「市役所は楽な職場と思っていたが、実際は残業だらけと聞いた」「どの部署が激務なの?」「市役所の激務が原因で体を壊したり辞めたりする人はどのくらいいる?」
「公務員は定時で帰れて楽な仕事」というイメージは、今や過去のものです。全国の市役所では、住民サービスの拡充・行政のDX推進・少子高齢化対応・災害対応など業務が増え続ける一方、職員数は抑制傾向にあり、「激務」と表現せざるを得ない労働環境に置かれている職員が増えています。
本記事では、市役所の激務の実態をデータとともに正直に伝え、激務部署の特徴・原因・心身を守る方法・激務を理由に転職を検討する際の考え方まで、現役・就職検討者の双方が知りたい情報を網羅的に解説します。
「市役所は激務」の実態:データで見る現状

残業時間の実態
総務省「令和4年地方公務員の勤務時間・休暇等の状況調査」によると、地方公務員の時間外勤務(残業)は年々増加傾向にあり、職員1人あたりの平均時間外勤務時間は年間約220〜240時間(月平均18〜20時間)とされています。
ただし、この「平均」には残業がほぼゼロの部署も含まれており、激務部署に限ると月60〜100時間超の残業が常態化しているケースも少なくありません。
地方公務員のメンタルヘルス問題も深刻化しています。総務省の調査(2022年度)によると、精神疾患による病気休職者は地方公務員全体の約0.72%にあたる約21,000人に上り、過去最多水準を更新し続けています。病気休職者のうち精神疾患が占める割合は約66%であり、職場環境・業務負荷との関連が強く指摘されています。
「激務」を生む構造的な原因
市役所が激務になりやすい根本的な理由は以下の4点です。
① 業務量の増大と職員数の乖離 住民サービスの多様化・法改正への対応・デジタル化推進など業務は増え続けていますが、行政改革・財政健全化の名目で正規職員数は抑制・削減傾向にあります。「少ない人数で増え続ける業務をこなす」という構造的矛盾が慢性的な残業を生んでいます。
② 突発的な行政需要への対応 コロナ禍の給付金業務・大規模災害対応・感染症対策など、予期できない行政需要が突発的に発生した際、全庁的な動員・残業が課される事態が繰り返されています。2020〜2021年のコロナ禍では、給付金担当部署の職員が月100時間を超える残業を余儀なくされた事例が全国各地で報告されました。
③ 議会対応・答弁資料作成 年4回(自治体によって異なる)開催される議会に向けた答弁書・委員会資料の作成は、深夜まで続く残業の主要因の一つです。議会前後は企画政策・財政・各課の担当者が連日深夜まで働くことが当然視されている文化がまだ残っています。
④ クレーム対応・住民対応の重層化 住民のニーズが多様化・複雑化するなか、窓口での対応時間が長くなっています。特にDV・生活困窮・精神疾患を抱えた住民への複合的な支援は、ケースワーカー・窓口職員の精神的・時間的負担を増大させています。
激務になりやすい部署・ランキングと理由

激務度が高い部署トップ5
第1位:企画政策課・財政課
行政全体の方針・予算を担う中枢部署は、議会対応・予算編成・首長への報告資料作成が集中します。特に予算編成期(11月〜2月)と議会期(3月・6月・9月・12月)は月60〜100時間超の残業が珍しくありません。
第2位:生活保護課(福祉事務所)
厚生労働省の基準では、ケースワーカー1人あたりの担当世帯数は80世帯が標準とされていますが、大都市部では100〜120世帯を超えるケースも珍しくなく、家庭訪問・相談・関係機関調整・書類作成が追いつかない状況が続いています。
複雑な背景を持つ方(精神疾患・DV・多重債務)への継続支援は、単なる「業務」以上の精神的消耗を伴います。

