定年退職後も地方公務員として働き続けることができる「再任用制度」について、詳しく知りたい方は多いでしょう。
この記事では、再任用の仕組み、給料、勤務形態、メリット・デメリット、そして令和5年度から始まった定年延長制度との違いまで、わかりやすく解説します。
地方公務員の再任用制度とは

再任用制度の基本的な仕組み
再任用制度とは、定年退職した地方公務員を、本人の希望により短時間勤務職員または常勤職員として再び採用する制度です。地方公務員法第28条の4から第28条の6に基づいて実施されています。
この制度は、平成13年度から段階的に導入され、公的年金の支給開始年齢の引き上げに対応するための措置として設けられました。定年退職後から年金受給開始までの「収入の空白期間」を埋める重要な役割を果たしています。

再任用は、定年退職時に一旦退職金を受け取った後、新たな雇用契約として採用される形になります。そのため、定年前の職員とは異なる待遇となります。
再任用制度が導入された背景
再任用制度導入の主な背景には、年金支給開始年齢の段階的引き上げがあります。

かつて公務員の年金(旧共済年金、現在は厚生年金)は60歳から支給されていましたが、平成25年度から段階的に引き上げられ、昭和36年4月2日以降生まれの方は65歳からの支給となりました。
この結果、60歳で定年退職すると、65歳まで無収入となる期間が生じます。この「空白の5年間」を埋めるために、再任用制度が整備されました。
また、経験豊富な職員の知識やスキルを活用し、行政サービスの質を維持するという目的もあります。
定年延長制度との関係
令和5年4月から、国家公務員・地方公務員の定年が段階的に65歳まで引き上げられています。これにより、再任用制度の位置づけが変化しています。
経過措置期間(令和5年から令和13年)では、定年は2年ごとに1歳ずつ引き上げられます。令和5年度は61歳、令和7年度は62歳という形で、令和13年度に65歳となります。
再任用制度の継続として、定年延長が完全実施される令和13年度までは、再任用制度も併存します。定年退職後、65歳になるまでの期間について再任用が可能です。
令和13年度以降は、定年が65歳となるため、原則として再任用制度は廃止される見込みです(ただし、経過措置として一部継続する可能性もあります)。
再任用の応募資格と条件

基本的な応募要件
再任用に応募するには、以下の要件を満たす必要があります。
定年退職者であることが大前提です。自己都合退職や懲戒免職などで退職した場合は対象外です。
年齢要件として、再任用期間は原則として65歳に達するまでです。現在の定年延長の経過措置期間中は、定年年齢から65歳までが対象となります。
健康状態について、職務を遂行できる健康状態であることが必要です。定年退職時に健康診断を受け、問題がないことを確認されます。
勤務実績では、定年退職前の勤務成績が良好であることが求められます。懲戒処分歴がある場合、再任用が認められないことがあります。
欠格事由
地方公務員法第16条に定める欠格事由に該当する場合、再任用されません。
禁錮以上の刑に処せられた者、当該自治体で懲戒免職処分を受けた者(一定期間経過後を除く)、日本国憲法または地方公務員法に定める宣誓を拒んだ者などが該当します。
選考方法
再任用は試験ではなく、選考により決定されます。
希望調査として、定年退職前(通常6ヶ月から1年前)に、再任用の希望について調査が行われます。
面談・意向確認では、人事担当者との面談で、希望する勤務形態(フルタイム・短時間)、配属先の希望などを確認します。
選考において、定年前の勤務実績、健康状態、組織のニーズなどを総合的に考慮して、再任用の可否と配属先が決定されます。
必ずしも全員が希望通り再任用されるわけではなく、組織の人員計画により採用されない場合や、希望と異なる勤務形態・配属先になることもあります。
再任用後の給料と待遇

