国会議員は毎月130万円の歳費の他、ボーナスとして期末手当約635万円が支給されるため歳費だけで年収約2,000万円あると言われています。
また、その他にも領収書不要で自由に使える月100万円の文通費や月65万円の立法事務費、その他にも政務活動費や秘書雇用手当、役職手当、費用弁償等、多数の手当が支給されるため、全てを合わせると約4,000万円の年収があると言われています。
では、市議会議員はどうでしょうか?
国会議員が、これほどの高給取りなわけですから、国会議員レベルではないにしろ、きっと市議会議員もたくさんの給料をもらっているのではないか?と思うのではないでしょうか。
そこで、このページでは、市議会議員の給料・ボーナスはいくらか?報酬・各種手当を含めると最終的に年収・手取りはいくらになるのか?一般的な会社員と比べて年収が多いのか?それとも少ないのか?等について詳しくご説明します。
市議会議員収入の内訳
国会議員のように領収書不要で自由に使える文通費や立法事務費はありませんが、市議会議員にも毎月支払われるいわゆる給料の他にも様々な手当があります。
具体的には、
・議員報酬
・期末手当
・役職手当
・費用弁償
・政務活動費
等があります。
それでは、それぞれについてご説明します。
議員報酬(毎月の給料)
議員報酬とは、毎月決まった日に決まった金額が支払われるいわゆる毎月の給料に該当するものです。
国会議員の場合は「歳費」と言いますが、地方の市議会議員は「報酬」と言います。
議員報酬の金額は、自治体によって異なり、議員報酬ランキング1位の横浜市の場合、
月額95万3千円、年間1,143万6千円です。
一方、議員報酬ランキング下位の阿久根市の場合、月額26万3千円、年間315万6千円です。
同じ市議会議員でも約3倍もの差があります。
期末手当(ボーナス)
期末手当(ボーナス)は職員と同様に市議会議員にも6月と12月の計2回支払われます。
期末手当(ボーナス)の支給金額も自治体によって異なり、議員報酬ランキング1位の横浜市の場合、1回257万3,100円、年間514万6,200円です。
一方、議員報酬ランキング下位の阿久根市の場合、1回42万7,375円、年間85万4,750円です。
議員報酬と期末手当を合わせた年収は議員報酬ランキング1位の横浜市の場合、年収1,658万2,200円、議員報酬ランキング下位の阿久根市の場合、年収401万750円となります。
役職手当(正副議長・委員長)
市議会議員は議会の代表者として議長と副議長(合わせて正副議長と言います。)を選挙によって選出します。
正副議長は議会の代表者として、本会議において議事進行をするほか、議会の顔として対外的な公務に出席したり、議長名で書類を提出することになります。
同じ市議会議員でも正副議長になると、責任も拘束時間も長くなることから、報酬に加えて役職手当が支給されるようになります。
役職手当の支給金額も自治体によって異なり、議員報酬ランキング1位の横浜市の場合、議長は月額22万6,000円、副議長10万8,000円です。
一方、議員報酬ランキング下位の阿久根市の場合、議長は月額10万6,000円、副議長は月額2万3,000円です。
また、議会には下審査機関として委員会があります。
議事日程等、本会議の進め方について協議する議会運営委員会と執行部から提出された議案について所管ごとに審査する常任委員会は、どの議会にも常設されています。その他、特殊な事案について協議する特別委員会を設置する場合もあります。
余談ですが、議会で最も強い調査権である100条調査権を行使する場合にも大抵特別委員会を設置して調査を行います。
それぞれの委員会は委員長と副委員長(合わせて正副委員長と言います。)を委員会から選出します。
正副委員長は対外的には一議員と同じため、代表者にはなり得ませんが、委員会の議事進行や本会議において委員長報告をするため役職手当が支給されています。
役職手当の支給金額も自治体によって異なり、議員報酬ランキング1位の横浜市の場合、委員長は月額3万円、副委員長は月額2万円です。
一方、議員報酬ランキング下位の阿久根市の場合、委員長は月額7,000円、副委員長は役職手当なしです。
なお、正副委員長の役職手当については、自治体によっては、委員長、副委員長どちらも廃止している自治体も多数あります。
費用弁償(会議出席費用)
費用弁償とは市議会議員が議会、委員会などに出席した時に支払う旅費です。
費用弁償は旅費になるため支給金額は自治体及び市議会議員の居住地によって異なり、議員報酬ランキング1位の横浜市の場合、1回の会議につき1,000円から3,000円支給されます。
一方、議員報酬ランキング下位の阿久根市の場合、費用弁償は廃止されています。
「費用弁償をもらうために長期間審査をしたり、特別委員会を設置するんだろう!」との批判も多いことから、最近は費用弁償を廃止する自治体が増えています。
政務活動費(政治活動・調査研究費)
平成24年、地方自治法が改正され「政務調査費」から「政務活動費」に名称が変更されました。
政務活動費は、議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として交付されるもので、具体的には研修や先進地視察をする際の旅費の他、報告書・資料等作成費、PC・タブレット等の購入費、ガソリン代、携帯電話使用料、インターネット接続料、事務所の賃借料などに使うことができます。
政務活動費の支給金額も自治体によって異なり、議員報酬ランキング1位の横浜市の場合、月の上限額55万円、年間最大660万円です。
