公務員と言えば、なりたい職業ランキングで常に上位にランクインするほど、非常に人気のある職業です。
人気の秘密は、公務員の仕事と言えば何となく簡単で楽なイメージがあるからだと思います。
しかし、具体的に公務員がどんな仕事をしているのか?窓口業務があるのはわかると思いますが、それ以外のことは、意外と詳しくはわからないと思います。
そこで、このページでは、公務員を目指している方のために、公務員の仕事内容について、詳しくご説明します。
業務に関する勉強
公務員の仕事内容の主なものは何といっても業務に関する勉強です。
そして、この業務に関する勉強量は並大抵のものではありません。
「いやいや。民間企業でも業務に関する勉強は相当量しているよ!」と声が聞こえてきそうですが、公務員の業務に関する勉強はまた異質です。
なぜなら、公務員の業務内容は非常に多岐にわたるからです。
例えば民間企業の場合、営業職であれば売り物である商品の勉強をすると思います。
新しい商品が出たり、売り物が変われば商品の性能や効能について、もちろん勉強すると思います。
しかし、それらは全て営業であり、「商品を売る」ことに変わりはありません。
今まで培ってきた営業スタイルや営業トーク等のスキル、自分が持っている顧客を活かすことは、もちろん可能です。
それに対して公務員の場合、例えば福祉から税務に異動になれば、お金を支払う仕事から逆にお金を取り立てる仕事になる等、真逆の仕事をすることになります。
また、同じ福祉への異動であっても、高齢者、児童、障害者どなたを対象とするかで顧客もサービスもガラリと変わります。
このように、公務員の場合、税務、福祉、消防、水道、交通、教育、文化事業など、広く地域の生活全般にかかわる仕事を行っていることから、異動をすると転職と同じように、何歳であっても一から業務について学びなおさなければいけません。
しかも、この異動が大体3年に1度行われるため、公務員の仕事の大半は業務に関する勉強になります。
窓口業務・電話対応
公務員の仕事には窓口業務・電話対応があります。
公務員の主な窓口業務・電話対応は、住民票・戸籍謄本・課税証明書等の発行業務、各種サービスの申請・受付業務、各種制度の説明、苦情・クレーム対応等があります。
前二つの住民票・戸籍謄本・課税証明書等の発行業務、各種サービスの申請・受付業務は、皆さん利用したことがあると思うので、イメージし易いと思いますが、書類に必要事項を記入してもらって、決まった書類を出すだけの定型的な業務のため、比較的簡単です。
しかし、後二つの各種制度の説明、苦情・クレーム対応等はかなり厳しいものになります。
「パート・アルバイトで接客業していたからクレーム対応も大丈夫!」と思ったら大間違いです。
なぜなら公務員の苦情・クレームは民間企業の苦情・クレームとは全く違うからです。
民間企業の場合、お客はサービスが気に入らなければ今後利用しなければ良いだけなので、余程厄介なクレーマーでない限り、クレームはその場限りで終わります。
しかし、公務員の場合、行政サービスは地域に1つしかないため、関係性は今後も継続します。
また、公務員の場合は「税金を払っているから」とクレームを言って良いと思われているため、相当激しいクレームを言われます。
つまり、公務員が相手をするクレーマーは民間企業で言うところの厄介なクレーマーばかりです。
そのため、クレームにより心の病にならないように気を付ける必要があります。
条例・文書の作成
公務員の仕事には条例・文書の作成があります。
条例とは地方公共団体が作る法律です。
法律のため、内容は厳格で、書き方や言い回しも決まっています。
また、制定・公布には議会の議決が必要で、安易に変更・改正はできないことから、絶対に誤字・脱字等のミスをすることはできません。
「いやでも、条例を作るのは法制担当の仕事じゃないの?」と疑問に思う方もいると思いますが、法制担当がするのは、条文の言い回しのチェックのみです。
どういう内容にしたいのか、その内容で表現するにはどうすればいいのか?等の条例の中身については、各所管が考えなければいけません。
加えて、法制担当のチェックを通したとしても、条文にミスがあれば各所管の責任になるため、全ての職員は法学部出身でなくても、条例を作成できなければいけません。
また、条例の作成以外にも、市民への通知や広報誌、ホームページの記事の投稿、市の計画策定など、あらゆる仕事で文書を作成しなければいけません。
そして、条例には条例の、計画には計画の、公文書には公文書の、広報には広報の書き方があり、それぞれ書き方が異なるため、それぞれの書き方も覚えて使い分ける必要があります。
このように、行政は紙文化であり、公務員の仕事において、条例・文書等の作文から逃れることはできません。
予算の執行・調製
公務員の仕事には予算の執行・調製があります。
行政における予算とは、4月1日から翌年3月31日までの1年間の収入と支出の見積りのことを言います。
予算は市長が予算案を議会に提出し、議会の議決を経て成立します。
毎年3月の議会で翌年度の当初予算を議決し、予算の内容に変更が生じた場合は、その都度、補正予算を組んで直近の議会で議決をとります。