第3位:子育て支援課・保育担当
保育所の入所選考・待機児童対策・虐待対応・こども家庭センターへの移行対応など、業務量が急増している部署です。
年度末(2〜3月)の入所選考・通知・保護者対応の時期は全員が深夜まで残業する状態が常態化している自治体が多く、虐待通報への緊急対応が加わるケースもあります。
第4位:税務課(課税・徴収担当)
住民税・固定資産税の賦課業務が集中する繁忙期(1〜6月)は残業が増加します。特に徴収担当は滞納者への督促・差し押さえなどの精神的に重い業務を日常的にこなさなければなりません。
第5位:情報政策課・DX推進担当
全庁的なDX推進・システム更新・マイナンバー関連業務・サイバーセキュリティ対応を少人数で担う部署では、専門知識を持つ職員不足から特定の担当者に業務が集中する傾向があります。
システムの不具合・トラブル対応は土日・夜間にも発生することがあり、「いつ呼ばれるか分からない」という心理的負担も大きいです。
繁忙期カレンダー:市役所の「激務シーズン」

年間を通じての繁忙期を把握することで、激務の波を事前に予測できます。
| 月 | 主な繁忙要因 |
|---|---|
| 1〜2月 | 住民税申告・確定申告準備・次年度予算編成の最終局面 |
| 3月 | 保育所入所選考・引越しシーズン(住民票・転入出集中)・議会(3月定例会) |
| 4月 | 年度始め・新入職員研修・4月からの制度変更対応 |
| 5〜6月 | 固定資産税・住民税の賦課通知・議会(6月定例会) |
| 8〜9月 | 議会(9月定例会)・決算審査・予算要求の準備開始 |
| 10〜11月 | 次年度予算要求・財政査定・年末調整関連 |
| 12月 | 議会(12月定例会)・年末の給付金・補助金処理 |
最も激務になる時期は3月・12月(議会期+年度末・年度始め)と予算編成期(11月〜2月)の重複期間であることが多く、この時期の残業は特に深刻になります。
激務で心身を壊さないための対処法

自分でできる3つのセルフケア
① 「仕事の終わり」を意識して作る習慣
激務部署では「やることが尽きない」ため、区切りなく仕事し続けてしまうことが多いです。「今日はここまで」という終わりを意識的に設定し、翌日に回せる仕事は回す習慣を作ることが、長期的な消耗を防ぐ基本です。
② 休暇を「先取り予約」する
激務部署ほど「休める気がしない」という感覚が強くなりますが、年次有給休暇は権利です。月1〜2日は翌月のカレンダーに先に記入し、休暇を「確保してから仕事を組む」習慣を作ることが重要です。
③ 「相談する・任せる」練習をする
完璧主義・責任感の強さから「全部自分でやらなければ」と抱え込みすぎることが燃え尽き症候群(バーンアウト)の主要因です。業務の優先順位を整理し、上司・同僚に状況を正直に伝え、分担を求めることは「弱さ」ではなくチームワークだと認識することが大切です。
組織・上司への相談:早めのサインを出す
心身に以下のようなサインが出てきたら、放置せずに早めに上司・人事担当・産業医に相談することが不可欠です。
要注意のサイン:
- 夜眠れない・朝起きられない
- 食欲の著しい低下または増加
- 仕事のことを考えると動悸・呼吸が苦しくなる
- 以前は楽しかったことに興味が持てなくなる
- 職場に行くことへの強い拒否感が続く
地方公務員の病気休職制度は最長90〜180日(有給)と非常に充実しています。「休むと周りに迷惑がかかる」という罪悪感から無理し続けることが最悪の結果(退職・長期療養)につながります。サインが出たら勇気を持って相談することが、キャリアを守る最善策です。
市役所のメンタルヘルス相談窓口
多くの市区町村では以下の相談窓口が設けられています。
- 産業医・産業保健師との面談: 職場の健康管理担当者に申し込むと無料で相談できる
- EAP(従業員支援プログラム): 外部の専門機関を活用した匿名相談サービス(自治体によって導入状況が異なる)
- 人事担当・所属長への相談: 業務量の調整・異動についての相談
激務が続いたときの選択肢

選択肢①:異動申請・部署変更を求める
人事異動の自己申告書(年1回)に、業務負荷・心身の状況を正直に記入して異動を希望することができます。「精神的・身体的に限界に近い状況であることを伝えたうえで異動を希望する」という申告は、人事担当者が真剣に受け止めるケースが多いです。

選択肢②:病気休職・時短勤務制度の活用
精神疾患・うつ病・適応障害などの診断が出た場合、最長90〜180日の有給病気休暇を取得できます。その後も必要に応じて病気休職(無給または一部給付あり)を経て、職場復帰プログラムを通じた段階的な復職が可能です。


