公務員は安定していると言うイメージが強いため、市役所職員への就職を希望する方は、今尚、多いと思います。
公務員になる場合、大きく分けて、高卒・大卒の2つのパターンがありますが、どちらの方が採用されやすいのか?採用後、市役所職員として働く場合、給料や待遇に違いが出てくるのか?高卒・大卒で有利・不利はあるのか?等について、疑問に思うのではないでしょうか?
そこで、このページでは、高卒で市役所職員になった場合の給与等の待遇や高卒で入庁した場合の注意点等について、詳しくご紹介します。
大卒か高卒かで採用に有利・不利はない
市役所職員の採用試験は初級、上級、社会人経験者枠等、細かく分類されています。
高卒の方が大卒の方や社会人経験者と戦うと、どうしても大卒や社会人経験者の方が経験値が高い分、高卒の人が見劣りしがちですが、採用枠が違うため、戦うことがありません。
高卒の方は、高卒同士で競い合うため、大卒か高卒かで採用に有利・不利はありません。
採用に有利・不利があるとすれば、高卒の方が、受験できる期間・回数が高卒の方が少ないことです。
公務員試験は、受験資格に年齢制限があり、初級だと21歳になる年(高校卒業後3年間)までなのに対して、上級だと30歳(ストレートの場合、大学卒業後8年間)まで受験することができるため、受験できる期間・回数に若干の差があります。
高卒でも給料・ボーナス・仕事内容に差はない
高卒で入庁しても、大卒で入庁しても、昇給や仕事内容に一切の差はありません。
採用時は初級・上級で分かれていますが、入庁したら初級も上級もなくなります。
そのため、昇給については、他の市役所職員と同様に、大体毎年4号級ずつ(若いうちは大体月額8,000円前後)昇給します。
仕事内容についても、市民から見たら、税金をもらって仕事をしている市役所職員に違いはないため、高卒だからと甘やかされることなく、公務員として、責任のある仕事を任されます。
蛇足にはなりますが、配属先については、若干の差があり、高卒だと最初の配属先が上下水道事業を所管とする課になる可能性が非常に高いです。
なぜなら、上下水道事業は地方公営企業法という法律に基づき「独立採算制」を採用しているからです。
独立採算制により、水道事業の経営に必要な費用は水道料金収入で賄わなければいけません。
経営が黒字であれば良いですが、どこの自治体の水道事業も経営状況は非常に厳しいです。
しかし、民間企業と違って市が経営する企業のため、公共性が強く、経営が苦しいからと言って、水道料金を安易に値上げすることはできません。
収入を増やせない代わりに、できるだけ人件費の安い職員、つまり若い高卒の職員を配属して、経費を削減し、経営の安定化を図ろうとするため、高卒の方の最初の配属先は、上下水道事業を所管とする課になる可能性が高いです。
高卒でも部長級になれる
「高卒で入る以上、出世は難しいのでは?」と心配されている方もいるかもしれませんが、ご安心ください。
市役所は、高卒であっても部長級まで出世することができます。
都道府県庁の職員や政令指定都市の市役所の場合、もしかすると高卒だと出世は難しいかもしれませんが、それ以外の市役所職員は高卒・大卒関係なく出世することができます。
実際、私が勤めている市役所では、高卒の方が部長級になっていますし、幹部職員にも高卒の方が多数います。
その理由は、出世に学歴は関係ないからです。
そういうと、非常にカッコよく聞こえますが、実際は仕事の能力で圧倒的に差が出るほど、優秀な大卒の方は市役所にいないからです。
当たり前ですが、東京大学、京都大学、大阪大学など、名立たる名門大学出身者が地方公務員になることは、まずありません。
国立大学出身者はチラホラいますが、余程の地元愛がなければ、もっと給料の良いところに就職するため、ほぼいません。
それに、高卒の方も大卒の方が大学で4年間遊んでいる間、一生懸命仕事をして、市役所業務について学んでいるため、大卒の方に負けない、もしくは大卒の方よりも優秀な方はいます。
そのため、昇進に学歴は関係なく、高卒の方でも部長級になることは可能です。
出身大学よりも出身高校の方が大事