一方、議員報酬ランキング下位の阿久根市の場合、月の上限額10,000円、年間最大12万円です。
なお、政務活動費はあくまで上限額のため、満額もらっている市議会議員もいれば、一切もらっていない議員もいます。
例えば横浜市の場合、政務活動費として請求すれば年間最大660万円の支給を受けることができますが、請求しなければ支給金額は0円になります。
市議会議員に扶養手当等の各種手当はない
会社員や公務員の場合、扶養家族が増えると扶養手当が支給されるようになりますが、市議会議員の場合、扶養手当がないため、扶養家族が何人いても報酬は変わりません。
そのため例えば報酬が500万円の自治体であれば独身の議員も大家族の議員も報酬は同じ500万円となります。
また、会社員や公務員は賃貸住宅に住んでいる場合、家賃の一部を住宅手当として支給されますが、議員には住宅手当がありません。
国会議員のような議員宿舎も市議会議員にはないため家賃は全て自己負担です。
市議会議員に昇給はない
会社員や公務員の場合、勤続年数が増えたり、資格を取得することで昇給することがありますが、議員には昇給制度がありません。
議員1年目の新人であろうと、議員歴30年以上の大御所であろうと報酬は同じです。
市議会議員が報酬を多くもらおうとする場合は条例改正を行い、そもそもの報酬を引き上げるか、正副議長等の役職に就くしか方法がありません。
市議会議員に退職手当はない
選挙で選ばれる市長には退職手当があります。
また、市長が指名して議会の同意を得て選任される副市長及び教育長も退職手当が支給されます。
自治体及び在職日数によって異なりますが、市長は満期(4年間)勤めた場合、約2,000万円もの退職手当をもらうことができます。
1期ごとにもらえるため2期目3期目と続けば1期目2,000万円、2期目2,000万円、3期目2,000万円と12年間で合計6,000万円もの退職手当をもらうことができます。
もちろん、毎月の報酬や年2回のボーナスとは別に市長は退職手当をもらうことができます。
そのため、市議会議員にも当然退職手当が支給されるものだろうと思っている方が多いですが、実は市議会議員に退職手当はありません。
市議会議員は何期続けても退職手当はなく、10年目、20年目と言った節目に議長会から賞状をもらえるくらいです。
市議会議員の手取りは額面より実際は少ない
会社員や公務員の場合、厚生年金及び健康保険に加入しているため、それぞれの保険料は会社と折半して支払っています。
また、給料が銀行口座に振り込まれる際には、既に各種保険料は差し引かれた状態で振り込まれています。
それに対して市議会議員は、誰かに雇用されているわけではないため、国民年金保険料及び国民健康保険料を満額、市議会議員本人が支払わなければいけません。
また、会社員や公務員と違い、銀行口座振り込み時に各種保険料は市議会議員報酬から差し引かれていないため、市議会議員は報酬が振り込まれたら国民年金保険料及び国民健康保険料を支払いに行かなければいけません。
最近では、市議会議員がSNS等で報酬の振り込み明細の写真をアップして「議員は毎月こんなにも貰っています!」みたいな投稿をしていますが、各種保険料を支払う前の金額のため、単純に会社員や公務員の手取りと比べることはできません。
国民年金保険料の金額は、1カ月あたり16,520円(令和5年度)のため、年間19万8,240円、国民健康保険料の金額は前年度の年収や世帯数等で変わるため一概には言えませんが、仮に年収500万円の単身世帯の場合、年間約40万円、合わせて各種保険料として約60万円支払わなければいけません。
上記の例の場合、各種保険料を月換算すると5万円になるため、市議会議員の報酬から約5万円引いた金額が会社員や公務員の手取りと同程度になります。
同じ市議会議員でも年収に天と地ほど差がある
議員報酬ランキング1位の横浜市の場合、報酬、ボーナス、政務活動費を合わせると年収2,318万2,200円です。
一方、議員報酬ランキング下位の阿久根市の場合、報酬、ボーナス、政務活動費を合わせると年収413万750円です。
上記のとおり、横浜市と阿久根市では、同じ市議会議員でも年収が約6倍も差があります。
上記は、だいぶ極端な例ですが、実情として、政令指定都市であったり、県庁所在地のある自治体の市議会議員年収は1,000万円以上と、かなりの高給取りですが、地方の市議会議員の年収は各種手当を含めても700万円前後のため、それほど多くはありません。
ちなみに私が勤めている自治体の市議会議員の年収は600万円~700万円の間ですが、上記で説明したとおり、各種保険料を差し引くと、30代前半の市役所職員と同じか、それ以下の手取りしかありません。
同じ市議会議員でもどこの自治体の市議会議員かによって、年収に天と地ほど差があります。
まとめ
市議会議員の給料やボーナス、各種手当についてご説明しました。
年収で約400万円から約2,300万円までと、同じ市議会議員でも、かなり収入に格差があることがわかっていただけたと思います。
また、手取りから各種保険料の支払いまでしなければいけないことから、地方の市議会議員は、この年収で生活大丈夫?と心配になるくらい報酬が少ないです。
実際、地方では、自営業や農業をしながら議員をしている兼業議員が大半で、議員だけで生活をする専業議員は皆無です。
この問題を解消するには、議員報酬をあげるか、議員になる条件を緩和するしかありませんが、議員報酬をあげるのは現実的には無理だと思うので、会社員をしながら議員をできるように裾野を広げる方向になると予想されますが、それだと今以上に利権が絡んできそうですね。