公務員の求人を探していると「会計年度任用職員」という言葉を目にする機会が増えています。

さらにその中でも「1号」と「2号」という区分があり、どちらを選べばいいのか迷っている方も多いのではないでしょうか。
この2つの区分は、給与体系、社会保険、手当、雇用の安定性など、働く上で重要な条件が大きく異なります。
本記事では、会計年度任用職員1号と2号の違いを、初めて公務員採用に応募する方でも理解できるよう、具体例やデータを交えながら詳しく解説します。
会計年度任用職員とは?制度の基礎知識

まず、会計年度任用職員という制度そのものについて理解しましょう。
会計年度任用職員が導入された背景
会計年度任用職員制度は、2020年4月に地方公務員法および地方自治法の改正により導入された、比較的新しい非常勤職員の任用制度です。
導入前の課題
それまで地方自治体では、臨時職員、嘱託職員、非常勤職員など、さまざまな名称で非正規職員が雇用されていましたが、法的な位置づけが曖昧で、待遇面でも問題がありました。同じような仕事をしていても、自治体によって給与や手当の有無がバラバラという状況でした。
制度導入の目的
- 非常勤職員の任用根拠を明確化する
- 待遇を改善し、同一労働同一賃金の原則に近づける
- 期末手当(ボーナス)の支給を可能にする
- 社会保険の適用を明確にする
会計年度任用職員の雇用期間
会計年度任用職員は、その名の通り「会計年度」(4月1日から翌年3月31日まで)を基本とした任用です。
任用期間の特徴
- 原則として1年以内の任用
- 年度途中からの任用も可能(その場合は年度末まで)
- 再度の任用(更新)は可能だが、自動更新ではない
- 正規職員への登用制度を設けている自治体もある
更新回数の制限
総務省の通知では、能力実証が行われた場合は、更新回数や年数に上限を設けないことが望ましいとされています。ただし、実際の運用は自治体によって異なり、「最大5回まで」「通算5年まで」といった制限を設けているケースもあります。

会計年度任用職員1号と2号の基本的な違い

1号と2号の最も基本的な違いは、勤務時間と雇用形態にあります。
勤務時間による区分
1号(フルタイム勤務ではない職員)
- 週の勤務時間が常勤職員(正規職員)より短い
- 具体的には、週38時間45分未満の勤務
- パートタイム勤務、短時間勤務が基本
- 例:週4日勤務、1日6時間勤務など
2号(フルタイム勤務の職員)
- 週の勤務時間が常勤職員と同じ
- 具体的には、週38時間45分(自治体により若干異なる)
- 1日7時間45分、週5日勤務が標準
- 勤務時間は正規職員とほぼ同じ
地方公務員法上の位置づけ
1号の法的位置づけ
地方公務員法第22条の2第1項第1号に基づく任用で、「パートタイム会計年度任用職員」とも呼ばれます。

2号の法的位置づけ
地方公務員法第22条の2第1項第2号に基づく任用で、「フルタイム会計年度任用職員」とも呼ばれます。

適用される法律の違い
この区分は単なる勤務時間の違いではなく、適用される法律や制度が異なるため、待遇面で大きな差が生じます。
1号に適用される主な規定
- 地方公務員法の一部規定が適用
- 給与は「報酬」として支給
- 期末手当は支給可能
- 退職手当は原則として支給されない
2号に適用される主な規定
- 地方公務員法のほぼ全ての規定が適用
- 給与は「給料」として支給
- 期末手当と勤勉手当(ボーナス)が支給可能
- 退職手当も支給対象(条件あり)
給与・報酬の違いを詳しく比較

1号と2号では、給与の名称から計算方法まで大きく異なります。
基本給与の呼び方と性質
1号の報酬 「報酬」という名称で支給され、時間給または日給で計算されることが一般的です。
- 時給制:1時間あたり1,000円~1,500円程度(職種・地域により変動)
- 日給制:1日あたり7,000円~10,000円程度
- 月額制を採用している自治体もある
2号の給料 「給料」という名称で支給され、月給制が基本です。
- 月額制:月額15万円~25万円程度(職種・経験年数により変動)
- 正規職員の給料表に準じた計算方法
- 経験年数による昇給制度がある自治体も多い
具体的な給与例の比較
同じ事務職で働く場合の月収例を見てみましょう。
1号(週4日、1日6時間勤務の場合)
- 時給:1,200円
- 月の勤務時間:24時間/週 × 4週 = 96時間
- 月収:1,200円 × 96時間 = 115,200円
- 年収(期末手当含む):約140万円~150万円
2号(週5日、1日7時間45分勤務の場合)
- 月給:180,000円
- 期末手当・勤勉手当:年間約70万円(給料月額の約3.9ヶ月分)
- 年収:180,000円 × 12ヶ月 + 700,000円 = 2,860,000円
このように、年収ベースでは2倍以上の差が生じることも珍しくありません。

