「再度の任用って何?」「更新と何が違うの?」「3年で辞めなきゃいけないの?」会計年度任用職員として働く方にとって、再度の任用は最も重要な関心事の一つです。
2024年6月、人事院が「公募によらない再度の任用は原則2回まで」とする「3年目公募」ルールを撤廃しました。
これにより、再度の任用のあり方が大きく変わりました。

本記事では、会計年度任用職員の再度の任用について、基本的な仕組みから2024年の制度変更、公募の実態、能力実証の方法まで、初心者でも理解できるよう徹底的に解説します。
再度の任用とは

再度の任用の基本概念
再度の任用とは、任期満了後に同じまたは類似の職に再び任用されることです。
民間企業でいう「契約更新」に似ていますが、法的な扱いは異なります。
重要なポイント: 再度の任用は、あくまで新たな職に改めて任用されたものと整理すべきであり、任期ごとに客観的な能力実証に基づき、十分な能力を持った者を任用することが必要
つまり、「雇用契約の継続」ではなく、「毎年新しく採用される」という扱いになります。
「更新」との違い
再度の任用
- 法的に新規採用として扱われる
- 再任用でも1か月の条件付き採用(試用期間)
- 任期ごとに能力実証が必要
更新(民間企業の契約更新)
- 同じ雇用契約の延長
- 試用期間は初回のみ
- 5年で無期雇用に転換(無期転換ルール)
会計年度任用職員は地方公務員であるため、労働契約法の無期転換ルールは適用されません。

空白期間は不要
以前は「再度の任用の際に空白期間(新たな任期と前の任期との間に一定の期間)を設けるべき」という誤解がありましたが、総務省マニュアルでは空白期間を設ける必要はないと明記されています。
2024年6月の大きな制度変更

「3年目公募」の撤廃
人事院が2024年6月28日に、国の非正規公務員のうち、期間業務職員の採用についての通知文書に、公募に依らない再採用の上限回数を「原則2回までとするよう努めること」としていた取り扱いの制限を削除しました。
従来のルール(2024年6月まで)
- 公募によらない再度の任用は原則2回まで
- 任用開始年度を含む連続3か年度が上限
- 3年目以降は再度公募に応募が必要
新しいルール(2024年6月28日以降)
- 公募によらない再度の任用の回数上限を撤廃
- 勤務実績が良好なら継続的に再度の任用が可能
- 理論上は定年まで働ける可能性
総務省も対応
この改正を受けて、総務省も同日、「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」から、例示していた国の取り扱いを削除して、「具体の取扱いについては、各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ適切に対処されたい」との通知を出しました。
変更の背景
人事院が2024年8月以降に実施した各省庁へのヒアリングの中で、再採用者の3年目に公募することで、能力や経験のある職員が公務職場から流出しているとの指摘を受けたため、見直すことになりました。
自治体ごとの対応状況

約7割が上限撤廃または検討中
自治労連が2024年10月29日から12月6日にかけて実施した調査(31都道府県の484自治体が回答)によると、約7割の自治体が上限を既になくしていたり、検討を進めているなどの実態が明らかになりました。
主な対応パターン
1. 上限撤廃(制限なし)
制度変更を受けて、再度の任用の回数上限を撤廃する自治体が増加しています。
2. 従来通り3年上限(最大2回の再度の任用)
一部の自治体では、引き続き3年を上限としています。
3. 4年上限(最大3回の再度の任用)
自治体によっては、「最大3回まで再度の任用ができ、最長4年間の勤務を続けることができます」としています。
4. 5回上限(最大4回の再度の任用)
自治体によっては、公募によらない再度の任用は4回を限度とするとしています。
5. 西宮市型(実質的に上限なし)
西宮市では誰一人として任用終了されず全員定年まで働けるようにしているという運用を行っています。
公募の実態

8割を超える自治体が公募を実施
総務省による「令和5年度会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査」によると、8割を超える自治体が再度の任用における公募を導入しています。
公募実施の背景
- 平等取扱いの原則:誰にでも応募の機会を提供
- 広く人材を求める:より優秀な人材を確保
- 透明性の確保:恣意的な任用を防ぐ
公募の2つの考え方
再度の任用における公募には、大きく2つの考え方があります。
考え方1:公募は必須
広く募集を行うことが望ましく、新規応募者にも機会を提供すべき。
考え方2:公募は必須ではない
選考において公募を行うことが必須ではなく、勤務実績に基づく能力実証で十分。
総務省の見解では、「選考において公募を行うことが必須ではないが、広く募集を行うことが望ましい」とされています。
公募によらない再度の任用の条件
各自治体の規則では、次のいずれかに該当する場合は公募によらないことができるとされています。
1. 採用の緊急性等
会計年度任用職員の職に必要とされる職務遂行能力、任期、採用の緊急性等の事情から、公募により難いと任命権者が認める場合
2. 勤務実績に基づく能力実証
前会計年度の職と同様の職務の内容と認められる職への任用の選考の対象とする場合において、当該前会計年度の職におけるその者の勤務実績等に基づき、能力実証を行うことができると任命権者が認める場合
能力実証の方法

