「会計年度任用職員って何?」「パートやアルバイトと何が違うの?」そんな疑問を持っていませんか?
2020年4月から始まった会計年度任用職員制度は、全国の自治体で約64万人が働く、今や公務員の中でも非常に大きな割合を占める雇用形態です。
この記事では、会計年度任用職員について、制度の基本から待遇、メリット・デメリット、正規職員との違いまで、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。
会計年度任用職員とは?【基本を理解しよう】

一言で言うと
会計年度任用職員とは、地方自治体で働く非常勤職員の一種で、原則として1年ごとに契約を更新する公務員です。
もう少し詳しく説明すると、「会計年度」という期間(通常は4月1日から翌年3月31日まで)を基準として任用される職員のことを指します。
具体的にどんな仕事をしているの?
会計年度任用職員は、自治体のさまざまな部署で幅広い業務を担当しています。
代表的な職種:
- 市役所・区役所の窓口職員
- 保育士・保育補助
- 学童保育指導員
- 図書館司書
- 学校の事務職員・用務員
- 給食調理員
- 保健師・看護師
- 相談員(児童相談、福祉相談など)
- データ入力や事務補助
- 公園管理・施設管理
つまり、私たちが市役所や公共施設で接する職員の多くが、実は会計年度任用職員なのです。
「公務員」なの?
はい、会計年度任用職員は地方公務員法に基づく公務員です。
ただし、一般的にイメージされる「公務員」(正規職員・常勤職員)とは異なり、任期が限定された非常勤の公務員という位置づけになります。
公務員としての特徴:
- 地方公務員法が適用される
- 守秘義務がある
- 営利企業への従事制限がある(副業制限)
- 政治的行為の制限がある
- 公務員としての身分保障がある(一定期間)
以前の「臨時職員」「嘱託職員」との違い
2020年3月まで、自治体で働く非常勤職員は「臨時職員」「嘱託職員」「非常勤職員」など、さまざまな名称で呼ばれていました。
これらは2020年4月の制度改正により、原則として「会計年度任用職員」に統一されました。
制度改正の主な変更点:
- 名称が統一された
- 法的根拠が明確になった
- 手当や福利厚生が改善された
- 処遇の透明性が向上した
会計年度任用職員が生まれた背景
なぜこの制度ができたのか?
会計年度任用職員制度が創設された背景には、長年の自治体における雇用問題がありました。
問題1: 曖昧な法的根拠
2020年以前、自治体で働く臨時・非常勤職員の法的位置づけが不明確でした。地方公務員法には明確な規定がなく、各自治体が独自の解釈で雇用していたのです。
問題2: 不安定な雇用
多くの臨時・非常勤職員が、実態としては長期間(数年〜数十年)働いているにもかかわらず、法的には「臨時的任用」という短期雇用の扱いを受けていました。
問題3: 待遇の格差
正規職員と同じような仕事をしていても、臨時・非常勤職員には以下のような待遇がありませんでした:
- ボーナス(期末手当)が支給されない
- 退職手当がない
- 有給休暇が少ない
- 福利厚生が不十分
問題4: 増え続ける非正規職員
自治体の財政難により、正規職員の採用を抑制する一方で、臨時・非常勤職員は増加し続けていました。
2016年時点で全国に約64万人が働いており、これは自治体職員の約3分の1に相当します。
同一労働同一賃金の原則
2016年に政府が打ち出した「働き方改革」の中で、「同一労働同一賃金」の原則が強調されました。
これは、正規・非正規にかかわらず、同じ仕事をしていれば同じ賃金を支払うべきという考え方です。
この流れを受けて、2017年に地方公務員法が改正され、2020年4月から会計年度任用職員制度がスタートしました。
制度の目的
会計年度任用職員制度は、以下を目的として創設されました:
- 法的根拠の明確化: 地方公務員法に明確に位置づける
- 処遇の改善: 手当や福利厚生を正規職員に近づける
- 雇用の安定化: 任用の基準を明確にする
- 格差の是正: 同一労働同一賃金の原則を実現する
フルタイムとパートタイムの違い

