地方公務員として働く以上は異動がつきものです。
そこで、地方公務員の異動の実態について、現役の地方公務員があらゆる疑問にお答えしたいと思います。
このページでは、具体的に
・異動の内示はいつごろでるのか?
・希望する部署に行けるのか?
・嫌な部署に配属されたしまった場合の対処法
・出世コースや左遷部署はあるのか
等について、詳しくご紹介します。
異動は何年ごとにある?
ネット等でも言われているとおり、地方公務員の異動は3年が目安となっています。
その理由は2つ。
1つ目は行政の仕事は多岐に渡るので、3年ごとに異動して、様々な部署を経験してもらうためです。
2つ目は長年同じ部署にいると、横領したり、業者と癒着したりするので、そのような悪事を働かせないためです。
ただし、3年たったら自動的に異動する、と言うわけではありません。
3年たったら異動候補者リストに載る、と言う意味です。
そのため、必ず3年で異動できるとは限りません。
また、この異動候補者リストに載る目安も異動先の部署によっては変わります。
例えば議会事務局や戸籍担当の方などの場合、3年異動ではなく、より長期になります。
その理由は、議会の運営や戸籍の登録は行政の根幹的な業務であることから、コロコロ人が変わると、行政運営が滞ってしまうからです。
それから3年の考え方ですが、基本的に異動して3年と考えて良いんですが、係長などに出世した場合は一度リセットされます。
例えば、介護保険係に3年いて、次の年に介護保険係の係長に出世したとします。
この場合、介護保険係そのものの勤務年数は4年目になりますが、総務的には出世によってリセットされて1年目とみなすため、異動候補者リストには載りません。
たった1年で異動する人の特徴
異動後、たった1年で再び異動になるケースがあります。
これはどういう意味かと言いますと、その部署から追い出されたと言うケースが大半です。
追い出されたとは言え、異動先があると言うことは、仕事そのものができないと判断されたわけではなく、その業務が向いていないと判断されたと言う意味なので、そこまで落ち込む必要はありません。
また、中には、その人がぜひとも欲しいと言う理由で引き抜かれるケースもあります。
何年も異動できない人の特徴
逆に5年、10年となかなか異動できないケースもあります。
これはどういう意味かと言いますと、その人がその係の核であり、抜けられると仕事が回せなくなるため、上司が手放せないと言うケースが大半です。
役所の仕事こそマニュアル化が必要なんですが、なかなかマニュアル化がうまくいっていないため、引き継ぎが難しい業務であったり、田舎ほど多いですが、厄介なお客さんがいて、その人じゃないと対応できないと言う理由のため、異動させられないことが多々あります。
ただし、中には本当に仕事ができない人で、どこの課も引き受けてくれないため、異動できないと言うケースもあります。
異動の時期は?
異動の時期は4月と10月です。
4月の方がメインのため、より異動者が多く、10月はその後の微調整のための異動です。
ただし、4月と10月しか異動がないわけではありません。
極端な話、毎月異動があっても制度上は問題ありません。
しかし、行政運営をするうえでは、頻繁に異動があると業務が滞るため、基本的には4月、10月の異動が普通です。
と、ここで勘の良い方はお気づきだと思いますが、4月と10月以外に異動があった場合は、異動する部署または異動する職員のいずれかに何らかのトラブルが発生したと言うことです。
異動の内示はいつごろ出る?
異動の内示が出るのは、驚くなかれ、なんと早くて1週間前です。
民間企業だと、もっと早くに内示が出ると思いますが、地方公務員の場合はギリギリまで出ません。
その理由は、定かではありませんが、横槍を入れる人、口を挟む人が多いからだと思っています。
異動に関しては市長、議員、組合が絡んできます。
それぞれが、それぞれの要望を言うため、調整が難しいため、ここまでギリギリになるのでは?と私は邪推しています。
結果、突然の異動により、短期間での引き継ぎ業務等が必要なるため、日頃からいつでも異動ができるように準備をしておく必要があります。
希望する部署に異動できる?