市役所職員の場合、特に地方の市役所に勤める場合は、出身大学よりも、どこの高校を卒業しているかの方が出世するうえでも、仕事をするうえでも重要です。
なぜなら、市役所には、出身高校ごとに大きな派閥があるからです。
市役所職員全体の7割から9割は地元出身のため、大体どこかの高校派閥に所属しています。
そして、市役所職員は、出身高校の同窓会実行委員会委員として、各種イベントに駆り出されることが多いため、出身高校派閥内の交流や活動も盛んです。
有力な出身高校派閥に入ることができれば、優秀で力のある上司や先輩と面識が持てるため、仕事でもプライベートでも可愛がられる可能性が高くなります。
もちろん、出身大学による派閥もありますが、出身大学はバラバラで、派閥と呼べるほど大きな組織ではないですし、交流や活動もほとんどないため、出身高校派閥と比べると、あまり重要ではありません。
もう一つ大きな派閥の括りとして、出身地域による派閥もあるため、一概に出身高校だけで決まるものではありませんが、市役所内で幅を利かせている出身高校派閥に所属できれば、市役所職員として働くうえで何かと有利に働きます。
高卒だと入庁後すぐの給料はかなり低い
上記でご説明したとおり、高卒だからと言って、採用で不利になることも、昇給や出世等、市役所職員になってからの待遇が悪くなることもありません。
しかし、高卒で入庁する場合は、いくつか注意点がありますので、ご紹介します。
最初の注意点は、高卒だと入庁後すぐの給料はかなり低いと言う点です。
高卒で市役所職員になった方の初年度の年収は約254万円です。
上記年収はボーナスも含めた金額なので、月額だと約15万円です。
「月15万円は少ないけど、まあ何とかなるか?」と思ったら大間違いです。
この月15万円は総支給額のことです。
ここから、所得税等の税金、健康保険や厚生年金保険料等の社会保険料が引かれるため、手取りだと9万円前後しかもらえません。
別途6月と12月にボーナス支給があるとは言え、月9万円程で生活をしなければいけないため、実家暮らしでない限り、給料のほとんどが生活費に消えていくことになります。
パート・アルバイトと違い、フルタイムで責任のある仕事をして手取り9万円です。
いずれ給料がアップするとは言え、30代近くになるまでは、安い給料で我慢して働くしかありません。
同級生が大学で遊んでいるのが妬ましく思える
高卒で市役所職員になる場合の注意点の2つ目は、同級生の大半は大学で楽しい学生生活を送っているのを目の当たりにする点です。
大学は高校と違い、朝から晩まで学校で勉強するわけではありません。
サークル活動をしたり、他大学の人達と交流したり、パート・アルバイト等をしてお金を稼いだり、海外旅行に行ったり等、好きなことに時間を使うことができます。
しかも、高卒の方が公務員として働いてもらう給料よりも、パート・アルバイトとして働いてもらう給料の方が引かれものが少ない分、手取りは多いため、自由に使えるお金も大学生の方が多いです。
普段は、仕事で忙しく、意識することはありませんが、大学に行った友人が地元に帰ってきて一緒に遊んだ時に、自分よりも時間もお金も自由に使えて楽しい大学生活を送っているのを目の当たりにすることになります。
また、大学卒業後に市役所職員の同僚として働くことになった場合、大卒の給料は、4年間一生懸命働いてきた自分と同じ、もしくは自分より多いため、「4年間社会人として一生懸命働いてきた自分よりも4年間遊んできた人の方が給料が多いのか」と愕然とし、妬ましい気持ちになります。
年齢を重ねると、そういう感情も風化しますが、若いうちは、ほぼ全員、程度の差はありますが、妬み嫉みと言った感情をもって苦しむことになります。
まとめ
高卒で市役所職員になった場合の給与等の待遇や高卒で入庁した場合の注意点等について、詳しくご紹介しました。
市役所職員は高卒、大卒に関係なく、活躍することができる職場です。
給料も勤続年数に応じて昇給していきますし、仕事が評価されれば、高卒でも部長級になることができます。
若いうちは、給料も安く、同級生が学生生活を謳歌している最中のため、モヤモヤするかもしれませんが、その時期さえ過ぎれば高卒で働く人にとっては、非常に魅力的な職場の一つだと思います。