勝ち組とは社会的・経済的に成功した人、いわゆる格差社会において優位な立場に立つ人のことを指すそうですが、果たして地方公務員は勝ち組と言えるのでしょうか?
このページでは、地方公務員は勝ち組なのか?また、もしも地方公務員が勝ち組であるならば、将来的にも勝ち組のままいることができるのか?負け組になることはないのか?について現役地方公務員が詳しくご説明します。
地方公務員の年収を見ると比較的勝ち組と言える
国税庁のホームページにある令和2年分の「民間給与実態統計調査」の見てみると、平均給与は433万円、平均年齢は 46.8 歳となっています。
それに対して、地方公務員に関しては私個人のデータで言いますと、田舎の市役所職員ですが、30歳で残業なしでも年収500万円に達成しています。
ちなみに私の市役所は田舎過ぎて地域手当のつかない地域です。
ラスパイレス指数的には100前後と国の給料や他市町村と変わらない給料の計算になりますが、ラスパイレス指数にはカラクリがあるため、実質的に言えば他市町村の中でも給料は低めの地方公務員です。
それでも30歳で残業なしで年収500万円超えているわけですから、平均よりも給料がもらえていると言えます。
国家公務員や都会の地方公務員であれば、さらに地域手当等も付くため、比較的勝ち組と言えるかもしれません。
女性公務員は圧倒的に勝ち組
先程ご紹介した国税庁のホームページにある令和2年分の「民間給与実態統計調査」では、男女別の平均年収も掲載されているんですが、男女別で見ると驚きの結果が出ています。
男性の平均年収は532万円、平均年齢46.8歳に対して、女性の平均年収は293万円、平均年齢は46.7歳となっています。
地方公務員の場合、男女で給料の差がありません。
つまり、女性でも私の給料と同じで30歳で残業なしで年収500万円を超えます。
平均年齢46.7歳の平均年収が293万円に対して地方公務員だと30歳で年収500万円ですよ。
年齢もそうですが、年収が約200万円も違うわけです。
しかも、結婚、妊娠、出産をしてもキチンと育休等もとれますし、職場復帰もできます。
さらに現状だと女性管理職を増やそうとする傾向にあることから出世もしやすいです。
そのため、女性公務員は圧倒的に勝ち組と言えます。
唯一欠点があるとしたら、あまりに自身の条件が良すぎるため、釣り合う男性がおらず、結婚が遠のきやすいことくらいです。
特に地方では勝ち組の部類に入る
都会の地方公務員の方が給料が良いとは言え、都会であれば一流企業に勤める方が多く、年収1,000万円プレーヤーが数多くいるでしょうから、勝ち組とは言えないと思います。
しかし、地方であれば、そもそも勤め先のほとんどは中小企業ですし、大企業に勤めていたとしても、工場勤務の方が多いため、高所得者があまりいません。
もちろん、中小企業であっても社長や役員の方、大企業のマネージャークラスの方は、かなりの給料をもらっています。
ただ、そういう方々は圧倒的に少数です。
年収300万円~400万円の方が圧倒的多数派です。
そんななか地方公務員は30歳で年収500万円なわけですから、地方では勝ち組の部類に入っていると言えます。
将来的には勝ち組とは言えない可能性が高い
「地方公務員はズルい」「地方公務員は良いな」と言われるだけあって、現状だけを見れば確かに地方公務員は勝ち組なのかもしれません。
しかし、将来的にはどうなんでしょうか?
今後も勝ち組と、社会的・経済的に成功した人、いわゆる格差社会において優位な立場に立つ人と言えるのでしょうか?
