会計年度任用職員として働く上で、賞与(ボーナス)がいくらもらえるのかは重要な関心事です。
2024年度から制度が大きく改正され、賞与が大幅に増額されました。

本記事では、会計年度任用職員の賞与について、最新の制度内容から計算方法、支給条件まで詳しく解説します。
2024年度から賞与が大幅増!勤勉手当支給開始

結論から申し上げると、2024年度(令和6年度)から会計年度任用職員にも勤勉手当が支給されるようになり、賞与が大幅に増額されました。
制度改正の経緯
2023年5月に地方自治法が改正され、会計年度任用職員にも「勤勉手当」の支給が可能になりました。
これまで会計年度任用職員には「期末手当」のみが支給されていましたが、常勤職員と同様に「勤勉手当」も支給されることで、年間の賞与額が大幅に増加しています。
2020年に会計年度任用職員制度が創設された際、期末手当の支給は可能となったものの、勤勉手当は対象外でした。
その後、国の非常勤職員への勤勉手当支給が進んだことを受け、地方自治体でも同様の処遇改善が実現しました。
賞与の増加額
従来は期末手当のみで年間約2.4~2.6か月分でしたが、2024年度からは以下のようになっています:
2024年度の標準的な支給月数
- 期末手当: 年間2.45~2.5か月分
- 勤勉手当: 年間2.05~2.1か月分
- 合計: 年間4.5~4.6か月分
つまり、従来の約2倍近くに増額されたことになります。
例えば月給20万円の場合、従来は年間約48万円だった賞与が、2024年度からは約92万円になる計算です。
期末手当と勤勉手当の違い

会計年度任用職員の賞与は、「期末手当」と「勤勉手当」の2種類で構成されています。それぞれの性質を理解しておきましょう。
期末手当とは
期末手当は、生活費が一時的に増大する時期(夏季・年末)に、生計費を補充するための生活補給金としての性格を持つ手当です。
特徴
- 在職期間に応じて一律に計算される
- 勤務成績による差はつけられない
- 生活支援を目的とした手当
勤勉手当とは
勤勉手当は、勤務成績に応じて支給される能力給としての性格を持つ手当です。
特徴
- 人事評価の結果が反映される
- 勤務実績や業務遂行能力に応じて支給額が変動
- 職員の意欲向上を目的とした手当
ただし、多くの自治体では2024年度から2026年度までの3年間を移行期間としており、この期間は勤務評価にかかわらず一律で支給される場合が多くなっています。
賞与の支給対象となる条件

会計年度任用職員が賞与を受け取るには、一定の条件を満たす必要があります。
基本的な支給条件
必須条件
- 任用期間が6か月以上であること
- 週の勤務時間が15時間30分以上であること
- 基準日(6月1日・12月1日)に在職していること
この3つの条件を満たす会計年度任用職員には、フルタイム・パートタイムを問わず賞与が支給されます。
フルタイムとパートタイムの違い
フルタイム会計年度任用職員
- 週38時間45分(1日7時間45分×週5日)勤務
- 常勤職員と同じ勤務時間
- 「給料」として支給
パートタイム会計年度任用職員
- 週38時間45分未満の勤務
- 会計年度任用職員の約9割がパートタイム
- 「報酬」として支給
どちらも支給条件を満たせば、期末手当・勤勉手当の両方が支給対象となります。

支給対象外となるケース
以下の場合は賞与が支給されません。
- 任用期間が6か月未満の短期任用
- 週の勤務時間が15時間30分未満
- 基準日に在職していない(基準日前1か月以内の退職者を除く)
- 自治体の条例で定める除外対象者
賞与の支給時期と基準日

賞与は年2回、夏季と冬季に支給されます。
支給スケジュール
夏季の賞与
- 基準日: 6月1日
- 支給日: 6月下旬(多くの自治体で6月30日前後)
- 算定期間: 前年12月2日~当年6月1日
冬季の賞与
- 基準日: 12月1日
- 支給日: 12月上旬~中旬(多くの自治体で12月10日前後)
- 算定期間: 6月2日~12月1日
基準日の重要性
基準日に在職していることが支給の絶対条件です。
例えば、6月30日に退職する場合、6月1日時点で在職していれば夏季の賞与は支給されますが、5月31日に退職すると支給されません。
ただし、基準日前1か月以内(5月2日~5月31日、11月2日~11月30日)に退職または死亡した場合は、特例として賞与が支給される自治体が多くなっています。