給料の基本的な仕組み
再任用職員の給料は、定年前と比較して大幅に減額されます。

給料月額の目安として、フルタイム勤務の場合、定年退職時の給料の約5割から6割程度が一般的です。具体的には、月額20万円から30万円程度となることが多いです。
短時間勤務の場合は、勤務時間に応じて按分されます。週3日勤務なら、フルタイムの約6割の給料となります。
給料の決定基準は、各自治体の条例により異なりますが、再任用職員専用の給料表が適用されることが一般的です。

具体的な給料例
より具体的なイメージを持っていただくため、例を示します。
フルタイム再任用のケースとして、定年退職時の給料月額が45万円だった場合、再任用後は月額25万円から27万円程度となります。年収にすると、400万円から450万円程度です(ボーナス含む)。
短時間再任用のケース(週4日勤務)では、月額20万円から22万円程度、年収320万円から360万円程度となります。
短時間再任用のケース(週3日勤務)は、月額15万円から17万円程度、年収240万円から280万円程度です。
自治体や職種、定年時の給料水準によって異なるため、あくまで目安です。

ボーナス(期末手当・勤勉手当)
再任用職員にもボーナスが支給されます。
支給月数は、年間で2.5ヶ月から3.0ヶ月分程度が一般的です。定年前の職員(年間約4.5ヶ月分)より少なくなります。
勤勉手当については、人事評価に基づいて支給されますが、定年前の職員より評価の幅が小さい傾向があります。

諸手当の支給
再任用職員にも、一定の手当が支給されます。
支給される手当として、通勤手当(実費支給)、扶養手当(要件を満たす場合)、住居手当(要件を満たす場合)、時間外勤務手当(超過勤務した場合)などがあります。
支給されない手当では、管理職手当は、管理職として再任用されない限り支給されません。
退職金
再任用期間中も勤務しているため、再任用終了時に退職金が支給されます。
退職金の額は、再任用期間の勤続年数と退職時の給料月額に基づいて計算されます。5年間再任用で勤務した場合、100万円から200万円程度の退職金となることが一般的です。
定年退職時の退職金(2,000万円から2,500万円程度)と比較すると少額ですが、追加の退職金として受け取れます。

勤務形態と働き方

フルタイム勤務
フルタイム勤務の再任用職員は、一般の常勤職員と同じ勤務時間(通常、週38時間45分)で働きます。
メリットとして、給料が短時間勤務より高い、社会保険(厚生年金、健康保険)に加入できる、責任ある仕事を任されやすいなどがあります。
デメリットは、体力的な負担が大きい、プライベートの時間が限られる、定年前と同じペースで働くことへのプレッシャーなどです。
短時間勤務
短時間勤務は、週の勤務時間を短縮した働き方です。
勤務パターン例として、週4日勤務(1日7時間45分×4日=週31時間)、週3日勤務(1日7時間45分×3日=週23時間15分)、毎日午前のみ勤務(1日4時間×5日=週20時間)などがあります。
メリットでは、体力的な負担が軽い、趣味や家族との時間が確保できる、段階的に仕事から引退できるなどの点が挙げられます。
デメリットは、給料が少ない、厚生年金に加入できない場合がある(週30時間未満の場合)、重要な仕事を任されにくいなどです。
配属先と職務内容
再任用職員の配属先は、定年前と同じ部署とは限りません。
一般的な配属先として、窓口業務(住民サービス、証明書発行など)、相談業務(福祉相談、税務相談など)、後方支援業務(庶務、経理補助など)、専門業務(技術職の場合、技術指導など)があります。
管理職としての再任用は、一部の自治体では課長級などの管理職として再任用される場合もありますが、多くの自治体では一般職として再任用されます。
職務内容について、定年前のような高度な判断を要する業務より、経験を活かしたサポート業務や定型的な業務が中心となることが多いです。
再任用のメリット・デメリット