会計年度任用職員には、フルタイムとパートタイムの2種類があります。この違いは非常に重要です。

フルタイム会計年度任用職員
特徴
- 勤務時間: 正規職員と同じ(通常は週38時間45分)
- 勤務日数: 週5日勤務が基本
- 身分: 地方公務員法上の「一般職の職員」
待遇
- 月給制
- ボーナス(期末手当・勤勉手当)が支給される
- 退職手当が支給される(一定条件あり)
- 各種手当(通勤手当、住居手当など)が支給される
- 社会保険完備(健康保険、厚生年金、雇用保険)
給与例(東京都23区の場合):
- 一般事務職: 月給18万円〜22万円程度
- ボーナス: 年間で給与の約2.6ヶ月分
- 年収: 約240万円〜320万円
パートタイム会計年度任用職員
特徴
- 勤務時間: 正規職員より短い(週30時間など)
- 勤務日数: 週3〜5日など多様
- 身分: 地方公務員法上の「一般職の職員」
待遇:
- 時給制または月給制
- ボーナス(期末手当)が支給される場合がある
- 退職手当は原則なし
- 勤務時間に応じた手当
- 社会保険は勤務時間により加入(週20時間以上など)
給与例(東京都23区の場合):
- 一般事務職: 時給1,200円〜1,500円程度
- 保育士: 時給1,300円〜1,700円程度
- 専門職: 時給1,500円〜2,000円程度
どちらを選ぶべき?
フルタイムが向いている人
- しっかり稼ぎたい
- ボーナスや退職金がほしい
- 安定した雇用を求めている
- フルタイムで働ける時間がある
パートタイムが向いている人
- 家事や育児と両立したい
- 副業や他の仕事と掛け持ちしたい
- 短時間だけ働きたい
- 柔軟な働き方を求めている
会計年度任用職員の給与・待遇

給与の決まり方
会計年度任用職員の給与は、各自治体が条例で定めた給料表に基づいて決定されます。

給与決定の要素
- 職種: 事務職、保育士、専門職など
- 経験年数: 過去の職歴が考慮される場合がある
- 資格: 必要な資格の有無
- 勤務地: 自治体により給与水準が異なる
- 勤務時間: フルタイムかパートタイムか
手当について
会計年度任用職員には、以下の手当が支給される場合があります(自治体により異なります)
フルタイムの場合
- 期末手当: いわゆるボーナス(年2回、計約2.6ヶ月分)
- 勤勉手当: 業績に応じた手当(自治体による)
- 通勤手当: 実費相当額(上限あり)
- 住居手当: 家賃補助(条件あり、自治体による)
- 扶養手当: 配偶者や子供がいる場合(自治体による)
- 時間外勤務手当: 残業代
パートタイムの場合
- 期末手当: ボーナス(支給される場合とされない場合がある)
- 通勤手当: 実費相当額(上限あり)
- 時間外勤務手当: 残業代
社会保険・福利厚生
加入できる社会保険
フルタイムの場合
- 健康保険(共済組合または協会けんぽ)
- 厚生年金
- 雇用保険
- 労災保険
パートタイムの場合:
- 週20時間以上勤務: 雇用保険に加入
- 週30時間以上勤務: 健康保険・厚生年金に加入
- 労災保険: 全員加入
その他の福利厚生:
- 有給休暇(6ヶ月勤務後に10日付与、以降増加)
- 特別休暇(忌引、結婚、出産など)
- 健康診断(年1回)
- 公務災害補償
- 互助会制度(自治体による)
昇給はあるの?
会計年度任用職員にも昇給制度があります。
昇給の条件:
- 再任用された場合
- 勤務成績が良好な場合
- 自治体の条例で定められた昇給基準を満たす場合
ただし、正規職員のような定期的な昇給ではなく、自治体の財政状況や人事評価によって決定されます。
退職金はもらえるの?
フルタイムの場合
- 6ヶ月以上の任用で退職手当が支給される(自治体による)
- 金額は勤続年数や給与に応じて決定
- ただし、正規職員より少額
パートタイムの場合:
- 原則として退職手当は支給されない
- 一部の自治体では例外的に支給される場合もある