賞与の計算方法

賞与がいくら支給されるのか、具体的な計算方法を見ていきましょう。
期末手当の計算式
基本的な計算式
期末手当 = 期末手当基礎額 × 支給割合 × 在職期間別割合
期末手当基礎額
- フルタイム: 給料月額 × 125%(または127.5%)
- パートタイム: 報酬月額(または換算月額)× 125%(または127.5%)
支給割合(2024年度の例)
- 6月期: 1.225か月分
- 12月期: 1.225か月分
- 年間合計: 2.45か月分
在職期間別割合:
- 6か月(基準日の前日まで): 100%
- 5か月以上6か月未満: 80%
- 3か月以上5か月未満: 60%
- 3か月未満: 30%
勤勉手当の計算式
基本的な計算式
勤勉手当 = 勤勉手当基礎額 × 支給割合 × 成績率 × 在職期間別割合
勤勉手当基礎額
- フルタイム: 給料月額
- パートタイム: 報酬月額(または換算月額)
支給割合(2024年度の例)
- 6月期: 1.025か月分
- 12月期: 1.025か月分
- 年間合計: 2.05か月分
成績率:
- 良好: 100%(標準)
- 良好でない: 減額(自治体により異なる)
多くの自治体では、2024~2026年度の移行期間中は成績率を一律100%としており、人事評価による差をつけない運用をしています。
具体的な計算例
ケース1: フルタイム会計年度任用職員(月給20万円、継続勤務)
夏季の賞与(6月支給)
- 期末手当: 20万円 × 1.25 × 1.225 × 100% = 30.625万円
- 勤勉手当: 20万円 × 1.025 × 100% × 100% = 20.5万円
- 合計: 約51.1万円
冬季の賞与(12月支給)
- 同様の計算で約51.1万円
年間合計: 約102.2万円
ケース2: パートタイム会計年度任用職員(時給1,200円、週29時間、継続勤務)
月額換算報酬: 1,200円 × 29時間 × 4週 = 約13.92万円
夏季の賞与(6月支給)
- 期末手当: 13.92万円 × 1.25 × 1.225 × 100% = 21.33万円
- 勤勉手当: 13.92万円 × 1.025 × 100% × 100% = 14.27万円
- 合計: 約35.6万円
年間合計: 約71.2万円
ケース3: 4月1日新規採用の場合(6月支給)
4月1日採用の場合、6月1日時点での在職期間は2か月です。
在職期間別割合: 30%(3か月未満)
- 期末手当: 20万円 × 1.25 × 1.225 × 30% = 9.19万円
- 勤勉手当: 20万円 × 1.025 × 100% × 30% = 6.15万円
- 合計: 約15.3万円
新規採用の場合、初回の賞与は在職期間が短いため減額されますが、12月支給分は在職期間が6か月以上となるため満額支給されます。
自治体による支給額の違い

賞与の支給額や計算方法は、自治体の条例により若干異なる場合があります。
支給月数の違い
多くの自治体では以下の支給月数を採用していますが、一部で差があります。
標準的な自治体
- 期末手当: 年間2.45~2.5か月分
- 勤勉手当: 年間2.05~2.1か月分
- 合計: 4.5~4.6か月分
一部の自治体
- 期末手当: 年間2.4か月分
- 勤勉手当: 年間2.25か月分
- 合計: 4.65か月分
積極的な自治体
- 常勤職員と完全に同じ支給月数(4.6~4.7か月分)
基礎額の計算方法の違い
期末手当基礎額の計算で、給料月額に乗じる率が自治体により異なります。
- 125%を採用している自治体
- 127.5%を採用している自治体
- 130%を採用している自治体
また、パートタイム職員の報酬月額の換算方法も自治体により異なる場合があります。
地域手当の取り扱い
フルタイム会計年度任用職員で地域手当が支給されている場合、賞与の基礎額に地域手当を含めるかどうかも自治体により異なります。
- 地域手当を含めて計算する自治体
- 給料月額のみで計算する自治体
自分が勤務する自治体の具体的な計算方法は、人事担当部署に確認することをおすすめします。
人事評価と勤勉手当の関係