再任用を選択するメリット
経済的なメリットとして、年金支給開始までの収入が確保できます。60歳から65歳まで5年間、年収300万円から400万円の収入があれば、合計1,500万円から2,000万円の収入となります。
厚生年金に加入し続けることで、将来の年金額が増加します。5年間加入すれば、年間数万円の年金額アップが見込めます。
心理的・社会的メリットでは、急に仕事がなくなる喪失感を避けられます。段階的に引退できるため、心理的な負担が軽減されます。
社会とのつながりを維持でき、孤立を防げます。長年培ったスキルや知識を活かせる場があります。
健康面のメリットとして、規則正しい生活が続けられ、健康維持に役立ちます。認知症予防にも効果があるとされています。
再任用のデメリット・注意点
給料の大幅減少が最大のデメリットです。定年前の半分程度の給料となるため、生活水準を下げる必要があります。
体力的な負担として、60代での勤務は若い頃と比べて体力的にきついと感じる方も多いです。
やりがいの問題では、定年前のような責任ある仕事を任されない場合、やりがいを感じにくいことがあります。後輩職員の下で働くことへの抵抗感を持つ方もいます。
年金との調整について、厚生年金に加入しながら働くと、在職老齢年金制度により年金が減額される場合があります。特に給料が高い場合は注意が必要です。
民間再就職の機会喪失として、再任用を選択すると、民間企業への再就職の機会を逃す可能性があります。
在職老齢年金との関係

在職老齢年金制度の基本
在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら働く場合、給料と年金の合計額が一定額を超えると、年金が減額または支給停止される制度です。
基準額(令和6年度)として、給料(標準報酬月額)と年金月額の合計が50万円を超えると、超過分の2分の1が年金から減額されます。
再任用と年金の具体例
ケース1:フルタイム再任用(月給25万円)、年金月額15万円の場合
合計40万円で基準額(50万円)以下のため、年金は全額支給されます。月収40万円(年収480万円)となります。
ケース2:フルタイム再任用(月給30万円)、年金月額18万円の場合
合計48万円で基準額以下のため、年金は全額支給されます。月収48万円(年収576万円)です。
ケース3:管理職再任用(月給35万円)、年金月額20万円の場合
合計55万円で、基準額を5万円超過します。超過分の2分の1(2.5万円)が年金から減額され、年金月額は17.5万円となります。月収52.5万円(年収630万円)です。
短時間勤務と厚生年金
短時間勤務の場合、勤務時間によっては厚生年金に加入しません。
週30時間未満の勤務では、厚生年金に加入しない場合が多く、この場合は在職老齢年金の減額対象とならず、年金が全額支給されます。
給料と年金を合わせた総収入を最大化したい場合は、短時間勤務で厚生年金に加入しない働き方も選択肢となります。
定年延長制度との違い

定年延長制度の概要
令和5年4月から始まった定年延長制度は、定年年齢そのものを引き上げる制度です。
段階的引き上げにより、令和5年度は61歳、令和7年度は62歳、令和9年度は63歳、令和11年度は64歳、令和13年度は65歳となります。
役職定年制では、60歳に達した時点で管理職から外れ、一般職として勤務します(特例による延長もあり)。
給料の減額として、60歳以降は給料が7割程度に減額されます。
再任用との主な違い
雇用の連続性では、定年延長は60歳以降も継続雇用、再任用は一旦退職して再雇用という違いがあります。
退職金の支給時期として、定年延長は65歳退職時に一括支給、再任用は60歳退職時と再任用終了時の2回支給となります。
給料水準について、定年延長は60歳時点の7割程度、再任用は5割から6割程度で、定年延長の方がやや高めです。
適用対象では、定年延長は定年到達前から自動的に適用、再任用は定年退職後に本人の希望により選考を経て採用されます。
どちらを選ぶべきか
現在の経過措置期間中は、定年延長が原則適用されます。ただし、以下の場合は再任用を選択できます。
60歳定年退職を選択して、定年延長ではなく60歳で退職し、その後再任用を希望することができます。この場合、退職金を早く受け取れるメリットがあります。
短時間勤務を希望する場合、定年延長では原則フルタイム勤務のため、ワークライフバランスを重視するなら再任用の方が柔軟です。
退職金の使い道を考え、60歳時点でまとまった退職金が必要な場合(住宅ローン完済、リフォームなど)は、再任用を選択する方が有利です。
再任用後のキャリアプラン

