市役所にパート・アルバイトとして働く人のことを会計年度任用職員と言いますが、「会計年度任用職員として働けるなんてずるい!うらやましい!」と言う声を時々聞きます。
実際に議員等のコネをフル活用してでも会計年度任用職員になろうとする方がいるのも事実です。
では、実際のところはどうなのでしょうか?会計年度任用職員はずるいと言われるほど民間企業で派遣社員やパート・アルバイトとして働くよりも厚待遇なのでしょうか?
このページでは、これらの疑問に答えるため、会計年度任用職員の待遇についてご紹介し、ずるいと言われる理由について明らかにしていきたいと思います。
会計年度任用職員とは
会計年度任用職員とは、市役所で働くパート・アルバイトの人たちのことを言います。
以前は、市役所で働くパート・アルバイトの人たちは、臨時的任用職員と呼ばれていましたが、地方公務員法・地方自治法の改正により、全国すべての市町村で令和2年4月1日から「会計年度任用職員制度」が始まり、市役所で働くパート・アルバイトの人たちは、会計年度任用職員と呼ばれるようになりました。
市役所のパート・アルバイトは、臨時的任用職員と呼ばれていた時代から「臨時的任用職員として市役所で働けるなんてずるい!うらやましい!」と言われるほど、待遇が良かったですが、会計年度任用職員制度になって、さらに待遇が良くなっています。
会計年度任用職員には年次有給休暇がある
会計年度任用職員はずるいと言われる1つ目の理由は年次有給休暇が取得することができるからです。
民間企業の場合、パート・アルバイトに年次有給休暇はありません。
それに対して会計年度任用職員の場合、パートタイムか、フルタイムかによって取得できる日数は異なりますが、どちらも最大で年間20日取得することができます。
実を言うと、民間のパート・アルバイトでも年次有給休暇は付与されています。
例えばコンビニバイトであっても年次有給休暇は付与されています。
しかし、年次有給休暇を取得されると事業主が困ることから、年次有給休暇制度そのものはあっても、年次有給休暇が取得できることを通知していない等により、年次有給休暇を取得することはできません。
それに対して、会計年度任用職員の場合は、年次有給休暇をいつでも取得することができ、毎年必ず全ての年次有給休暇を消化することができます。
また、会計年度任用職員は、年次有給休暇の他に病気休暇、介護休暇、特別休暇を取得することができます。
さらに最近は会計年度任用職員にも正規職員と同様に年次有給休暇とは別に夏季休暇・リフレッシュ休暇も整備されつつあります。
ちなみに夏季休暇・リフレッシュ休暇の付与日数については、自治体によって異なりますが、3日程度付与される自治体が多いです。
以上のように会計年度任用職員は民間でのパート・アルバイトと異なり有給休暇が充実しています。
会計年度任用職員にはボーナスが支給される
会計年度任用職員はずるいと言われる2つ目の理由はボーナスが支給されるからです。
民間企業の場合、パート・アルバイトだとまずボーナスなんてありませんし、会社によっては、正社員であってもボーナスが出ないこともあります。
それに対して、会計年度任用職員の場合、パートタイムでもフルタイムでも6月と12月の年2回、ボーナスが支給されます。
なお、ボーナスの支給金額についてですが、算定根拠はどこの自治体でも同じで
【支給額】 = 期末手当基礎額 ✕ 期別支給割合 ✕ 在職期間別割合
と言う計算式で算出されます。
ただし、算定根拠となる基礎額等は自治体によってバラバラのため、ボーナスの支給金額にも差が出てきます。
当然、都会の自治体ほど時給単価も高いため、都会の自治体に務める会計年度任用職員ほどボーナスの支給金額も高くなります。
会計年度任用職員には残業代が支給される
会計年度任用職員はずるいと言われる3つ目の理由は残業代がしっかりと支給されるからです。
民間でのパート・アルバイトの場合、定時で帰れる方が少なく、残業しても残業代が出ない場合が多いと思います。
また、残業代が出たとしても、割増賃金ではなく、通常の時給分しか支給されないことが、ほとんどだと思います。
それに対して会計年度任用職員の場合、まず大前提として会計年度任用職員が残業することは基本的にありません。
たとえ自分が所属する部署が残業するような超多忙な職場であっても、会計年度任用職員は残業することなく定時になれば帰らせてもらえます。
ただ、極々たまに会計年度任用職員でも残業しなければならないことがあります。
例えば定時以降に説明会や会議等がある場合です。
これらの理由で会計年度任用職員が残業した場合は、必ず残業代が支給されます。
もちろん残業なので、残業した時間分については割増賃金で支給されます。
さすがに分単位での残業代の支給はありませんが、1時間でも残業すれば、その残業代は満額支給されます。
会計年度任用職員は社会保険に加入できる
会計年度任用職員はずるいと言われる4つ目の理由は社会保険に加入することができるからです。
社会保険料の負担は労使折半のため、社会保険に加入すると、本人も5割負担をしなければいけませんが、雇用主も5割負担しなければいけません。
雇用主である会社側は社会保険保険料を負担しなくて良いよう、できるだけ社会保険に加入させないようにするため、パート・アルバイトの場合は、まず社会保険に加入することはできません。
それに対して会計年度任用職員の場合、勤務時間が極端に短い場合は加入することができませんが、大抵の会計年度任用職員の方はパートタイムであろうと、社会保険に加入することができます。
