「会計年度任用職員は職業欄に何て書けばいいの?」「公務員?パート?」こうした疑問を持っている方は多いでしょう。
結論から言うと、会計年度任用職員は法的には「一般職の地方公務員」です。
したがって、職業欄には基本的に「公務員」または「地方公務員」と書くのが正解です。
しかし、書類の種類や提出先によって、適切な書き方が異なる場合があります。
本記事では、確定申告、クレジットカード申込、履歴書、家庭調査票など、シーン別の職業欄の書き方を徹底的に解説します。
会計年度任用職員の法的な身分

一般職の地方公務員
法律上、会計年度任用職員は地方公務員法に基づき任用される「一般職の非常勤地方公務員」と位置づけられています。
したがって、法的な身分は「公務員」です。
2020年の地方公務員法改正によって制度化され、それまで自治体ごとに異なっていた臨時・非常勤職員の待遇が統一されました。

法的な身分
- 地方公務員法に基づく公務員
- 一般職に分類される
- 正規職員と同様に服務規程が適用される
- 守秘義務など公務員としての責任を負う
職業分類との違い
一方で、職業分類という観点では、実際の業務内容によって分けられます。
職業分類の例
- 役所で事務補助 → 「事務従事者」
- 保育士として勤務 → 「専門的・技術的職業従事者」
- 図書館司書 → 「専門的・技術的職業従事者」
- 技能労務職 → 「技能労務者」
このように、会計年度任用職員は「公務員」という身分を持ちながらも、職業分類上は具体的な仕事内容で判断される、という二つの側面を持っています。
シーン別:職業欄の書き方

1. 確定申告書の職業欄
確定申告書の職業欄は、個人事業税の算出などにも関わるため、ご自身の業務内容を正確に反映させることが求められます。
推奨される書き方
パターン1:公務員(最も一般的)
最も一般的で無難な記載は「公務員」または「地方公務員」です。法的な身分は公務員であるため、この記載で問題になることは基本的にありません。
パターン2:具体的な職種名
より実態に即した記載を求められる場合や、自身の職務内容を明確にしたい場合は、「事務職員」「保育士」「図書館司書」といった具体的な職種名を記載する方法もあります。
パターン3:公務員+職種
「公務員(事務職)」「公務員(保育士)」のように、身分と職種を併記する方法も適切です。
注意点: 確定申告では実態に即した記載が求められるため、単に「公務員」と書くよりも、実際の業務内容が分かる表現の方が望ましい場合があります。
2. クレジットカード申込の職業欄
金融機関は、申込者の返済能力を判断する材料として職業や勤務先を重視します。
推奨される書き方: 「公務員」または「地方公務員」
理由: 「公務員」という記載は、一般的に安定した職業として見られ、審査において有利に働く可能性があります。
選択肢がある場合
- 「公務員」を選択
- 「正社員」「パート・アルバイト」の選択肢なら、フルタイムは「正社員」、パートタイムは「パート・アルバイト」
雇用形態の申告: 申込書のフォーマットに「常勤・非常勤」などを選択する欄があれば、事実に即して「非常勤」と申告する必要があります。
会計年度任用職員は有期雇用であるため、その点をどう伝えるかがポイントになります。
正直に申告することは大前提ですが、会計年度任用職員は再任用によって長期的に勤務できる可能性も高まっています。
3. 履歴書・職務経歴書の書き方
転職活動で使用する履歴書や職務経歴書では、民間企業の視点を意識した表現が重要です。
職歴欄の記載例
例1:一般事務職の場合
〇〇市役所 〇〇部〇〇課
会計年度任用職員(一般事務)として勤務
例2:専門職の場合
〇〇市立〇〇保育園
会計年度任用職員(保育士)として勤務
例3:より詳細に書く場合
〇〇市役所 福祉部 高齢福祉課
会計年度任用職員(事務補助)として高齢者福祉サービスの窓口対応、
書類作成、データ入力等の業務に従事
重要なポイント
- 「会計年度任用職員」という言葉を明記
- 具体的な職種を括弧書きで追記
- 業務内容を簡潔に説明
避けるべき表現:
- 「臨時職員」(制度が異なる)
- 「嘱託職員」(制度が異なる)
- 単に「市役所勤務」(雇用形態が不明確)
4. 家庭調査票・学校提出書類
子どもの入学時などに提出する家庭調査票では、分かりやすさが重要です。
推奨される書き方
保護者職業欄
- 「公務員」
- 「会計年度任用職員」
- 「市役所職員」
勤務先欄
- 「〇〇市役所」
- 「〇〇県〇〇市立〇〇保育園」
補足説明が必要な場合: 「公務員(非常勤)」「会計年度任用職員(市役所勤務)」など、簡潔に説明を加える方法もあります。
注意点: 学校提出書類では、詳細な説明よりも分かりやすさが優先されます。「公務員」または「市役所職員」といったシンプルな記載で十分です。
5. 住宅ローン・賃貸契約の申込
住宅ローンや賃貸契約の審査では、収入の安定性が重視されます。
推奨される書き方: 「公務員」または「地方公務員」
補足情報
- 勤務先:〇〇市役所
- 雇用形態:非常勤(または会計年度任用職員)
- 勤続年数:実際の年数
- 更新の見込み:あり(継続して勤務予定の場合)
注意点: 虚偽の申告は絶対に避けてください。審査では「非常勤」であることを正直に申告した上で、継続雇用の見込みや実績をアピールすることが重要です。
転職活動における効果的な書き方