人事評価の際に、希望する部署を聞かれますが、残念ながら希望する部署に行くことはできません。
一応人事としては、それぞれの希望を叶えてあげたいと言う気持ちはあるようですが、職員数が減っていることから、人材の量的にも質的にも余裕がないため、希望を出しても、希望どおりの職場に配属させることはできないようです。
どうしても異動したい場合の対処法
ある日突然、絶対に行きたくないと思っていた部署に配属されたり、周りの職員との相性が最悪で、今すぐにでも異動したい!と思うときがあると思います。
このように、どうしても異動したい場合に、異動する方法が2種類あるので、ご紹介します。
労働組合に相談する
どこの市役所にも労働組合がありますので、労働組合に異動したい旨を相談しましょう。
労働組合が強い市役所であれば、労働組合に相談すれば、異動させてもらえることが多いです。
ただし、労働組合が弱い市役所であれば、残念ながらこの手は使えません。
労働組合の活動の手伝いをさせられて面倒だな、と思うことは多々あると思いますが、キチンと活動をしていれば、異動の他、職場改善や職員数の増加など組織として市長や執行部に対して要望を出すことができます。
国の機関や民間企業への派遣に行く
最も確実に異動できる方法は、国の機関や民間企業への派遣に手挙げをすることです。
厚労省とか経産省とかの国の機関はどこも人手不足です。
そのため、だいたいどこの市役所も数年に1回派遣を出しているはずです。
そこに行きたいと声をあげれば、今の部署から離れることができます。
ただし、派遣人数に限りがあります。
例えば1つの枠に応募が多数出た場合は、当然より人事から評価の高い人が行くことになるため、そこは注意しないといけません。
また、国の機関や民間企業は市役所の仕事と比べるとかなりハードです。
国の機関であれば、毎日夜遅くまで残業して、ひたすらコピーを取るだけの作業をしなければいけません。
休みもほとんありません。
民間企業であれば、売上と言うノルマがあるため、行政の仕事のように、ただ作業をこなせば良いわけではありません。
「作業」ではなく、「仕事」をしなければいけないため、生産性をあげることができれば、定時で帰れますが、生産性をあげることができなければ、どれだけ働いても評価されません。
このように国の機関や民間企業は、かなりハードな職場になりますが、決められた期間、きちんと業務をこなして帰ってくれば、市役所内ではエリートとしての評価を勝ち得ることができます。
出世コースや左遷は存在するのか
異動の時に気になる点として、「今回の異動は出世コースに入れたのか?それとも左遷させられたのか?」だと思います。
そして、実際に出世コースや左遷は存在ます。
市役所の出世コースの部署と左遷部署をご紹介します。
出世コースの部署
市役所内における出世コースの部署は総務部門、財政部門、議会事務局、秘書部門です。
総務部門は人事・法務・総合計画、財政部門は市の予算・決算、議会事務局は議会運営、秘書部門は市長の補佐と言ったように、市の舵取りをする部署、もしくは市の方針を決定する人を補佐する部署が出世コースの部署です。
これらの部署は行政運営の根幹部分の業務を担当しているため、ミスをすることが許されません。
もしミスをすれば「クレームが発生する」どころではなく、「事件」になります。
そのため、市役所の中でも優秀な人が集められます。
自分の勤め先の市役所を考えてみたらわかると思いますが、これらの部署に仕事ができない人は、まずいないと思います。
左遷部署
次に左遷部署ですが、住民票等の発行をする市民部門、福祉部門です。
市役所によって異なりますが、基本的に直接市民とやりとりのある部署が左遷部署になることが多いです。
その理由は、窓口関係の部署は1つ1つの仕事が、すぐに完結するからです。
例えば住民票の発行は住民票の発行をすれば終わりです。
その後に継続する業務はありません。
福祉部門も同様で、例えば介護認定を受ける場合も、どれだけクレームが発生しようと、介護認定の合否さえ決まれば一旦は終わりです。
その仕事が数ヶ月、数年と長期に渡ることはありませんし、問題が起きても、あくまで市民1人との問題でしかありません。
市民と接する窓口に左遷された人が多いため、「市役所職員は仕事をしていない!」とお叱りを受ける原因にもなるんですが、そのような職員を、例えば予算を決めたり、執行したりする重要な部署に配属するわけにはいけないため、市民部門、福祉部門に左遷されるような人が配属されることが多いです。
「それじゃあ市民部門、福祉部門に配属されているから、私は仕事ができなと評価されているのか…」と思うかもしれませんが、そうとも限りません。
戸籍の登録などように重要な仕事もありますし、逆に、「このメンバーで大変だろうけど、優秀なあなたに核となって頑張ってもらいたい!」と言う意味の場合の異動もあるので、一概に左遷と言うわけでもありません。
地方公務員の異動は転職に近い
最後に、地方公務員の異動がどういうものなのか?についてですが、地方公務員の異動は転職に近いです。
行政の仕事は多岐にわたるため、異動するとガラリと業務内容が変わります。
例えば生活保護のケースワーカーとしてお金を支給する仕事から、突然、滞納者から税金を取り立てる仕事に変わったり、介護保険係として高齢者のための仕事から、教育委員会に異動して、児童生徒のための仕事に変わったりします。
どれだけ経験年数を積んでも、何歳になっても、異動したら1から仕事を覚えていかなければならず、今までの経験が必ずしも活きるわけではないため、その点は地方公務員として仕事するうえで少し辛いところではあります。
まとめ
地方公務員の異動に関して説明をさせていただきました。
良い部署、希望部署に行けたらラッキーです。
嫌な部署に行ったら残念ですが3年間だけ我慢しましょう。
地方公務員で働く以上、異動は避けて通ることができませんので、異動する人も異動しない人も目の前にある仕事をとにかく頑張ってやりましょう。