2024年6月28日、人事院が非正規公務員の「3年目公募」を撤廃する大きな制度変更を発表しました。
これにより、会計年度任用職員として働ける期間が大きく変わることになります。
「会計年度任用職員って何年働けるの?」「3年で辞めなきゃいけないって本当?」「再任用の上限はあるの?」こうした疑問を持っている方は多いでしょう。
本記事では、2024年最新の情報をもとに、会計年度任用職員として何年働けるのか、再任用の仕組み、5年ルールとの関係、自治体ごとの違いまで、初心者でも理解できるよう徹底的に解説します。
会計年度任用職員の基本的な任期

任期は原則1年
会計年度任用職員の任期は、会計年度(4月1日から翌年3月31日)に合わせて最長1年間となっています。
従来の一部の非常勤職員(臨時的任用職員)の任期は最長6か月でしたが、それより長い勤続が可能になりました。
任期の期間
- 原則:1年間(4月1日~翌年3月31日)
- 年度途中採用の場合:採用日~当該年度の3月31日
再任用とは
再任用とは、任期満了後に同じ職に再び任用されることです。

ただし、法的には「新たな職に改めて任用されたもの」と整理されます。
つまり、継続雇用ではなく、毎年新しく採用されるという扱いになります。
このため、再任用された場合でも、翌年度の初めの1か月間は条件付き採用(試用期間)となります。

2024年6月の大きな制度変更

「3年目公募」の撤廃
人事院は2024年6月28日に、国の非常勤職員のうち期間業務職員の採用について定めた通知文書を改正し、公募によらない再度の採用回数の上限を連続2回までとする取り扱い(「3年目公募」)を撤廃しました。
従来のルール(2024年6月まで)
- 公募によらない再任用:最大2回まで
- 3年目以降:再度公募に応募が必要
- 実質的な上限:3年間
新しいルール(2024年6月28日以降)
- 公募によらない再任用:上限回数撤廃
- 勤務実績が良好なら継続的に再任用可能
- 理論上は定年まで働ける可能性

総務省も対応
この改正を受けて、総務省も同日、「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)」から例示していた国の取り扱いを削除しました。
総務省は「具体の取扱いについては、各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ適切に対処されたい」と通知しています。
変更の背景
人事院が2024年8月以降に実施した各省庁へのヒアリングの中で、再採用者の3年目に公募することで、能力や経験のある職員が公務職場から流出しているとの指摘を受けたため、見直すことになりました。
優秀な人材の確保が目的です。
自治体ごとの対応状況

自治体によって異なる上限
2024年6月の制度変更後も、各自治体の対応は分かれています。
主な対応パターン
1. 上限なし(制限撤廃)
制度変更を受けて、再任用回数の上限を撤廃する自治体が増加しています。
2. 従来通り3年上限(最大2回の再任用)
一部の自治体では、引き続き3年を上限としています。
3. 4年上限(最大3回の再任用)
市によっては、「最大3回まで再任用ができ、最長4年間の勤務を続けることができます」としている自治体もあります。
4. 独自の上限設定
5年、10年など、自治体独自の上限を設けている場合もあります。
2025年1月の調査結果
自治労連が2024年10月29日から12月6日にかけて実施した調査(31都道府県の484自治体が回答)によると、制度変更後の自治体の対応は以下の通りです。
再任用上限の見直し状況
- 見直しを検討中・実施予定の自治体が相当数
- ただし、全国的に統一された対応ではなく、地域差が大きい
お住まいの自治体の確認方法
確認方法
- 自治体の公式ウェブサイトで会計年度任用職員の募集要項を確認
- 人事担当課に直接問い合わせる
- 労働組合がある場合は相談する
自治体によって対応が異なるため、必ず確認することが重要です。
実質的に何年働けるのか

制度変更前(2024年6月まで)
原則:最長3年間
- 1年目:初回任用
- 2年目:1回目の再任用(公募なし)
- 3年目:2回目の再任用(公募なし)
- 4年目以降:再度公募に応募して選考を受ける必要あり
3回の再任用を終えてから働き続けたい場合には、初回同様に再度求人に応募し、選考を経て採用される必要がありました。
制度変更後(2024年6月28日以降)
理論上:定年まで可能
ただし、以下の条件があります。
継続雇用の条件
- 勤務成績が良好であること
- 毎年の人事評価で一定以上の評価
- 面接および従前の勤務実績に基づく能力実証
- 業務の必要性が継続していること
人事院は「3年目公募」を撤廃する一方で、依然として任期については原則1年までとし、採用の原則はあくまで公募を維持するとしています。
また、公募によらない再採用であっても面接および従前の勤務実績に基づく能力実証を求めており、恣意的な「雇止め」の不安が解消されたとはいえない状況です。

