「会計年度任用職員は副業・兼業できるの?」「許可が必要?」「何時間まで働ける?」給与が十分でない会計年度任用職員にとって、副収入は切実な問題です。

結論から言うと、パートタイム会計年度任用職員は副業・兼業が可能です。
一方、フルタイム会計年度任用職員は正規職員と同様に任命権者の許可が必要になります。
本記事では、会計年度任用職員の兼業について、法的根拠から具体的な手続き、週40時間ルール、おすすめの副業まで、初心者でも理解できるよう徹底的に解説します。
会計年度任用職員の兼業の基本

兼業と副業の違い
兼業と副業はほぼ同じ意味で使われますが、ニュアンスが異なります。
副業: メインの仕事に加えて行う「サブの仕事」という意味合い。
兼業: 複数の仕事を並行して行っている状態。どれがメインとは限らない。
本記事では、会計年度任用職員として働きながら他の仕事もする場合を「兼業」として扱います。
法的根拠
会計年度任用職員の兼業に関する規定は、地方公務員法第38条「営利企業への従事等の制限」に基づいています。
地方公務員法第38条: 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
フルタイムとパートタイムで異なる兼業ルール

フルタイム会計年度任用職員の場合
フルタイムで働く会計年度任用職員の場合、正規の公務員と同じ副業規定が適用されます。
フルタイムの兼業ルール
- 営利企業への従事等の制限が適用される
- 副業を行う場合、正規職員の地方公務員と同様に任命権者の許可が必要
- 許可なく副業を行うと懲戒処分の対象
- 許可される副業は限定的
パートタイム会計年度任用職員の場合
「パートタイム会計年度任用職員」の場合は、営利企業への従事等の制限はありませんので、副業が可能と言えます。
パートタイムの兼業ルール
- 営利企業への従事等の制限が適用されない
- 原則として副業・兼業が自由
- ただし、自治体によっては「営利企業従事等に関する届出書」の提出が必要
- 許可ではなく「届出」で済む場合が多い
総務省のマニュアルには「 パートタイムの会計年度任用職員については、勤務時間が限られており、極めて短い時間のみ公務に従事する場合があり得ること、また、これらの職員の生計の安定、多様な働く機会の確保のためにも、柔軟な対応が必要であること等から、一律に制限はしないこととしたものである。」と記載されています。
どちらに該当するか確認する方法
自分がフルタイムかパートタイムかを確認する方法
- 雇用契約書を確認
- 週の所定労働時間を確認
- 常勤職員と同じ時間(通常38.75時間):フルタイム
- 常勤職員より短い時間:パートタイム
- 人事担当課に問い合わせる
週40時間ルール

労働基準法による制限
パートタイム会計年度任用職員は副業が自由ですが、労働基準法の制限があります。
週40時間ルールとは、本業と副業を合わせた通算労働時間が、原則として1日8時間、1週間40時間を超えてはならない、と言う決まりです。
週40時間という上限は、本業と副業の労働時間を「通算」して計算します。
これは、労働基準法が個別の契約ごとではなく、一人の労働者が実際に働く全ての時間を対象としているためです。
具体的な計算例
例1:週30時間勤務の場合
- 会計年度任用職員としての勤務:週30時間
- 副業で働ける時間:週10時間以内
例2:週20時間勤務の場合
- 会計年度任用職員としての勤務:週20時間
- 副業で働ける時間:週20時間以内
例3:週35時間勤務の場合
- 会計年度任用職員としての勤務:週35時間
- 副業で働ける時間:週5時間以内
自己管理が重要
具体的には、暦週(通常は日曜日から土曜日まで)を一つの単位として、その7日間における合計労働時間が40時間を超えないように自己管理する必要があります。
自己管理のポイント
- 毎週の労働時間を記録する
- シフトが変動する場合は事前に調整
- 副業先にも制限があることを伝える
- 本業のシフト変更に柔軟に対応
兼業の届出・許可申請

