市役所のお仕事と言って真っ先に思いつくのは住民票発行等の窓口業務ではないでしょうか。
実際は窓口業務がメイン業務ではない部署もたくさんありますが、市民の方がイメージする市役所の仕事は、やはり窓口業務だと思いますし、新人職員として最初に配属される部署やいわゆるパート・アルバイトである会計年度任用職員として働く場合の主な業務は窓口業務となります。
市役所で働くことは、楽そう、簡単そうと言うイメージを持たれる方が大半だと思いますが、ネット等で検索すると、実は窓口業務が大変で精神を病む方もいる等と書かれていたりするため、いざ働くとなると、本当に楽で簡単なのか?少し不安になる方もいるのではないでしょうか?
そこで、このページでは、市役所の窓口業務はどんなものか?一見暇そうにしている職員ばかり見かけるが大変なのか?窓口業務にやりがいはあるのか?等、リアルな市役所における窓口業務の内容についてご紹介します。
市役所の窓口業務の概要
市役所の窓口業務は大きく分けて
- 各種証明書の発行
- 各種受付
- 住民対応・相談
の3種類あります。
例えば市民課であれば
- 住民票や戸籍謄本、課税証明書の発行(各種証明書の発行)
- 出生、死亡、婚姻、離婚、転入、転出等に関する業務(各種受付)
- マイナンバーカードの手続き、マイナポイントの取得方法(住民対応・相談)
等と言った窓口業務を行うことになり、
福祉課であれば
- 障害者手帳、療育手帳、母子手帳の発行(各種証明書の発行)
- 介護保険、児童手当、児童扶養手当等に関する業務(各種受付)
- 生活保護や住居確保給付金の相談(住民対応・相談)
等と言った窓口業務を行うことになります。
市役所の窓口業務そのものは大変ではない
市役所の業務は法律や条例に基づく業務のため、最初は専門用語等に慣れず苦労することもありますが、基本的には単純作業の繰り返しになるため、窓口業務そのものは大変ではありません。
1~2カ月でも働けば仕事にも慣れてきますし、市役所の場合、パート・アルバイトである会計年度任用職員であっても有給休暇・夏季休暇等を取得できることから、業務量と給与・休日等の待遇を考えると、大変ではなく、むしろ民間企業よりも優遇されています。
市役所の窓口業務はクレーム対応が大変
上記のとおり、市役所の業務内容そのものは大変ではなく、厚待遇ではありますが、一つだけ問題があります。
それは、クレーム対応が非常に大変な点です。
民間でもクレームは発生しますが、市役所では全く別物のクレームが、しかも大量に発生します。
そして、それらのクレームにより、精神を病み、病気休暇を取得する職員も多数います。
「それは市役所職員の窓口対応が悪いから大量のクレームが発生するんじゃないの?」
と言う意見もあると思います。
確かに、市役所職員の対応が悪い時もありますが、クレームが発生する理由はそれだけではありません。
そのため、個人が如何にクレームをなくす努力をしても必ずクレームは発生します。
では、なぜ市役所の窓口業務ではクレームが発生しやすいのか?いくつか理由がありますので、その理由についてご説明します。
市民は市役所の窓口に嫌々来ている
例えばケーキ屋さんに訪れる時はどんな気持ちで行きますか?
大切な人のお祝いをする時、自分にご褒美をあげる時など、ワクワクドキドキしていませんか?
一方、市役所に訪れる時はどんな気持ちで行きますか?
各種証明書を取りに休日や、わざわざ有給休暇を取って行くため、嫌な気持ちではありませんか?