選択肢③:転職を検討する
激務・職場環境・組織文化への根本的な違和感がある場合、転職を検討することも一つの選択肢です。
転職検討時の注意点:
- 「この部署がきつい」なのか「公務員の仕事全体が合わない」のかを切り分けて考える
- 異動で解決できる問題は異動が先(一時的な激務部署への配属は2〜4年で変わることが多い)
- 転職活動は在職中に進めることを基本とする(精神的に追い詰められた状態での退職は判断力が落ちる)
- 30代以降の民間転職は「公務員での経験をどう民間で活かすか」の言語化が鍵


激務な環境でも続けるモチベーションを保つ方法

「なぜここで働くのか」を言語化する
激務に追われる中で、自分の仕事の意義を見失うことは珍しくありません。「自分はなぜこの市役所で働いているのか」という問いに答えを持つことが、長期的なモチベーション維持の基盤となります。
- どんな住民の役に立てたか(具体的なエピソード)
- どんなスキル・経験が積み重なっているか
- 5年後の自分はこの経験をどう活かせるか

「激務だったから成長できた」という視点
きつかった経験は、必ずしも「無駄な消耗」ではありません。激務部署での経験は「高い業務処理能力・調整能力・精神的タフネス」の証明になり得ます。
昇進・昇任試験・社会人経験者採用(他自治体)・民間転職の際に、「激務部署での実績」は強力なアピール材料になります。


よくある質問(FAQ)

Q. 市役所の激務ランキングは本当に信頼できる?
A. ネット上の「激務ランキング」は個人の主観・特定の自治体の経験に基づくことが多く、すべての市役所に当てはまるわけではありません。同じ部署名でも、自治体の規模・財政状況・人員配置によって業務量は大きく異なります。就職前に採用説明会・OB/OG訪問でリアルな情報を収集することが最も確実です。
Q. 採用面接で「激務でも大丈夫か」という質問が来たらどう答える?
A. 「大丈夫です」と即答するだけでなく、根拠を添えることが重要です。「アルバイト・部活・ゼミでハードな局面を乗り越えた経験がある」「自己管理(運動・睡眠・休暇取得)の習慣がある」などを具体的に伝えることで、面接官に安心感を与えられます。
Q. 激務すぎて心が折れそう。今すぐ辞めるべきか?
A. 精神的に追い詰められた状態での退職は、後悔するケースが少なくありません。まず産業医・かかりつけ医・メンタルヘルス相談窓口に相談し、休職制度の活用を先に検討してください。 「辞めるかどうか」の判断は、ある程度心身が回復してから冷静に行うことをおすすめします。退職・転職は体と心が動ける状態で考えることが最善です。
Q. 激務が嫌で市役所への就職を迷っている。どう判断すればいい?
A. 「市役所全体が激務」ではなく、部署によって天と地ほど差があることが現実です。激務になりやすい時期・部署の特徴を事前に理解したうえで、「そのきつさも含めて覚悟できるか」「自分の強みがその環境で活かせるか」を判断基準にすることをおすすめします。採用説明会・インターンシップ・OB/OG訪問で現場の声を直接聞くことが最も確実な判断材料になります。
まとめ:市役所の「激務」はリアルだが、部署・時期・自治体によって大きく異なる

本記事の重要ポイントをまとめます。
- 地方公務員の平均残業は月18〜20時間だが、激務部署は月60〜100時間超が珍しくない
- 精神疾患による病気休職は約21,000人(過去最多水準)と深刻化している
- 激務になりやすいのは企画政策・財政・生活保護・子育て支援・税務徴収などの部署
- 激務の根本原因は「業務量増大×職員数抑制」という構造的矛盾
- 体を壊す前に産業医・上司・人事担当への相談・病気休職制度の活用が最善策
- 転職検討は「この部署の問題か・公務員全体の問題か」を切り分けてから判断する
- 就職前に採用説明会・OB/OG訪問でリアルな労働環境を確認することが不可欠
市役所を「楽な職場」として入庁した後に現実とのギャップに苦しむ方がいる一方、激務を乗り越えながらやりがいを感じ続けている職員も数多くいます。「市役所の激務」という現実を正面から受け止めたうえで、自分の価値観・体力・目標と照らし合わせた判断をすることが、後悔しない選択への最短ルートです。
