績が良好であれば更新されますが、法律上、任用更新には「上限2回」という制限あり合計 3年間しか継続できません。
3年で上限に達しても、公募に応募し直せば再任用は可能ですが、
- 民間企業の「無期転換ルール(5年ルール)」は適用外
- 何年働こうと常に1年契約
- 雇い止めは法的に問題にならない
という、極めて不安定な仕組みです。
これを「ひどい」と感じる人が多いのは当然と言えます。
■ 正規職員並みに重い業務を任される職場もある

会計年度任用職員の仕事内容は自治体によって異なりますが、福祉部門は特に業務量が過酷です。
例えば、
- 生活保護のケースワーク
- 障害福祉サービスの認定
- 子育て支援の相談業務
など、正規職員とほぼ同じ責任を負わされるケースもあります。
それなのに、
- 給料は正規の半分以下
- 昇給もほぼなし
- 任期は1年ごと
「同一労働同一賃金」を掲げた制度でありながら、実態は真逆という例が多く、“待遇がひどすぎる”と批判される大きな理由になっています。
■ それでも、制度導入で以前より改善された点もある

ここまで「ひどい」部分を中心に解説しましたが、制度導入で確実に改善した点もあります。
◆改善点まとめ
- ボーナスが支給されるようになった
- 年収は微増した人が多い
- 労働時間が短縮された自治体もある
- 有給休暇を年間通じて自由に使えるようになった
- 翌年度への繰越が可能になった
- ハローワーク・自治体HPでの公開募集が必須になり、採用の公平性が向上
「ひどい面ばかりではない」というのも事実です。
■ まとめ:会計年度任用職員は“生涯の仕事には向かない”が、パートとしては悪くない

総合的に見ると、会計年度任用職員は、
- 若い人が長く働くには厳しい
- 独身で生計を立てるには不安定すぎる
- 毎年の雇い止めリスクが大きい
そういう意味では「ひどい」制度と言える
一方、
- 主婦・主夫層
- 学生
- 本格的に就職する前のアルバイト
- 短時間で安定した公務員系の仕事を求める人
こういった人にとっては、コンビニやスーパーのパートより好待遇で働けるケースも多く、決して悪い選択ではありません。
そのため人気が高く、“雇い止め後に裁判を起こして再雇用を求める人” が出るほどです。
■ もっと詳しく知りたい方はこちら
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