正規職員(常勤職員)との違い

会計年度任用職員と正規職員の違いを、わかりやすく表にまとめました。
主な違い一覧表
| 項目 | 会計年度任用職員 | 正規職員 |
|---|---|---|
| 任期 | 1年(再任用可能) | 定年まで |
| 雇用の安定性 | 毎年更新が必要 | 高い |
| 給与水準 | 低め | 高め |
| ボーナス | あり(少なめ) | あり(多め) |
| 昇給 | 限定的 | 定期的 |
| 退職金 | 条件付き・少額 | あり |
| 転勤 | 原則なし | あり |
| 昇進 | ほぼなし | あり |
| 研修 | 限定的 | 充実 |
| 業務範囲 | 補助的業務中心 | 全般 |
仕事内容の違い
会計年度任用職員
- 定型的な業務
- 補助的な業務
- 専門的だが限定的な業務
- 責任の軽い業務
正規職員:
- 企画立案
- 予算管理
- 対外的な折衝
- 責任の重い意思決定
- 部下の管理・指導
雇用の安定性
会計年度任用職員
- 原則として1年ごとの任用
- 再任用は保証されていない
- ただし、実際には複数年継続するケースが多い
- 最長5年などの上限を設けている自治体もある
正規職員:
- 定年(通常60歳または65歳)まで勤務可能
- 法律で身分が保障されている
- よほどのことがない限り解雇されない
キャリアパス
会計年度任用職員
- 基本的に昇進はない
- 同じポジションで継続
- 正規職員への転換制度は限定的
正規職員:
- 主任→係長→課長→部長と昇進
- 管理職になる可能性がある
- キャリアアップの道が開かれている
会計年度任用職員のメリット・デメリット

メリット
1. 公務員として働ける
民間企業より安定した職場環境で働けます。
- 倒産のリスクがない
- 公務員としての社会的信用がある
- 福利厚生が充実している
2. ワークライフバランスが取りやすい
- 残業が比較的少ない
- 土日祝日が休み(職種による)
- 有給休暇が取りやすい
- 育児休業・介護休業制度がある
3. 未経験でも応募できる職種が多い
- 特別な資格が不要な事務職が豊富
- 研修制度がある
- OJTで仕事を学べる
4. 柔軟な働き方ができる
パートタイムの場合
- 週3日勤務など選択できる
- 勤務時間を調整できる
- 家庭との両立がしやすい
5. 正規職員への登用チャンスがある
一部の自治体では
- 会計年度任用職員経験者枠の採用試験がある
- 実務経験が評価される
- 職場の雰囲気を知った上で正規職員を目指せる
6. 地域に貢献できる
- 地元の自治体で働ける
- 住民の役に立つ仕事ができる
- 公共サービスを支える役割を担える
デメリット
1. 雇用が不安定
- 毎年契約更新が必要
- 次年度の任用が保証されていない
- 長期的なキャリアプランが立てにくい
- 財政悪化で雇い止めのリスクがある
2. 給与が低い
- 正規職員より年収が低い
- 昇給幅が小さい
- ボーナスが少ない
- 生活が苦しいと感じることも
3. キャリアアップが難しい
- 昇進の機会がほとんどない
- スキルアップの機会が限定的
- 同じ仕事を続けることになる
- マンネリ化しやすい
4. 正規職員との格差を感じる
- 同じような仕事でも給与に差がある
- 扱いが異なることがある
- モチベーション維持が難しい場合がある
5. 福利厚生が不十分な場合がある
- 退職金が少ない、またはない
- 住宅手当がない自治体もある
- 正規職員向けの研修を受けられないことがある
6. 将来の不安
- 年齢を重ねても同じポジション
- 老後資金が貯めにくい
- 転職時に評価されにくい場合がある

よくある質問と回答

Q1: 会計年度任用職員から正規職員になれますか?
A: 可能ですが、一般の採用試験を受ける必要があります。
一部の自治体では、会計年度任用職員経験者を対象とした採用試験を実施しています。
また、実務経験が評価されて有利になることもあります。
ただし、自動的に正規職員になれるわけではなく、競争試験に合格する必要があります。
Q2: 何年働けますか?更新に上限はありますか?
A: 自治体によって異なりますが、上限を設けているところもあります。
- 上限なし: 条件を満たせば継続的に再任用される
- 3年まで: 3回の更新で終了
- 5年まで: 5回の更新で終了
自治体の条例や規則で定められているので、応募時に確認することをおすすめします。