この決まった予算を使って事業を行うことを「予算の執行」と言い、財政係・市長と協議をし、議会に諮る予算案を作ることを「予算の調製」と言います。
予算の執行に関しては、必要な資料や執行手続きは決まっており、一度仕事の方法を覚えたら単純作業のため、作業量は多いですが、比較的簡単です。
難しいのが予算の調製で、定型的な業務は単純作業ですが、新規事業をしようと思えば、国・県の補助金を調べたり、業者選定をしたり、各部署と調整したり、予算が必要な理由を考えたり等、様々なことを想定して仕事をしなければいけないため、公務員の仕事の中で最もやりがいのある仕事であると同時に最も大変な仕事でもあります。
なお、どの部署も予算をもとに仕事をしているため、文書作成と同様に公務員として働く以上、予算の執行・調製から逃れることはできません。
データ入力・資料作成
公務員の仕事にデータ入力・資料作成があります。
データ入力に関しては、会計年度任用職員の方が主に行う仕事となります。
ただ、RPAやノーコードツールを導入する自治体が増えつつあるため、将来的にはデータ入力は全て自動化する可能性があります。
資料作成に関しては、国・県に提出する資料や議会・委員会資料等があります。
民間企業のようにプレゼンをするわけではないため、パワーポイント等を駆使したり、デザイン等を考える必要はありませんが、数字が転んだり、誤字・脱字がないようにすることは重々気を付けなければいけません。
係長級以上は議会対応
公務員は係長級以上になると、議会対応が必要になります。
議会対応とは、一般質問の答弁書を作成したり、委員会資料を作成したり、常任委員会に出席して議案説明をしたりすることを言います。
また、それとは別に議員対応をする必要があります。
この議員対応が厄介で、最近はニュース等で明るみになってきていますが、大なり小なり様々なパワハラやセクハラ、モラハラ等をする議員も実際多数います。
議員である以上、選挙によって選ばれた市民の代表であることから、無下にすることもできません。
また、市長を代表とする執行部は議案を通さなければいけないため、議決権を持つ議員に対しては、どうしても立場が弱くなります。
明らかな無理難題や越権行為であっても、対応しなければ仕返しにとばかりに議案を否決される可能性もあることから、ある程度、要望に応えなければいけません。
もちろん議員は、「言うことを聞かないから否決した」等と直接的な言い方はせず、もっともらしい否決理由を述べますが、気に入らないから否決するなんてザラです。
「そんな議員は選挙で通らないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが逆です。
そういう議員ほど、支援者が甘い汁を吸えるため、むしろ強くしぶとく当選します。
それに、そういう無理を通せる力こそ政治力であり、逆に言うと、聖人君子では議員の仕事はできないため、仕方ないと言えば仕方ないとも言えます。
こういった曲者だらけの議員の対応を係長級以上になるとしなければいけません。
市民対応・議員対応が最もきつい仕事
公務員の仕事は基本的には上記のとおり、業務について勉強したり、文書や資料を作成したりすることがメインのため、能力的にキツかったり、民間企業のようにノルマに追われると言ったことはありません。
そのため、公務員の仕事自体が難しかったり、厳しかったりして辞める人は、ほぼいません。
しかし、市民対応と議員対応については、相当キツイので注意が必要です。
実際に病気休暇になる公務員は増えており、2021年度に心の不調で1カ月以上の病気休暇を取ったか、休職した地方公務員が全国で3万8467人に上ったことが総務省調査で判明しています。
公務員は民間企業と異なり、病気休暇がキッチリ取れて、クビになることもないから病気休暇になる人が多いのではないか?と思われる方もいるかもしれません。
もちろん、この病気休暇の制度を悪用している公務員がいるのも事実です。
しかし、本当に市民対応・議員対応によって心と体がボロボロになっている公務員が多数いるのも事実です。
公務員の仕事=楽で簡単と思っていると、痛い目に遭うので気をつけましょう。
まとめ
公務員の仕事内容について、詳しく説明をさせていただきました。
公務員の仕事は、独創性や創造性を必要とする仕事は、ほとんどなく、文書や資料を作成すると言った地味な作業が多い仕事です。
また、求められる成果も一発逆転ホームランみたいなものではなく、コツコツとヒットを出すような、ミスや失敗をしないことが、何よりも求められる職場です。
では、つまらない仕事か?と言えば、そんなことはなく、やる気があれば、年間数百億円の予算を使って自分たちが住んでいる市町を、より良くするための施策を提案していくこともできるため、やりがいのある仕事です。
もちろん、仕事は、ほどほどにして、趣味や好きなことを優先する働き方も可能です。
公務員として働く注意点としては、市民対応・議員対応が精神的にも肉体的にもキツイ仕事になるため、メンタルヘルスケアには、十分に気を付けましょう。