地方公務員法・地方自治法の改正により、全国すべての市町村で令和2年4月1日から「会計年度任用職員制度」が始まりました。
この改正により、市役所での非正規雇用の待遇は以前の臨時的任用職員と比べて、かなり改善されました。
もちろん、改正されたとは言え、良いことばかりではなく、まだまだ様々な問題点を抱えている制度ではあります。
そこで、このページでは、市役所で働きたいと思うけど、どうしようか迷っている、と言う方のために、会計年度任用職員として働くことのメリット・デメリットについて、わかりやすく解説していきたいと思います。
メリット1:パート・アルバイトより年収が高い
会計年度任用職員の年収は約200万円~300万円です。
100万円も年収に幅がある理由は、職種と地域差によって給料が変わるからです。
特に地域差は大きく、都会の市役所に勤めれば地域手当が出る分、給料は多くなります。
それでも、田舎の市役所でも年収200万円はもらえます。
仮に時給1,000円、1日8時間労働、月に20日働いた場合、
1,000円×8時間×20日×12月=192万円
となるため、パート・アルバイトとして働くよりも会計年度任用職員として働いた場合、年収が高いというメリットがあります。
200万円-192万円=8万円
のため、年収がたった8万円しか変わらないのでは?と思うかもしれませんが、これは東京クラスの最低賃金と田舎の会計年度任用職員を比べた場合の比較であり、実際の田舎では、最低賃金が900円にも満たないため、会計年度任用職員として働いた方が如何に収入面で有利かをわかっていただけると思います。
メリット2:休みが多い
会計年度任用職員は年次有給休暇を取得することができます。
実は、制度上はコンビニ等のバイトでも有給休暇を取得することができる、と言いますか、取得できないと法律上問題があるんですが、ほとんどのパート・アルバイトの人は有給休暇を取得したことはないのではないでしょうか?
それに対して会計年度任用職員の場合は、年次有給休暇を自由に取得することができます。
もちろん、時期によっては、繁忙期のため、休めない時期もあるかもしれませんが、年間に付与される年次有給休暇については、100%消化することができます。
少なくとも、私の勤めている市役所であれば、パートタイム会計年度任用職員の有給休暇は100%消化してもらうことが当然となっています。
加えて、減給・無給にはなってしまいますが、会計年度任用職員は年次有給休暇の他にも、病気休暇、介護休暇、特別休暇を取得することができます。
このように会計年度任用職員として働いた場合、様々な休暇を取得できるというメリットがあります。
メリット3:社会保険に加入できる
会計年度任用職員にはフルタイムとパートタイムの2種類あります。
フルタイム会計年度任用職員は、当然のように社会保険に加入することができるんですが、なんとパートタイム会計年度任用職員でも社会保険に加入することができます。
任用期間が極端に短い場合や1日の勤務時間が半日程度と短いパートタイム会計年度任用職員の場合、社会保険に加入できませんが、大半の会計年度任用職員は社会保険に加入することができます。
コンビニやスーパー等のパート・アルバイトの場合、社会保険に加入することは、まずないので、会計年度任用職員として働く場合、社会保険に加入できると言うメリットがあります。
メリット4:退職手当が出る
会計年度任用職員制度に変わって、フルタイム会計年度任用職員が退職した際には退職手当が出るようになりました。
退職手当の金額については各自治体によって算出方法が異なりますが、勤続年数が長ければ長いほど、より多くの退職手当が支給されるような仕組みとなっています。
残念ながらパートタイム会計年度任用職員には退職手当はありませんが、フルタイム会計年度任用職員として働く場合、退職時に退職手当がもらえると言うメリットがあります。
メリット5:勤続年数に応じて昇給する
会計年度任用職員制度が導入される以前は、何年働いても、どれだけ優秀な人材であっても、昇給することはありませんでした。
しかし、会計年度任用職員制度に変わってからは、会計年度任用職員も正規職員と同様に勤続年数に応じて昇給する仕組みができました。
フルタイム会計年度任用職員のみ昇給があり、パートタイム会計年度任用職員には昇給制度がない自治体もあるなど、昇給の条件や上限等の運用方法が自治体によって異なるため、
一概には言えませんが、以前の制度と比べると、昇給するチャンスがあると言うメリットがあります。
メリット6:副業・兼業・ダブルワークが認められる
フルタイム会計年度任用職員には副業が認められていませんが、パートタイム会計年度任用職員には副業が認められています。
・不動産
・株
・投資信託
・FX
・仮想通貨
・農業
・アフィリエイト
・動画配信