勤勉手当は本来、人事評価の結果に基づいて支給額が変動する制度です。
2024~2026年度の移行期間
多くの自治体では、勤勉手当導入から3年間(2024~2026年度)を移行期間と位置づけ、以下の対応を取っています。
移行期間中の対応
- 人事評価は実施するが、勤勉手当への反映は一律100%(標準)
- すべての職員に同じ支給率を適用
- 評価による差をつけない運用
この措置により、制度導入初期の混乱を避け、人事評価制度を定着させる時間を確保しています。
2027年度以降の見込み
移行期間終了後の2027年度以降は、常勤職員と同様に人事評価結果が勤勉手当に反映される見込みです。
評価段階(予定)
- 良好: 100%(標準)
- 特に良好: 110~120%程度
- 良好でない: 80~90%程度
ただし、会計年度任用職員の評価は「良好」と「良好でない」の2段階とする自治体が多いと予想されます。
人事評価の実施方法
勤勉手当の支給にあたっては、年2回の人事評価が実施されます。
評価スケジュール
- 夏季賞与分: 前年12月~当年5月の勤務を評価
- 冬季賞与分: 6月~11月の勤務を評価
評価項目
- 業務遂行能力
- 勤務実績
- 勤務態度
- 担当業務の成果
評価は所属長(上司)が行い、面談を通じて結果が本人にフィードバックされます。
任期更新と賞与の関係

会計年度任用職員は原則として1年任期です。
任期更新と賞与の関係について理解しておきましょう。
年度途中での任期満了
任期が年度途中で満了する場合、その後の賞与はどうなるのでしょうか。
基準日前に任期満了した場合、例えば5月31日に任期満了の場合、6月1日の基準日に在職していないため、夏季賞与は支給されません。
ただし、基準日前1か月以内(5月2日~5月31日)の退職であれば、特例として支給される場合があります。

任期を更新した場合、例えば3月31日で任期満了し、4月1日に再度任用された場合、「引き続き在職していた」とみなす自治体が多く、在職期間が通算されます。

複数の任用を通算する規定
多くの自治体では、会計年度任用職員として再度任用された場合、前の任期と通算して在職期間を計算する規定を設けています。
通算される条件
- 同一自治体での再任用
- 空白期間が1日~数日程度(多くは翌日任用)
- 任命権者が同じ
この規定により、年度をまたいで継続勤務している場合、賞与の在職期間別割合で不利にならないよう配慮されています。
退職手当との違い

賞与(期末手当・勤勉手当)と退職手当は別の制度です。
退職手当の支給条件
フルタイム会計年度任用職員
- 任用期間が6か月を超えて継続勤務した場合に支給
- 支給額は在職期間に応じて計算
パートタイム会計年度任用職員
- 原則として退職手当は支給されない
- 一部の自治体では条例により支給している場合もある
退職手当は、任期満了または退職時に一括して支給されるもので、年2回支給される賞与とは性質が異なります。

賞与から控除される項目

賞与から差し引かれる項目について理解しておきましょう。
社会保険料
健康保険料・介護保険料: 賞与額に保険料率を乗じた額が控除されます。健康保険に加入している会計年度任用職員が対象です。
厚生年金保険料: 同様に賞与額に保険料率を乗じた額が控除されます。
雇用保険料: 賞与額に雇用保険料率(0.6%)を乗じた額が控除されます。
所得税
賞与からも所得税が源泉徴収されます。
計算方法は通常の給与とは異なり、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて計算されます。
控除額は扶養親族の数や前月の給与額により異なりますが、おおよそ賞与額の3~10%程度が目安です。
住民税
賞与からは住民税は控除されません。
住民税は前年の所得に対して課税され、毎月の給与から天引きされます。
手取り額の目安
社会保険料と所得税を合わせると、賞与の約15~20%程度が控除されます。
計算例(賞与50万円の場合)
- 健康保険料: 約2.5万円
- 厚生年金保険料: 約4.6万円
- 雇用保険料: 約0.3万円
- 所得税: 約2~3万円
- 控除額合計: 約9.4~10.4万円
- 手取り額: 約39.6~40.6万円
賞与支給時の注意点

賞与を受け取る際に注意すべきポイントをまとめます。
給与明細の確認
賞与支給時には、必ず給与明細(賞与明細)を確認しましょう。
- 期末手当と勤勉手当が両方支給されているか
- 支給月数が正しいか
- 在職期間別割合が正しく適用されているか
- 控除額が適切か
誤りがあった場合は、すぐに人事担当部署に問い合わせてください。
年度初任用の場合の注意
4月1日に初めて任用された場合、6月支給の賞与は在職期間が短いため減額されます。
これは制度上正しい処理であり、12月支給分からは満額支給されます。
条例改正の確認
賞与の支給月数は、人事院勧告や民間企業の動向を踏まえて毎年見直される可能性があります。
自治体の条例改正情報に注意を払いましょう。
確定申告の必要性
会計年度任用職員は年末調整の対象ですが、以下の場合は確定申告が必要です。
- 年度途中で退職し、年末調整を受けていない
- 複数の自治体で勤務した
- 副業の収入がある(年間20万円超)
他の非正規公務員との比較