能力実証とは
能力実証とは、その職に必要な職務遂行能力を客観的に確認することです。
任期ごとに客観的な能力実証を行うことが必要とされています。
能力実証の目的
- 十分な能力を持った者を任用する
- 恣意的な任用を防ぐ
- 成績主義を徹底する
能力実証の具体的方法
公募によらない再度の任用における能力実証の方法については、面接及び従前の勤務実績に基づき適切に行う必要があります。
主な方法
1. 人事評価の活用
前の任期における人事評価結果を判断要素の一つとして活用する。会計年度任用職員は、常勤職員と同様、任期の長短にかかわらず、人事評価の対象となります。
2. 面接
再度の任用を希望する職員との面接を実施し、勤務意欲や職務遂行能力を確認。
3. 勤務実績の確認
- 出席状況
- 業務実績
- 協調性
- 規律の遵守
西宮市の事例:人事評価制度の課題
西宮市議会での質疑により、西宮市では人事評価の活用基準を有していないという問題点が露見しました。
問題点
- 人事評価制度は存在するが、活用基準がない
- 下位5%に公募を求めるといった明確な基準がない
- 誰が再度の任用されるかが不透明
これは他の自治体でも同様の課題を抱えている可能性があります。
再度の任用が認められないケース

公募によらない再度の任用を行わない場合
各自治体の規則では、次に掲げる要件のいずれかに該当する場合は公募によらない再度の任用を行わないものとされています。
主な不認定理由
- 勤務成績が不良
- 職務上の義務違反や非行があった
- 心身の故障により職務遂行に支障がある
- 職に必要な適格性を欠く
- 業務の必要性がなくなった
- 予算の削減
雇止めの実態
再度の任用が認められないことは、実質的に「雇止め」となります。

雇止めが起きるケース
- 勤務成績や態度の問題
- 予算削減や組織改編
- 業務の縮小・廃止
- 3年目の公募で不採用(制度変更前)
東京都では、スクールカウンセラーが大量に雇止めされるという問題が2024年に起きています。
よくある質問

Q1. 再度の任用と更新は何が違うのですか?
A1. 法的には全く異なります。再度の任用は「新たな職に改めて任用」であり、毎年新規採用扱いとなります。そのため、再度の任用でも1か月の条件付き採用(試用期間)があり、無期転換ルールも適用されません。
Q2. 2024年の制度変更で、誰でも何年でも働けるようになったのですか?
A2. いいえ。公募によらない再度の任用の回数上限が撤廃されただけで、勤務成績が良好であることや、業務の必要性があることなどの条件を満たす必要があります。また、自治体によって対応が異なります。

Q3. 公募がある場合、再度の任用は難しいですか?
A3. 必ずしもそうではありません。公募があっても、勤務実績が評価されれば再度任用される可能性は高いです。ただし、新規応募者との競争になるため、絶対ではありません。
Q4. 勤務成績が良好なら必ず再度の任用されますか?
A4. 必ずとは限りません。勤務成績は重要な要素ですが、業務の必要性や予算状況、組織改編なども影響します。また、恣意的な運用を防ぐため、透明性のある基準が必要とされています。
Q5. 人事評価の結果は教えてもらえますか?
A5. 一般的には、本人に通知されます。ただし、自治体によって運用が異なる場合があります。人事評価の結果は、再度の任用の判断材料として活用されるため、確認することが重要です。

Q6. 再度の任用を希望しない場合はどうすればいいですか?
A6. 退職願を任命権者に提出します。提出期限は退職を希望する日の30日前までが一般的です。自分から再度の任用を希望しない場合は、適切な手続きを行いましょう。

まとめ:2024年の制度変更で可能性が広がった

会計年度任用職員の再度の任用について、重要なポイントをまとめます。
基本的な仕組み
- 法的には新規採用扱い:毎年新しく任用される
- 条件付き採用:再度の任用でも1か月の試用期間
- 能力実証が必要:任期ごとに客観的な確認
- 無期転換ルール適用外:5年働いても正規職員にはならない
2024年6月の制度変更
- 3年目公募の撤廃:人事院が2024年6月28日に発表
- 回数上限の撤廃:公募によらない再度の任用の回数制限なし
- 総務省も対応:各自治体の判断に委ねる方針
- 雇用安定の可能性:理論上は定年まで働ける
自治体ごとの対応
- 約7割が上限撤廃または検討中(2025年1月調査)
- 上限撤廃、3年上限、4年上限など様々
- 西宮市のように実質的に上限なしの自治体も
- 自治体によって対応が大きく異なる
公募の実態
- 8割超の自治体が公募実施
- 公募は必須ではないが望ましいとされる
- 公募によらない再度の任用の条件あり
- 勤務実績に基づく能力実証で可能
能力実証の方法
- 人事評価の活用
- 面接の実施
- 勤務実績の確認
- 透明性のある基準が課題
再度の任用されないケース
- 勤務成績不良
- 義務違反や非行
- 業務の必要性の消失
- 予算削減
- 組織改編
今後の展望
2024年の制度変更により、会計年度任用職員の雇用安定に向けた大きな一歩が踏み出されました。
しかし、公募の実施や能力実証の方法、透明性のある基準の確立など、課題も残されています。
自治体によって対応が異なるため、お住まいの自治体の最新情報を確認することが重要です。
会計年度任用職員の再度の任用は、2024年の制度変更により大きく変わりつつあります。
最新の情報を確認しながら、自分のキャリアプランを考えていきましょう。