自治体によって異なる手続き
会計年度任用職員の兼業には必ずしも申請が必要というわけではありません。
都道府県や市によってルールが異なります。
主なパターン
1. 許可制(フルタイムの場合)
- 兼業許可申請書を提出
- 任命権者による審査
- 許可が下りてから兼業開始
2. 届出制(パートタイムの場合)
- 営利企業従事等に関する届出書を提出
- 許可ではなく「報告」のニュアンス
- 提出すれば基本的に兼業可能
3. 特に手続き不要
- 明確なルールが未整備の自治体
- ただし、事後的にルール化される可能性
具体的な手続き方法
ステップ1:自治体のルールを確認
まずは所属(予定)先の自治体名で「〇〇県(市等) 会計年度任用職員 兼業規則」などのキーワードで検索してみましょう。
ステップ2:担当者に相談
よくわからなかった場合は「こんな兼業をしますが何か様式ありますか?」と人事担当者に確認。
ステップ3:必要書類の作成
届出書または許可申請書に以下の内容を記載
- 兼業の内容(職種、業務内容)
- 勤務時間・勤務日
- 収入の見込み
- 兼業先の名称・所在地
ステップ4:提出
所定の書類を人事担当課に提出。
ステップ5:承認・受理
許可制の場合は承認を待つ。届出制の場合は提出で手続き完了。
届出が必要な理由
この書類では、副業の内容、勤務時間、収入の見込みなどを詳細に記載する必要があります。
このプロセスは、副業が公務員としての信用失墜行為や利益相反に該当しないかを判断するために行われます。
チェックされるポイント
- 公務員としての信用を失墜させないか
- 公正さを欠かないか
- 本業の公務員の仕事に影響しないか
- 職務上の秘密を守れるか
- 利益相反にならないか
兼業が認められないケース

禁止される兼業の例
自治体の規則では、以下のような場合に兼業が認められません。
新宿区の例(兼業許可等に関する事務取扱規程)
第5条:許可をしない場合
- 兼業のため時間を割くことによって、職務の遂行に支障を来すおそれがあると認めるとき
- 兼業しようとする団体等の事業又は事務が区と競合すると認めるとき
- 兼業しようとする団体等との間に、免許、認可、許可、検査、税の賦課、補助金の交付、工事の請負、物品の購入等について関係があるとき
- 兼業しようとする団体等の事業又は事務に従事することによって、公務員としてその職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となると認めるとき
具体的なNG例
避けるべき兼業
- 担当する業務の関係者への営業活動
- 自分が教えている学校の生徒に家庭教師
- 勤務先自治体と取引関係にある企業での仕事
- 公務員の信用を損なう可能性のある業種(風俗業など)
- 職務上知り得た秘密を使う仕事
おすすめの副業・兼業

時間管理がしやすい在宅系副業
会計年度任用職員におすすめの副業は、時間管理がしやすく、週40時間ルールに抵触しにくいものです。
おすすめ7選
1. Webライター
- 在宅で作業可能
- 自分のペースで仕事量を調整
- スキルアップで単価向上
- クラウドソーシングで案件獲得
2. Webデザイナー
- デザインスキルを活かせる
- 案件ごとに受注可能
- 高単価案件も
3. プログラミング
- 需要が高く高単価
- 在宅勤務が基本
- スキル習得に時間は必要
4. ブログ・アフィリエイト
- 時間に縛られない
- 資産性がある
- 収益化まで時間がかかる
5. YouTube配信
- 自分の好きな分野で発信
- 広告収入が得られる
- 顔出し不要の方法もある
6. せどり・物販
- スキマ時間に作業可能
- 即金性がある
- 在庫リスクに注意
7. ハンドメイド作品販売
- 趣味を収入に
- オンラインで販売
- ファン獲得で安定収入
個人事業主としての開業がおすすめ
会計年度任用職員におススメの副業はズバリ開業です!!
開業のメリット
- アルバイトだと時間に上限がある
- 個人事業主なら労働時間の制限が緩やか
- 経費を計上できる
- 青色申告で税制優遇
- 事業所得として申告可能
開業の手続き
- 税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出
- 事業開始から原則1か月以内
- 「所得税の青色申告承認申請書」も同時提出推奨
税金と確定申告