会計年度任用職員以外の非正規公務員と賞与を比較してみましょう。
臨時的任用職員
臨時的任用職員は常勤職員の空席を一時的に埋めるための任用で、会計年度任用職員とは別の制度です。
賞与の扱い
- 常勤職員と同様の期末手当・勤勉手当が支給される
- 支給月数も常勤職員と同じ
特別職の非常勤職員
特別職の非常勤職員(学校医、選挙管理委員など)は一般職ではないため
- 原則として賞与の支給対象外
- 報酬のみの支給
民間の非正規労働者との比較
一般企業の非正規労働者と比較すると、会計年度任用職員の賞与は手厚い水準といえます。
民間企業
- パート・アルバイト: 賞与なしが一般的
- 契約社員: 年間1~2か月分程度(支給する企業の場合)
会計年度任用職員
- 年間4.5~4.6か月分(2024年度以降)
よくある質問と回答

会計年度任用職員の賞与に関する疑問にお答えします。
Q1: 週15時間勤務ですが、賞与はもらえますか?
A: いいえ、もらえません。賞与の支給条件は「週15時間30分以上の勤務」です。週15時間の勤務では条件を満たさないため、賞与の支給対象外となります。
Q2: 任期が5か月の場合、賞与はどうなりますか?
A: 任期が6か月未満の場合、賞与の支給対象外です。ただし、翌年度も再度任用され、通算で6か月以上となる場合は、再任用後の基準日から支給対象となります。
Q3: 病気休暇中の場合、賞与は減額されますか?
A: 基準日に在職していれば支給されます。ただし、長期の病気休暇中の場合、自治体によっては支給制限がかかる場合があります。詳しくは人事担当部署に確認してください。
Q4: 2024年4月以前から勤務していますが、勤勉手当は遡って支給されますか?
A: 勤勉手当は2024年度(令和6年度)からの制度です。2023年度以前の分については遡及支給されません。ただし、一部の自治体では2024年4月に遡って支給する場合があります。
Q5: 賞与の支給月数は今後も変わりますか?
A: 人事院勧告により毎年見直される可能性があります。民間企業の賞与動向や財政状況により増減する場合があります。
Q6: フルタイムとパートタイムで支給月数に差はありますか?
A: 支給月数自体に差はありません。ただし、基礎となる給料・報酬額が異なるため、実際の支給額には差が出ます。
Q7: 勤務成績が悪いと賞与が減額されますか?
A: 2024~2026年度の移行期間中は、多くの自治体で一律支給となっています。2027年度以降は人事評価の結果が反映される見込みです。
まとめ:賞与制度を正しく理解して安心して働こう

会計年度任用職員の賞与について重要なポイントをまとめます。
押さえておくべき7つのポイント
- 2024年度から大幅増額
- 勤勉手当の支給開始により年間4.5~4.6か月分に
- 支給条件は明確
- 任期6か月以上、週15時間30分以上、基準日在職
- 年2回の支給
- 6月と12月の年2回、基準日(6月1日・12月1日)に支給
- フルタイムもパートタイムも対象
- 条件を満たせば雇用形態を問わず支給
- 在職期間で支給額が変動
- 新規採用の初回は減額、継続勤務で満額支給
- 人事評価の影響は移行期間中は限定的
- 2026年度までは一律支給の自治体が多い
- 自治体により細部が異なる
- 具体的な計算方法は所属自治体の条例を確認
今後の展望
会計年度任用職員の処遇改善は今後も継続して議論されていくと予想されます。
- 常勤職員との格差是正
- 昇給制度の拡充
- 任期更新回数の上限撤廃(2024年6月に国の上限撤廃済)
- 休暇制度の充実
自分の賞与を正確に把握しよう
自分が実際にいくら賞与を受け取れるのか、以下の方法で確認しましょう。
- 所属自治体の条例を確認
- 自治体のホームページで「会計年度任用職員の給与に関する条例」を検索
- 人事担当部署に問い合わせ
- 不明な点は遠慮なく質問する
- 給与明細を保管
- 毎回の給与明細を保管し、計算が正しいか確認
- 労働組合の活用
- 労働組合に加入している場合は、相談や情報共有が可能
会計年度任用職員の賞与制度は2024年度の大幅改正により、処遇が大きく改善されました。
制度を正しく理解し、自分の権利をしっかりと把握することで、安心して働き続けることができます。
不明な点や疑問がある場合は、人事担当部署に遠慮なく相談してください。
賞与は労働の対価として受け取る正当な権利です。制度を最大限活用して、充実した職業生活を送りましょう。