ケーキ屋さんのようにワクワクドキドキと言ったプラスの感情を持っている時は、多少店員さんの対応が悪くても、そこまで気にはならないと思います。
しかし、市役所のように最初からマイナスの感情を持っている時は、ちょっとした粗相であってもイラッと来て、すぐにクレームに繋がります。
このように、市役所の窓口には最初から嫌々来ているため、クレームが発生しやすい環境にあります。
優秀な職員は窓口業務に配属されにくい
市民に最も近い窓口業務に優秀な職員を配置することで、窓口対応の質もスピードも改善され、市民の市役所への見方も変わります。
そのため、窓口業務に優秀な職員を優先的に配置するべきではないか?と市民の方は考えると思います。
しかし、実際は、市民からは見えにくい仕事である法制や人事、財政、都市政策の作成、議会対応等の仕事の方がミスが許されず、市民への影響も大きいことから優先順位が高いです。
そのため、優秀な職員は、主に総務部に優先的に配属されることになります。
もちろん、窓口業務のある部署にも優秀な人材は配属されます。
しかし、優秀な人材は窓口業務はせず、内部の仕事、例えば戸籍情報の更新作業や各部署に配分された予算執行等のより重要な仕事をすることになります。
基本的にその場限りで終わる窓口業務は新人職員、パート・アルバイトである会計年度任用職員、もしくは仕事のあまりできない職員がすることになります。
そのため、どうしても窓口対応が悪くなり、クレームが発生しやすくなります。
法律が根拠のため融通が利かない
民間のサービスであれば融通を利いてくれることがあります。
例えばホテルであれば、たくさん利用してくれているお客様に対しては、同じ料金でも部屋のグレードをアップしてくれたり、朝食の席を確保してくれたり、ラウンジが利用できたり、列に並ばなくて良いように配慮してくれたりします。
しかし、市役所の場合は、業務の根拠が法律であるため、融通を利かせることができません。
例えば生活保護であれば、最低生活費と言うものがあり、収入等がそれ以下であれば生活保護を受給できますし、逆に1円でも最低生活費より収入等が多ければ生活保護を受給することができません。
「生活が苦しいことに違いはないんだ!たった1円くらい良いじゃないか!」と言われますが、仮に1円を認めてしまうと、じゃあいくらまでなら良いのか?10円は?100円は?1万円は?となし崩し的に認める形になり、基準があってないようなものになってしまいます。
理解と納得は違うため「理解はできるが、納得はできない!」とクレームにつながります。
また、「議員や知り合いが来た時は融通をする職員がいるではないか?」と言う意見もあると思います。
職員の中でも融通を利かせることが仕事ができると勘違いしている職員も多数います。
ただ、日本国憲法第15条第2項で規定されているとおり、すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではありません。
融通を利かせる職員の方が公務員として間違っているんです。
しかし、融通を利かせる仕事のできない職員がいることで、一生懸命仕事をしている職員がクレームを受ける羽目になります。
ストレス解消にクレームを言う人がいる
市役所は市民から頂いた税金を財源として運営をしています。
そして、市民の方は生活保護受給中であっても消費税等、生活をしていれば何かしらの形で税金を支払っています。
だからなのか、税金を払っている以上、市役所の職員に対しては、いくらでもクレームを言っても良いと思っている市民の方がいます。
そして、それが飛躍して、仕事や家庭で受けたストレスを発散するために市役所にクレームを言いに来る市民の方がごくごく少数ではありますが実在します。
ストレス発散が目的のため、どれだけ丁寧に接遇しても、難癖をつけられますし、始まったら、それはもう激しいクレームです。
どんどんヒートアップするものですから、口調も激しいですし、気が済むまで延々と続きます。
内容も最初は業務のことから始まりますが、派生して行き、行政全体のことや職員の人格を否定することまで、ありとあらゆる罵詈雑言を受けることになります。
暴力を振るうなど、よほど酷ければ警察を呼んで公務執行妨害として逮捕してもらいますが、大半は、市職員が泣き寝入りをする形で終わります。
本当にそんな人いるの?と疑問に思う方もいると思いますが、市役所あるあるなので、市役所職員の知り合いや友人がいる方は聞いてみてください。
どの部署に配属されている人でも有名なクレーマーを必ず1人か2人は挙げられます。
クレームがクレームを生む悪循環
クレームを受けると、多かれ少なかれ心にダメージを負います。
特に真面目に一生懸命接遇をしている職員ほど、「一生懸命対応したのに!」と言う思いが強い分、ショックが大きいですし、「もっとこうすれば良かったのか?」と後悔し、引きずります。