Q3: 副業はできますか?
A: 原則としてできません。
会計年度任用職員は地方公務員法が適用されるため、営利企業への従事が制限されています。
ただし、以下の場合は例外的に認められることがあります:
- 任命権者の許可を得た場合
- 公益的な活動(NPO、ボランティアなど)
- 不動産賃貸(一定規模以下)
- 農業、執筆活動など

Q4: 産休・育休は取れますか?
A: 取得できます。
産前産後休暇:
- 産前6週間(多胎妊娠は14週間)
- 産後8週間
育児休業:
- 子が1歳になるまで(最長2歳まで延長可能)
- ただし、任期満了日を超えては取得できない
- フルタイムの場合は育児休業給付金が支給される
育休明けの再任用については、自治体の運用によります。

Q5: 試験はありますか?面接だけですか?
A: 自治体や職種によって異なります。
一般的な選考方法:
- 書類選考
- 面接試験(個別またはグループ)
- 適性検査
- 実技試験(保育士、図書館司書など)
正規職員の採用試験ほど厳しくはありませんが、競争率が高い自治体や人気職種では、しっかりとした準備が必要です。
Q6: どこで求人を探せますか?
A: 以下の方法で探すことができます。
- 自治体の公式ホームページ
- 「会計年度任用職員 募集」のページ
- 定期的にチェックするのがおすすめ
- ハローワーク
- 公共職業安定所に求人が出ることがある
- 求人サイト
- Indeed、求人ボックスなどで検索
- 自治体の広報誌
- 地域の広報に掲載されることがある
募集時期は職種によって異なりますが、年度末(2〜3月)や随時募集の場合もあります。
Q7: 年齢制限はありますか?
A: 一般的に年齢制限は設けられていません。
ただし、以下の点に注意が必要です:
- 定年(通常60歳または65歳)を超える任用はできない
- 体力が必要な職種は実質的に年齢が考慮される場合がある
- 若年者を優先する自治体もある
幅広い年齢層の方が活躍しており、50代、60代で採用されるケースも珍しくありません。
Q8: 会計年度任用職員の経験は履歴書に書けますか?
A: もちろん書けます。
会計年度任用職員は正式な公務員としての職歴です。
履歴書には以下のように記載します:
令和○年4月 〇〇市役所 会計年度任用職員(フルタイム)として採用
総務課にて一般事務に従事
令和○年3月 任期満了により退職
民間企業への転職時にも、公務員経験として評価される場合があります。
まとめ

会計年度任用職員について、制度の仕組みから待遇、メリット・デメリットまで詳しく解説してきました。
重要なポイントのおさらい
- 会計年度任用職員は公務員: 地方公務員法に基づく非常勤の公務員
- 任期は原則1年: 毎年契約更新が必要だが、継続して働くことも可能
- フルタイムとパートタイムがある: 自分のライフスタイルに合わせて選択できる
- 2020年から始まった新制度: 従来の臨時・嘱託職員から待遇が改善された
- ボーナスや手当が支給される: 以前よりも待遇が向上している
- 全国に約64万人: 自治体職員の約3分の1を占める重要な存在
こんな人におすすめ
会計年度任用職員は、以下のような方に向いています:
- 公務員として働きたいが、正規職員試験は難しそう
- ワークライフバランスを重視したい
- 安定した職場で働きたい
- 地域に貢献したい
- 家庭と仕事を両立させたい
- 短時間勤務で働きたい
- 正規職員を目指す前のステップとして経験を積みたい
注意すべきポイント
一方で、以下の点には注意が必要です:
- 雇用が不安定(毎年更新)
- 給与水準が正規職員より低い
- キャリアアップの機会が限定的
- 長期的な人生設計が立てにくい
最後に
会計年度任用職員制度は、まだ始まったばかりの新しい制度です。今後、さらなる処遇改善や制度の見直しが行われる可能性もあります。
公務員として働きたい、地域に貢献したい、安定した職場で働きたいという方にとって、会計年度任用職員は有力な選択肢の一つです。
自分のライフスタイルやキャリアプランに合わせて、この制度を上手に活用してください。
興味がある方は、お住まいの自治体のホームページをチェックして、どのような職種の募集があるか確認してみることをおすすめします。