会計年度任用職員は厚生年金に加入できる
会計年度任用職員はずるいと言われる5つ目の理由は厚生年金に加入することができるからです。
社会保険と同様に厚生年金保険料も負担は労使折半のため、本人も5割負担をしなければいけませんが、雇用主も5割負担しなければいけません。
そのため、社会保険と同じ理由で、民間企業の場合、パート・アルバイトは厚生年金に加入することができません。
それに対して、会計年度任用職員の場合、勤務時間が極端に短い場合を除けばパートタイム会計年度任用職員であっても厚生年金に加入することができます。
ちなみに、厚生年金とは年金制度で言うと2階部分に該当し、厚生年金に加入することで、将来年金がもらえるようになった時に国民年金にプラスして厚生年金がもらえるようになります。
要するに厚生年金に加入することで、将来もらえる年金額が増えます。
会計年度任用職員は仕事が楽
会計年度任用職員はずるいと言われる6つ目の理由は仕事が楽だからです。
民間企業の場合、給料が多くなったり、福利厚生が充実していくに連れて、仕事の量・質・責任が増していきます。
それに対して会計年度任用職員の場合、上記のとおり給料も高く、福利厚生もしっかりしていますが、求められる仕事の量・質・責任は民間で言うところのパート・アルバイトと同程度です。
そのため、働く側からすると、会計年度任用職員として働くことは、いわゆる費用対効果、コストパフォーマンスが民間企業でパート・アルバイトするよりも抜群に良いです。
会計年度任用職員には定年がない
会計年度任用職員はずるいと言われる7つ目の理由は定年退職がないからです。
公務員の定年退職は60歳、民間企業の定年退職は65歳ですが、驚くなかれ、会計年度任用職員に原則定年はありません。
一応、会計年度任用職員を運用するうえでの目安としては65歳までとありますが、65歳になったら絶対に退職させなければいけないと言うルールもありません。
また、通常、民間企業でパート・アルバイトで働く場合、若い人の方が安い賃金で雇うことができ、しかもよく働くことから、30歳を超えたあたりくらいから、徐々に働きづらくなると思います。
それに対して会計年度任用職員は、毎年更新が必要のため、毎年クビになる可能性はありますが、余程のことがなければ継続されるため、ずっと働き続けることができます。
ちなみに、民間企業は5年更新で無期雇用となる5年ルールがあるのでは?と思う方もいるかもしれませんが、実際は5年経ったらクビになることが多いと聞きます。
会計年度任用職員は、どれだけ雇用されても無期雇用にはなりませんが、余程のことがない限り、民間で働くよりも、実際は会計年度任用職員の方が長く働き続けることができます。
会計年度任用職員には退職金が出る
会計年度任用職員はずるいと言われる8つ目の理由は退職時に退職金が出るからです。
民間企業の場合、正社員であれば退職金が支給されますが、パート・アルバイト、派遣社員の方が退職をしても退職金は支給されません。
それに対して会計年度任用職員の場合、残念ながらパートタイム会計年度任用職員には退職金は支給されませんが、フルタイム会計年度任用職員であれば退職金が支給されます。
退職金の支給金額については、勤続年数、退職日給料月額等によって異なるため一概にいくらとは言えませんが、それなりの金額をもらうことができます。
会計年度任用職員のデメリットは厚待遇過ぎるところ
会計年度任用職員のデメリットはないのか?と言ったら1つだけあります。
それは会計年度任用職員は厚待遇過ぎるところです。
扶養に入っている方や年齢が上の人が働く分には、会計年度任用職員は、これ以上ない待遇で良い働き先だと思いますが、若い人が働くには向いていません。
なぜなら、これから正社員・正職員として働いてバリバリ稼ぐ世代の人が会計年度任用職員の仕事で十分だと勘違いされては困るからです。
公務員になろうと考えている方が会計年度任用職員として働くケースが多々見受けられますが、必ずしも会計年度任用職員として働いたことが公務員試験にプラスに働くとは限りません。
逆にマイナスに働くこともあります。
また、民間企業に勤める場合は、仕事の量もさることながら、ノルマもあるため、会計年度任用職員での仕事とのギャップに驚くことになります。
現在の会計年度任用職員に定年制はないとは言え、若い人が働くには昇給も少なく、また、40年間も会計年度任用職員として勤めあげるわけにはいきませんから、若い人が働くには、会計年度任用職員は厚待遇過ぎてオススメしません。
まとめ
会計年度任用職員はずるい!と言われる理由についてご説明させていただきました。
上記のとおり、会計年度任用職員は民間企業でパート・アルバイト等で働くよりも8つの点で優遇されています。
そのため、非常に人気が高く、議員等のコネをフルに活用してでも会計年度任用職員になろうとする方等が多数いるのも事実です。
もちろん、全部が全部、コネがないと会計年度任用職員になれないわけではないため、コネが全くなくても会計年度任用職員として働くことは可能です。
なお、これだけ会計年度任用職員が優遇されていることから、周りの目からの批判を気にする方もいるかもしれませんが、一切気にする必要はありません。
なぜなら、単純に民間企業の待遇が悪すぎるだけで、会計年度任用職員が特別優遇されているわけではないからです。
そのため、パート・アルバイトを探している方は単純に労働環境の良い会計年度任用職員の募集がないか、自治体のホームページやハローワークで探してみることをオススメします。