副業収入が20万円超で確定申告が必要
パートタイム会計年度任用職員として働きながら副業をする場合、副業の年間所得が20万円を超えると確定申告が必要になります。
確定申告が必要なケース
- 給与所得以外の所得が年間20万円超
- 個人事業主として開業している場合
- 複数の雇用主から給与を得ている場合
確定申告の方法
必要書類
- 源泉徴収票(本業・副業)
- 経費の領収書
- 売上の記録
- 青色申告決算書(青色申告の場合)
申告時期: 毎年2月16日~3月15日
住民税で副業がバレる?
会計年度任用職員が副業を行う場合、「副業がバレる」リスクについて考えることが重要です。
バレる原因の多くは、収入や働き方が明らかになることに関連しています。
具体的には、住民税の増加や確定申告における収入の記載が主な要因です。
対策
- 確定申告時に住民税の徴収方法を「自分で納付」を選択
- これにより、副業分の住民税は自宅に納付書が届く
- 本業の職場に副業がバレにくくなる
ただし、届出が必要な自治体では、隠すこと自体が問題です。
適切に届出をした上で、上記の対策を取りましょう。
よくある質問

Q1. パートタイム会計年度任用職員は自由に副業できますか?
A1. 基本的には可能ですが、週40時間ルールを守る必要があります。また、自治体によっては届出が必要な場合があります。公務員としての信用を失墜させる行為や利益相反は禁止されています。
Q2. フルタイムで働いている場合、副業はできませんか?
A2. 正規職員と同様に任命権者の許可が必要です。許可されるケースは限定的で、不動産賃貸業や執筆活動など一部の副業に限られることが多いです。
Q3. 届出なしで副業をしたらどうなりますか?
A3. 自治体によっては懲戒処分の対象となる可能性があります。届出が必要かどうか不明な場合は、人事担当者に相談することをおすすめします。報告しておけば、後から問題になることはありません。
Q4. 週40時間を超えて働いたらどうなりますか?
A4. 労働基準法違反となり、雇用主(後から契約した副業先)に罰則が科される可能性があります。また、過労による健康被害のリスクもあります。必ず40時間以内に収めましょう。
Q5. 個人事業主として活動する場合も届出が必要ですか?
A5. パートタイムの場合、届出制の自治体では届出が必要です。ただし、アルバイトより個人事業主の方が時間管理がしやすく、おすすめです。
Q6. 副業で得た収入は会計年度任用職員の給与に影響しますか?
A6. 影響しません。副業収入は別途確定申告を行います。ただし、副業で収入が増えると社会保険料や税金が変わる可能性があります。

まとめ:適切な手続きで安心して兼業を

会計年度任用職員の兼業について、重要なポイントをまとめます。
基本ルール
- パートタイム:副業・兼業が原則自由
- フルタイム:正規職員と同様に任命権者の許可が必要
- 自治体によって届出の有無が異なる
週40時間ルール
- 本業+副業で週40時間以内
- 労働基準法による制限
- 自己管理が重要
- 例:週30時間勤務なら副業は週10時間以内
手続き
- 自治体のルールを確認
- 許可制または届出制
- 人事担当者に相談
- 必要書類を提出
認められない兼業
- 職務遂行に支障が出る
- 利益相反になる
- 公務員の信用を失墜させる
- 職務上の秘密を使う
おすすめの副業
- 在宅系(Webライター、デザイナーなど)
- 時間管理がしやすい
- 個人事業主としての開業
- 経費計上や青色申告のメリット
税金
- 副業所得20万円超で確定申告必要
- 個人事業主なら開業届を提出
- 住民税は「自分で納付」を選択
確認すべきこと
- 自分がフルタイムかパートタイムか
- 自治体の兼業規則
- 届出の要否
- 週の勤務時間
会計年度任用職員、特にパートタイムの方は、正規公務員と比べて副業のハードルがかなり低いのが特徴です。
適切な手続きを踏んで、生活の安定と多様な働く機会を確保しましょう。
不明な点があれば、一人で判断せず、必ず所属する自治体の人事担当者に相談してください。