再任用期間をどう過ごすか
再任用期間(60歳から65歳)は、完全引退までの移行期間と捉えることができます。
スキルの継承として、後進の育成に力を入れ、自分の経験や知識を若手職員に伝えることで、やりがいを見出せます。
新しい分野への挑戦により、定年前とは異なる部署で新しい経験を積むこともキャリアの幅を広げます。
段階的な引退では、短時間勤務を選択し、趣味や地域活動にも時間を使いながら、段階的に仕事から離れていく方法もあります。
65歳以降の選択肢
再任用が終了する65歳以降は、以下の選択肢があります。
完全引退して、年金生活に入ります。趣味や旅行、ボランティア活動などに時間を使えます。
会計年度任用職員として、一部の自治体では65歳以降も会計年度任用職員(非常勤職員)として働くことができます。週2日から3日程度の軽い勤務が一般的です。

民間企業・NPOへの再就職により、これまでの行政経験を活かせる民間企業やNPO法人で働く道もあります。
起業・独立として、行政書士、社会保険労務士などの資格を活かして独立開業する方もいます。
再任用に関するよくある質問

再任用を辞退・途中退職できる?
辞退は可能です。再任用の意向調査や選考の段階で辞退することができます。
途中退職も可能ですが、自己都合退職扱いとなります。やむを得ない事情(健康上の理由、家族の介護など)がある場合は、人事担当者に相談しましょう。
再任用中の副業は可能?
原則として、再任用職員も地方公務員法の服務規定が適用されるため、営利企業への従事は制限されます。
ただし、短時間勤務の場合、任命権者の許可を得れば副業が認められる場合があります。不動産賃貸や農業など、一定の条件下で認められる副業もあります。


再任用の更新はある?
再任用の任期は1年ごとに更新されることが一般的です。
勤務実績や健康状態に問題がなければ、65歳になるまで更新されます。ただし、組織の人員計画により、更新されない場合もあります。
病気になったらどうなる?
再任用中に病気になった場合、病気休暇や休職制度を利用できます。
ただし、再任用職員の場合、長期の病気休職は認められにくく、回復の見込みがない場合は退職を求められることがあります。

まとめ:再任用制度を賢く活用するために

地方公務員の再任用制度について、重要なポイントをまとめます。
再任用制度の本質を理解しましょう。定年退職後から年金受給開始(65歳)までの収入を確保する制度であり、経験豊富な職員の知識を活用する仕組みです。令和13年度までの経過措置として、定年延長制度と併存しています。
給料と待遇については、給料は定年時の5割から6割程度(月額20万円から30万円が目安)、ボーナスは年2.5から3.0ヶ月分程度、フルタイムと短時間勤務が選択可能であることを把握しましょう。
メリット・デメリットとして、メリットは収入確保、年金額増加、社会とのつながり維持、デメリットは給料減少、体力的負担、やりがいの問題があります。在職老齢年金による年金減額の可能性にも注意が必要です。
選択のポイントでは、経済的必要性(退職金だけで生活できるか)、健康状態と体力(フルタイム勤務に耐えられるか)、ライフプラン(趣味や家族との時間をどう過ごしたいか)、年金との兼ね合い(在職老齢年金の減額を避けたいか)を考慮しましょう。
準備すべきこととして、定年の数年前から再任用後の生活設計を考える、家計を見直し、必要な収入額を把握する、健康管理に気を配り、体力を維持する、再任用の条件や手続きを人事部門に確認することが重要です。
最後に
再任用制度は、定年後のキャリアと生活を支える重要な選択肢です。制度を正しく理解し、自分のライフプランに合った選択をすることで、充実したセカンドキャリアを送ることができます。
定年はゴールではなく、新しいステージの始まりです。再任用制度を賢く活用し、健康で豊かな60代を過ごしてください。この記事が、あなたの選択の一助となれば幸いです。