実際に長期勤務している事例
制度変更前から、自治体によっては独自の判断で長期勤務を認めているケースもありました。
- 10年以上勤務している会計年度任用職員
- 定年まで働いた非正規職員の事例
- 誰一人として任用終了されず全員定年まで働けるようにしている自治体
ただし、これらは例外的なケースであり、制度変更後にどこまで一般化されるかは今後の動向次第です。
5年ルール(無期転換ルール)との関係

民間企業の5年ルール
民間企業では、労働契約法に基づき、有期雇用労働者が5年以上働けば無期労働契約に切り替えられる「無期転換ルール」があります。

民間企業の場合
- 同じ職場で通算5年以上勤務
- 労働者からの申し出により無期雇用に転換
- 雇用の安定が図られる
会計年度任用職員には適用されない
しかし、会計年度任用職員は地方公務員の身分であるため、労働契約法が適用されず、無期転換ルールも適用されません。
そのため、任用期間が通算5年以上になったとしても、任期の定めのない正規職員に転換されることはありません。

正規職員になる方法
会計年度任用職員が正規職員になるためには、学卒者や民間経験者向けの競争試験を受験し、合格する必要があります。
正規職員への道
- 一般職員採用試験(年齢制限あり)
- 社会人経験者採用試験(自治体によって実施)
- 内部登用試験(実施している自治体は限定的)
長期勤務のメリットとデメリット

メリット
1. 安定した雇用(制度変更後)
3年目公募が撤廃されたことで、能力が認められれば継続的に働ける可能性が高まりました。
2. 専門性の蓄積
同じ職場で長く働くことで、専門的な知識や経験を深められます。
3. 職場での信頼構築
長期勤務により、職場での人間関係や信頼関係が構築されます。
4. 実質的な昇給の可能性
再度の任用時も初回同様に経験年数などを考慮するため、実質的な昇給となる可能性もあります。
デメリット
1. 依然として1年契約
上限が撤廃されても、任期は1年ごとの更新です。雇用の不安は完全には解消されていません。
2. 正規職員への転換なし
どれだけ長く働いても、自動的に正規職員になることはありません。
3. 毎年の試用期間
再任用された場合でも、毎年1か月間の条件付き採用(試用期間)があります。
4. 昇給幅が限定的
正規職員と比べて、昇給幅は限られています。
5. 退職金の制約
パートタイム職員には退職金が支給されません。フルタイムでも6か月以上の勤続が条件です。
他の自治体・職種への転職

転職という選択肢
1つの自治体で長期勤務が難しい場合、他の選択肢もあります。
1. 他自治体の会計年度任用職員
- 異なる自治体で新たにスタート
- 給与や勤務条件が改善される可能性
- 経験を活かせる職種を選ぶ
2. 民間企業への転職
- 無期雇用の可能性
- キャリアアップの機会
- 公務員経験は評価される場合も
3. 正規公務員試験への挑戦
- 社会人経験者採用試験
- 年齢制限の確認が必要
- 合格すれば安定した雇用
職種による違い
会計年度任用職員の約3割が「一般事務職員」です。
次いで「技能労務職員」「保育所保育士」が多くなっています。
専門職の場合
- 図書館司書
- スクールカウンセラー
- 保育士
- 看護師
専門職は需要が高く、他の自治体や民間での転職も比較的容易な場合があります。
長期勤務を実現するためのポイント

