昔から問題になっていますが、議会中に居眠りをしていたり、議論を聞かずに内職や読書等に勤しんでいる議員がいます。
最近だと広島県安芸高田市の石丸市長が居眠りをしていた議員に対して「恥を知れ!恥を!」と議場で言い放った事がニュース等で取り上げられました
以降、安芸高田市のユーチューブチャンネルの登録者数は20万人を越えて、全国自治体のユーチューブチャンネル登録者数第1位に輝くなど、非常に注目を集めました。
切り抜き動画等、石丸市長と議員がやり合ってるのを見る機会も増えたと思います。
しかし、実際は何も変わっていません。
居眠りや読書、内職をした議員に対する罰則がないのはもちろん、全国どこの議会を見ても何らの対策も取られていません。
これだけ話題になったのに、何もないのはなぜ?と不思議に思っている方も多いのではないでしょうか?
そこで、このページでは、なぜ議員は議会中に居眠りや読書、内職等をしているのにも関わらず何ら罰が与えられていないのか?等について詳しくご説明します。
議員を懲罰できるのは議会のみ
当たり前ですが、公務員である執行部の職員が議員に対して懲罰を与えることはできません。
市長も議員と同じく市民の負託を受けて選ばれた政治家ですが、市長が議員に対して懲罰を与えることもできません。
議会だけが、議会の構成員たる議員に対して懲罰を与えることができます。
そして、議会は、紀律と品位を保持するため、議会の自律権としての懲罰権の発動の対象となる法規の規定に違反する議員の行為、いわゆる懲罰事犯があった場合、議会に諮って懲罰を与えることができます。
具体的には
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- 議長からの発言の禁止、退場等の指示に従わなかった場合
- 無断欠席をする場合
- 秘密会の議事の漏洩した場合
- 暴言当の不穏当な発言をした場合
等に、議員が文書をもって議員定数の8分の1以上の発議者が連署して、議員に懲罰動議を提出することで、議題として上程することができます。
そして、出席議員の過半数から賛成を得られれば、懲罰委員会を設置し、懲罰委員会の中で、懲罰に該当するか?懲罰に該当する場合、どのような罰則を与えるか?について協議します。
なお、罰則の種類は戒告、陳謝、出席停止、除名の4種類になります。
戒告・・・議長が戒告文を朗読する
陳謝・・・被懲罰議員自らが陳謝分を朗読する
出席停止・・・○日間議会に出席できない
除名・・・議員の身分の喪失
そして、懲罰委員会での協議結果を本会議で報告し、採決をとり、懲罰を与えるかどうかを決定します。
居眠りで懲罰になった事例はない
では、議員が本会議中に居眠りや読書、内職等をした場合、懲罰事犯に該当するかどうか?ですが、もちろん、「本会議中に居眠りや内職、読書をすることは議会の品位を損ねる!」と言って懲罰動議を出すことは可能だと思います。
しかし、少なくとも私が調べた限り、議会中の居眠りで懲罰になった事例はありませんでした。
その理由は、懲罰は、議会の秩序を維持し、円滑な会議運営を図るためのものだからと推測されます。
議会中に居眠りや内職、読書等をすることは確かに良くないことですが、議会運営に関して言えば、進行の妨げになる等の邪魔を何らしてはいません。
また、後日作成される会議録にも居眠りや内職、読書等に関しては一切記録として残りません。
そのため、わざわざ本会議を中断してまで、居眠りや内職、読書に関して懲罰を求める議員がいなかったのだと思います。
居眠り等による罰則は戒告もしくは陳謝が限界
次に、もしも議会中の居眠りや内職、読書等に対して懲罰処分をする場合、どのような罰則が与えられるのか?についてですが、せいぜい戒告もしくは陳謝程度の罰則しか与えられないと思われます。
なぜなら、繰り返しになりますが、居眠りや内職、読書等をすることは、法規の規定を違反するものでも、議会の紀律を乱すようなものでもないからです。
市民の中には「本会議中に居眠りや内職、読書等をした議員はクビにするべきだ!」と言う方もいらっしゃると思います。
確かに毎日朝から晩まで働いている人からしたら「3ヶ月に1度しか本会議に出席しないくせに、会議中に居眠りや内職、読書等をするとは何事だ!」とお怒りになる気持ちは非常によくわかります。
しかし、居眠りや内職、読書等をする議員は、実は会議に出席している分、まだマシな方なんです。
議会を開催するには、定足数と言って、議員定数の過半数が出席をしないと会議を開くことができないんですが、居眠りや内職、読書等をする議員は出席している分、実は議会に貢献している方なんです。
むしろ、退席や欠席をしている議員の方が、定足数割れにより流会になる可能性がある分、居眠りや内職、読書等をする議員よりも、はるかに悪質だと言えます。
実際、議会の傍聴に行くと、一般質問中は退席や欠席をしている議員が多数います。
これら退席や欠席をしている議員に対して何ら懲罰を与えない以上、本会議の開催に貢献している居眠りや内職、読書等をする議員に対して出席停止や除名と言った重たい懲罰を与えることはできません。
そのため、居眠りや内職、読書等をする議員への市民の怒りは、ごもっともですが、懲罰処分をするとしても戒告もしくは陳謝が限界です。
居眠り等をした議員への罰は選挙しかない
上記のとおり、本会議中での居眠りや内職、読書等に対して、議会は懲罰を与えることができますが、実際に懲罰を与えた事例はなく、仮に懲罰を与えることができるとしても、戒告または陳謝しかありません。
そのため、「本会議中に居眠りや内職、読書をする議員は許せん!」と言うのであれば、選挙において、その議員に投票をしないのが一番です。
ただし、議員の仕事は、結局はチェック機能であり、また、自治会や町内会から議員を出している場合は御用聞きをしてくれることが重要視されるため、本会議中に居眠りや内職、読書等をしていることに関して、特に気にしないと言う方も多数います。
実際、広島県の安芸高田市では、居眠りをしていたとされる議員も、その後の選挙で当選していることから、本会議中に居眠りや内職、読書等を議員がすることは、ニュースやネット等で取り上げられるほど、有権者にとってみると、そこまで重要ではない可能性が非常に高いです。
まとめ
なぜ議員は議会中に居眠りや内職、読書等をしているのにも関わらず何ら罰が与えられていないのか?について、詳しく説明をさせていただきました。
本会議中に居眠りや内職、読書等をすることは、議会の紀律や品位を損ねるもののため、懲罰事犯として、議会において懲罰を与えることはできます。
しかし、会議に出席している分、退席や欠席と比べると、会議に貢献していることから、大した罰則を与えることはできず、また、わざわざ議会運営を中止する程の規律違反でもないため、恐らく今後も懲罰が与えられることはないと思います。
本来は、本会議中に居眠りや内職、読書等をする議員が選挙により淘汰されるのが一番良いでしょうが、今は議員のなり手不足が深刻で、特に地方議会になると、定数を割る可能性もあることから、居眠りや内職、読書等をしても余裕で当選するのが現状だと思います。
そのため、恐らく今後も居眠りや内職、読書等をする議員がいなくなることはないでしょう。