期末手当・勤勉手当(ボーナス)の違い
1号の期末手当
- 期末手当のみが支給対象
- 支給額は、在職期間に応じて報酬月額の約2.55ヶ月分(令和5年度標準)
- 勤勉手当は支給されない
2号の期末手当・勤勉手当
- 期末手当と勤勉手当の両方が支給対象
- 合計で給料月額の約3.9~4.5ヶ月分(自治体・年度により変動)
- 正規職員に準じた支給率
具体例での比較
1号(月額報酬10万円の場合)
- 年間の期末手当:約25万円
- 年収合計:約145万円
2号(月額給料18万円の場合)
- 年間の期末手当・勤勉手当:約70万円
- 年収合計:約286万円

諸手当の適用範囲
1号で支給される可能性のある手当
- 通勤手当(実費相当額)
- 期末手当
- 一部の特殊勤務手当
2号で支給される可能性のある手当
- 通勤手当
- 期末手当・勤勉手当
- 時間外勤務手当(残業代)
- 休日勤務手当
- 夜間勤務手当
- 扶養手当(自治体により異なる)
- 住居手当(自治体により異なる)
- 各種特殊勤務手当
特に大きな違いは、時間外勤務手当(残業代)の有無です。
1号は勤務時間が限定的なため残業が想定されていませんが、2号は残業が発生する可能性があり、その際は残業代が支給されます。

昇給制度の有無
1号の昇給
- 原則として昇給制度はない
- 時給単価は採用時から変わらないことが多い
- 再度任用時に若干の変更がある程度
2号の昇給
- 経験年数に応じた昇給制度を設けている自治体が多い
- 年1回、4月に昇給(数千円~1万円程度)
- 勤務成績による昇給幅の差を設けている場合もある
長期的に働く場合、この昇給制度の有無は大きな差につながります。

社会保険・福利厚生の違い

給与以外の待遇面でも、1号と2号には大きな違いがあります。
社会保険の適用状況
1号の社会保険
雇用保険
- 週20時間以上勤務する場合は加入義務あり
- 失業時に失業給付を受けられる
健康保険・厚生年金
- 週30時間以上かつ2ヶ月超の雇用見込みがある場合に加入
- 週20時間以上30時間未満の場合、条件次第で加入(2022年10月以降の基準)
- それ以下の場合は国民健康保険・国民年金に自己加入
2号の社会保険
雇用保険
- 必ず加入
健康保険・厚生年金
- 必ず加入(正規職員と同じ共済組合に加入する自治体もある)
- 保険料は労使折半
公務災害補償
- 公務中の事故や病気に対する補償が充実

年次有給休暇
1号の年次有給休暇
- 労働基準法に基づく有給休暇が付与される
- 週の勤務日数に応じて付与日数が決まる
- 例:週4日勤務の場合、半年後に12日付与(1年勤続で15日)
2号の年次有給休暇
- 正規職員に準じた付与
- 採用時から年20日付与される自治体が多い
- 繰越も可能(最大40日まで保有できる場合も)
年休の日数だけでなく、「夏季休暇」「結婚休暇」「忌引休暇」などの特別休暇についても、2号の方が充実している傾向があります。


退職手当の有無
1号の退職手当
- 原則として支給されない
- 例外的に支給する自治体もあるが稀
2号の退職手当
- 6ヶ月以上の任用が見込まれる場合に支給対象
- 勤続年数に応じて支給額が増える
- 例:3年勤続で約20万円~30万円(自治体により異なる)
長期間働くことを考えると、この退職手当の有無は大きな違いです。

その他の福利厚生
1号の福利厚生
- 共済組合の福祉事業(一部)
- 健康診断(法定健診)
- 公務災害補償(限定的)
2号の福利厚生
- 共済組合の各種福祉事業
- 定期健康診断(人間ドックの補助がある場合も)
- 公務災害補償(正規職員に準じる)
- 被服貸与(職種による)
- 職員住宅の利用(自治体により異なる)
- 研修制度の充実
働き方・業務内容の違い