そのダメージを抱えたまま窓口業務をしても、どこか上の空で、ミスが起きやすいことから、次のクレームに繋がりやすくなります。
また、クレームに対しては必ず2人以上で対応するため、その分、サービスが滞ります。
結果、サービスの提供時間が長くなり、待ち時間が長くなるため、「いつまで待たせるんだ!」と次のクレームが発生します。
クレーム対応中に他の職員がサポートに回れれば良いですが、市役所の業務はそれぞれの業務で専門性が高いため、簡単に変わって対応することができません。
また、人件費も毎年削られていることから、クレームが発生した時のための余分な人材は配置されておりません。
そのため、一度クレームが発生すると、次のクレームへと負の連鎖が続きやすくなります。
市役所の窓口業務にやりがいはない
残念なお知らせですが、窓口業務にやりがいはありません。
給料・ボーナスがしっかり出ること、休暇が取りやすいことをやりがいとして市役所の窓口業務に従事することは良いですが、窓口業務そのもにやりがいを求めてはいけません。
その理由は大きく分けて2つあります。
市役所の窓口業務そのものは単純作業
繰り返しになりますが、市役所の業務は法律を根拠にしているため、明確な基準があります。
できるものはできますし、できないものはできません。
そこに所謂職員の裁量は存在しません。
そのため、ある意味、機械的に分類していかなければいけません。
また、正規の職員は平均3年程度で異動するため、誰が配属されても仕事ができるように仕事を属人化することができません。
つまり、「◯◯さんじゃないとできない!」と言った仕事を作ってはいけないんです。
仕事ができない職員ほど、自分の優位性を保ちたいことから、マニュアルや引き継ぎをせずに「私がいないと駄目だなぁ」と謎のマウントを取ってきたりしますが、その分、市民サービスが滞るため、行政の仕事のあり方としては最悪です。
サービスの均一化を図り、作業を可能な限り単純化し、その作業を淡々とこなすことだけが最も生産的なため、仕事のできる人ほど、窓口業務にやりがいを求めてはいけません。
市役所の窓口業務の大半はクレーム処理
「市民を代表してクレームを言ってる!」「私が言わないと市は良くならない!」と言う方が本当に多数いらっしゃるので、市役所の窓口業務の大半はクレーム対応と言っても過言ではありません。
よく接客業の方が「お客様の笑顔や感謝の言葉を頂けた時に、この仕事をやっていて良かったと思います。」と言った良い話をされますが、市役所の窓口業務では、そんな良い話を期待してはいけません。
「税金を払っているのだから良いサービスをするのは当然で、むしろわざわざ窓口まで出向いているのだから感謝して欲しい。」と言う市民の方が大多数です。
感謝の言葉を頂けることも稀にありますが、本当に稀です。
市役所の窓口業務は良いサービスをすることが当然のため、お客様の笑顔や感謝の言葉をやりがいにすることはできません。
やりがいを求めるなら仕組みを変えよう
市役所の仕事は窓口業務に限らず、どの仕事も前例踏襲主義のため、同じことの繰り返しで非常に退屈でつまらない仕事ばかりです。
しかし、あることに気がつくことができれば、市役所ほど地域に大きな影響を与えられる仕事はないことに気づくことができます。
それは、地域に最も投資をしているのは市役所であると言うことです。
仕組みを変える側に立つことができれば、実はできることがたくさんあることに気がつくため、行政の仕事にやりがいを持つことができます。
窓口業務も同様で、窓口業務そのものにやりがいを求めることはできませんが、窓口業務のあり方を変える施策を考えることで、やりがいを持って仕事に打ち込むことは可能です。
そして、市民にも自分にとっても、より良いサービスを実現することができれば、今まで味わったことがないほどの達成感・充実感を体験できるはずです。
まとめ
市役所の窓口業務について実体験から紹介させていただきました。
市役所の窓口業務そのものは1~2ヶ月も働けば慣れてくるため、そんなに心配する必要はありません。
ただし、クレームは予想よりも多く、激しいものが来るので、大変だと覚悟しておいてください。
私自身、民間企業に勤めていた時も様々なクレームを受けてきましたが、市役所の窓口業務で受けるクレームは全くの別物で、非常に驚きました。
民間企業でクレームに慣れている方も注意が必要です。
また、窓口業務そのものは単純作業であり、良いサービスができて当然のため、窓口業務そのものにやりがいを求めるのは非常に難しいです。
行政の仕事にやりがいを求めるのであれば、仕組みを変える視点を持つことが大事です。
「仕事にやりがいを求められないよ!」と言う方も安心してください。
給料と休みがしっかり取れる!それだけで十分働きがいはあります。