1. 勤務成績を良好に保つ
継続的な再任用の最も重要な条件は、勤務成績が良好であることです。
意識すべきこと
- 業務を確実に遂行する
- 期限を守る
- コミュニケーションを大切にする
- 自己研鑽を続ける
2. 人事評価に注意
多くの自治体で人事評価制度が導入されています。
評価のポイント
- 目標設定を明確にする
- 進捗状況を上司と共有する
- 改善点を指摘されたら真摯に対応
- 実績を記録しておく
3. 自治体の動向を把握
お住まいの自治体が再任用上限をどう扱っているか、常に最新情報を確認しましょう。
情報収集方法
- 自治体の公式発表
- 人事担当課への問い合わせ
- 労働組合からの情報
- 同僚との情報交換
4. スキルアップ
専門性を高めることで、継続雇用の可能性が高まります。
スキルアップの方法
- 業務に関連する資格取得
- 自治体が実施する研修への参加
- 自己学習
- 他部署の業務理解
5. 労働組合への加入
労働組合に加入することで、以下のメリットがあります。
- 雇用条件の改善交渉
- 不当な扱いへの対応
- 最新の制度情報の入手
- 仲間との連帯
よくある質問

Q1. 2024年6月の制度変更で、すべての自治体で上限がなくなったのですか?
A1. いいえ、国の通知が変わっただけで、各自治体の判断に委ねられています。実際の運用は自治体によって異なるため、お住まいの自治体に確認する必要があります。
Q2. 5年働けば正規職員になれますか?
A2. なりません。民間企業の5年ルール(無期転換ルール)は、会計年度任用職員には適用されません。正規職員になるには、公務員試験に合格する必要があります。

Q3. 勤務成績が良好なら必ず再任用されますか?
A3. 必ずとは限りません。勤務成績が良好であることは前提ですが、業務の必要性、予算、組織の事情なども影響します。また、面接や能力実証も求められます。
Q4. 再任用を拒否されたら不当ではないですか?
A4. 明確な理由なく拒否された場合は不当な可能性があります。労働組合や弁護士に相談することをおすすめします。ただし、予算削減や業務廃止など、正当な理由がある場合もあります。
Q5. 10年、20年働いている人はいますか?
A5. はい、自治体によっては長期勤務の事例があります。制度変更前から独自の判断で長期雇用を認めていた自治体もあります。今後、制度変更により長期勤務者が増えることが期待されます。
Q6. 途中で他の自治体に移ることはできますか?
A6. 可能です。新しい自治体で改めて応募・選考を受ける必要がありますが、経験が評価される場合もあります。ただし、勤続年数はリセットされます。
まとめ:2024年の制度変更で可能性が広がった

会計年度任用職員として何年働けるかについて、重要なポイントをまとめます。
基本的な任期
- 原則:1年間(4月1日~翌年3月31日)
- 再任用の仕組み:毎年新たに任用される扱い
- 条件付き採用:再任用でも毎年1か月の試用期間
2024年6月の大きな変更
- 「3年目公募」が撤廃:人事院が2024年6月28日に発表
- 再任用回数の上限なし:理論上は定年まで働ける可能性
- ただし自治体次第:各自治体の判断に委ねられている
制度変更前後の違い
変更前
- 最長3年間(公募によらない再任用は最大2回)
- 3年目以降は再度公募が必要
変更後
- 上限回数撤廃(自治体が採用した場合)
- 勤務成績が良好なら継続可能
- ただし1年契約は継続
実際に何年働けるか
- 自治体による:3年上限~上限なしまで様々
- 条件次第:勤務成績、人事評価、業務の必要性
- 確認が必要:お住まいの自治体に必ず確認を
5年ルールとの関係
- 無期転換ルールは適用されない
- 5年以上働いても正規職員にはならない
- 正規職員になるには公務員試験が必要
長期勤務のために
- 勤務成績を良好に保つ
- 人事評価で高評価を得る
- 自治体の動向を常に確認
- スキルアップを継続
- 労働組合への加入も検討
今後の展望
2024年6月の制度変更は、会計年度任用職員の雇用安定に向けた大きな一歩です。
しかし、人事院は依然として任期については原則1年までとし、採用の原則はあくまで公募を維持しています。
自治労連などの労働組合は、「任期の定めのない短時間勤務公務員制度」の創設など、非正規公務員の雇用不安を根本から払しょくする施策を求めて運動を続けています。
相談窓口
- お住まいの自治体の人事担当課
- 所属する労働組合
- 自治労連など公務員労働組合
- 弁護士・社会保険労務士
会計年度任用職員として働く上で、何年働けるかは重要な関心事です。
2024年の制度変更により可能性は広がりましたが、実際の運用は自治体によって異なります。
最新の情報を確認しながら、自分のキャリアプランを考えていきましょう。