給与や待遇だけでなく、実際の働き方にも違いがあります。
勤務時間と柔軟性
1号の勤務時間
- 週4日、1日6時間など、柔軟な勤務形態が選べる
- 午前だけ、午後だけという勤務も可能
- 家庭や他の仕事との両立がしやすい
- 残業はほとんどない(原則として想定されていない)
2号の勤務時間
- 正規職員と同じ勤務時間(通常8:30~17:15など)
- 週5日、フルタイム勤務が基本
- 残業が発生する可能性がある
- シフト勤務や夜間勤務もありうる(職種による)
任される業務の範囲
1号の業務内容
- 定型的な業務、補助的な業務が中心
- 窓口対応、データ入力、書類整理など
- 専門性が求められる場合もあるが、範囲は限定的
- 例:図書館の貸出業務、保育補助、事務補助
2号の業務内容
- より幅広い業務、専門的な業務も担当
- 正規職員と同等レベルの業務を任されることも多い
- プロジェクトの担当、外部との折衝なども
- 例:保健師、相談員、専門職としての業務全般
責任の重さ
1号の責任範囲
- 補助的業務のため、最終的な責任は正規職員が負う
- 決裁権限は限定的
- 比較的プレッシャーは少ない
2号の責任範囲
- 正規職員に準じた責任を負う場合が多い
- 重要な業務を任されることもある
- その分、やりがいも大きい
どちらを選ぶべき?選択のポイント

1号と2号のどちらが自分に適しているか、判断基準を整理しましょう。
1号が向いている人
こんな方におすすめ
- 家事や育児と仕事を両立したい主婦・主夫
- 他に本業があり、副業として働きたい方
- 学業との両立が必要な学生
- 介護などで長時間勤務が難しい方
- まずは短時間から公務の仕事を経験したい方
1号を選ぶメリット
- 勤務時間の柔軟性が高い
- プライベートとの両立がしやすい
- 責任の重さが比較的軽い
- 残業がほとんどない
1号のデメリット
- 収入が限定的
- 社会保険が条件次第で未加入
- キャリアアップが難しい
- 退職金がない
2号が向いている人
こんな方におすすめ
- 公務員として安定的に働きたい方
- 正規職員を目指している方(登用試験の受験資格が得られる場合あり)
- しっかりと収入を得たい方
- 専門性を活かして働きたい方
- 長期的なキャリア形成を考えている方
2号を選ぶメリット
- 収入が安定している
- 社会保険完備で老後も安心
- ボーナスと退職金がある
- 正規職員に近い待遇
- 経験を積めばキャリアアップの可能性も
2号のデメリット
- 勤務時間が長い(フルタイム)
- 残業の可能性がある
- 責任が重い業務もある
- プライベートとの両立がやや難しい
収入面での比較シミュレーション
5年間働いた場合の総収入を比較してみましょう。
1号(週4日、時給1,200円)の場合
- 年収:約145万円
- 5年間の総収入:約725万円
- 社会保険料の自己負担:あり(国保・国民年金)
- 退職金:なし
2号(月給18万円)の場合
- 年収:約286万円
- 5年間の総収入:約1,430万円
- 社会保険料:給与から天引き
- 退職金:約40万円~60万円
- 5年間の総収入(退職金含む):約1,480万円
5年間で約750万円以上の差が生じる計算になります。

将来のキャリアパス
1号からのキャリア
- 同じ1号として継続(昇給は期待薄)
- 他の自治体や部署への異動
- 民間企業への転職
- 2号への応募(新たに採用試験を受ける)
2号からのキャリア
- 同じ2号として継続(経験に応じた昇給あり)
- 正規職員への登用試験に挑戦
- 他の自治体の正規職員試験に挑戦
- 経験を活かして民間企業へ転職
2号の方が、正規職員への道が開けやすい傾向があります。
応募・採用試験の違い

1号と2号では、募集方法や選考過程も異なることがあります。
募集の頻度とタイミング
1号の募集
- 年間を通じて随時募集していることが多い
- 欠員が出た際に都度募集
- 比較的応募しやすい
2号の募集
- 年度末(1月~3月)に翌年度採用の募集が多い
- 職種によっては年1回のみの募集
- 計画的な応募が必要

選考方法の違い
1号の選考
- 書類選考+面接のみの場合が多い
- 比較的短期間で結果が出る
- 専門試験がない場合が多い
2号の選考
- 書類選考+筆記試験+面接の場合が多い
- 専門職は専門試験がある
- 選考期間が長い(1~2ヶ月程度)

応募資格の違い
1号の応募資格
- 資格不要の職種が多い
- 年齢制限が緩い、またはない場合も
- 実務経験不問の求人も多数
2号の応募資格
- 専門資格が必要な職種が多い(保育士、看護師など)
- 年齢制限がある場合も(通常59歳まで)
- 実務経験を求められることもある
実際の求人例から見る違い

具体的な求人例を見て、違いをイメージしましょう。
1号の求人例
事務補助(一般事務)
- 勤務時間:週4日、9:00~16:00(休憩1時間、実働6時間)
- 報酬:時給1,150円
- 月収例:約11万円
- 期末手当:年2回(計約2.55ヶ月分)
- 社会保険:雇用保険のみ(条件により健康保険・厚生年金加入)
- 業務内容:窓口対応、電話応対、データ入力、書類整理
- 応募資格:パソコンの基本操作ができる方
2号の求人例
保健師
- 勤務時間:週5日、8:30~17:15(休憩1時間、実働7時間45分)
- 給料:月額210,000円~250,000円(経験により決定)
- 年収例:約330万円~380万円(期末手当・勤勉手当含む)
- 社会保険:雇用保険、健康保険、厚生年金すべて加入
- 退職手当:あり
- 業務内容:母子保健業務、健康相談、家庭訪問、健診業務
- 応募資格:保健師免許を有する方