など、副業と言われて思いつく仕事は全てできます。
さらに、パートタイム会計年度任用職員として働きながら、別の会社に勤めることも可能です。
ただし、1日の労働時間が7時間45分を超える部分については、後から勤務を始めた方が割増賃金を支払わなければいけなくなるため、兼業・ダブルワークをするハードルは高いですが、会計年度任用職員として働き、収入源を確保しながら、自由に副業ができるメリットがあります。
なお、フルタイム会計年度任用職員の場合、副業は認めれませんが、正規職員と同様に、株・仮想通貨等の資産形成はできますし、届け出をすることで不動産による家賃収入や農業収入を得るこはできます。
メリット7:公務員採用試験に有利
公務員採用試験の面接時に、会計年度任用職員として、こういう業務をしてきた経験があるとアピールすることができます。
また、職場の先輩から採用試験に受かるコツを聞くことができたり、仕事を通して自己アピールができたり、コネや人脈を作ることができるというメリットもあります。
ただし、注意点として、会計年度任用職員として働くことで、悪いイメージがつく可能性もあります。
例えば仕事ができない、コミュニケーションが取れない、すぐトラブルを起こす、等の悪いイメージが一度でも付いてしまうと払拭することは難しいです。
そのため、会計年度任用職員として働く場合は第一志望の市役所は避けることをオススメします。
実際、私の知り合いのほとんどは、第一希望の市町村役場で会計年度任用職員として働いた結果、第一希望の市町村役場は落ちてしまい、別の市町村役場では上位の成績で合格しています。
デメリット1:雇用が不安定
会計年度任用職員の1回の任用期間は、その名のとおり、原則1会計年度(4月1日から翌年3月31日)の最長1年です。
そのため3月31日を迎えたら、自動的に雇用契約は終了となります。
では、1年経ったら、すぐに失職するのか?と言えば、そうではなく、勤務成績が良好な場合は任用期間を更新し、年度を超えて働くことができます。
ただし、会計年度任用職員の任用期間の更新回数は2回までと決められています。
つまり、1度会計年度任用職員と雇用されると最初の1年間+更新2回で合計3年間は働くことができます。
3年後についても、最初と同じように再度公募に応募し他の受験者と一緒に選考試験を受けて合格することで、再び3年間働くことができます。
会計年度任用職員には、定年がないため、理論上は採用→更新→採用→更新・・・と繰り返すことで、長期に渡って働くことも可能です。
しかし、来年度も同じように雇ってくれるかどうかは、わかりません。
民間の場合は、労働契約法を根拠とした5年ルール、無期転換ルールがあり、5年以上働けば無期雇用に転換することができますが、会計年度任用職員は公務員のため、労働契約法が適用されず、再度の任用を繰り返して5年間継続勤務しても、無期雇用に転換されることはありません。
正規職員になるには、公務員採用試験を合格するしかありません。
このように会計年度任用職員として働く場合、毎年クビになるかもしれない不安が常にあるというデメリットがあります。
デメリット2:毎月の給料は安い
会計年度任用職員制度に変わって大きく変化したことの1つとしてボーナスが支給されるようになりました。
ボーナスが出るようになった分、残念な点として、以前の臨時職員と比べて、月々の給料は減額されています。
上記のメリットでも紹介しているように年収ベースでみると増えているんですが、その分、毎月の給料に調整が入っているため、ボーナスがもらえる6月、12月までの間は、生活費のやりくりが大変というデメリットがあります。
デメリット3:スキルは身につかない
会計年度任用職員の業務内容・仕事内容を簡単にまとめると下記のとおりです。
・窓口対応・電話対応
・外部のお客さんへのお茶出し
・簡単な事務作業
・各種雑用
基本的に市役所の仕事として、皆さんがイメージするような仕事をします。
大半は正規職員の補助がメインの仕事のため、比較的楽な仕事が多いですが、その分、民間企業で通じるようなスキルは一切身につかないため、その点はデメリットと言えます。
まとめ
会計年度任用職員とはどういうものなのか?メリット・デメリットについてご紹介させていただきました。
読んで頂いたならわかるとおり、会計年度任用職員として働く場合、雇用が不安定のため、独身の方や若い方には、あまりオススメできません。
独身の方や若い方であれば、正規職員や正社員を目指した方が良いですし、同じ雇用が不安定でも、スキルが身につく分、派遣社員として働いた方が良いと思います。
対して、主婦や主婦の方など、お小遣い稼ぎとして働くのであれば、スーパーやコンビニ等でパート・アルバイトとして働くよりも、会計年度任用職員として働く方が厚待遇ためオススメです。
ぜひ検討してみてください。