履歴書での工夫
転職活動では、会計年度任用職員としての経験を効果的にアピールすることが重要です。
職歴欄の記載例(改善版)
〇〇市役所 市民課(20XX年4月~現在)
会計年度任用職員(窓口業務)
・住民票・戸籍関係の証明書発行業務(月平均500件対応)
・マイナンバーカード交付申請受付(年間1,200件)
・窓口対応における丁寧な説明と正確な事務処理を心がけ、
クレームゼロを達成
ポイント
- 実績を具体的な数字で示す
- 成果や工夫を明記
- 民間企業で活かせるスキルを強調
自己PRでの活かし方
避けるべき表現
- 「指示に従って業務を遂行しました」(受動的)
- 「前例通りに処理しました」(主体性がない)
- 「決められた業務をこなしました」(やらされ感)
推奨される表現
- 「限られた時間で効率的に業務を処理するため、〇〇の工夫をしました」
- 「市民の方により分かりやすく説明するため、独自の資料を作成しました」
- 「正確性を高めるためダブルチェック体制を提案し、ミスゼロを達成しました」
職務経歴書での詳細記載
職務経歴書では、成果に至るまでのプロセスや工夫を記述することが重要です。
記載例
【担当業務】
・窓口対応業務(住民票、戸籍、印鑑登録等の証明書発行)
・マイナンバーカード関連業務(交付、更新、電子証明書発行)
・電話応対、来庁者案内
【実績・成果】
・月平均500件の証明書発行業務を正確かつ迅速に処理
・マイナンバーカード交付率向上キャンペーンに参画し、
目標達成に貢献(前年比120%)
・窓口対応マニュアルの改善提案を行い、待ち時間短縮を実現
【習得したスキル】
・高い正確性と責任感を要する公的書類の取り扱い
・多様な市民対応を通じたコミュニケーション能力
・個人情報保護法に基づく適切な情報管理
・限られた時間での優先順位づけと効率的な業務遂行
よくある質問への回答

Q1. 「パート」と書いてはいけないの?
A1. パートタイム会計年度任用職員の場合、「パート」と書いても間違いではありません。実際、気分によっては会社員と書いているという職員もいます。
ただし、法的な身分は「公務員」であるため、公的な書類や審査が伴う書類では「公務員」と書く方が正確かつ有利です。

Q2. 「会計年度任用職員」と正確に書くべき?
A2. 書類の種類によります。履歴書や正確性が求められる書類では「会計年度任用職員」と明記すべきですが、一般的な職業欄では「公務員」で十分です。
会計年度任用職員という名称は一般にはまだ浸透していないため、相手に分かりやすい表現を選ぶことも大切です。
Q3. 「非正規公務員」と書くべき?
A3. 一般的には推奨しません。「非正規」という言葉にはネガティブな印象があり、審査で不利になる可能性があります。
法的には「公務員」であることに変わりないため、単に「公務員」と書くか、必要であれば「非常勤」と補足する程度にとどめましょう。
Q4. 職業欄に「公務員」と書くと相手に安心感を与えるので避けたい場合は?
A4. 全国の会計年度任用職員の皆さんは「パート」と書いている方もいます。気分によっては会社員と書く方もいるようです。公務員と書くと相手に安心感も植え付けてしまい、色んな提案や勧誘等されても面倒なので公務員欄は外すという考え方もあります。
ただし、書類の目的によっては正確な記載が求められる場合もあるため、注意が必要です。
Q5. フルタイムとパートタイムで書き方は変わる?
A5. 基本的には変わりません。どちらも「公務員」です。ただし、雇用形態を問われた場合は、フルタイムは「常勤に準ずる」、パートタイムは「非常勤」または「パートタイム」と答えることになります。

Q6. 転職活動で「会計年度任用職員」と書くと不利になる?
A6. 必ずしもそうではありません。むしろ、公務員としての経験はコンプライアンス意識や正確性など、民間企業でも高く評価されるスキルです。
重要なのは、職業欄の書き方よりも、職務経歴書で具体的な実績や成果を示すことです。
まとめ:書類の目的に応じた書き分けが重要

会計年度任用職員の職業欄の書き方について、重要なポイントをまとめます。
基本原則
- 法的な身分は「一般職の地方公務員」
- 職業欄には基本的に「公務員」または「地方公務員」と記載
- 書類の種類や提出先によって適切な書き方を選択
シーン別の推奨記載
確定申告
- 「公務員」「地方公務員」
- または具体的な職種名「事務職員」「保育士」など
クレジットカード・ローン
- 「公務員」(審査で有利)
- 雇用形態は「非常勤」と正直に申告
履歴書・職務経歴書
- 「会計年度任用職員(職種)」と明記
- 具体的な業務内容と実績を数字で示す
家庭調査票
- 「公務員」「市役所職員」(分かりやすさ優先)
転職活動のポイント
- 受動的な表現を避ける
- 具体的な実績を数字で示す
- 公務経験で得たスキルを企業のニーズと結びつける
- コンプライアンス意識や正確性をアピール
注意事項
- 虚偽の申告は絶対に避ける
- 有期雇用であることは正直に伝える
- 継続雇用の見込みがあれば補足する
- 書類の目的を理解して適切に書き分ける
会計年度任用職員は法的には「公務員」ですが、書類の種類や提出先の目的に応じて、最も適切な書き方を選ぶことが重要です。
基本は「公務員」または「地方公務員」と記載し、必要に応じて具体的な職種や雇用形態を補足しましょう。
転職活動では、単に職業欄の書き方を工夫するだけでなく、公務員としての経験をどう民間企業でのキャリアに活かせるかを具体的に示すことが成功の鍵となります。