よくある質問と回答

Q1: 1号から2号へ、または2号から1号への変更はできますか?
A: 制度上は、それぞれ別の採用試験を受けて合格する必要があります。自動的に切り替わることはありません。
ただし、1号で働いている実績が評価され、2号の採用選考で有利になることはあります。また、生活状況の変化で勤務形態を変えたい場合は、上司や人事担当者に相談してみる価値はあります。
Q2: 1号と2号を掛け持ちすることはできますか?
A: 同一自治体内で1号と2号を掛け持ちすることは、通常できません。ただし、異なる自治体であれば、物理的に可能な範囲で掛け持ちできる場合があります。
例えば、A市で1号として週3日働き、B市で1号として週2日働くといったケースは可能です。ただし、社会保険の加入条件や税金の問題があるため、事前に両方の自治体に確認してください。
Q3: 会計年度任用職員から正規職員になれる可能性はありますか?
A: はい、可能性はあります。多くの自治体が「会計年度任用職員からの正規職員登用試験」を実施しています。
登用試験の一般的な条件
- 会計年度任用職員として一定期間(通常1~3年)勤務している
- 勤務成績が良好である
- 年齢制限を満たしている
特に2号として勤務している方の方が、業務の幅が広く実績を積みやすいため、登用試験で有利になる傾向があります。
Q4: 社会保険に加入できない1号の場合、国民健康保険料は高くなりますか?
A: 国民健康保険料は前年の所得に応じて計算されるため、収入が少なければ保険料も低くなります。
概算例(単身者の場合)
- 年収145万円の場合:国民健康保険料は年間約8万円~12万円程度
- 国民年金保険料:月額16,520円(令和5年度)× 12ヶ月 = 約20万円
合計で年間約28万円~32万円の社会保険料負担となります。一方、2号で厚生年金・健康保険に加入した場合の保険料は、月額約3万円(労使合計で約6万円)程度です。
Q5: 更新されない(雇止め)になる可能性はありますか?
A: 会計年度任用職員は1年ごとの任用のため、更新されない可能性は常にあります。ただし、正当な理由なく更新を拒否することはできません。
更新されないケース
- 業務の廃止や大幅な見直しがあった場合
- 勤務成績が著しく不良な場合
- 自治体の財政状況の悪化
更新される可能性が高いケース
- 勤務成績が良好
- 業務が継続的に必要
- 本人が更新を希望している
総務省の指針では、能力実証が行われれば更新回数に上限を設けないことが望ましいとされており、実際には長期間働いている方も多くいます。


Q6: ボーナス(期末手当)は年に何回、いくらもらえますか?
A: 一般的に年2回(6月と12月)支給されます。
1号の期末手当
- 報酬月額の約2.55ヶ月分(年間合計)
- 在職期間に応じて支給額が決まる(満額は6ヶ月以上在職)
2号の期末手当・勤勉手当
- 給料月額の約3.9~4.5ヶ月分(年間合計)
- 正規職員に準じた支給率
具体例
- 1号(月額報酬10万円):年間約25万円
- 2号(月額給料18万円):年間約70万円~80万円

まとめ:自分に合った働き方を選択しよう

会計年度任用職員の1号と2号は、勤務時間だけでなく、給与体系、社会保険、手当、キャリアパスなど、あらゆる面で大きな違いがあります。
重要ポイントの再確認
1号はパートタイム勤務で柔軟性が高く、家庭との両立を重視する方に適しています。一方、収入は限定的で、社会保険も条件次第です。
2号はフルタイム勤務で正規職員に近い待遇を受けられ、安定した収入とキャリア形成を目指す方に適しています。ただし、勤務時間が長く、責任も重くなります。
年収ベースでは2倍以上の差が生じることもあり、社会保険や退職金を含めると、長期的な差はさらに広がります。
選択のポイント
- 現在のライフステージ(子育て、介護など)
- 必要な収入額
- 将来のキャリアプラン
- 仕事に割ける時間
- 求められる責任の重さへの対応
これらを総合的に考慮して、自分に最適な働き方を選択してください。どちらが優れているということではなく、それぞれに適した場面があります。
公務員として働くという貴重な経験を積みながら、自分のライフスタイルに合った働き方を見つけることが、長く充実したキャリアを築く第一歩となるでしょう。
求人情報をよく確認し、不明点は必ず応募前に人事担当者に質問して、納得した上で応募することをおすすめします。