私は残念ながら、そうとは思えません。
これからの地方公務員はかなり厳しい状況に追い込まれると思っています。
以下では、その理由について、ご説明します。
給料はこれから確実に下がる
地方公務員の給与水準は民間企業の給与水準に均衡させることを基本としています。
そのため、民間企業に勤めている方の給料が上がれば地方公務員の給料も上がり、逆に民間企業に勤めている方の給料が下がれば地方公務員の給料も下がります。
とは言え、実際のところ、民間企業の給料が上がって景気が良くなっても地方公務員の給料は微増しかしませんが、不景気になって民間企業の給料が下がると、地方公務員の給料は、すぐに下がります。
そして、現在はコロナ禍の影響により、経済が停滞しています。
また、日本は今後、市場規模が増える見込みのあるIT関連の産業が弱く、日本のお家芸であった製造業も中国、韓国の企業に負けつつあります。
例えば日本の主要産業である自動車メーカーも、今後電気自動車が主流となると、参入障壁が下がるため、競争は激化することが見込まれますし、関連雇用が30万人も減少する恐れがあります。
つまり、将来的には日本の景気がさらに悪化する可能性が高いため、当然その影響により地方公務員の給料も下がる可能性高いです。
しかも、地方公務員の給料に反映されるまでにはタイムラグがあるため、仮に民間企業の景気が良くなったとしても、これから地方公務員の給料は確実に下がります。
財政破綻すると給料が激減する
地方公務員の給料が下がる原因は景気だけではありません。
勤め先の自治体が財政破綻をしてしまうと、職員の給料は激減します。
財政破綻とは、要するに市役所が倒産することです。
財政破綻をしても、行政サービスは継続させなければいけないため、職員の給料を大幅にカットして事業を存続させます。
代表的なのが夕張市です。
夕張市は財政破綻をして、職員の給与を最大で年収の40%もカットしています。
市長の年収も7割カットして、たったの251万円しかありませんでした。
「夕張市は特殊な例で、自治体が財政破綻なんてそうそうしないよ。」と思うかもしれませんが、実情はどこの自治体も財政難に陥っており、いつ財政破綻になってもおかしくない自治体が多数あります。
例えば京都市は長年にわたって支出が収入を上回る状態が続いていて、令和3年度からの5年間で財源不足が2,800億円に上ると試算されています。
また、現状、なんとかやりくり出来ている自治体も高齢化により、歳出は増える一方ですが、人口減により歳入は減るため、どこの自治体も少なからず財政破綻をする危険性があります。
退職金が出ない可能性がある
地方公務員の退職金は年々ものすごい勢いで減っています。
私の自治体においても、15年前くらい前であれば部長級が退職した場合の退職金は3,800万円ほどもらえていたそうです。
仮に役職のない平職員であっても2,800万円ほどの退職金があったそうです。
しかし、現在は部長級でも退職金は2,500万円程度しかもらえません。
たった15年で約1,300万円も退職金が下がっているんです。
まだまだ退職金は下がる傾向にありますし、仮にこのままの勢いで下がり続ければ30年後には退職金がなくなる可能性もあります。
民間企業の場合、定年退職をすると退職金に加えて失業保険ももらうことができますが、地方公務員の場合、退職金のみで、失業保険をもらうことができないため、
退職金がなくなると非常に生活が厳しくなります。
転職したくても地方公務員の経験は民間で通用しない
「地方公務員だとまずい!転職しなければ!」と思っても、地方公務員が転職するのは至難の業です。
「地方公務員は仕事ができない」と、よく勘違いされていますが、地方公務員は仕事ができないわけではありません。
仕事がバリバリできる優秀な人は数多くいます。
しかし、地方公務員の仕事で培った能力・経験は民間企業で必要とされる能力・経験ではないため、転職するのは厳しいと言わざるを得ません。
実際、私の周りで地方公務員を辞めて民間企業への転職に成功したのは、行政と仕事をする機会の多い企業もしくはコネのある企業くらいしかありません。
副業が認められていない
「地方公務員から民間への転職が難しいなら、副業をして収入を得る、もしくは副業を通して転職できるスキルを身につけよう!」と思っても残念ながら地方公務員は法律により副業をすることができません。
最近は副業が認められる民間企業も増えてきていますが、地方公務員は、いまだに副業が認められていません。
民間企業であれば本業を頑張って給料アップ、副業をして収入アップを見込むことができますが、地方公務員は利益を追求しているわけではないため、本業を頑張っても給料は上がらず、副業もできないため、収入を増やすための努力をすることすらできません。
まとめ
地方公務員は勝ち組なのか?また、もしも地方公務員が勝ち組であるならば、将来的にも勝ち組のままいることができるのか?負け組になることはないのか?についてご説明させていただきました。
現状、地方公務員は平均年収よりも多く給料をもらえているため勝ち組と言えるかもしれません。
しかし、将来的には給料・退職金は今よりも確実に減りますし、勤め先の自治体が財政破綻してしまうと、給料が大幅にカットされて、かなり悲惨な状況に陥ってしまいます。
また、給料が減った時に転職をしたいと思っても、地方公務員で培ったスキル・経験は民間企業では通用せず、副業で下がった収入をカバーしたいと思っても、法律で禁止されているため、そもそも副業ができません。
このように地方公務員は、不安要素が多く、落ち目になった時に回避する術も持ち得ないため、定年間近の公務員は勝ち組だったと言えますが、今の若手公務員やこれから地方公務員になる人は将来負け組になる可能性が非常に高いと個人的には思います。